pixivより転載
このところ、この本丸は忙しかった。
文久土佐の再調査と言う名の討伐……それだけならまだよかったが、加えウチの本丸には政府からの依頼が立て続けに3件来たし、それらの報告書を上げなければならなかった。
主は案件にすべて現場の指揮官として参戦したし、俺たち刀剣男士からの報告を聞いてまとめ上げるのも主だ。言っておくが主は無暗に打たれ強いが病弱な、ただの人間である。俺たちと違って函館に3回ほど行って疲労回復なんて真似はできないし、俺たちが食べている疲労回復アイテムの団子や弁当は人間にとってはただのカロリーだ。手入れだってできない。23世紀の医療は素晴らしいが、それでも人を不死には至らせていないのだ。アスクレピオスの再現とはいかない。
――そういうわけで、今は主を労うためにお茶を持って行くところだ。コーヒーとバウムクーヘンだ。前者は俺が主の見様見真似でミルから豆を挽いてドリップしたもので、後者はもらいものだ。政府の組織犯罪対策部の人が、3件立て続けに依頼を解決したウチの主を見かねたようで、「これ美味しいやつだから」と先程贈ってきてくれたのだった。数が少ないので俺と主で消費してしまうつもりだ。なので包丁に見つからないよう細心の注意を払っている。
そして今、俺は執務室の前に辿り着いた。打ち上げ花火が見られる景趣も、今はただの昼間だ。キーボードを打つ淀みないタイプ音。俺はそっと覗き込んだ。主が真面目な顔でホロモニターに向かっている。ちゃぶ台なのは相変わらずだが、本人が仕事をしやすいのだからこれでいいのだろう。そう思いながら、俺は声をかけた。
「主、お茶にしよう」
「へあっ」
途端、反射だろうか。主が立ち上がった。多分、立ち上がろうとしたのだろう。しかしそれは失敗した。
主はつんのめった。ちゃぶ台に向かって前のめりに突っ込んだ。
キーボードを弾き飛ばし、ホロモニターに頭から突っ込む。
……ジジジッ、ホロモニターが歪む。ちゃぶ台に突っ伏す主。彼はやがてのっそりと頭を上げた。
「……何かな? 清光」
こんな場面を見せてもなお挽回できると思っているのだろうか。
俺は溜息交じりに言った。
「主、お昼寝しようか」
「10分後に起こしてくれる?」
「駄目。30分は寝て。あと今日はもう仕事終わり! 休もう! これダメだよ!」
「えっ片付けておきたい仕事が」
「だーめだーめ! とりあえずお茶にしよう! 美味しいから!!」
俺はとりあえずちゃぶ台に盆を置くと、主の体を抱えて座椅子に座らせるのだった。
このあと主は健やかに昼寝をし、夕餉を摂ったのち風呂に入り健やかに眠り、次の日はつんのめることはなかった。
ただし鍛刀キャンペーンがはじまったので俺たちは遠征に駆り出されることになる。
了