pixivより転載
思えば、忘年会にて。彼を抱えて部屋に戻したのが切欠だったのだろうと周囲は思った。
安宅切は平素から杖を突いて歩いている。刀剣男士ゆえに身体能力に問題はないはずだが、彼は戦闘の時でさえ杖を突いていた。本丸の中、室内でも杖を突いていた。ただし庭では突かない。そもそもがここは豪雪の景趣本丸。雪のために外で杖はろくに使えない。そういうわけで、彼が杖を突いて歩いている姿を見られるのは室内と、政府での用事のときか、戦闘のときだった。……「平素」と言ったが撤回した方がいいかもしれない。
それはともかく、足の悪い様子を見せる安宅切を、周囲は気遣った。本刃と言えば、「これはあくまで元主の象徴で、実際に悪いわけではないのです」。しかし、杖を突いて歩いている者を放置できるほど、この本丸の者たちは薄情ではなかった。
──尤も、その気遣いは無用のものとなる。
長谷部である。
「おい、安宅切」
それは、不意に訪れる。
安宅切が普段より杖に寄りかかって立っているとき。壁に凭れているとき。しゃがみ込んだとき。それらを見計らったかのように、長谷部は声をかけてくる。そうすると決まって安宅切は慌てて立ち上がろうとする。
それを止めるのが長谷部だ。
たとえ誰かと会話中でもそうする。大事な話だった場合はそれが終わるまで待つが、終わったらすぐに──そう、すぐに抱え上げる。
「御刀様、おやめください」
その度に安宅切は恥ずかしそうに哀願するのだが、長谷部が問答無用で連れ去るので、それ以上のやり取りはその場に残された者は聴けていない。
そして誰ともなく理解した。安宅切は本当は本当に足が悪いのだと。
「だから、私のこれは官兵衛様の影響でファッションみたいなものだと言っているじゃないですか……」
安宅切の自室。石油ストーブが部屋を暖めている。加湿器も作動していた。これらは長谷部が安宅切のために用意したものだ。ストーブは予備がいくつもあるからともかく、加湿器は長谷部が発注したものだ。それはまだ直接関係を結ぶ前、忘年会で酔い潰れた安宅切を運んだあとで、審神者に許可を求めてそうしたのだった。
偏に、安宅切の脚のためだった。少しでも快適な空間の方が脚にもいいだろうと考えてのことだった。その長谷部の尽くしように、安宅切は困惑しているのだった。
今も安宅切の脚を揉んでいる。平均的なへし切長谷部の尽くしぶりは審神者に向けられるものだと安宅切は聴いていた。しかし、ここの長谷部はどうやら違うらしい。それにいたたまれず、先述の発言をしたのだった。
長谷部は、きょとんと藤色の目を瞬いた。
「知っているが」
「なら」
「だが、全く悪くない、というわけではないんだろう」
「……」
安宅切は黙り込む。沈黙を破ったのはたっぷり60秒後。
「……確かに、杖があった方が楽ではあるんですが、御刀様が気にかけてくださるほどのことでは」
「そうか」
「あの……」
頷きながら、尚もマッサージを続行する長谷部。その彼は、物言いたげな安宅切に、ふと笑んだ。安宅切の仮初の心臓が乱暴に動いた。
「惚れた奴の面倒を見て何が悪い?」
「──」
「……やはり脚を温めるためにレッグウォーマーの導入も検討した方がいいか……どうした? 顔が赤いぞ」
そう指摘され、安宅切は顔を袖で覆う。
「……御刀様のせいです」
さて、こういった日常で長谷部の気遣いは安宅切に発揮される。
しかし、それは夜もだった。
「う、ん、っ……」
──暗がりを怯える安宅切のために、置行灯のみが光る部屋。そこでの睦み合い。1回目はいつも通り長谷部が安宅切を押し倒した形でのことだ。
ただ、ここでいつもと違ったのは、2回目。安宅切が「騎乗位したいです」と言い出したことだ。
それに渋面を作る長谷部。
「大丈夫か?」
「何がです」
「その、バランスとか……」
「そこまで弱ってません。いいから御刀様は仰向けに転がっててください」
言いながら長谷部を押し倒す安宅切。それから長谷部自身を手で扱くと、再び形を成したそれに、長谷部に跨る形で後孔に挿入する。
「う、あ、っ」
日頃当たらないところに長谷部のモノが当たって、安宅切はしなやかな体を逸らした。背中が弓形になる。それで腰を上下させはじめた。そこまではよかった。
そっ、と。腰に触れる手があった。
安宅切は腰を下ろすと──長谷部自身が根元まで入って苦しかったがそれはともかく──腰に手を触れて来る長谷部に言う。
「なんですか、この手」
「いやその」
長谷部は言った。
「不安定じゃないかな、と」
「もう黙っててください」
「っあ」
長谷部自身を思い切り締め付ける。長谷部が思わず声を上げた。それに一瞬気を良くしながら、安宅切は言う。
「夜ぐらい、私にイニシアチブ握らせてください」
「……夜だからこそ、こちらが握りたいんだがな……!」
さて、その日の晩は大いに盛り上がったそうな。
「腰痛くないか? 慣れないことしただろう」
「……放っておいてください」
了