▼書いてから思ったけど真剣と模造刀で鍔迫り合いって出来るんだろうか 多分真剣に匹敵するお高い模造刀なんじゃないかな……
▼うちの博多君は作中同様なぜか異様に攻撃系の刀装を作るのがうまいです。Why。いつも特上の投石兵や弓兵や銃兵を有難う、はかたん 6-2とKBC狩りでいつも割っちゃうけど
▼姉審神者が「ほたるん来ない」と嘆いているので、来派がちょこっと。三日月は来たそうです。最初の方で活躍している3名は実際に我が部隊で活躍してくれた3名です。90階以下は彼らが欠かせませんでした。有難う……有難う…… 6-2はまずボスマスに到達できない(体力的な意味で)のでまずそこまでレベリングしている最中なので、国行さん祈願でもあります
▼資材マスに関してはうっすら艦/こ/れ/z/e/r/o(某方の支部内二次創作漫画)が意識しささってるかも知れません……
▼作中の携行食は自A隊のレーション参考。金平糖なら長谷部のテンションも上がるかなと(信長公が好きだったんでしたっけ甘いの)。
蛍丸が、刀身三尺を超える刀身を振るう。三口が屠られた。
御手杵がゆうに1mを超す穂を突き出す。刀装という名の形代を無視し、敵の槍を屠った。
岩融が三尺五寸の刃を持つ薙刀を振るう。残っていた敵が悉く屠られた。
それで、一戦が大体終わるのだ。明石は呆れ、太刀を鞘にしまう。次の場は、前例に倣えば小判か資材を確保できるところの筈だった。そこに向けて歩き出しながら、懐から全員分の軽食を取り出しつつ、彼は辺りを見渡した。隣から弟分達が声をかけてくる。彼らの頭を撫でてやりながら、「いやなぁ」と呟いた。
薄暗い、しかし最低限の灯りはある。夜目が利かぬ太刀の明石としては助かるところだ。松明が壁に飾られていた。いつに灯されたのか、火種は尽きる事はないのか、煌々と広大な廊下を照らし続けるその炎は地下に潜ってから同じ形状のものをいくつも見続けた。既に50階から下って久しい。自分達刀剣男士は極限の環境下でも行動できる。金属という本来の性質の為にどちらかといえば極端な熱と温度差に弱いが。しかし、火が燃えているという事は酸素はあるようだ。話によればここは100階まであるという。そして100階まで下っても灯りは要らないというのだから、話が可笑しいのはわかっていた。
案の定、次の空けた場所は資材が無造作に転がっていた。松明の明かりに木箱が照らされている。他の戦域や時代でも同様だが、時に自分達の戦場には、導かれた先で刀剣男士や歴史修正主義者を構成する物質が転がっている。単純にそれそのものではなく、刀を作成する際に必要とするもの。ひょっとしたらそこで待ちかまえていた歴史修正主義者、もしくは別の部隊の刀剣男士がなにがしかの理由で解体された結果に、半端に残されたものかも知れない。何せ、顕現されなかった刀剣が解体される際、玉鋼はともかく冷却水や砥石なども出て来るので。尤も、時に札まで落ちているから、果たして解体されたとしたら「どちら」の話なのかはわからないが――比較的最近配属された明石は、「ほな、一旦軽く休憩しまひょか」と皆を呼び集める。この階での部隊長は明石だ。長谷部などは先に進みたがったが、「主に持たされたもんやで」と告げると舌打ちせんばかりにその場に座り込む。どうやらここの審神者とは平均的な主従関係にはないらしいが、主命にはとかく忠実な男だ。見張りの為に自身と岩融、御手杵が刀を抜いたまま立っていると、先に金平糖と乾パンを食べ出しながらも、弟達が問うてくる。
「それで、どーしたんだよ。国行」
「何か変なのでも見つけた」
「何だ、不審な点があるなら即座に」
「んー、不審っちゃー、不審やな。この戦場自体が」
