▼これ(https://syosetu.org/novel/85876/100.html)と同設定
▼ランスロット、恋愛はいいけど家庭人に向いていない感がすごいから家族と一定の距離を置かせた方がいいかな……と考えた結果がこんな感じです そもそもここだと離婚してるんですがね、娘との仲も微妙なんですけどね、孫ぐらいならちゃんと可愛がることができるんじゃないかなって……
pixivより転載
――目を覚ますと、ベッドの傍らに人がいた。眠気でぼやけた視界、窓から差す穏やかな日差し。それに照らされた紫の短髪に白い顔。見覚えがありすぎた。椅子に座る彼に声をかけた。
「祖父ちゃん?」
「●●●。起きたか」
「うん、今日は調子が良くて」
「調子が良くて眠っていたのか……」
「調子が悪いときは寝付くこともできないもの。祖父ちゃん、遊びに来たの?」
「そんなところだな。お前たち兄弟に土産だ。お前にはこれを」
そう言って、祖父はそれを手渡してくる。日焼けした紙で構成された、それは。
「古本?」
「騎士道モノは飽きた、と言われたからね。今度はSFとファンタジー、推理ものをチョイスしてみた」
「それでも古い訳本なんだね」
「古い本、お前も好きだろう?」
「そうだね」
言いながら、手渡された本を開く。幼い頃からの祖父の指導で古書の読み方は憶えた。弟はそれより外で遊んでいたい質なので恐らくサッカーボールでもプレゼントされただろう。そもそも我が家は賀茂氏系統の家柄なので蹴鞠が伝統芸能だ。かくいう俺も野球が好きだけど蹴鞠も会得している。「アリ」「ヤア」「オウ」という独特の掛け声でリフティングするのも慣れたものだ。尤も、それも体調が良いときに限るのだけど。
ぺらり、ぺらりと頁を捲っていく。古書独特の小さな文字にやや四苦八苦しながらも読んでいると、祖父は微笑ましそうに俺を見ている。それに何となく納得できないものを覚えながら、俺は意地悪で問う。
「母さんとは元気?」
「……まぁ、迎え入れてはくれたよ」
「父さんとは……まぁ祖父ちゃんと父さん、謎に仲が良いから心配してないけど」
「立香くん――君のお父さんとはなんとなく喧嘩にならないんだ」
「まあ、喧嘩をされるよりはよほどましだけど。――でもいいの?」
「何がかな」
俺は渡された本を持ち上げながら問う。
「これ、稀覯本でしょ。そう気軽に孫にあげちゃっていいの?」
「お前にあげるために買ったんだよ」
そう言って、祖父は微笑んだ。それで、俺は複雑な気持ちを抱く。
そんなことをしなくても、祖父が自分たち孫を慈しんでくれていることはわかっているのに――
「主、また古書を買い込んだでしょ」
「うっ……しょ、書庫は拡張できるしいいでしょ……」
それから数年後。本丸に審神者として着任した俺は、相変わらず古書収集の趣味はやめられなかった。それで近侍の加州に小言を言われること何十回か。俺が新しく手に入れた古書を書庫の前に置いたところで、加州は彼の腰に手を添えて言う。
「今どき電子図書化されてるでしょ、大抵の本は。そちらを選べばいいのに」
そう言われたとき、俺はどんな顔をしていただろう。微笑んでいればいいな、と思った。
「それもいいんだけどね。これは、『愛情』だから」
「愛情?」
「そう。不器用な愛の形だよ」
了