※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

171 / 178
おてさに♂前提 新撰組原田左之助の小姓が使ってた同田貫の話
▼同田貫の頑丈さに夢を見ました
▼最初聖杯乱舞のつもりだったんですが、これFGO要素なくね? ってことでこうなりました
pixivより転載


【オリ刀剣】「二つ身正国」

 ひらり、桜が散る。

 そのとき、近侍を同田貫にしていたことが影響したのだろうか。

 そこに立っていたのは、浅葱の羽織を纏った、白髪赤目の同田貫正国だった。

「──同田貫正国……は、もういるだろうからこう名乗っておく。俺は『二つ身正国』。二束三文の身の上だが働くぜ。宜しく」

 呆ける審神者に、逆に目つきを鋭くする同田貫。

 確かに狙ってはいたのだ。鍛刀キャンペーン、新たな正国が来ると聞いて待ち構えていた。同田貫を近侍にしていたのもその一環だ。同田貫は少々嫌がっていたが。

 審神者は新しい刀剣男士が来る、という情報だけ入れていた。物欲センサーを切るためにそれ以外の情報を断っていたのだ。そしてめでたくやってきたわけだ。「二つ身正国」が。

 その二つ身は、ふと審神者を見つめた。それから、ぽろりとこぼす。

「……主?」

「? そうだよ、審神者だよ」

「そういう意味じゃなくて……まぁいい」

 

 彼を最も歓迎したのは、新撰組男士たちだった。

「よーく来た! よく来た二つ身!」

「待ってたよ」

「同田貫がいるのに別個体扱いされたんだねぇ」

「よく来た。待っていたぞ」

「二つ身くん、好きな食べ物憶えてね。僕が腕を振るうから!」

 それを意外そうに見ていたのは、御手杵だった。特に何もコメントのない同田貫に言う。

「お前、集合体ってやつだろ? あいつそんなに飛び抜けて個性強いのか」

「とびぬけて、かは知らねぇが、新撰組が使ってたってことで知られてる奴だな」

「確かにだんだら羽織着てるけど……新撰組の隊士にも使われてたんだな」

「人斬り彦斎も同田貫使ってたって話だからな。幕末で使ってる奴がいてもおかしくねぇよ」

 そう言って、同田貫は去っていった。

 御手杵は同田貫の相変わらずのドライさに肩をすくめながらも、さらなる懸念点を覚えていた。

 ──二つ身が、審神者を熱心に見つめることがあるのだ。

 審神者と結婚済みの身としては、それが心配だったのだ。

 しかし、それ自体は杞憂だったのだった。恋愛感情と言う点においては。

 

「主」

 ──執務室にて仕事をしていた審神者に、そっとかけられる声がある。

 審神者が顔を上げると、執務室の前で湯呑を乗せた盆を持った二つ身がいた。きちんと盆を床に置き、彼自身は膝を突いている。それに「ああ、有難う」と笑った。

 二つ身が茶を差し出してくるのを見ながら、審神者は笑った。

「そんな風に、ちゃんと膝を折って茶を持って来る刀剣男士ははじめて見たよ」

「前の主が小姓だったからな。こういうのは見て覚えた」

「──ああ、『●●●●●』ね」

 それは、新選組十番隊隊長原田左之助付の小姓の名だった。

 審神者は、二つ身が来てから調べたことだが、彼にゆかりのある刀だと知った。

 「●●●●●」は、江戸の商家の末息子だった。剣で身を立てるべく千葉道場に熱心に通い、結果として浪士組に入る。容姿が優れていたらしく、手籠めにされそうになることは再三あったらしい。当時の浪士組三番組が彼を庇い、結果として彼は新選組の隊士となった。そしてその際、原田左之助の小姓となったのだった。

 当節15歳。白子の美少年だったという。そう、丁度、この審神者が徴用された頃のような……。

 審神者はその話を把握していた。なので、落ち着いて茶を飲んだ。

「──あんた、俺の主か?」

 そう尋ねて来る声は、低い。

 審神者が見遣ると、二つ身は盆を両手に持ったまま赤い眼で見つめて来る。

 その顔は必死とも、茫洋とも取れた。同田貫と同じ傷だらけの貌。しかし彼とは色を異にする。審神者や、「●●●●●」と同じ白い髪に赤い眼をしていた。それは、恐らく元の主の影響だろう。

 二つ身は、重ねて問う。

「あんたは、『●●●●●』なのか?」

 その赤い眼に狂気を孕んでいたことを、審神者は看取していた。

 だから、彼は落ち着いて答えた。

「真であり、偽である。俺は彼の傍系の子孫だからね」

「……」

「真名も一緒だ。……ああ、真名に関しては古株は皆知っていることだから気にしなくていいよ。我が家はね、アルビノが生まれると同じ名前を与えるんだ。だから、俺は世襲で『●●●●●』を名乗っているとも言える。そういう意味では同一人物だし……多分、前世のひとりじゃないかな、俺の」

「!」

「でもね、二つ身」

 いきり立ちかけた二つ身に、審神者は飽くまで落ち着いていた。

「生まれ変わった時点で、別人なんだよ。それはお前たち付喪神が長年人を見て来てわかったことじゃないかな」

「……」

「……まあ、今も俺はお前の主だからね。主って呼びたいなら好きなだけ呼ぶといいよ。ただ、俺はお前を振るうことはできないよ」

「──なぜ」

(ああ、やはり「そこ」か)

 二つ身の熱を帯びた言葉に、審神者は察する。

 彼は、振るうより振るわれたいのだ。それも、前世の主と同じ人間に。

 しかし、審神者は言う。

「俺は、お前たち付喪が宿るほどの刀を振るうとお前たちを憑依させてしまう。そのまま合着してしまう。以降この体は付喪神のものとなる。以前、そういう事件があったんだ」

「──」

「俺は、俺自身でいたい。そして俺の身体の支配権を奪うのも、お前たちの本意ではないでしょう。だから、この話はここで終わり。……ごめんね」

 二つ身は、息をのんでいた。赤い眼を瞠り──しかし、やがて、盆を持ったまま、手を膝に降ろした。

「そうか。……そうか。あんたは、俺の主であって、もう俺の主じゃないんだな……」

「ごめんね」

「謝るな。──ここで誓う」

 二つ身はきり、と顔を引き締めた。

「二つ身正国は、嘗ての主が原田左之助に仕えたように刀を振るう」

 それから、どこか切なそうに笑った。

「……これで、いいんだろ」

 なるほど、そのような顔も声も「同田貫正国」はしない。彼が個体として扱われた理由が審神者はわかった気がした。

 

 二つ身正国。その名は「使い手が不逞浪士をただ一撃で腹から身二つに斬った」ことに由来するという。

 天下の折れず曲らずの剛刀に相応しい逸話と言えた。

 

 

 

 

 

了

 

 

 

なお、二つ身正国は主人が原田に付き従って靖共隊に入りその後死の床の原田の言いつけを守り彼の家族を陰ながらサポートしていた段階で二束三文で売り飛ばされている。なので現在は所在不明

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。