いいながら、岩融と御手杵の間に挟まれた明石が天井を見上げる。隙なく、自身の本体を構えたまま。
壁の篝火が明るい。しかし、照らすのは精々、高さは3mがいいところか。天井はどこまでも高く、御手杵が自身の槍の柄の先を持って振り回したって大丈夫だろう。高さに比ぶべくもないが、道幅だって広い。片側の篝火を頼って腰掛けると、反対側の篝火が随分と遠い。下った時の階段もそれなりに長かったが、光の届かぬ程に高いこの天井に相当するものだっただろうか。1度制圧した階は、階段から本丸へと戻れ、そしてそこを特異点として再び戦いに来られるという空間移動技術を持つ自分達には無粋な指摘かも知れなかったが、それにしても。長谷部の足下に寄せられた、この場に落ちていた小判箱。それらを目にしながら、明石は呟いた。
「この大阪城の地下。火が燃えとるっちゅー事は酸素があるちゅー事や。こんな地下深くまで火がぼーぼー燃えてて俺らも息がしやすいって事は空気孔が繋がっとるっちゅー事やな。もしかしたら、どこかに酸素を供給する設備でもあるんかもしぃひん。ただ、俺らには酸素はいらん。っちゅー事は、こんなところにまで本当はヒトがおったっちゅー事やな」
「ヒトって」
「金のにおいがするわぁ。それも、とーっても使いやすい金のにおいがな」
悪銭身につかず、とは誰がいったか。そんな事を嘯く太刀男士を、周囲が見詰める。特に、長谷部は金平糖を頬張りながらも、思案げな様子だった。
「という事を明石国行がいっていたのですが」
「うん、とりあえずこの鍔迫り合いをやめようか。これ模造刀だから俺しんじゃうから脳天へし切られちゃうから。帰投してそうそう布団が何枚もお前の頭に落ちてきたっていうのは俺の悪戯じゃないから干してたのが風で吹っ飛んだだけだから!!」
口調は慇懃、態度は殺気満々。執務室にて打刀(真剣)と打刀(模造刀)の鍔迫り合い。片や真顔の長谷部が涼しい顔で、片や冷や汗を掻いた狩衣の少年がまくし立てる。その言い訳が通じたのか、「冗談はさておき」と不意に刀を引っ込める。蹌踉けた長谷部に「お前もいい性格になったねえ」と、審神者は座布団に座った。模造刀を鞘に収めると、床の間に戻しながら「それで」と長谷部にも席を勧める。審神者がホログラムのモニターを消して、卓袱台に向かった。その向かいに、自分の刀も収めた長谷部も座る。これらはいつもの応酬である。いつもと異なるのは、今回彼が本丸で被った害が審神者の手の込んだ悪戯ではなく、長谷部はまた審神者に尋ねたい事があっての為だった。
大阪城帰り、軽い傷で済んだ長谷部は他の者に手入れを譲った。気遣いもそうだが、道中、最近入って来た新入りの発言が気に掛かっていたのだ。審神者が手ずから淹れてくれた茶を啜る。出された金平糖は、携行食として持たされたものより大粒だ。それらにひっそりと浮かれつつも、優先すべきは胸中の靄だった。一粒囓ると甘味が口中で弾ける。苦い茶をすすってのち、長谷部は向かいで同様に茶をすする審神者に問うた。
「俺達が攻めているのは、『嘗ての』大阪城との事でした。でも、具体的にいつの時代なのですか、俺達が送り込まれているのは」
「少なくとも、『大阪城』が存在した時代だろうね。……茶化してるんじゃないよ。直ぐ殺気放つのやめて、21世紀前後の若者じゃないんだから。俺がいえるのは、『さか』の字から判断するに幕末以前じゃないかって事だけだよ。明治ぐらいに土偏の大坂から阜偏の大阪になったらしいから」
