pixivより転載
二筋樋はやや唐突に尋ねた。
「なぁ、あんた、何が欲しい」
「ほぇ?」
書類にボールペンを走らせていた審神者は、首を傾げた。
さて、春である。暦は4月だ。年度刷新にて書類手続きなど煩雑なものがたくさんある。基本的にはホロモニターとホロキーボードを使う審神者も、ボールペンを使うときもあった。主に走り書きのメモなどにだが、23世紀になってなお手書きの書類を求められることもある。万年筆でのサインを求められることもあるが、今のところここの審神者はボールペンのみ使っている。
そんな彼女は、八つ時のおやつと茶を持って来た二筋樋に問い返した。
「えっと、私、誕生日でもなんでもないよ?」
「知っている」
「教えたっけ……?」
「それはともかく。……進級しただろう」
「あぁ、それね」
言われて気付く。
二筋樋が来たときは中学1年だった審神者は、この4月で2年生となった。しかし特別祝われるようなことでは……と審神者が思っていた中で、二筋樋は真面目腐って言う。
「うん。真面目に勉学に励んだおかげだろう。これほどめでたいことはない」
「中学はそんなに滅多に留年しないよ……?」
「わかっている。だがあまり学校を休んだりすると支障を来すだろう。審神者をやりながらも真面目に通っていたあんたは偉い」
「そ、そんな風に言われると照れちゃうな……他にも同じことやってる子いるのに……」
審神者がもじもじしていると、二筋樋はそこで叩き込むように言った。
「だから! 是非祝わせて欲しい。この本丸で経歴が浅い俺だからこそやらせて欲しいんだ」
「そ、そこまで……? まぁいいけど……」
ボールペンをくるくると回していた審神者は、二筋樋の熱弁に苦笑してから、ふと手元を見る。審神者になってからリピートし続けているボールペンのブランド。
「あ、じゃあ、ちょっと良いボールペンがいい」
「ちょっと良いボールペン?」
眼を瞬く二筋樋に、持っているボールペンのブランドを示しながら言う。
「このブランドのボールペン、安くても書き心地がいいんだけどね。ここのブランドのちょっと良いやつが欲しい」
「わかった」
「早っ。ま、まぁ宜しく。それと今日のおやつなに?」
「チョコまんだそうだ」
「わぁい」
数日後。
審神者に贈られたのは、ネーム入りのブランドボールペンだった。刻まれているのは審神者名だったことを、このときの審神者は内心で安堵していた。が。
「わざわざネーム入りにする必要はなかったんだよ……?」
「この方が特別感あるだろ」
「あるけどさぁ……というか2年に進級しただけでこれって、高校進学とかしたらどうなるの」
「そのときは相応のものを贈らせてもらう」
「怖い……なんでそんなに鬼気迫ってるの……」
審神者は胡乱な目で二筋樋を見た。が、嘆息する。
「……とりあえず、有難う」
「どういたしまして」
二筋樋は笑った。
──内心を綺麗に覆い隠して。
(高校卒業まで手を出さない、高校卒業まで手を出さない……カウントダウンしよう……)
了