※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

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歴史遡行軍との戦の敗北エンドif。
▼大侵寇のとき政府おさえられかけたんだからあれで普通敗北ルートだよなと思った
pixivより転載


【おてさに♂】「終戦です。政府軍は敗北しました。繰り返します。政府軍は敗北しました」

 いつかこうなる気はしていたのだ。

「みんな。我々の敗北だ」

 大広間にて、そう告げる。自分でも穏やかな声だったと思う。そして、それに対する刀剣男士たちの反応も穏やかなものだった。――わかっていたことだ。戦況が酷かったことは。傍らのこんのすけは沈黙している。今頃彼と繋がっている政府が押さえられているところだろう。彼の口からは降伏を告げる言葉しか出ない。

 俺は、淡々と告げた。

「今から24時間後にすべての本丸は解体される。我々は皆この本丸でこの生を終える。各々、この本丸の中で悔いのないように残りの時間を過ごすように」

「待った、大将」

 手を挙げたのは薬研だ。彼を見ると、薬研は紫紺の目でこちらを見詰めていた。真摯な眼差しだった。

「俺たちに否やはない。だが大将、あんたは人間だろ。あんたは――」

「薬研」

 俺は言の葉を遮った。黙り込む薬研。彼に、俺は微笑んだ。

「現場の司令官を解放してくれるほど、向こうは甘くないんだ」

 沈黙する皆。俺は「それじゃ、解散」と手を打った。それで、この本丸は終わりを告げたのだ。

 

「あんた、他に言うことはなかったのか」

 声が降ってくる。聞き馴染んだ声だ。俺は湯飲みを持ったまま、顔を上げた。

 そこには御手杵がいた。今までなら本丸にいるときは内番着か軽装だった彼は、今は戦闘着だった。彼なりの気持ちなのだろう。彼が来るだろうことは予想していた俺は、あらかじめ用意していたもうひとつの湯飲みを差し出す。縁側に座った彼は、それを受け取った。一口すすってから彼は言う。

「主。あんた、まだ将来があっただろ。少しぐらい悲嘆してくれたって俺たちは構わなかったぜ」

「だろうね。お前ら刀剣男士は優しいから」

 栗饅頭を齧る。甘さの程よいそれは常日頃から贔屓にしていた店のものだ。

 最期だから、日常を感じるものがいい。

 俺は言う。

「でもね、俺は自分に対して期待してない。とっくに諦めてる。寧ろ悔いているのは、お前らに感謝の気持ちも謝罪の気持ちも示せなかったことだ」

「……」

「だって、俺はきっと時間いっぱいまでどちらも口にするだろうから」

「……そうか。でも、俺たちは本霊に還る。あんたは生まれ変わるだろ」

「どうかな。俺は魂ごと修正される気がするよ。それだけのことをしてきた。そしてきっとそれは俺じゃない。――生まれ変われても、きっと今よりずっと酷い戦乱状態だ」

 怪訝そうな御手杵に、俺は言う。

「10億もの軍勢が、『歴史を変えたい』その一念だけで我々政府軍と戦ってきた。でも、今こうして政府軍を倒してしまった。これからどうなると思う? たとえばAを生かせばBが死ぬ、Aが死ねばBが生きる、そんな勢力同士がぶつかりあったりしたら……」

「……相当な内ゲバになるだろうな」

「そして結局、人類は衰退の一途を辿るだろうね。何もかもがわやくちゃだ。そんな世界で俺は生きていける自信がないんだ。だから、ここで魂ごとすっぱり消えてしまった方がいい」

「でも」

 御手杵は言う。湯飲みを片手に、俺を見詰めていた。

「それでも、俺たちは……俺は、あんたがまた生まれてくることを祈ってるよ」

「……優しいのに残酷だね」

「神なんてそんなもんだろ。で、それで?」

「それでって」

 御手杵は尋ねて来た。

「あんたの本当の本音は?」

 俺は一瞬、言葉に詰まった。

 けれど、もう時間がなかったから。俺はすぐに口にした。

「……もう、誰も傷付けなくていいんだなって。そう思うよ」

「そっか。よかったな」

「それにごめんね御手杵。勝たせてあげられなくて」

「いいんだよ」

 御手杵は、笑った。

「あんたの下で戦えたのが、最大の誉だ」

「……有難う」

 どちらともなく黙り込む。茶を啜った。息を吐く。

「ああ。良いお茶だ。最期に相応しい」

 

「時間です」

 

 ごとり。

 2つの湯飲みが地面に落ちる。まだ中身の残っていたそれは、緑色の液体を撒き散らして、やがて動きを止めた。

 そして誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

了

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