湯飲みを片手に、審神者は頬杖を突く。行儀が悪かったが、それを指摘できる雰囲気ではない。気怠げな様子はどこか明石と似ていたが、この若いというより幼い審神者は意外と勤勉だ。恐らく今日の仕事は全て終わらせているだろう。一仕事を終えた、という呈の審神者は、目尻を掻きながら遠くを見遣る。開け放たれた障子、庭を眺めていた。暦の上ではそろそろ夏である。
「聴いた話によると、大坂の役の前かも知れない。ひょっとしたら燃える前の一期一振達もいたかも知れない。でも、実のところ、これらは審神者同士で交わされた情報で正確ではない。今回の期間を限定されたこの任務について、具体的には政府から通達されてないんだ。ただ、調査してこいって」
「そんなところに俺達を放り込んだと」
「俺もそう思ったよ。でも、こんのすけも戸惑いながらもいいきったんだ。『結局は、やる事はいつもと変わらない』って。実際、前に政府から支給されたお守りが発動する事もなかったでしょ。刀装は物凄い剥がされてるけど」
現在、50階で回収された、長谷部の古なじみでもある博多が行っているのは専ら刀装作りだ。専用の部屋でもりもりと攻撃をする刀装を作っている。本来は刀装という名の形代であり役割は「お守り」と変わらないのだが、なぜかこの部隊に拾われてきた博多は、攻撃をする形代の投石兵や弓兵などを作るのがうまく、遠征に出される他では刀装作りに駆り出されていた。その為もあり、玉鋼の減少速度は常の倍だ。池田屋方面で出て来る槍のように、愛染よりも速い槍の為に長谷部も後ほど手入れに入らなければならず、その際の玉鋼も少なくない。「どうせ回収してこられるなら小判より玉鋼がいい」とは、兵站の偏りを見た審神者の嘆きだ。実際、回収してきた小判の役割というのは、とても少ない。精々、本丸の環境改善に使われるぐらいだ。士気の高揚にはなるものの、長谷部としては審神者の叫んだ嘆きには同調せざるを得ない。それでもきっちり回収はしてくるが。肩を竦める審神者は、桃色の金平糖を口に放った。音を立てて囓る。笑い含んだ。
「まあ、明石の不審の念も当たり前だね。俺も部隊長に持たせた式神を通して見てきたけど、薄暗いけど篝火はあるし道はそれなりに舗装されてる。天井も道幅も広い。政府も索敵した上で俺達をやったんだろうけど、明らかに人の手が入っている。俺としては政府があの大きな設備を『閉じた』あと、どう扱うかが気になるね」
「どう、とは」
「長谷部。今もポケットに入れっぱなしでしょ、持ってきた小判。ちょっと貸して」
「あ、はい」
いわれて思い出す。拾った小判のうち、帰投する際に部隊の6人で分けて持ち帰った。小判とは重いものなのだ。衣服に詰めていたそれを慌てて取り出し、差し出す。審神者のもう片方の手には、以前、遠征の報酬で他の部隊が持ってきた小判があった。
こうして比べると、全く同じものに見える。純金の――そう、あまりに純度の高い小判だ。同じ「金属」の身として、それがわかる。それらを見比べ、手に持ちながら、審神者は苦笑する。
「……本当に、どっちも見事な鋳造技術だ。さて、長谷部。今、お前はこっちの小判をどこから持ち帰ってきたかな」
「大阪城、ですが」
「何で『ヒトのいない場所』に、こんなものがあるんだろうね。それも、部隊で使われる小判と寸分違わぬ形と品質だ。超高純度、99%越えはお墨付きだ。さて、何でそんなものが必要なのか。そもそも、あそこで敵対する『ジパング貴金属回収部隊』とやらは、俺達が普段敵対している歴史修正主義者に相当するのかな」
「――」
「まあ、思想ではなく、利益……過去から貴金属を奪う事によって後々の歴史を歪めてしまう行為も、『歴史修正』に当たるのかも知れないけどね。政府的には」
息を飲む。長谷部は、昼下がりの明るさの元、鈍く光る小判の2枚を交互に見遣った。印の施されていないそれは、しかし形状は確かに自身の知っている「小判」だ。だが、自分が知るものよりも、遙かに高純度だ。
