▼んしょさに♂の方はギリギリで終わります
▼セしないと出られない部屋だけど内容シリアスです
pixivより転載
審神者は久々に遭遇したし、雲生は初体験だろう。
「セックスしないと出られない部屋……まだこのバグ解消されてなかったか」
「バグ……なのですか?」
でかでかと掲げられた看板を指差しながら、雲生が尋ねる。審神者は腕を組んだ。着流しの袖が揺れる。
「バグらしいよ。それもオカルトと科学が融合した結果いまだ解消しきれない。本丸はまさにその合いの子だからね、こういうバグに事欠かないんだ。とは言ってもウチは少ない方だよ、俺の霊力がバランス型だからね。不安定なタイプは特にこういうバグが起きがちらしい。ウチの弟なんか魂蔵持ちだから波が激しいらしくて」
「弟さん、いらしたんですね」
「あれ知らなかったっけ。俺は弟のために審神者になったようなもんだよ。まあそれはそのうち語るとして……ゆっくり休もう。いい機会だしね」
そう言いながら、審神者はキングサイズのベッドに身を投げ出す。ゴロゴロと転がりながら「なんで本丸って基本布団なのにこの部屋はベッドなんだろうな~」と言っても仕方ないことを呟いた。
雲生は看板を見上げながら尋ねる。
「落ち着かれているんですね」
「まあね。ウチの本丸の場合しばらく待っていれば外部から助けが来るから。審神者の気配がなくなるとわかるもんらしいよ。前に伯仲コンビと一緒に閉じ込められたときも割とすぐに助け来たし。このベッドスプリング利いてるな~」
「……そうですか」
このとき、審神者は常にない事態で実のところ多少混乱していた。何せ、加州に言われていた「雲生と2人きりにならないこと」という言いつけが頭から抜けていたので。
雲生は背中を向けたまま、重ねて問う。
「伯仲コンビとは山姥切長義と山姥切国広のことですよね?」
「そうそう。あの2人今でこそ付き合ってるけどあの頃はまだ関係成立してなくて、しかもお題が『3Pしないと出られない部屋』だったもんだから『本歌と切国が2振りでやればいいじゃん!』って叫んだもんだな~引っぺがされそうになった辺りで助けが入った」
「……そうですか」
「とりあえず雲生も座ったら? 立ったままじゃ疲れるでしょ」
そう言われた雲生は、言われるがままベッドに腰かける。
そして大の字になっていた審神者の手を取った。
左手。その薬指から、プラチナの指輪を――。
それをヘッドボードに置いた雲生に、審神者は身を起こす。
「んっ? 返して」
「お返しします。――この部屋の主旨を果たしたら」
「待て待て」
言いながら、雲生は審神者の身体の上に乗り上げる。そして帯を解こうとする雲生。審神者は彼の手を懸命に止める。
「今俺言ったよね!? そのうち助けが来るって!」
雲生はごく真顔だ。
「もし今回が例外だったら? ――本丸の運営はフライトのように通常通りでなければなりません。そうと決まれば主、私に抱かれてください」
「俺が抱く方って発想はないの!?」
「……?」
「きょとんとしないでさあ!」
その辺りで審神者はようやく今までの雲生の行状を思い出した。だが遅い。
男性2人分の体重を乗せたベッドのスプリングが軋む。抵抗むなしく帯を解かれ、隙間から手を這われる。それから審神者に覆い被さった。
「あ、ちょ、だめ、押し倒さないで」
「嫌です」
「嫌じゃなくて、――ひっ!」
腹を這う手。それと同時に審神者の左耳が舐られる。音を立てて舐って来るそれに、審神者は性感を掻きたてられる。――掻きたてられてしまう。
時々御手杵がすることだ。
それを思い出すと、審神者は必死で雲生の身体を押し返そうとする。しかしびくともしない。このとき審神者は刀剣男士との間の純粋な膂力の差に絶望した。だからせめて言葉で抵抗する。
「耳だめ、だめって――あっ」
拒絶されると雲生は今度は首筋に顔を埋める。首はまずい、項に近い。審神者は項を噛まれると1発で射精してしまうほどの快感を覚えてしまうのだ。だから必死で抵抗する。
「首はもっと駄目!」
「首がいいんですね? 項を噛んでも?」
「話聞いてた!? 絶対駄目!」
不意に、笑うような気配がした。
「――ならば、それ以外の行為は宜しいと」
「言ってない! やだやだ、助けてー! 御手杵ー! 清光ー!!」
審神者は半ば自棄になり全力で抵抗する。しかし、その腕を掴まれた。
雲生はひどく冷めた目をしていた。
「その名は今は呼ばないでください。折角の2人きりでしょう」
「は――」
「お慕いしています、主。はじめて逢ったときから。……夫がいるとわかっても」
