審神者のことが諦めきれず、せめて自慰して吐き出したいと思ってこっそりオナホを買い求めた結果、それが魔法のオナホで――!?
▼雲生があきらめの悪い男になってんな……
pixivより転載
若い成人男性として顕現した身。それが意味するところを理解しているつもりである。元気な身体でたくさん戦えと言うことだろう。
そして「花街遠征」なるものがある理由もわかっている。誰もが審神者と性交渉できるわけではないのだ。
特に、己のように審神者に横恋慕している身には相応しい遠征なのだろう。雲生はそう思う。が、雲生は誰よりわかっていた。審神者以外の誰かを抱ける気がしない。花街には審神者に化けるサービスもあるという。それでも、審神者以外は。
そういうわけで、雲生は自慰をすることにした。幸い鵜飼派は他にまだおらず、ひとり部屋だ。審神者の気遣いで自慰や互いに同室者がいる念友が使える空き部屋もあるらしいが、今のところはそういうのを使う理由はない。
雲生は夜になると、いそいそと部屋に引き籠るようになった。箱ティッシュを準備すると、自身を取り出して扱き出す。おかずは、いつか手籠めにしようとしたときの審神者の姿だ。乱れる審神者の姿が雲生の瞼の裏に焼き付いている。
(もう少し時間があったらな……)
と、まったく反省していない雲生である。
その罰が当たったのか。
(……い、イけない……!)
体調の問題なのか、雲生は達することができなかった。
何度手で擦っても中々勃起しなかったし、勃起しても性感が来ないのだ。脳内では審神者が乱れに乱れ切っているにも関わらず、である。
疲れてしまった雲生が手を離すと、みるみる萎えていく彼自身。それを見て、絶望にも似た思いをする。
(性機能に何か障害があるのか……? 「あのとき」は勃起していたはずだが)
「あのとき」とは、無論審神者を押し倒したときの話である。
雲生はしばし考え――ふと思い至った。
(もしかして……主に直接触れないと勃起できない……?)
それは愕然とする事実だった。
彼はとりあえず手を拭いてから、頭を抱える。周りからは審神者のことを諦めろと言われている。諦めなければいけないというのは理性ではわかっている。本能が審神者を求めてやまなかった。あぁ、10年早く来ていれば御手杵と審神者を巡って争えたのに! ――そして、行き当たった現実に雲生は悶えるしかない。
(諦めろと言われてるのに主じゃないとイけない身体……!)
あるいは、他の者に惚れればこの事態からも脱せられるのだろうが、今のところ審神者以外に魅力的に思える相手がいないのでどうしようもなかった。
しばらく失意体前屈していた雲生は、ふと顔を上げた。
こういうことを相談できる相手はいないか。
「それで私が選ばれたのは非常に不本意なのですが」
翌日、花びら餅と抹茶を賄賂に訪ねた相手は一期一振だった。常に微笑みを絶やさない彼にしては珍しく、不機嫌を顕にしている。
しかしここで屈する訳には雲生もいかない。自身の性生活がかかっているのだ。雲生は言う。
「さぞご不快でしょうが、ネット調べで一期一振殿が性に詳しい傾向にあると聞き、さらにここでも蜻蛉切殿というお相手がいるのに週に1度は花街に行っているし以前はもっと酷かったと聴きまして」
「誰です? ゲロったのは誰です? まったく……」
一期一振は溜息を吐いてから、携帯端末を弄った。
「まぁ、確かに勃起障害は男として一大事。さらに個人的にはあなたの境遇には同情の余地があるので、あるものをお教えしましょう」
そう言って、卓袱台の上に置いた携帯端末の画面に映っていたのは――
「……おなほ?」
「価格帯は色々ありますが、新刃のあなたに見合ったものにしておくべきでしょう。2万円するものもあるそうですよ」
「2万円!? というか、このおなほとは……」
「平たく言うと女性器を模したものですね。TE●GAが有名どころでしょうか」
「女性器ですか……」
「あぁ、アナルを模したものもあるそうですよ。あなたの場合はそちらの方がお勧めでしょうな。割と攻めたデザインをされているものも多いようですが。あ、どちらにせよ清潔に扱うんですよ、刀剣男士でも性病にかからないとは限りませんからな」
「細やかなお気遣い、有難うございます。あとは自分でやってみますね」
そう言って立ち上がる雲生。いそいそ、という様子が一期一振にはよくわかった。それに思わずクスリと笑った。
――よもや、自分の助言が明後日の方向に飛んでいくとは思いもしなかったのだ。
「うーん、色々あるなぁ……」
携帯端末でアダルトショップのサイトをスクロールする。一期一振にはああ言ったが、自分で選ぶとなると中々難しい。価格帯の問題もある。新刃の雲生にはまだ貯蓄らしいものもない。本丸の予算で賄えるものもあるが、プライベートなものなどは個刃の給料で賄うことになる。特にこんなプライベート中のプライベートなものは。
「……ん?」
このショップは駄目だ、と検索ページに戻ったときだ。
検索一覧に、「刀剣男士向け」と記されているものがあった。
それなりに経験を積んだ刀剣男士なら疑うだろう。しかし、彼はまだ新刃の類だった。特に迷わず、そのアドレスをタップする。
一見ごく普通のショップサイトだった。マッサージ器などが売られている。その中の「R-18コンテンツ」というページをめくった。
ピンク色で彩られたそのページは、「魔法」という言葉が犇めいていた。
(魔法……?)