さて、過去にこれだけの純度で作られた小判があったのだろうか。それは相当限られているだろう。長谷部は恐る恐ると尋ねた。
「……主は、俺達が今回収している小判が、どこからか奪われてきたものだと」
「うーん、正確にはちょっと違う」
「そういってるじゃないですか」
「政府としては、単純に回収させてるだけだよ俺らに。地下100階まで下って、うようよ蠢いている、どこかの審神者の才能と時間遡航の技術を持った犯罪者グループに派遣された付喪神達をぶちのめしながらそこらにある『証拠品』を回収するのは政府と警察の審神者だけじゃしんどいって事でしょ。ここはプロに任せようって事で俺らに采配回ってきただけ。50階の博多は、あの地下で扱き使われてた付喪神の中でまともに使役できそうな一振りってところかな。商人の刀だったっていうから相性も多少は良かったんだろうし、自我が保てたんだろうね。他の奴らはそうはいかなかったんだろうな。あんなに出るのに、正式に発掘する事がわかってるのが博多だけなんだもの」
豆鉄砲を食らった気分だ。目を瞠る。口を閉じた長谷部は、今し方、審神者にいわれた言葉を直ぐに飲み込む事が出来なかった。しかし、審神者は構わず卓袱台に小判を置く。「もしくは、どこかの部隊の審神者が金目当てに協力したのかもねえ。この小判の形状を見るに」などと呟く。愉快そうに、審神者は笑う。
「相当手間暇かかったろうねえ、地下を100階も掘るなんて。しかも、あんな高い天井。政府は詳細を語りたがらなかったけど、あそこまで手の込んだ形状だと、政府の1部も食い込んでやらかしてた事なんじゃないかな」
「一体何を」
「長谷部。国宝にまで指定された程のお前なら、たくさんの人間を見てきたでしょ。ならわかる筈だよ。人間が技術を革新させるのは常に欲求からだ。『過去に遡って、“黄金の国”なんで呼ばれていた頃の日本の貴金属を奪えば金持ちになれる』なんて考えた奴もまた、時間遡航技術の開発に一役買ったらしいよ。加え、時間を遡れば、即ち23世紀の人目に触れない場所がある。23世紀の法律に触れない場所がある。まず政府からして、お前達刀剣男士が活動するのが許されているのは、現代にも続いている銃刀法が成立する以前だ。こうして俺達が過ごしている本丸の場所も、時間軸は法に触れないように全てそれ以前の場所だ。そして、人目のつかない場所を必要とする人間がどんなものか、長谷部にならわかるんじゃないかな」
そういって、湯飲みを持ち上げる。喉を潤す審神者の前で、金平糖をひとつ頬張った。唾液が欲しかった。喉が渇いている。脇差男士程の年若い見目の審神者が紡ぐのは、この世の俗悪の1部だ。湯飲みが置かれる。審神者はいう。ほくそ笑む、審神者はいっそ楽しんでいるようだった。本当は誰よりも罪悪を許さない人柄なのに、こういった時、審神者はとても楽しそうな顔をして雄弁になる。反動形勢かも知れなかった。
「一体、どれだけの時間をかけたんだろうね。時間遡航技術の応用もしただろうね、作るのに。政府も警察も大変だったろうね、あそこで『商売』をしていた奴らを摘発するのは。全部は捕まえられなかっただろうな。屹度色んなあくどい組織が利用してた公共施設だ。あんな広くて暗い場所で行われていたのは、犯罪の百貨店だ。奪ってきた黄金を鋳造して、持ち運びしやすい小判にしたてるのもそのひとつだろう。俺みたいな年若いのもいるから、敢えて詳細を知らせなかったんだろうね。何でも隠せるよ。金も、薬も、機密も、武器も、賭博も、動物も、臓器も、人間も。なーんでも、だ。
