※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

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小豆に頼まれた雲生が、審神者の元に茶と茶菓子を持ってきたときのこと
pixivより転載


【おてさに♂前提んしょさに♂】10年遅れて来たことが、悔しい

 こういうときに、自分があまりにも遅れて来たことを雲生は実感するのだ。

 

 このところ冷えて来た。ここの審神者の方針では、カレンダーの節目ごとに景趣をかっちり変えるらしい。もうすぐ小雪から二十四節気の中で相応しい景趣が選ばれるのだろう。

 そんなことを、雲生は盆を持って縁側を歩きながら思う。

 厨の前を通り過ぎたら、「これ、きょうの主のおやつ」と小豆に熱い茶の入った湯飲みと共に乗せられた盆を渡されたのだ。「わたしはこれからようじがあってね」と言っていたが、態のいい使い走りである。尤もこの本丸ではよくある話らしい。道中で会った長谷部に言われた。長谷部は替わってくれなかったのでそのまま彼が運んでいる。

 執務室の前に立ち、声をかける。

「主。失礼します」

「あいよー」

「……お仕事は?」

 審神者は、タブレット端末を寝転がりながら弄っていた。

 雲生の言葉に「今日のは終わったー」と答えながら起き上がった審神者は、盆を卓袱台の上に置いた雲生に尋ねる。

「今日のおやつは?」

「栗羊羹だそうです」

「やったあ」

 無邪気に喜ぶ審神者の姿に、胸がときめくのを抑えつつ雲生は視線を逸らす。

 最早勝手に栗羊羹を食べはじめている審神者に、雲生は尋ねた。

「タブレットで何をご覧になっていたんです」

「ああ、見る? この本丸10年分の画像記録――要はアルバムだね」

 そう言いながら卓袱台に設置されたリーダーにタブレットを同期させると、画像が宙に浮く。

 それは、加州にかぶっている布を引き剥がされている山姥切国広。

 それは、陸奥守に剣の稽古をつけてもらっている審神者。

 それは、長谷部に抜刀され追いかけられている鶴丸と審神者。

 ……1部どういう状況なのか雲生にはわからないものもあった。

 それを補足するように、審神者は笑いながら指先で画像をスライドしつつ語る。

「俺は着任当初本当に病弱でね。今もあまり身体が強いとは言えないけど……それで刀剣男士は、あらゆる感冒なんて克服していたと思ってたみたいで。ほら、初期刀兼近侍の清光。俺が風邪ひいて熱を出したら慌てて俺を抱えて布団に突っ込んで。そのあとその冬は風邪が治ったあとも監禁されたなー。主に沖田組が俺のこと心配して、堀川もどうにもできないって状況で、最終的に和泉守が来てくれてなんとかなった」

「そ、そうなんですか……」

「あ、画像以外で資料でこの本丸のこと知りたいなら、俺の私室の書庫にこの10年分の日記あるからそれを読めばいいよ」

「日記を読んでもよろしいので?」

「ぶっちゃけブログみたいなもんだから~。小さい頃俺があんまり病気で死にかけるもんで親が『お前の生きた証をくれ』ってつけさせはじめたのが日記でさ」

「……そうですか……」

 思ったより重い事情で、雲生は言葉がうまく出てこない。

 代わりに、画像を眺めることにした。

 そして気付いたことがあった。

「……この白髪の少年が主ですか」

「そうだよ、美少年でしょ。今は顔が大人になっちゃって特徴なくなっちゃったんだよね~」

 笑いながら審神者は言う。

「体つきも大人になっちゃったし。まあ変なのに付き纏われなくなったのが最大の利点だね」

 それを聴いて、雲生は反射で言った。

「今も素敵ですよ」

「へ?」

「お顔は目鼻立ちのバランスが完璧すぎるほど整っていますし、体つきも大人の男性らしいものじゃないですか。確かに少年の頃の主も、世が世なら小姓に取り立てられていそうですが……私は今のあなたも素敵だと思いますよ」

「そ、そう? 有難う……?」

 呆ける審神者に、にこりと微笑んだ雲生は「それでは失礼しますね」と盆を持って去った。

 取り残された審神者は、所在なげに「この前清光に言ったら『雲生に関わることで何かあったらすぐに俺に報告して』って言われたけど、これも言うべき?」と小首をかしげるのだった。

 

 

 

 

 

了

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