▼女の子の審神者とキャッキャウフフさせたいのにどうにも御手杵がまともな恋愛感情を抱く為にはまず体から関係を持たないといけなさそう、という脅迫概念の為こんな感じ
そして今夜も、夢を見る。自身の精力を奪い、与えられる。そんな御手杵との夢を。今夜はどんな夢だろう。そんな事を考える余裕まで出来てしまった。本人とは主従以外には何の関係もないというのに。審神者は、それでも目を瞑った。
……この指を、噛んではいけない。現実に、彼の指が傷付いてしまうから。それを頭のどこかで理解していたから、覆い被さる大きな体。唇から滑り込まれた長い指に舌を這わす。情けなくも声が出た。抑えられない。敷布を握りしめる。寝間着が乱れ、最早腰や背中に巻き付いているだけになっていた。それでも寒さも涼しさも覚えないのは、先程から審神者自身へと滑らせる手を止めない御手杵の体の為だ。既に今夜は4度目だ。後孔に覚える異物感には既に麻痺していた。彼の顔立ちに近く長いそれは、少年の解された後孔を何度も貫いていた。しかし、基礎的な体力が違う。既に審神者自身から出る精は水に近い程に白さを失っている。3度も出せば当然だ。だが、相手は仮にも「神」である。男同士であれ、「種付け」の行為は通常のそれより多い。たとえ御手杵自身に神の自覚が薄くとも、それは事実だった。
「なぁ、もう駄目なのか」
身長差のある審神者の耳に、背を撓め囁いてくる。それは「それでも構わずに続ける」と暗に含めていたが、それでも一応は確認を取ってくるのがこの付喪神の性質なのだろう。育ちが良いのだ。それを思い出しながらも、審神者は頭を振る。既に自身の「良いところ」は把握してしまわれている。口腔の敏感な部分を指でなぞられ、堪らず背を撓めた。御手杵の堅い腹が触れた。まだ若い、思春期の少年だ。引き出そうと思えば体力自体はあるのが若さだ。だが、「これ」とそれとでは話が違う――辛うじて指を傷付けないように、引き抜いてから話そうとする。今夜はもう、駄目だ。このままでは、ぐずぐずにされてしまう。既になっているが、次に放てばあられもない程に自身は「崩れて」しまう。それに対する矜持はまだあった。だから、敷布を掴んでいた両手をそっと離し、御手杵の手を握る。
これは夢で、それも現実に影響を出してしまう質の悪いものだ。気付いていない御手杵を今後も気付かせない為にも、そっと引き抜かせなければ。
刹那、息が詰まった。指が、手が押し込まれたのだ。驚いて後孔を締め付ける。御手杵の吐息が項にかかった。御手杵の手を夢中で引っ張る。器用なもので、相変わらず尻は穿たれているし審神者自身も撫でられている。加えて口も塞いできていた。その器用さを普段から発揮しろ、などと悪態を吐きたいところだが、それもできない。鼻で息をする事を漸く思い出しかけたところで、御手杵は囁いた。
「……やっぱ、俺が駄目だ。もう少し、付き合ってくれ」
抵抗も拒否も出来ない。また、白くなる。5度目以降の自分に想像がついた。頭の天辺から足の爪先まで喰われ、決して、この御手杵と同室で眠り続ける同田貫や蜻蛉切に聞こえぬ喘ぎ声を上げ続ける事を。
いつもの事なのだ。
同田貫はその日、馬当番だった。友人となった御手杵と同じ内番である。この日、割り振りをしてきた審神者はいつも通り朗らかで、且つ、御手杵に対してはどこかまだ堅かった。他者の色恋に関してはあれ程までに鋭いのに、なぜ自分の事についてはこれ程までに不器用なのか、時に同田貫は不可解になる。厚と昼餉を共にする約束を朝に交わしたのち、馬小屋に向かっていた同田貫は、ふと、ジャージを着て軍手を嵌めようとしている御手杵の手の「それ」を見咎めた。
「おい、御手杵。もう馬にちょっかい出したのか」
「へ」
「その手の噛み痕」
いってから、噛み痕が馬にしては小さい事に気付く。右手についた、僅かな噛み痕。光の加減でないとわからない程度の、傷未満のそれ。くっきりと残っていたそれを、御手杵は見遣る。
御手杵は同田貫以上に戦が好きだ。戦う事以外に興味の欠片もない。だから色恋にも疎く、そして極端に性欲が薄い、と思われていた。しかし、この傷は何なのだろう。昨夜も1回自身が厠に起きた時も、あいつは暢気に寝ていた筈だ。夜回り当番の刀剣達も、誰も起きていなかったという旨を審神者にしていたのを覚えている。しかし五虎退の虎や狐、亀のどれにも相応しくない。強いていえば、やはり人間の噛み痕――しかし、御手杵は首を傾げた。
「うーん、なんだろな。ジャージのチャックでも巻き込んで寝たのかも」
「それでそんな風になるか」
そんな話をしながら厩につく。そして御手杵と離れたのち、ふと、ある事を思い出した。
――厚がまだ慣れなかった頃。自身が彼の口を塞いでやる為に、指を口の中へ突っ込んでやった事があった。厚は傷付けないように気を配ったようだが、小さな噛み痕が指に残った。
丁度、あんな形に。
「……でも、寝てたよな」
「うわ、たぬきー、助けてくれ。馬が俺の頭を喰ってくる」
「今飼い葉を持っていくから待ってろ。望月、それは確かに茶色くてふわふわしてるが飼い葉じゃねーぞ」
御手杵のあまり深刻そうでない悲鳴を聞き届け、餌の用意をする。同田貫はそして、その思考を厩に置き忘れていったのだった。
End.