※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

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※焼失ネタ有、主×刀(×主)でお腐り、少しだけ他刀剣男士同士CP要素有 初期刀清光と、顔色の悪い審神者の話。ここの清光と審神者は家族ぐらいの仲良しさん。ハグぐらいは普通にする。
▼ついったーで呟いたのを元にした短めの話。うちの審神者と御手杵の関係が発展しないという事を出来るだけ端的に表したかったブツです。審神者が病み気味。
▼受攻定まってない関係ですがひとまずこれはさにおてっぽいかな?? という事でどちらかといえばさにおてです。個人的にとうらぶの御手杵はこういう奴だと思ってます。
▼沖田氏の剣術は「斬る」より「突く」方が得意だったとかと小耳に挟んで(安定や清光の刀身もそれに見合った形状なんでしたっけ)
お題は「晩霞」(http://www11.plala.or.jp/harutake/banka/banka_top.html)より。


だからうちのさにおてさには進展しない【男審神者×刀】

「わかってた筈なんだけどね。ああいう奴だって、わかってた筈なんだ。その上で、いや、だから惚れた筈なんだ」

 

 その時、加州が思わず声をかけたのは、それだけその時の審神者が悲愴な顔をしていたからだった。明るい日差し、温かな庭。その中で、ただでさえ白い顔が青くなっていた。縁側に座り込んでいた彼の手を包むように握れば、その手は冷たい。それだけ、緊張するような事があったのだろうか。加州が問えば、審神者は、おずおずと言い出した。

「御手杵と、さっき、話してて」

 予想はしていた名だった。それに一瞬溜息を吐きそうになり、気道を引き締めた。この幼い審神者は、若いなりに生まれる時代を誤っていると思わせる程の采配を自分達に見せる。平等な気配りを欠かさない、所謂「ホワイト」でいえば花丸の主だ。ただ1点、彼もまだ幼い。同性婚と同性間の子作りを可能とする23世紀の日本で、元よりバイセクシュアルだという審神者は、一振りの刀剣に思慕した。その名を御手杵という。

(三日月さんとか、いつも連んでる鶴丸さんとかならわかるけど。何で御手杵なんだろーな)

 冷たいままの手を握ってやりながら、加州は何度も思った事を繰り返す。脳裏に浮かぶのは、本丸ではぼんやりとした印象の槍男士の姿だ。天下三名槍の御手杵。その名に恥じず、戦の時はこれ以上なく頼もしい存在だ。この本丸で蜻蛉切に先んじてやって来た彼は、今ではこの本丸で最高練度を誇る。

 初期刀の加州が気付かぬうちに、審神者は彼に恋をしていた。それに気付いたのは、御手杵がやって来てからやけに刀剣男士同士が衆道の関係を結びはじめた頃だった。それが特に、御手杵と親しい者、御手杵と関わりのある者を引き離すような形であると気づき、問い質せば、存外素直に白状した。御手杵に思慕しているからだ、と。

 それに戦慄を覚えなかったかといえば、嘘になる。

(好きな奴の周りから確実に恋愛対象になりそうな奴を排除していってる。しかも士気を下げない形で。それも、ただ御手杵を取られたくないからと、少しでも関わりのある奴は片っ端から。……これだから頭の回る人は怖い)

 だが、結局、肝心の本命に愛情表現をするかと思えば、その進捗は蝸牛の如し。ぎこちない態度の為に、御手杵には「嫌われてるのかな」といわれた事もあった始末だ。このところは、漸く面と向かって話をする機会が増えたようだけれども――その矢先のこの事態に、再度溜息が漏れそうになる。それを堪えながらも答えを待っていると、審神者は、震える唇で言葉を続けた。

「何て事はない、世間話だったんだけどさ。その中で、ふっと、さ。俺が、お前らを戦いに出したくないっていう話をしたんだよ」

「……俺ら刀剣のアイデンティティの否定になるからって、いつも結局自分で結論づけてる話じゃん。それ」

 手を握ったまま、顔を覗き込む。相変わらず顔色は白い。だが青さは少しだけ引いてきた。目の焦点は手に絞られている。それを眺めながら、少しだけ嬉しさを覚える。戦いに出したくない、それがこの若い審神者の1番の自分達への愛情表現なのだと、最初の近侍である加州は理解していたからだ。ただ、それが少しだけ危うさにつながる事も、彼は気付いていたが――

「……ひいては、御手杵。お前は特に出したくないって」

「それ、御手杵が怒らなかった」

「怒らなかったよ。飾り物には慣れてるけど、折角ここでは1番強いんだし出せるうちは出してくれよ、とはいわれたけど」

「だろうね」

 いいそうな事ではある。今度こそ溜息を吐いて、加州は頭を振った。どこからか短刀達の高い声が響いた。

 自分達、他の刀剣男士達に対してさえ、「大事だからしまっておきたい」と発想するこの審神者だ。それが恋愛対象となればどうなるか。思考を深めれば、それが囲い込みの発想に至る事は想像に容易い。それでなくとも、御手杵はそれに「慣れている」槍だ。武器としての時間の大半を、飾られる事で過ごしてきた――そして、最期は。

