▼たぬきは外見年齢、というか人間年齢でいったら案外若いんじゃないかって気がしてます。血の気の多さとか。若くて10代後半、老けてても20代前半。一方あっくんは筋肉がそこそこついてるらしいので中1ぐらいとか たぬ厚におにショタ好きの血が騒ぐのです……
お題は「恋愛に関するいくつかのお題」より。
それを知られたのは、偶々だ。厚と自身の内番が重なった。その時に、人目がなかったのを良い事に唇を重ねていたのを、まだ風邪の治りかけだというのに本丸を抜け出そうとしていた審神者に見られた。互いに気まずい一瞬だったと、のちに2人で振り返ったものだ。その上、背丈が見合い、且つ布で顔を隠せるという理由だけで山姥切の変装をしていたものだから、その顔から審神者の声がした時は、揃ってパニックを起こしそうになったものだ。
結果として、審神者は味方だった。正確には、良き主というべきか、強かというか。審神者は2人を落ち着かせ、少し前から付き合っているという旨を打ち明けた時。同性の審神者はけろりとしたものだった。見事に山姥切に変装していたので、その表情に違和感がある程だった。
「お前らはみんな神様なんだから、人間の法律は適用されないよ。つまり少年法とか子供に手を出しちゃいけないとか、そういうのは心配しなくていい。男同士なんてのも全然構わないし。そもそもジェンダーを与えたのは俺達な訳だからね。俺自身もそこまで縛るつもりもないし。そもそも、厚の実年齢は子供じゃないでしょ。それで合意の上で付き合ってるんなら宜しい。無理矢理ならしばくけどな」
揃って胸をなで下ろした。そしてその隙に「じゃっ、俺は小一時間ほど出掛けてくるから」と駆けだした審神者は、3時間後に偶々出掛けていた三日月に背負われて帰ってきたのち、見事に風邪をぶり返させていた。心配のあまり、看護しながら一頻り罵倒した近侍の清光と手伝いの安定が出て行ったのち、自身が見舞いに行ったのは「あの時、思わず止め損ねたせいもあるな」という自責の念もあったからだ。比較的最近やって来た厚よりも、最初に鍛えられた太刀の自身の方が、ここの一見人の好さそうな審神者の行動パターンを把握していたというのに。見舞いの品を片手にやって来た時に書物を広げていた審神者は、暫く談笑したのち、「そういえば」と何気ない様子で訊いてきた。
「田貫と厚、お前らってもうヤったの」
「………………あんたの時代より200年ぐらい前に、せくはらって概念が生まれてなかったか」
日に焼けた顔が勝手に赤らむ。この時は、まだ口吻を交わす程度だった。顔を背ける自身に、本を傍らに置いた審神者が笑っていう。
「気に障ったなら謝るよ。でもここの主としては、士気にも関わる事だから確かめておきたくてね。お前らの体は、エーテル体……多少特殊な物質で出来ているといえど、ヒトのそれだ。厚は、あの年頃の見た目にしては体が厚い方だ。けど、お前とは比ぶべくもないでしょ」
「……手を出す時は、気を付ける」
「是非そうしてね。厚は付喪神としてはあれで完成されているといえど、体自体は人間の子供だ。無理をすれば傷付ける。同じ『付喪神』同士でないと、お前らの体は傷付けられないからね。それに」
正論だ。腹立たしい程に。思わず苦虫を半分程噛む。目を背けていた自身に、審神者は「こっちの方が本音なんだけど」と付け加えてからいった。
「厚の精神性も、子供のそれに近いから。繰り返すようだけど、合意の上ならいいんだ。神は人を裁けるけど、その逆は出来ない。人権は君達には適用されない。君達はヒトではないから。これは君達と対話する、審神者としての采配の問題だ。だから、手を出すなら、まずそういう事に馴染ませてからにしなさいね。あの子が可愛いんでしょ」
「……………………おぅ」