……戦国時代から変わっちゃいないんだよ、長谷部。そんなもんだ、人間ってのは。こうして回収した小判は、俺達が使う事で社会へと還元される。あそこで扱き使われていた付喪神の為の団子や刀装は、お前達が使う。金は天下の回りもの……は小狐丸の台詞だったかな。長谷部、その薄荷の金平糖、そんなに苦かったか」
「……俺が食べたのは桃味の金平糖だった筈ですが」
「長谷部が来たら出そうと思って。長谷部、甘党でしょ」
口を押さえる長谷部に、審神者はそれはそれは爽やかに笑った。風が吹かんばかりだ。「甘党の長谷部が来たらこの桃色に塗った薄荷の金平糖を出そう」、つまり。
立ち上がって抜刀する。既に審神者は別の襖から逃げ出していた。先程までの深刻な話が嘘のように吹き飛ぶ。
「お覚悟!!」
「それは一期の台詞だよー!! 博多、お前の古なじみが怖いー!!」
駆け去る審神者、抜刀して追いかける長谷部。「機動お化け」といわれる長谷部でも、室内を刀を持ったまま走り回るのは苦しいと気付くのはこの直後だ。地の利を応用して逃げる審神者をそれでも追いかけた、長谷部は気付かなかった。
誰もいなくなった執務室。そこに、加州が顔を出す。「あれ? 主?」2人分の茶と金平糖が半端に残されたままの卓袱台を見下ろしていると、どこからか審神者と長谷部の声がした。それにいつもの事か、と加州は嘆息しながら、その書類を手近な抽斗から封筒を取り出して、入れる。「主宛て、親展」と記されたそれを目につきにくい場所にそっと置いておく。自身もこれからまた遠征に向かわねばならないのだ。昨夜の戦闘でまだ体のあちこちが痛い気がする。ヒトの身体の弊害だろうか。
(どっちかってーと、精神的なもんかなぁ)
ここに来てから、病弱な審神者の面倒を見ているうちに些末な事は吹き飛んだ。しかし、昨夜、審神者の式神の指示の元で踏み込んだあの別の部隊の本丸は、中々に胸糞が悪かった。なまじ、そこの刀剣男士達がそこの審神者に懐いているのが始末に悪い。
『政府から指示が来たよ。大阪城地下の手入れをしている今の隙に、“本丸”から時代遡航の通路を犯罪グループに提供していた審神者を摘発しろ、ってさ。第2部隊から第4部隊まで、今夜、遠征を装って行ってきて。まとめ役は清光に任せた。
……質の悪い事に、大阪城地下を作り上げたひとりのようだ。慎重にな。お前達の身が優先だけど、とにかく審神者の身柄だけ拘束して』
暗に、向こうの刀剣男士は壊すなといわれた。無茶をいう、と思った。幸い、審神者の読み通り、彼らもまたほとんどが大阪城に向かっていた。皮肉な話である。あの「謎の巨大空間」を作り上げた審神者の部隊がそれと資源の為に遠征に赴いていた為に、本丸に残っていた数少ない刀剣男士は打ち破られ、そこの審神者の身柄は拘束された。いまだに、「あるじさまをかえしてください」という、あちらの今剣の悲痛な声が耳から離れない。
そして、それよりも。「お疲れ様」と、無表情で自分達を労う、主の幼い姿がもっと痛々しかった。あの年頃ならば、もっと晴れやかな顔をしていて欲しいのに。今のように、あんな、元気な。
「……あ、これ冷たいお茶か」
茶が温くなるのでは、と湯飲みに触れるとそれは冷たい。そして、上座の皿の金平糖を一粒、口にした。口の中で転がすと、ほの甘い味が広がる。
「あ、ココナッツ味だ。また変な味を売ってるなあ、あの万屋」
夏向きの味が、口の中で加州の舌を楽しませる。今の大阪城地下の「調査」が済めば、主は夏のように眩しい笑顔を見せてくれるといい。このところは保護者の気分になりつつあった加州は、「長谷部ーいけんよ主ばいじめちゃ」という博多の声を遠くに聴いた。
(そこはなににつかわれていたの)
End.