シックスセンス的なものが強い大倶利伽羅と、火車(猫)の影響が強くて何でも吞み込んじゃう火車切の話
▼偶には兄弟してる広光兄弟を……と思ったけどホラーになってしまった
pixivより転載
憧れの兄は、どうやら霊感が強いらしい。
らしい、と言うのは本人の口から直接聞いたわけではないからだ。
兄――大倶利伽羅は、倶利伽羅竜が左腕にいる。その倶利伽羅竜の加護ではないかとも言われている。このためにこの本丸の対オカルト班に本丸開設初期から勧誘され続けているらしいが大倶利伽羅は断っているらしい。しかし、大倶利伽羅はどちらかと言うとネコ科のようなところがあるとも聞いている。
曰く、「あれは猫が気配を敏感に察知している感じ」。
その一端を、俺は割とすぐ知ることになる。それは、我が身を以て。
その日は、朝からなんとなく胃の辺りがもやもやとしていた。
「どうしたんだ? 火車切」
「うーん……なんでもない」
腹をさすっていると、手合わせ相手の謙信に尋ねられる。俺はと言えば原因がわからなかったのでただ腹をさするしかない。朝食はガーリックバターの焼いた鱈が出た。特に問題はなかったはずだ。食中毒騒ぎも今のところ起きていない。だから何ともないはずなのだが……。
「おい、謙信いるか」
不意に聞き馴染んだ声がした。道場の出入り口で、大倶利伽羅が立っていた。内番着だからこれから内番なのだろう。そう言えば「大倶利伽羅の生存値が中々マックスにならない」と審神者がぼやいていたような……。
そんなことを考えていると、大倶利伽羅がこちらを見た。正確には、俺の腹を。
そして、つかつかと俺の元へと歩み寄って来た。むんずと俺の腕を掴む。
「えっ、なに」
突然の行動に驚く俺に、大倶利伽羅は真剣な目で見つめてくる。
「いいから、ちょっと来い」
「あ、大倶利伽羅! ようじはなんだったんだ?」
「小豆が呼んでいる。詳しくは知らん。とにかく火車切を借りるぞ」
そう言って、俺の意見を聞かず大倶利伽羅は俺を引っ張る。痛いぐらい強い力なので、不安になって来る。俺は何か大倶利伽羅の気に障ることを今したか……? 思い当たるところがなくて困っていると、辿り着いた先は厠だった。厠と和式で呼んでいるがこの本丸のトイレは大半が洋式で(和式があるのは和服の刀剣男士のためである。和服は和式の方が都合がいい)、ここは洋式だった。特に病人が出た時(主に審神者)の介助用のために広く作られている、事実上の多目的トイレだ。大倶利伽羅は扉を閉めると、俺を便座の前に膝を突かせる。
そして言った。真顔で。
「吐け」
「え、何を?」
「胃の中身を」
「えっ」
「吐けないなら協力してやる」
「んぐっ」
そう言って大倶利伽羅は、俺の口の中に指を突っ込んできた。喉に触れて、反射でえずく。ただでさえ胃の辺りがもやもやしていたので、胃の中身は容易く便座の中に吐き出されて――
「……えっ」
胃酸で気持ち悪さが増していたが、便座に吐き出されたものに別の意味の気持ち悪さが出た。と言うよりも、それは恐怖だった。
便座に出ていたのは、朝食の名残……と、黒く長い髪の毛の塊だった。呆然とする俺に、俺の背中をさする大倶利伽羅が「やはりな」と呟いた。
「胃の辺りにまずいものがあると思ったが……」
「お、俺、こんなの食べてない」
「だろうな。好き好んで髪を食べる性癖の奴ではないだろう。偶にいるらしいが」
「いるんだ……と、と言うかこれなに?」
「知らん。が、予想はつく」
そう言って、そう言えば先程から黙ったままの、俺の火車を大倶利伽羅は見た。
「お前は火車……猫又の性質を持っているんだろう。要は猫だ」
大倶利伽羅は手洗い場の方へと向かいながら言う。
「猫はなんでも飲むだろう。そういうことだろう。気を付けろ、多分お前はそう言う性質で顕現した」
「えぇ……」
「洗面所で口を濯いだら石切丸のところに行くぞ。念のためハラキヨしてもらえ」
そう言って手を洗って来た大倶利伽羅は、まだしゃがみ込んだままだった俺の前で情け容赦なくトイレを流した。髪の毛は流れていった。
大倶利伽羅の予言は当たり、俺はこのあと何度も似たような事態に陥り、結局エチケット袋を持ち歩くことになるし大倶利伽羅まで同じようにエチケット袋を持って歩いてくれるようになるのだが、これは余談である。
了