いわれずとも、それ程色恋沙汰に手が早い訳ではない。子供のそれと変わらない、自慢にもならない自負があった。他の審神者の元で同様にヒトの姿を取っている自身の中には、同じような悩みを抱いている者もいるのだろうか。そんな事を考えながら頭を抱える。そんな同田貫に構わず、部屋の隅の小さい冷蔵庫から新しい冷●ピタシートを同田貫に取らせた審神者は、慣れた様子でうまい事、前髪を巻き込まずに額にそれを貼った。それを眺めながら、同田貫はぽつり、呟く。
「……つーか、あんたはなんでそんな事にやけに詳しいんだ。あんた、成人すらしてないだろ。女の下世話な話も和泉守とかとしてたし」
それに、しばしの沈黙があった。そして、布団に潜り込んだ審神者は、にこり。アルカイックスマイルを浮かべた。何かを悟りきった笑みだった。
「同田貫正国。ヒトにはね、訊かれたくない事がひとつやふたつやたくさんはあるんだよ」
「俺が悪かった」
即座に頭を下げる。どうやら開いてはいけない、審神者の心の傷の扉のノブに触れかけたらしい。訊けば、審神者になる前。時代を遡航する為に当時の流行病などに罹らない為にも、一般にはまだ出回っていないようなワクチン接種などを行い、結果として風邪菌以外の体に強くなる前。幼い頃からたくさんの医者の元を転々としていた。つまり親元から離れて暮らしていたも同然だ。同田貫が太刀として鍛えられた時代の頃から、医者の善し悪しは様々だった。保護者のいない子供が、質の悪い医者や看護師の元でどんな目に遭わされるか。自身が付喪神として仮初めの体を得た現在も、弱き者は犠牲になるのは変わらないらしい。なるほど、自分達に心を砕いてくれている訳だ。山姥切その人にしか見えなかったあれ程見事な変装技術も、ひょっとしたらそんな場所から逃げ出す為に磨いたのかも知れない。納得したので、「それじゃ、新撰組系の刀の奴らが心配してるからとっとと元気になれよ」とそそくさと立ち去る事にした。
そんな事もあったなと、数ヶ月後。膝に乗せた厚の小さな頭を眺めて思い出す。布団の上、自身の膝の上に乗せるのは、上は前をはだけさせ、下半身に一糸纏わぬ厚だ。厚の、見た目の年相応の彼自身と、同田貫のそれが上下で重ねられた。どくどくと血管が脈打つそれと、幼く色の薄い厚のそれと比較される事で、益々2人の息を荒げさせる。はくはく、と。鯉が餌を求めるように、腕1本で抱え込んだ厚が声もなく喘いだ。それに、思わず自身達を握る力を強めてしまう。
「あ、う」
「……少しぐらいなら、声を出しても大丈夫だ。この部屋の辺りの連中は遠征に出てる。3時間は帰ってこねぇよ」
常より低めながらも、煽る。それは事前に調査済みの事実だ。
元々、広くいくつもの部屋があるここは、まだ戦力が十分ではない。その為に部屋が余っており、自分の隣近所にヒトのいる部屋が数部屋空いている事などざらだった。特に、長時間かかる遠征で纏めて住人達がいなくなる事もある。それを見越しての、余分な部屋での逢い引きだ。もう、何度も繰り返している事だが、いまだにそれでも慣れないらしい。声を逃がすように息を吐いた厚は、頭を振った。だが擦り上げれば、稀に細い喉から声が鳴った。それに、そろそろ達しそうな感覚を味わっていた。
――長い口吸いから、抱擁。体に触れる。そこから肌を触れ合わせていった。先日から、互いの自身をさらけ出すようになった。口を吸えば上気する頬、抱きしめればわかる体格の差。幼く小さい体に、柔らかい子供の肌。それらを知る度に、徐々に慣れてきた様子の厚に、同田貫は何度も欲情した。
(丸ごと食いてぇな)
本来、ただの刀であれば覚える事のなかった感覚。欲求は、本気の食欲が2割程占めている。しかし残りの8割が圧倒していた。刹那、頭が白くなる。
「――っ」
「ぁ」
小さく、喘ぐ。2人の先端から、白い液が出た。