――その中に、「魔法のアナルオナホ」というものがあり。
手ごろな価格帯なのもあって、雲生はそれを注文した。
ごとりと、部屋に段ボール箱が落ちて来た。量子力学運送システムである。21世紀末において量子力学が主だって利用されるに辺り、運送業界は大打撃をこうむったのだがそれはこの際置いておこう。
雲生が箱を開くと、そこには一見ごく普通のアナルオナホが収まっていた。ネットを検索したときに見かけたT●NGAとさしてデザインも変わらないように思われた。
それが罠だと知るのは少し先のことだ。
夕餉を食べ、風呂から上がってきて、自室に戻って来る。
アナルオナホの要領はネットで調べたときの通常のオナホと勝手が少し違ったが、洗浄は済ませた。あとは専用ローションと空気抜きを済ませるだけである。
それらを済ませ、雲生はいざギリギリまで手で扱いて勃起させ、アナルオナホのナカへ――
「へっ?」
その夜、審神者はひとり寝だった。御手杵が夜明かしで飲み会をするということだったので、彼はひとりで寝ることにした。そもそも共寝をするときはイコール性交渉で、週の大半は御手杵は審神者の私室で寝起きするものの、基本の所属が槍・同田貫部屋だった。今回の飲み会もこの面子で行われると言う。
寂しくはなかったが、布団が寒いなあ。そんなことを考えながら、審神者は布団の中に潜り込んだ。
――途端に、異物感。
後孔に、大きな何かが滑り込んできたのを感じた。
「っ」
滑り込んできた何かは確かに熱を持っていた。しかし後ろを向いても、誰もいない。ただ後孔に熱と、異物感。それは引き抜かれた感触がしたかと思うと、再び挿入された。
「ん、んんっ……!」
――まるで見えない誰かとセックスしているようだ。とにかくこの異物感をどうにかしなければならないが、この状態で加州や御手杵を呼ぶのは躊躇われた。
その躊躇が、一気に審神者の結腸を抉った。
「お”うっ……!」
一方、雲生は少々奇妙に思っていた。
特にまだこだわりがなかったので温めなかったのだが、突き入れたアナルオナホは妙に温かい。アナルオナホと言うのはこういうものなのだろうか、不思議に思いつつも、雲生は満足感を得つつあった。
あれ程勃起しないと思っていた彼の性器が、元気いっぱい屹立している。
まるで、審神者のナカに入っているようだ。
そう思うと、より一層熱が高まる。手でそうするように、アナルオナホを上下させた。抽挿を激しく。
審神者はがつがつと腰を打ち付けられる感触に、枕を掴んで涎を垂らして、声もなく喘ぐ。抽挿が激しい。明らかにこれは異常事態だとわかっていたが、異常を知らせるための携帯端末が遠い。その間にも、がつんがつんと後孔に衝撃が加わる。もう耐えられない――審神者がイくと同時に、熱いものが後孔に飛び散った。
(え? 精液? なんで。いやそれより)
審神者は携帯端末を手に取ろうとした。
――途端、再び衝撃が来る。
「ひぐっ」
雲生は1度精液をナカに放ったが、満足していなかった。欲求不満は大いにある。肝心の審神者に触れられていないのだから。しかしどこか奇妙に審神者のナカに感じられるそれに、雲生は再び突き込み、抽挿を重ねたのだった。2回目のそれは1回目のそれよりずっと激しく、そして、このときは気づかなかったが、きつい「しめつけ」もあった。それは空気抜きによる吸い付きだけではないと、のちに知ることになる。
その晩、加州の部屋の電話機に内線があった。まだ寝ていなかった彼が電話に出たとき、声の主は泣いていた。
『うえっ、うえっ……清光……俺……透明人間に犯されたあ……』
「は!? とにかく今すぐ行くからその場で現場保存してて! それじゃ!」
電話を切った加州に、大和守が眠気で愚図りながら言う。
「ん~、どうしたの清光」