愛の言葉というには、ひどく苦し気で――審神者は一瞬呆け、その隙を突かれ唇を重ねられた。舌が捻じ込まれる。それにも抵抗しようとして、舌が絡めとられた。
……唇が離れたのち、開けられた胸。その尖りを舌先で舐られる。
「ひっん、やだあ……」
「気持ちいいですか?」
「気持ちよくなんか、ないっ……!」
審神者は必死で頭を振る。そんな彼の胸の尖りを、雲生は爪先で軽く引っ掻いた。
「ひっ、!」
喉が反る。
「おや、気持ちよくないんですよね? 今の反応は悦さそうでしたが」
「……っ!」
口を両手で塞ぎながら、必死に声を出すまいとする審神者。体の反応はごく素直だ。これは幼い頃から性的暴行を繰り返された結果、無用な怪我をしないように愛していない相手でも身体が刺激に対して従順になるようになったのだ。そんなことを、新参ゆえに欠片も知らない雲生は少なくとも身体は馴染んできたと解釈した。
腰を撫でさすり、臍の穴を舐める。くぱくぱと開いては閉じるのを繰り返す。審神者はここまでは黙って耐えていた。
しかし――下穿きに手を触れられ、今度こそ全力で抵抗した。
「駄目! そこは駄目! 絶対駄目!」
「おや、ですが先走りが……」
「っいい加減にしてよ……刺激に対して身体が反応するのは仕方ないでしょ!」
息を荒げながら赤い顔をしている審神者に、雲生はふ、と笑んだ。
「じゃあ今から、1番反応が出るだろうところに刺激を加えますね」
「――! 駄目、駄目だって、駄目!!」
下穿きを脱がそうとする雲生に、必死で抵抗した。しかし、徐々に陰部は露わになり――
「ちょっと! 大丈夫!?」
「主と雲生、無事か!?」
――扉を大きな音を立てて破って来た2振りがいた。
加州と御手杵である。
彼らは、審神者と雲生の様子を一目見て――御手杵が槍を雲生に構えた。刺突の構えだ。
その間に割って入ったのは加州だ。
「ちょっと待って、落ち着いて御手杵」
「この状況で落ち着けって言うのか……!? どう見ても自分の伴侶を手籠めにされかかってたんだぞ!?」
常の人の好さなど吹っ飛ばして怒気をみなぎらせる御手杵を尚も制しながら、加州は尋ねた。とりあえず審神者の下穿きからは手を離していた雲生に。
「雲生? この部屋のお題に沿った結果、『仕方なく』主に手を出したんだよね? 決して無理矢理手籠めにしようとしたんじゃないよね? 同意は得ていたんだよね?」
「……仕方なくではなく、己の意思で主に同意を得ず無理矢理手籠めにしようとしました」
「ほらやっぱり!!」
「雲生のバカ! 俺のフォローを無駄にしてくれたね!?」
火のついた御手杵を必死で抑える加州の叫びに、雲生がきっとスカイブルーの目を閃かせる。
「だって私は主を愛している!」
「!?」
驚いたのはこの場では御手杵のみだ。審神者は直接言われていたし加州は彼の行状を報告される度にそう予感していたのだ。
重ねて彼は訴えた。
「私はただ10年も遅く顕現した。しかし御手杵、あなたと同時期だったなら主と結婚していたのは私だった!」
それは、10年の空白だった。あり得たかも知れない空想、つかめていたかもしれない幸福。
しかし――それまで黙っていた審神者が、着衣を直しながらベッドから立ち上がって言った。御手杵の側に寄って。
「そうかも知れないね。でも、現実には俺は御手杵と結婚にまで至った。雲生、お前は新入りだ。――雲生、お前は2週間の謹慎処分とする」
「は!? 主、甘くないか!?」
「あと清光、お前は長谷部と一緒に雲生をよく尋問しておくように」
「はーい」
「あ、甘くなかった」
そして部屋を出ようとする審神者。雲生はヘッドボードに手を伸ばすと、その背中を追いかけた。
「お待ちを、主」
「何」
「……これを、お返しします」
振り返った審神者に、そう言って雲生は差し出したものがあった。
指輪だった。
「でも、諦めませんから」
「このっ……」
「御手杵どーどーどー、さー雲生行こうね。尋問部屋に」
4名が部屋を出ると、そこは壁になった。
こんのすけへ例の部屋の出没報告を済ませたのち、審神者は御手杵の手を引いていた。既に本体を引っ込めていた御手杵は、黙ってついていく。
やがて辿り着いたのは、審神者の私室だった。障子を閉める審神者。
沈黙が下りる。
……手を伸ばしたのは、御手杵の方からだった。
「主」
審神者を抱き締めた。
審神者は御手杵の首に腕を回して、囁いた。
「抱いて」
御手杵はそのようにした。
「雲生、貴様出られない部屋に入ったら主に尻ぐらい差し出せ!」
「そういう問題なのですか……?」
「ごめん長谷部ちょっと軌道がずれてる。それ伯仲のときも言ってたよね」
了