pixivより転載
箱から1本取り出し、口に咥える。そして、先端にライターで火を点けた。
一服喫う。それから、ゆるりゆるりと煙を吐き出した。
――夜。縁側に座って煙草を喫う雲生のその姿を見た雲次は、その隣に腰かけた。
「煙草、喫うんだ」
「偶にですね。3日に1本程度でしょうか」
「煙草って贅沢品って聞いたけど、それでそんなケチケチ喫ってんの?」
「単に私があまり喫わないというだけですね」
そう言って、再び煙を吸い込む。ただ煙草を喫っているだけというのに、いやに様になる男だなと雲次は思った。受動喫煙がどうのとは考えなかった。刀剣男士は手入れの度に身体がリセットされるので負ったダメージも同様と言うわけだった。なので勿論、飲酒・喫煙、そして非推奨ではあるが違法薬物さえ使っても問題のない身体というわけだ。それに絡んで非合法の人体実験を刀剣男士で行わせる組織犯罪系ブラック本丸もある、とは政府案件が重なり草臥れ切っていた審神者の言だった。隣では政府案件専門近侍の長谷部がうつぶせに倒れていた。人間にしても人外にしても身体は大切にして欲しいものだ、と雲次は思ったものだった。閑話休題。
「煙草、誰から教わったの」
雲次が問うと、雲生は煙を吐いてから答えた。
「長曾根さんからですね。彼は煙管派だそうですが、気楽に喫えるとして紙煙草を勧められました」
「何でまた」
縁もゆかりもほぼないも同然の相手だ。もしかしたら刀工がどこかで繋がっているかもしれないが。日本の刀工は大体親戚のようなものなので。すると、雲生は苦笑する。
「近侍の加州さん所縁の刀剣男士ですからね。私がストレスを溜めているのか、と心配されたそうで……」
「あぁ……」
雲次は納得がいった。確かに、音に聴く雲生の行状は「ストレスが高じたのか?」と言われそうなものだ。
審神者に横恋慕しているのである。なお、審神者は20代男性でさらに既婚(相手は御手杵)。これは雲次の姿が公表されてから発覚したことだが、彼とは瓜二つと言っていいほど似ている。審神者の白髪がどちらかと言えば雲生に似てた青みがかったものだということと、審神者の目は赤いということぐらいか。それさえ隠してしまえば双子で通じるだろう。とにかく目鼻立ちが似ているのだ。なので、1部の刀剣男士からは「やーいブラコン(?)」と雲生は言われている。2人の顔が似たのは本当に偶々なので、そんな雲生を少し気の毒にも雲次は思っていた。
だから、というわけではない。
雲次は、不意に雲生の手から煙草を取り上げた。そして、思い切り喫う。それから煙を吐いた。
ぽかんと見上げて来る雲生に、雲次は(子どもみたいだな)と思ったあと。
「あの手の顔が好きなら、僕でもいいでしょ」
――それは相手も自分も傷つける台詞だと、誰より雲次がわかっていた。
だから、雲生の顔が曇るのを見るより先に、煙草を灰皿に押し付けた。
そして、その場から去った。
今の自分の顔を見られたくなかった。
今夜はどこかの飲み会に参加させてもらおう。雲次はそう決め、呼び止める声も無視して歩み去った。
夜が、更ける。
了