pixivより転載
その部屋の看板を見たとき、審神者は深々と溜息を吐いた。
「こういうトンチキ部屋、政府滅ぼしてくれないかな」
「同意です」
「え、なんで2人は落ち着いてんの?」
審神者が言い、雲生が同調する。狼狽えているのは雲次ひとりだ。
彼らの背後には、背凭れのついた簡素な木製の白い椅子が一脚。それにキングサイズのベッドがひとつ。ヘッドボードには潤滑油をはじめ様々な大人の玩具が並んでいた。
雲次はおろおろとしながら言う。
「この看板どういうこと?」
「簡単に言うと、このお題をクリアしないと出られない部屋。まあ外から破ってもらうことも頑張ればできるけど、今回の場合比較的お題クリアの方が簡単そう。そういうわけで雲生、煙草頂戴。喫煙者だよねお前」
「はぁ……よろしいので? 主、気管支が弱いのでは」
「心配するところそこ? まあ気遣いは嬉しいよ、有難う。でもこんな場面で煙草を喫わずにやってられると思う?」
「あの、2人で話を進めないで。どういうこと? ねぇ、もしかして、まさか……」
雲次は狼狽えながらも、何かを察したらしい。語尾が尻すぼみになる。
審神者も雲生も、優しく微笑んだ。雲生は雲次の肩に手を置く。
「そういうわけで、雲次。私とセックスしましょう。安心してください、主が見守ってくれます」
「何も安心できなくない!? いくら主でも見られたくないものがあるよ!?」
「俺だって見たくないよ……」
そう言いながら、審神者は煙草に火を点けた。そして携帯灰皿を持つと、椅子に反対に座った。背凭れに肘を置き、煙草の紫煙を燻らせながら煙を吐いた。
「でも、今回のお題には性的関係のない奴にも負担を強いるものではないからまだマシな方なんだよ。お前らをおかずにしないことはアモールとヴィーナスに誓うから、安心して喘いで」
「……!」
「言葉にならないのはわかるよ。うん、とてもわかる。でも頑張って。この手のは1発出せば終わるから」
「どっちが!?」
「あー、男女を想定されてるやつだからなあ……多分この場合雲生が出したらだと思う。あ、あと正常位でね」
「!?」
「後背位でやって『らぶらぶえっちじゃない!』って部屋に判断されて出してもらえなかったパターンもあるらしいから」
「……!」
ぱくぱくと口を開閉して言葉の出ない雲次。その雲次の肩を、雲生がベッドの方へ押した。
倒れる彼に、雲生は唇を落とす。
「大丈夫。いつも通りですから」
「……そこでいつも通りじゃない人がいるんだけどなぁ……!」
「ま、俺は置物だと思って」
審神者は煙草を喫った。
「ん、ふ、ぅ……」
ベッドが軋む。体格のいい男性2人が睦み合っているのだからそれはそうだろう。審神者はそう思いながら、3本目の煙草に火を点けた。煙草の灰が時折床に落ちる。なるべく灰皿に落とそうとはしているのだが、「こんな部屋で気遣うマナーなんてあるか?」という気持ちも先行してあまり真面目に喫煙マナーを守っていなかった。恐らく普段ならば注意するだろう2振りは、現在この部屋を出るために目合っている最中だ。
あれ程抵抗を見せていた雲次は、現在は雲生にドロドロに蕩かされている。普段のセックスからこうなのだろうか。審神者は少し気になったが、「おかずにしない」と宣言したからには詳しいことを考えるのはやめた。
(俺は今はイケメン同士のセックスを窃視してるモブなんだ)
そう自らに言い聞かせる。なんだか空しかった。
その間も、雲次は抵抗を忘れたように喘ぐ。
「雲次、入れますよ」
「ん、っ……!」
じれったそうに避妊具の包装を口で裂く。そして手早くそれをつけた雲生が、解され切った雲次の後孔に彼自身を宛がう。そして、雲次の両足を抱えた。
挿入する。
「あっ、……!」
雲次が声を上げる。揺さぶられる彼の身体。雲生はしばし彼の両足を抱えたままだったが、ふとそれから手を外し、雲次の顔へ手を伸ばした。
否、その手が伸びた先は、枕を掴む雲次の手だ。雲生は無言でその手を解く。
そして、手を繋いだ。
「雲次……」
「や、これ、恥ずかしい……!」
「しっかり私の手を握っていて……」
「あっ、あっ、あっ!」
雲生が腰を打ち付け、雲次の脚が暴れる。それでも互いに繋いだ手は外さない。
抽挿の末――
「あ、イッちゃ、イく……!」
「イってください雲次、私も……」
「っ……!」
雲次が身体を震わせた。雲生はそれに合わせたかのように身を震わせた。
途端、がちりと開錠の音がする。
「終わったねえ」
審神者は煙草を灰皿に押し付けると、2人の身体の上にタオルを2枚投げかける。この部屋備え付けのものだ。
「どうやらシャワールームの類もないみたいだから、それで大体拭ったら服着て外に出よう。体を洗うなら本丸に戻ってからにして」
「大丈夫? 僕ら変なにおいしない?」
「なんなら煙草の匂いで上書きしようか?」
余韻もへったくれもなく騒ぐ審神者と雲次。そんな彼らを、体を拭いながらも雲生は微笑ましそうに見ていた。
「あ! 主たち、また変な部屋にいたの? お題クリアできたの?」
「お題はまあ、雲生と雲次がいたから。はー、AV監督の気分味わった」
「は?」
「あの、主、雲次が嫌がりますので」
「ちっ、雲次に免じて許してやる」
了