「ちょっと緊急事態だから先に寝てて」
「キスしてくれたら寝る」
「はいよ投げキス」
「そんな雑なのじゃなくてさ」
「真面目に急いでるから埋め合わせはあとで!」
――加州が駆けつけると、確かに状況はそれに近いようだった。
吐き出した精液は恐らく審神者のもの。しかし審神者はパンツを脱いでいない。本人に確認を取ってからパンツを脱がせると、後孔から精液が溢れ出ていた。
それを見て、加州はとある考えが浮かんだ。
(いやいや、いくらなんでも雲生が……)
「審神者様、何やら御騒ぎのようで」
そこに丁度良くやって来たのがこんのすけだった。加州は尻を吐き出したままの審神者の後孔を示して言う。
「こんのすけ。本当に悪いんだけど、この主のケツ孔から出てる精液、誰のものか特定できる?」
「……できますが……政府の医療施設に」
「ちょっと急ぐから」
「はぁ、やだなぁ……」
こんのすけはぶつくさ言いながらも、仕事をした。ホロのモニターが浮かび、それを肉球でてしてしと叩いていく。
結果はあっさり出た。
「雲生です」
「えっ」
「やっぱりか……こんのすけ、ちょっとついてきて。雲生の部屋にがさ入れしにいくから」
「お、俺も……」
「主は服を戻したら安静にしてて。風呂にはできればまだ入らないで」
「えっ」
「よーしカチコミ行くぞー」
「御用改めである!」
「えっなんですか!? こんな夜に、というか色々片付けが済んでない」
「動くな! こんのすけ、そこのオナホの分析できる!?」
「あまり調べたくはないですが――あっこれ、政府で使用を禁じている『魔法のオナホ』です! 雲生殿、これをどこで購いましたか!?」
「えっ、アダルトショップサイトで……」
「神妙に縛につきなさい!」
政府での成分分析の結果、その魔法のオナホと称されて売られていたものは空間転移技術を応用したものであり、審神者と刀剣男士の主従関係を悪用して刀剣男士のペニスが挿入されると審神者の後孔にも入ると言う代物だった。
ショップサイトは歴史修正主義者と繋がっており、販売した目的は普通のオナホなら女性の審神者を妊娠させ活動を遅延させる。アナルオナホならば男性審神者に誰が自分のアナルを狙う敵か疑心暗鬼にさせるという狙いだった。
「雲生。自分がしたことはわかったね?」
「はい……」
ひと通りの調査が済み、アダルトショップサイトは摘発。その中で一方的な被害者である審神者は、ずん……と腕組みをして、正座をする雲生の前に仁王立ちしていた。周りはひそひそと耳打ちしあう。その中で1番深刻な顔をしていたのは一期一振だった。なぜ普通のアナルオナホに行かなかったのかと。
審神者は言った。
「今回のお前の処分は俺の裁可で良いと政府が許可を下ろしてくれた」
思わず周りはかたずをのんだ。どんな酷い罰を――
「給料50%カット。6か月」
「えっそんな!」
「撤回は聞き入れません。少ないお金をやりくりしながら残り半年を過ごしなさい」
「お慈悲を! お慈悲をぉー!」
「……意外に現実的に厳しい罰来ましたな」
「50%はきついよな……衣食住は本丸予算で済むとは言え……」
「まぁ」
審神者の足元に縋りつこうとする雲生を見ながら、一期一振と加州は呟いた。
「『刀解』って言わない辺り、主は優しいよなって」
「全くですな。あそこまでされてそれを言わないのは甘いとすら……」
「そこー聞こえてるぞー」
「おっと」
こうして「新刃による魔法のアナルオナホで審神者強姦事件」は幕を閉じた。
なお、酒の抜けた御手杵がこの件に関して一切声明を発していない。発していないが、調査を終えて身を清めたあとの審神者が彼の私室に御手杵に引きずり込まれ丸一日出てこなかった、という事実を見ると、じっくり「お清め」がされたと思われる。
了