※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

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※コラボネタ有 病弱審神者本丸での何気ない日常の話 少年審神者と加州
pixivより転載


コーヒーブレイク

 本を片手に廊下を歩いていると、厨から物音が聞こえた。ぎゃりぎゃりぎゃり、独特な音だ。

 聞き覚えがなかったので覗き込むと、そこに見慣れた狩衣の少年の後ろ姿があった。

「主、何してんの」

「清光。いたの」

 振り返った幼顔はここの本丸の主だ。審神者である。彼は窓から差す日光を浴びながら、手元で何やら作業している。ガスレンジではケトルがしゅんしゅんと沸いていた。俺は彼の元に歩み寄った。

「なんか音が聞こえたから来たんだけど……何の音?」

「これ? コーヒーミル。さっきサニゾンから届いたから使ってみてるところ」

「こーひーみる……?」

 耳慣れぬ言葉に、プリセットされた知識から引っ張り出す。

「えーと、豆を挽くやつだっけ」

「そう」

「今まで挽いてもらってたの買ってたじゃん」

 俺は把握している。この本丸で出されるコーヒーはインスタントが大半で、拘るモノはそれぞれの給料でレギュラーコーヒーを買ってくる。主は後者で、万屋街の輸入食料品店で粉を買っていた。俺はと言えば典型的な前者。コーヒーの味に拘りはない。そんな俺が主に問うと、彼はハンドルを回しながら答える。

「豆を挽くところからやってみたらもっと美味しくなるかなあって」

「インスタントも最近は美味しいのあるよ」

「それもそうなんだけどさ、言ってなかったっけ? 俺、インスタントコーヒーを飲むと腹を下すんだよ」

「あー……」

 病弱な主らしい話だ。ぎゃりぎゃりぎゃり、音が鳴る。それをぼんやり眺めていた俺は、ふと思い出して手に持っていた本を掲げた。

「そう言えば主、この本借りて良い?」

「どの本? ……ああ、それ」

 主は一瞥して、すぐ手元の作業に戻った。俺は話しかける。

「主、純愛小説なんて読むんだね。本棚で見つけて吃驚しちゃったから思わず持ってきちゃった」

「まあね」

「『ライラックのかほり』なんて、どう見てもロマンスものでしょ」

「あー、ある意味面白いよ。200年前のケータイ小説ってやつなんだけど」

「ふーん」

 そう言って主が豆を挽き終えたのを尻目に、俺は自室に引き取った。

 

 数十分後。

 俺は本を片手に厨に戻って来た。主は端末を片手にキッチンテーブルでコーヒーを飲んでいた。そんな主に、俺は目元に剣を滲ませて本を見せつけた。

「ちょっと主! 内容先に言ってよね!」

「ネタバレになるじゃん」

「下らな過ぎて吃驚したんだけど!」

「ね? ある意味面白かったでしょ」

「ある意味ね! ある意味!」

「それよりコーヒー飲もう」

 そう言って主は、棚から取り出したカップにコーヒーを注いだ。

「清光の分も淹れておいたんだ」

「……有難う」

 なんだか誤魔化された気がしたが、俺は主の厚意を受け取るのだった。

 そんな、日常の挿話。

 

 

 

 

 

了

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