pixivより転載
刀剣男士の作る料理は美味しい。特に料理上手の刀剣男士の番に当たると舌が喜ぶのを感じる。
それはそれとして、ジャンクフードは食べたいのだ。
「みっそらーめん、みっそらーめん」
口中で歌いながら、片手に袋ラーメン。私室に1番近い給湯室にこっそり入り込む。電灯を点けると、ぼう……と光が拡がった。誰もいない。深夜2時だから当然だろう。夜警の刀剣男士の目も潜り抜けて来た。抜かりはない。
冷蔵庫を開く。ここは主に料理が作られる厨ではなく給湯室だが、目当ての食材は……あった。ベーコンとキャベツ、長ネギ、もやし、卵。バターと味噌、大蒜チューブ。乾燥わかめとみりんとごま油、焼きのりは棚の方だろうか。皿と箸と手鍋、メジャーカップを取り出す。
皿に水を入れ、卵を割り入れる。黄身を菜箸で突いてラップをかけ、電子レンジへ。温める間にさくさくとベーコンとキャベツを切る。もやしは手早く洗った。手鍋にごま油を敷いて火を点け、切った食材と洗った食材を投入。炒めること、しばし。電子レンジの方で軽く爆発する音がした。振り返り、電子レンジが喚き散らす前に、「ぴ」の時点で扉を開く。ややラップがよれたが、卵はちゃんと半熟で固まっていた。それを取り出しつつ、手鍋のことを思い出す。そろそろ頃合いだ。
バターを景気よく切って入れる。味噌とみりんもちょっとずつ投入。それからメジャーカップで500mlの水を。
沸騰するまでに乾燥ワカメと長ネギを投入。その間にキッチンタイマーを準備しておく。2分30秒が俺の好みだ。……湯が沸騰した。
ここで登場、俺のとっとき、袋ラーメン(味噌味)! 乾麺を投入しタイマーを仕掛ける。内包されていた調味料をラーメンどんぶりに入れる。ぐらぐらぐら、鍋が煮える。菜箸で麺を解しながら、手元のタイマーを睨む。
――1秒。そこでタイマーのボタンを押した。火を止める。
手鍋を持ち、ラーメンどんぶりに汁を入れる。菜箸で手早く調味料を溶かし、中身を入れる。
卵を皿から入れ、のりを折り切って飾る。コショウを適量。俺はにやりと笑い、テーブルにラーメンを置く。抽斗から適当に箸を取る。割り合い無神経な俺が主のためか、この本丸は誰がどの箸や皿、コップを使っても気にしないものがほとんどだ。俺は椅子に座り、手をそろえる。
「いただきまー」
「主」
「ヒョッ」
低められた声がした。
給湯室の入り口に、小柄な影――平野がそこにいた。俺が目を掻い潜って来たはずの刀剣男士である。今夜の夜警だ。
「深夜ラーメンとはいい御身分ですね」
「ヒョエエ……平野、よく気付いたね……」
「僕が夜警部屋から戻ってきたらあなたの気配が消えていたので。……夕食は存分に召し上がっていたでしょう。そんなに空腹なんですか」
「ままま、平野、お前も食べよう。今器に盛るから」
ガタガタと席を立ちながら俺はなんとか茶を濁そうとする。濁すにも既に現場を目撃された事実に変わりはないのだけど。小さめの器に新しい箸でラーメンの1部を盛りながら差し出すと、平野は諦めた様子で溜息を吐いた。そして席に着く。
「このことは清光さんに報告させてもらいますからね」
「容赦ないね……」
「あ、でも美味しい。深夜に食べるにはあまりに罪深い味がしますが」
「油マシマシだからねえ。ベーコンもチャーシュー代わりに入れたし。野菜も入れたよ!」
「でも深夜ラーメンの罪は深いですよ」
「ヒイン……」
顔を顰めながらも、お互いにラーメンをすする手は止めない。伸びてしまうからだ。
やがて俺が先に、平野があとから皿を空にしたところで、俺は言い訳をする。
「でもさ、俺眠気が覚めちゃったからラーメン食べたわけで。そうしょっちゅう食べてるわけじゃ」
「眠気とラーメンに相互関係は……」
「いや、俺の場合はある」
俺はごく真面目に顔を作った。平野の皿と箸を受け取り、シンクに置きながら。
「深夜にラーメンを食べるとすごく眠くなるんだよね」
「それ絶対身体に悪いですよ」
「あ、もう眠い。今皿洗っちゃうから拭くの任せていい?」
「主、今後深夜ラーメンは禁止です」
「そんなー」
そんな、深夜の一幕。
了