……あとには、静まっていく息。2人の膝を汚したそれを手近な懐紙を引き寄せて拭っていると、くたり。厚が胸に凭れてきた。押し殺していた声は、掠れている。
「……あのさ、たぬきさん」
「ん、なんだ」
「この間から思ってたんだけど……俺の『後ろ』、使わないのか」
「…………別に構わねぇだろ、お前の負担が増えるだけだし」
顔を上げて尋ねてくる、厚の顔はまだ上気していた。掠れた声のそれは、あまりに魅力的な勧誘だ。実のところ、そういった欲求は以前から出ていた。この、自身と比べれば小さく細い体を自身で貫き、中から揺さぶってやりたい。刀としてはある意味当然の欲求だったかも知れない。
だが、それに関しての知識も調べたので知っている。下準備をしなければならないのだ。下手をすれば、この、自身にとっては掛け替えのない子供に傷を与えてしまうだろう。それは避けたかった。だから、厚の内股を清めてやりながら、言葉を連ねる。下手にその姿を想像すれば、また自身は盛り上がってしまう。
「別に、今ので満足だろ。擦りあわせてれば充分気持ちいいだろ。他にも色々やったし」
いって、口を閉ざした。それで会話は終わらせるつもりだった。しかし、不意に、自身から離れる、厚は違ったらしい。
くるり、振り返る。そして、自身に向かい合わせに抱きついてきた。そのまま、仰向けに倒れる。右手に懐紙を持ったままだった同田貫は、思わずそれを落とす。ぬるり、まだぬめっている厚と田貫自身。それが腹でぶつかりあっていたのもそうだが。
何よりも意外だったのは、その厚の顔だ。不敵に笑う顔は、彼の妹……ではなく弟が見せるそれにも似ていた。押し倒した同田貫の下半身の上。跨った彼は、舌なめずりした。常ならば見せないような顔だ。その右手が、見えない。視線をやって――そして、気付いた。
音だ。濡れた音だ。だいぶ湿った音は、どこから発せられるのか。上気したままの厚の顔を見ればわかる気がした。厚の指が、厚の中に入っている。そして、その姿態を見てまた硬くなりはじめた正直な同田貫自身を持ち上げた。口の端を釣り上げる、彼は同田貫自身を、既に拡張していたらしいそこに、宛がう。そして、艶やかに笑った。
「組み付いちまえば、オレのもんだ」
それは、戦闘の時。「鎧通し」の付喪神の彼がよく放つ言葉だった。敵の懐に入り、鎧の隙間から厚く短い刃をねじ込む。それが彼の戦い方だった。思い出す同田貫の前で、厚はそれを、自身の「そこ」に先端を宛がう。
「あのさ。オレがよく使われてた頃だとさ。『こういう時』って、ここを使う方が多かったんだよ。だから」
「おい、ちょっと待っ」
「ここを使わないと、オレの気が済まないんだよ、――っ」
厚の体が僅かに震える。それは同田貫も同様だ。まだ少し柔らかくなったばかりだった自身は、すんなりと厚の中におさまった。その事実を認識した途端、全く正直なもので。厚の中で途端に膨張をはじめる。厚が声を上げた。はだけたシャツが跳ねた。だが、厚はやはり笑っていた。ゆっくりと、腰を上に下に揺らしながら。
「……やっぱ、あんたもオレの中に入れたかったんじゃん。こんな、硬く、大きくしてさ」
「そ、ういう問題じゃねぇって、おい、」
何とか主導権を取り戻そうとするが、既に組み付かれている。そうは渡すまい、と、声を漏らしながらも、腰を振る。だが、既に力が残っていないらしい。腰はそのまま、しかし上半身は次第に同田貫の胸の上へと撓垂れかかる。明らかに、これは厚のキャパシティを超えているようだ。それに気付いたが、厚はそれでも飽きさせぬ動きで腰を振った。そして、胸の先。大胸筋の上で、手を伸ばした。触れたのは、同田貫の顔の傷だ。それに、喘ぎ声を漏らしながらも彼はいう。
「あんたも、オレに、いろいろ優しくしてくれたからさ。オレも、あんたがしたい事、してやりたかったんだ、よ、っ――」
