▼架空のファンタジー世界観の王宮での立ち回りをするゲームをプレイしながら、童子切に色々教えている獅子王。そこに通りかかったのが審神者
pixivより転載
童子切は、様々なものが欠落しているがゆえに、政府から「剥落」の号を与えられている。
政府としては、それぞれの本丸で童子切に「人間性」を与えて欲しい、ということだった。
そういうわけで、面倒見の良い先達の刀剣男士が様々な形で世俗のことを教えていた。
その中で、獅子王はと言えば。
『そんな……殿下!』
『聞く耳は持たん! 貴様とは婚約破棄をする!』
「で、ここからどうするかが序盤の重要なポイントでさ」
「そうですか」
「……何してんの?」
その部屋を通りがかった審神者が問いかける。そこでは獅子王と童子切がゲームをしていた。そのゲームの内容が気になったので、思わず声をかけたのだった。獅子王が明るく、童子切はいつも通りの無表情──恐らく表情の作り方を知らないので今後は情緒面の育成も考慮すべきだろう──で審神者を出迎える。獅子王は笑う。
「見ての通りゲームだよ」
「ジャンルなに?」
「悪役令嬢が世界制覇を成すまでのナーロッパRPG」
「壮大過ぎない? 童子切大丈夫? ついていけてる? まず悪役令嬢と言うのがどういうものかわかってる?」
「……ヨーロッパっぽい物語での逆張りキャラ?」
「まあうん大体当たってんね。意外と飲みこみ早いね。もしかして誰かに悪役令嬢もの読まされてる?」
「それよりさぁ主、主の意見が訊きたいんだけど」
「何?」
獅子王がコントローラを持ちながら尋ねて来た。獅子王は言う。
「主的に、普段はそんなんじゃないけど、国民から人気があって発言権のある国王にどうやって取り入る?」
「そういうゲームなのこれ」
「審神者の意見、聞きたいです」
「うーん……」
そう言われ、審神者はしばし考えた。
それから、前提条件を崩すことを言う。
「まず俺が悪役令嬢じゃなくて、王宮に出入りできる程度の貴族の男だとする。それで10年以上かかる計略になるんだけど」
「!?」
「まず、タイプの異なる美しくて健康な孤児の少女を3人ぐらい引き取る」
「もう話が怪しくなってきた」
訝しむ獅子王ときょとんとしている童子切。2振りの前で審神者は語る。
「それで礼儀作法教養、そして3人それぞれに違う愛嬌を仕込む。それで王様に、『ウチの娘年頃なんですけど側室にどうですか』って言う。多分ひとりぐらいは気にいるだろうからね」
「あ、正室じゃないんだ」
「側室の方が安全だからね。それで娘を通じて王様を篭絡する。娘に進言させて俺を出世させる。王の側近の地位に収まればこっちのもん。あとは王様に自分の良いように色々吹き込むだけ。――こんなもんでどう?」
そう審神者に問われた獅子王と童子切。童子切が脳の処理に時間がかかっている中、肉体を持って顕現して10年以上の獅子王は胡散臭そうなものを見る目だ。
「主って藤原道長の生まれ変わり?」
「誉めてる?」
「あまり」
「そっかー」
「……あの」
童子切がぽつりと呟いた。審神者と獅子王がそちらを向くと、童子切は拙く問う。
「なぜ、孤児……」
「あぁ、そういえばそうだな。養子にするなら貴族とか平民の娘とかでもいいじゃん」
それに対する審神者の返事は明瞭だった。
「貴族に親族がいると、そっちが外戚として発言権を持つから。平民でもいいけど、偶に政治センスのある平民とかいるし。その点、孤児なら俺が親。俺だけがこの世をば」
「道長~~」
獅子王が思わずつぶやく中で、審神者は頭を振った。
「まあ、完全に政治として考えるとこうなっちゃうけど、俺個人としては女性の権利をあまりに侵害した行為だからやらないよ」
「主って優しさで損するタイプだよな」
それに、審神者は曖昧に微笑んだ。
「あ、あとある程度地位のある貴族前提で語ったけど、平民から成り上がれって言うんならまず兵士として名を上げるところからはじまる」
「その辺も興味深いけどゲームの続きさせて」
「そっちから訊いてきてひどくない?」
彼らの応酬を見て、何かを学習する童子切だった。
了