▼このガウェインが50代なのは趣味です。年相応に見た目の落ち着いたガウェインが見たくて…… 一方ここでのランスロットは還暦過ぎてますが見た目40代で全然落ち着いてません
▼最初はただこの審神者と仲良くお話しするぐらいのつもりだったのに、なんかランスロットがするっと出て来て……ガウェランになってしまいました 今作ではこういう設定ですがこれから出す作品にCPの設定が連続しているとは限りません悪しからず 手が滑っただけなので……
▼近侍の後藤が食ってばっかでろくに会話に参入してこないのは、「子どもはたくさん食べなさい」と言う今の主の言葉に忠実に従っている結果です
pixivより転載
以前にもこのようなことがあったと思う。
「―――くん?」
演練場にて、規制音で呼ばれた名。それは主の名だとすぐにわかった。なにせ、呼ばれた主がすぐに振り返ったから。
「今誰か呼んだ?」
「こちらですよ」
穏やかな声がした。男の声だ。見ると、仕立ての良いスーツに目隠し面布をした男がいた。後藤を伴っている。体格が良い。背も高い。目隠しの向こうに見える金髪はところどころに白いものが見えた。ひょっとしてそこそこの年なのだろうか。俺が瞬時にそんなことを考えている間、主は目を瞬きながら――
「ひょっとして、おじさま?」。
「おじさま?」
俺も思わず首を傾げると、男はそっと目隠しを捲り上げた。
コーカソイド系だろうか。恐ろしく顔貌の整った、50代ほどの男だった。どこかで見た気がする。俺は記憶を探り――思い出した。
テレビで観たのだ。
俺は思わず口に出した。
「―――――――さん?」
「お、私をご存知ですか。嬉しいですね。ええと、加州清光殿」
男は爽やかに笑った。五月の風のようだった。
彼の名はガウェイン。日系イギリス人。元サッカー日本代表選手にして監督も務めた男だ。
「主の人脈ってどうなってんの?」
「人脈ってほどじゃないんだけど」
「私は審神者としてはまだまだ弱輩ですので」
とりあえずお茶でも、と言うことで演練場に隣接されている喫茶店に入った。互いの部隊は帰らせ、近侍だけが残った。近侍とは言っても向こうの後藤はまだ極ではないようだ。本当に新人らしい。後藤がショートケーキを夢中で食べている横で、目隠しをしたままの彼――ガウェインは言う。彼は微笑んでいた。主が尋ねる。
「いつから審神者をはじめたの? 監督を辞めたのはニュースで知ってたけど」
「この間の冬からですね」
「じゃー、大変だったでしょ。春の大侵寇」
「正直ゴリr……もとい守護神審神者の方々が凄すぎて引きました」
「なんかごめんねえ」
「……えぇと、菱潟くん。あなたもか」
「8年近くも本丸営んでればね~~いやでもゴリラになるからね~~。それはともかく、審神者名はなんて言うの?」
「『サヨウ』と言います」
答えながら、ガウェインは胸ポケットから万年筆を取り出して紙ナプキンに書きつける。
それには「皐鷹」と書かれた。
「五月の鷹か。おじさまらしくて良いお名前ですね」
それを手に取った主は、それからじっとガウェインを見た。
「……ひょっとして、誰かにつけてもらいました?」
「なぜわかるんですか」
明らかに動揺した様子のガウェインに、主がけらけら笑う。
「あ、やっぱり。おじさまって昔から素直ですよね」
(主が捻くれているのでは?)