 だから、血の気の多い刀剣の中でも、戦となれば人の変わる刀剣男士なのだ。御手杵は。そんな事をいわれて怒らなかったのは、偏に良家で長い時間を過ごしてきた為に培われた気の良さか。もし同田貫がいわれていたら抜刀していたかも知れない。長谷部など怒鳴っていたやも知れない(ただでさえここの長谷部は、審神者におちょくられてばかりなのだ)。想像する加州に、審神者はほんの少しだけ口の端を釣り上げた。眼を細める。

「わかってるよ。俺はあいつを頼りにしてる。普段のあの柔らかい態度と、戦の時の凛々しさに落とされたんだ。自分でも吃驚する程。大事にしまっておきたいっていう気持ちも強い。でも、御手杵に対しては、戦っている姿が格好良くて、ずっとそうしていて欲しいっていうのもある。下らない独占欲だよ。自分でもどうしようもない……」

 尻すぼみに紡がれていった言葉は、彼にしては珍しい弱音だった。加州は少しだけ体温の戻ってきた手を握りながら、自分が今、人の身体を得ている事に感謝した。そうでなければ、この弱っている審神者を労ってやる事は出来なかっただろう。そして、同時に悔しさも覚える。嘗ての主だった青年の剣術も「突き」が特徴だったが、御手杵はそれに特化した槍だ。それで敵を蹴散らしていく様は、共に出陣していると、審神者を魅了するのにも納得してしまうと同時に嫉妬も抱く。純粋な、武器としての嫉妬だ。勿論、彼に出来ない事もある。この審神者は、御手杵以外の刀剣達のそれらを引き出す事に余念がない。御手杵さえ絡まなければ、良い主だと加州は思う。優しすぎると、時に思うのだけれど。何かと囲いたがるその気質は、完璧主義者の優しさだ。普段は三日月にも通じる程に泰然としている審神者をここまでかき乱し、普段は露呈しないその気質を引き出す御手杵が、加州には少しばかり恐ろしいものに思えた。審神者の手を温めてやるつもりが、自身の体温の降下も自覚しはじめた時。審神者は、平板な声で、いった。

「それに、無意味だろって」

 顔を上げる。審神者のつむじが見えた。彼は、加州に手を握られたまま。日向の中で、ぽつり、つぶやきはじめた。

「御手杵が、いったんだ」

「無意味って」

「そのままの意味だって、御手杵はいってた」

 握った手が、堅い。陸奥守に剣を指導されて鍛えられてきたとはいえ、今は別種の硬さが、そこにあった。審神者は、言葉を続けた。

「『あんたは、俺がここにいれば大丈夫っていうけど。俺がしまわれていた蔵も、あの時は崩れちまうなんて誰も思わなかったんだよなぁ』、って」

 

 団子を頬張る。その傍らで溜息を吐いた。同田貫は片膝に足を乗せたまま、怪訝そうに友人を見上げる。

「主の考えがよくわからない、だぁ?」

「事実をいったまでなんだけどさぁ。主、あの時、顔が強張ったんだよな」

 御手杵は、皿に載ったそれを1本だけ手に取りながら顔を顰める。思い出すのは、最近になって漸く目線が合うようになった審神者の顔だ。まだ年若い少年の審神者は、どうやら自分を随分と慕ってくれているらしいとは最近になって漸く気付いた。今日も、何とか会話が続いた方だと思う――しかし、その途中で出された話題に答えた時。審神者が見せた表情が、御手杵には忘れられない。

 大事に仕舞われていても、全てには終わりが来る。200年以上、大事に仕舞われてきた自分が迎えてきた最期。自身の満足のいく程には戦に用いられなかった自分が迎えたあの日は、あまりに呆気なかった。

 そんなものなのだ。自分というものは。「御手杵」という武器は。

 この本丸に来てから友誼を得た同田貫と同じ姿勢を取る。長い手足は持て余し気味だ。戦では自身の本体を振るうに便利なこれも、日常生活では邪魔っ気だ。そんな自身が、戦う時も含めて全てが良いという審神者が「あんな顔」をした理由が、今の御手杵には理解できない。再び息を吐いた。

「戦わせてくれるし、存分に力をつけさせてくれる。良い主だから、あんな顔はさせたくないんだけど。人だってどこにいたって必ず死ぬんだから、俺らがどこにいてもいなくなるのも当たり前なのにな」

「……」

 隣の同田貫が答えない。ただ、感じる空気が、何とはなしに御手杵を落ち着かせなくさせた。多分、恐らく、自身の分が悪い事態なのだろう。そんな事を、御手杵は思った。

 それもそうだろう。あんな、「怯えた」ような顔をさせたのは、恐らく自分なのだから。

 

夢見ることすら許されず

 

 

 幼子を抱きしめるように、背に手を回した。最近、成長期を迎えてきたらしい審神者の体つきは、風邪をよくひいていた頃よりも少し厚くなっていた。涙をこぼしそうになっていた審神者を抱きしめてやる。それでも、かえせる言葉はなかった。御手杵の言葉は、事実だ。真実だ。真理でさえあるのだ。それでも、まだこの年若い少年に突きつけるには残酷なように、加州には思えた。人気のないそこで、審神者は震える声でいった。体は冷たかった。

「知ってた。わかってたんだよ。御手杵が、そういう最期を迎えていた事ぐらい。それでも、何でもないように平気でいっちゃう御手杵に、何もいえなくて。でも、やっぱり御手杵が好きなんだよ。怖いから、好きなんだよ」

 ここにはいない彼の槍に向けられた睦言。しかし、それは悲愴の色に彩られていた。

 

 

 

 

End.

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