pixivより転載
先日のノルマを達成しないと出られない部屋といい今回のことといい、このところこの本丸には今まで縁のなかった「バグ」が生じている。
長谷部が原因として思い当たるのは、冬の連隊戦で安宅切が来たことぐらいだ。しかしこの本丸の安宅切はごく平均的な個体のはずだ。平均的な安宅切と再会し、思いを高め合い、異常事態の中で結ばれたのはつい先日のこと。思い出すと顔に血が集まるので、ひとまず忘れることにした。
さて、今回のバグである。
「1部の刀剣男士の髪が伸びる」
一見地味に聞こえるし、刀剣男士によって伸び方はまちまちだ。短髪の者がショートヘアになっていたり、元々長い者がさらに伸びていたり。しかし戦闘に支障が出る。なので本日の出陣は休みになり、政府へバグの解析をせっついているところである。
長谷部は不幸中の幸いそのバグには当たらなかったが、聞いた話では安宅切がバグに当たったという。
『凄いことになってるよ』
とは、その安宅切を介抱したという燭台切の言だ。
どう凄いのか。「とにかくすごいよ」の一点張りだったので、詳しいことを長谷部は知らない。髪が伸びたことのなにがすごいのか。……髪の長い安宅切が見たくないかと言われれば嘘になる。見たい。すごく見たい。明治維新を機に自分たち付喪神も散切り頭にしたものだが……そんなことを考えながら、「部屋にいるよ」と言われて来た部屋の前から声をかける。
「安宅切、入るぞ」
「えっ、御刀様……待っ」
返事を待たず障子を開く。
──足元にまで来ている黒いものがなんなのか、最初長谷部はわからなかった。しかし、部屋の中央で座っている者が確かに安宅切だと気付き──
「……これ、全部お前の髪か?」
恋刃が髪長姫になったのを察したのだった。
薄暗い部屋の中で、安宅切は嘆息している。
「御刀様にはあまり見られたくない姿だったのですが」
「なぜだ」
髪を寄せて歩きながら、長谷部は安宅切に近づく。安宅切は言う。
「……みっともないでしょう、こんな姿」
「いや? 全くそんなことはない」
顔を上げる安宅切の前で、伸びた長い髪を持ち上げ、口付けた。
「きれいだぞ、俺のラプンツェル」
「──は」
安宅切は、長谷部の言動と行動に一瞬呆けた。
しかし、すぐに彼を払いのけようとする。
「何、恥ずかしいことを言ってるんですかあなた……」
「本心から出た言葉だ」
「なお悪いです……」
そう言って、黒髪の髪長姫は顔に手を当てた。赤い顔を隠すために。
なお次の日にはバグは治まったが、しばし安宅切の頭や髪に触れたがる長谷部がいたという。
了