「主が捻くれているのでは?」
「そっちの加州、声に出てるぜ」
「清光はあとでお話があるからね。それはともかく、うーん……おじさまにこういう名前をつけるような人……」
主は俺を睨んだのち、ふと考え込むようなしぐさを見せる。そして、「あぁ」と言った。
「もしかしてウチの祖父です?」
「……正解です」
「主のお祖父ちゃんって、あの作家でロクデナシだって言う?」
「そう、そのロクデナシの。女絡みでろくなことがない還暦過ぎてるのにいまだに落ち着かないジジイ」
「あの……一応私の友人でもあるので、あまり悪口は」
「そう? まあじゃあおじさまの前では言わないようにするね」
主も素直である。ガウェインの諫言にすぐに頷いた。しかし俺は気になることがあった。片手を挙げて尋ねる。
「待って、皐鷹さんって50代ぐらいに見えるけど……主のお祖父ちゃんって還暦過ぎてるんじゃなかった? どういう関係で知り合ったの」
「あぁ……簡単な話です。仕事絡みですよ」
言いながらガウェインは紅茶を飲む。
「私がサッカーの現役時代、菱潟くんの祖父君はまだご当主で。私の所属していたチームのスポンサーだったんです。そこから色々と」
「待って。プロサッカーチームのスポンサーになれるほど主の家って大企業だったの? ただの普通の自営業だと思ってた」
「大企業ってほどじゃないよ。無暗に古くはあるけど」
「創業いつ?」
「えーっと……江戸時代で商売やってる人の店構えができはじめたのっていつだっけ? それの初期ぐらいだったかな」
「メチャクチャ老舗じゃん」
「そう言われればそうだね」
「……仲が良いですね」
ふと、言葉が挟まれる。見ると、言い合っていた俺と主を、ガウェインは微笑ましそうに見ていた。特に見ていたのは主のことだろう。それに、ふと俺は違和感を覚える。
まるで、主を通して誰かを見ているようだ。
主は「そりゃ8年付き合い近いだからね」と何の気もなしに言う。
「それを言うならもう30年ぐらいの付き合いになる祖父ちゃんとおじさまも『仲良し』でしょ」
「……そうだね。仲が良い、ね。友人として」
ガウェインは口元に笑みを刷いていた。目は見えない。あの、鮮やかな緑色の双眸が。
それでもなんとなく伝わった。
(なるほど。友人以上の関係になれず、30年……か)
「ところでおじさま、あなた、もうサッカーに携わらなくていいの? 審神者なんてサッカーと程遠いよ」
唐突に話題を変えた主に、ガウェインは笑う。今度は苦笑と言われるものだったと思う。
「そこはね、もう大丈夫。今の日本のサッカー界に、私は必要ないよ」
「なるほど。それで、必要とされたから審神者に」
「そんなところです」
「――ウチの祖父と逢いにくくなりますよ。近侍をつけなきゃいけませんし」
前言撤回。話題は変わっていなかった。ところで後藤は先程からずっとケーキを食べている。先程お代わりをしていた。半熟ケーキなるものらしい。それをもむもむと食べる後藤の隣で、ガウェインは指を組んで言った。
「私は、必要とされる場所で必要とされたい。それだけですよ」
「――まあ、俺がとやかく言う資格はないですね。さて、そろそろ帰りましょうか。そちらの後藤も食べ終わったみたいだし」
言いながら主は、ガウェインが手を伸ばすより先に伝票を手に取った。そしてウィンクする。妙に堂に入った仕草だった。そう言えばこういうあざとい仕草が得意だったな……と俺が思っていると、主は言った。
「ここは先輩審神者の顔を立てて頂戴。こう見えても稼ぎはそこらの成人男性より多いからね」
「……出世払いということにしておきます。ごちそうさまです」
胸に手を当てて軽く一礼する。ガウェインのその礼も堂に入っていて、まるで騎士のそれだなと俺は思うのだった。実際にガウェインのイギリスの方の家が爵位を授かっていると知るのはあとのことだ。
演練場から本丸へ戻る。その道すがら、俺は主を見上げた。
「主ってさ」
「何?」
「気付いてるよね?」
「ああ……」
主は白くて丸い頭を掻きながら答えた。
「おじさまも、男の趣味が悪いよねえ……」
それ以上は、主は口にしなかった。
LINEグループ:祖父と上の孫
祖父:●●●
祖父:最近ガウェインから連絡が来ないのだが、何か知らないか
上の孫:そう思うなら祖父ちゃんから連絡すればいいじゃん……
上の孫:おじさま今忙しいんだよ
上の孫:祖父ちゃんから連絡したらおじさまも喜ぶよ
祖父:喜ぶ? あぁ、私が友人だからか
上の孫:そういうところなんだよなあ
了