pixivより転載
――政府本局にて予知されていた、「大侵寇」。政府との連絡が最低限絶たれた数日後、三日月が意味深長に言葉を残し、緊急警報が起きた。それは本丸の結界が侵食されたことを指していた。凄まじい猛攻、それを三日月が誘導して姿を消し――
『全本丸の戦力を上げて作戦に臨め』
名を、大侵寇防人作戦。辛い戦況が予想された。
実際はそんなことはまったくなかったのだが。
「みんな強いねえ」
「ウチも立派なゴリラだよ、主」
緊急事態のために普段の和風テクスチャが剥がされた電子画面。それを操作する審神者はしみじみと感慨にふける。時刻は夜。極の高練度短刀男士部隊を出陣させていた。画面には戦況がリアルタイムで更新されていたが……
「なんであっと言う間に有利になってるんだろうね……あっもう50%」
「俺らひたすら周回してたからね。練度が高いのばっかなんだよ。新人はそうもいかないみたいだけど」
「敵、10億いるって聞いたんだけど……」
「10億どころか50億ぐらい削れそうな勢いだよね。って言うかウチもゴリゴリ削ってるじゃん」
「丁度いいレベリングになるんだよねえ」
加州も有事のため戦闘服だが、実際に戦闘に出ているのは主に短刀男士である。理由は夜戦に強いから。加州が専ら行っているのは小判の管理だ。第2部隊が支援に赴き、第3・第4部隊が遠征で小判を稼いできている。彼らが稼いできた小判の箱を片端からガチャガチャと空けるのが加州の担当だった。作戦がはじまって3日目。敵の波状攻撃は激しいが各本丸はものともしていなかった。おい、本丸に侵攻してきたあのやたら強いのはなんだったんだ、とはとうらぶちゃんねるでの審神者たちの言葉だ。一応これからそういった戦力が来ることも懸念している。
「それはともかく」
とは加州の言だ。彼は先程帰って来た第3部隊の小判箱を開けていた。片目で審神者を見ていた。
「主、ろくに寝てないでしょ。頭が働かなくなるよ。今日はあと俺が引き受けるから……」
「んー、あと3時間したらね」
「ダメ! 今すぐ寝て! って言うかなんでそんなに起きてて平気なわけ?」
「昼間寝てるじゃん」
「そういう問題じゃなくて」
「んー、そうだね」
審神者はモニター越しに第1部隊に弁当を食べるよう指示を出したのち、何気ない様子で言った。
「昔誘拐されたとき、寝そうになる度にボコボコにされるの繰り返しを受けたときよりマシだな。昼間寝られるし」
「また! 闇歴史!!」
加州は小判を畳にたたきつけて叫んだ。それに対し審神者は目を瞬いていた。
「え、これは軽い方じゃない? まあ何よりもきつい拷問だったけど……寝る度に水をバケツでぶっかけられたり気付け薬を嗅がされたり。そもそも骨が折れた痛みで眠れなかったりしたし……失神もさせてもらえないんだよ。あれなら爪を剥がされる方がマシだったかな」
「やめて……聞いてるこっちが精神的にきっつい……」
さめざめと顔を手で覆う加州。彼はすっかり審神者を寝かしつけることを忘れてしまった。
主の闇歴史がまた1ページ……
「主ってどこでも即寝られると思ったけどそういう? そういう理由?」
了