pixivより転載
審神者の俺には懐かない猫のようなのが可愛らしいと思う。猫のツンからしか摂れない栄養があると俺は思う。実家で飼っているペットは犬なのか猫なのかいまだに判然としないけどそれは置いておく。
そんな懐かない猫があからさまに動揺していたので、さすがに声をかけた。火車切の話である。大広間の片隅でぼんやりと座っていた火車切の前に俺はしゃがみ込んだ。
「どうしたの火車切。なんかあった? 飴ちゃん食べる? 蜂蜜味だよ」
「飴はいい……」
「マジでどうしたの」
俺が重ねて問うと、おずおずと言った様子で口を開く。
「大倶利伽羅のことなんだけど」
「大倶利伽羅になんかされた?」
大倶利伽羅に限ってそれはないだろうと思いつつもそう尋ねると、「なにかされたというか、言われたと言うか」と火車切は口籠る。……広光兄弟の相性は良さそうだと思っていたけど、勘違いだっただろうか。しかし大倶利伽羅は口下手で人を怒らせることはあっても(歌仙が好例だ)傷付けることはない、はずだ。俺が思わず考え込んでしまっていると、火車切が慌てたように両手を振る。
「待って、勘違いしてるかも知れないけど傷付けられたわけじゃないよ」
「あ、それならよかった。じゃあ何かショックなことでも言われた?」
「……ショックなこと……かな」
火車切は語った。
――大倶利伽羅に懐いた火車切が、本丸でひっついているのは話題になっていた。
大倶利伽羅もその火車切と言う弟分を殊の外可愛がっていたのも知られたことだ。
だからだろう、と火車切は言う。
『火車切。伝えておきたいことがある。大事なことだ』
『なに?』
『光忠、ちょっとこっち来い』
『なんだい伽羅ちゃん』
『火車切。これが俺の嫁だ』
『伽羅ちゃんのお嫁さんです!』
「ということがあって」
「ああ~……いつの間に嫁になったんだろ……」
俺は思い出す。本丸歴での3年前、大倶利伽羅と燭台切はすれ違いの両片想い……両片想い? のようなものだった。大倶利伽羅は燭台切に求婚しているつもりで、燭台切はとっくに結婚しているものだと思っていた。何を言っているかわからないと思う。俺もだ。それがいつの間にやら気持ちが通じ合っていたらしい。あの2振りは、特に大倶利伽羅は審神者に何も言わない傾向にあるから仕方ないとしてせめて燭台切には何かしら言って欲しかった。意外に大事なことを話さない2振りである。だからこそ拗れていたのだろうけども。
「主?」
「ああなんでもない。その2振りのことなら俺も把握してるし、火車切も気にしなくていいよ。要は『こいつに手を出すなよ』って牽制されただけだろうから」
「なにも安心できない」
「広光派で好みが似ている可能性があると思ったのかもねえ。で、飴ちゃん本当に要らない?」
「……食べる」
「はい」
俺は懐から取り出した個包装の飴を3つ、火車切の掌に載せてやるのだった。懐かない猫にちゅーるをやっている気分だった。
「ところであの2振りっていつからの付き合いなの……?」
「伊達の頃からって聞いたなあ」
「本霊時代から……?」
了