一際、強く締め付ける。刹那、厚が目を瞑り、同田貫も再び絶頂を覚えた。厚の絶頂により締め付けられたそれは、同田貫にも絶頂に登らせた。
「で、誰の入れ知恵だ」
短刀、否、単刀直入。体力切れで一時失神していた厚が目を覚ました時。一通りの始末は済ませてくれていたらしい同田貫が最初に放った言葉はそれだった。それに、「えぇと」と頬を掻く。顔が赤らむのを感じた。
余程に、自身は切羽詰まっていたらしい。あそこまで自分で迫ると思わなかった。そう考えながら、ぽつり、これまでいっていなかった事を端的に答える。
「大将から……」
「あぁ? 主ィ? 確かに俺達が、その、なんだ。デキてんのを知ってんのはおもにあいつだろーが」
他の、戦国時代生まれなどの刀剣などを予想していた同田貫は、候補に入れていなかった名に驚く。2つ3つしかボタンを留め直していないシャツからは薄く引き締まった下腹が見えた。それからさり気なく視線を逸らしつつも、追及はやめない。それに、厚は少しばかり気まずそうだ。上目遣いに、同田貫を見遣る。
「その、オレ、さっきもいったけど……男同士のこれって、どうしても、後ろを使うっていう考えが頭から抜けなくて。昔はそうだったし……でも、あんた、ここまで慣らしてきてくれても、一向にこっち使ってくれないし……で、たぬきさんのいう通り、主に相談したんだよ。1ヶ月前」
「1ヶ月」
思わず復唱する。結構前だ。それに頭を抱える。そういえば、厚とこういった関係になる前に調べた時、江戸時代の陰間小屋では、「後ろ」を使うのが当たり前だったらしい。厚の使われていた時代も、大名の間では盛んだった文化だ。厚の中でそういう認識のまま固まってしまっていても仕方ないかも知れない。だが、出来れば自分にいってほしかった。……断られるのは目に見えていた、といわれればそれまでだが。そのまま黙っている同田貫に、ぽつぽつと厚は気まずそうに、そして顔を赤らめていう。
「そしたら、『じゃあ、押し倒しちゃえば』って」
「おい」
「『何も自分が受け身で居続ける必要はないんだよ。まあお前らの体で腰痛の心配とかはないだろうけど、入れられる側が腰を振ってやった方が田貫の腰にはいいし』って……」
本格的に頭痛を起こしそうだった。太刀だった頃はなかった心配だ。おい、「厚の体や精神性は子供なんだから」といっていたのはどこの誰だ。だが、同時に「まあ実年齢というか、神様だから合意の上ならいいけどね」とも保険を掛けられていた事を思い出す。そういえば、人の好さそうな顔で、とんでもない悪い冗談をいう男だった。三日月などの老練な者が、彼の口振りに付き合えていた。そして、はた、と。気付く。顔を上げた。目の前では厚が指先をくっつけている。その幼い手を見て、同田貫はやや気まずそうに尋ねた。
「……あのよ、事情はわかった。あとでその辺については主にたっぷり問い質すとして。……お前、もう慣らしてなかったか。後ろ」
「…………そこが1番恥ずかしいんだけど、その」
目を背ける。髪を短く刈り込んでいる為、耳まで赤いのが見て取れた。それに思わず高ぶりそうになる自身を押し止めている中、厚は更に爆弾を落とした。
「毎回、その。大将に相談してから、慣らしてきてて」
「……風呂はここ、合同浴場だろ」
「でも、大将の私室には個人風呂があるから、その」
そこまでいわれて、悟る。事の次第を。厚の赤面の真の意味を。悟られたのを察したらしい厚は、最早顔中真っ赤だ。
「……毎回、直前に大将の部屋の風呂を借りて、そのだな」
「つまり、あいつは毎回……」
「最初の1回しか訊かれてないよ、オレが来たら2回目以降は無言で使わせてくれた、し」
――つまり、「こういう事」をする事を、毎回審神者には知られていた訳だ。この1ヶ月。それなりの回数を。
その事実に気付いた途端、同田貫もまた顔を赤らめた。但し、これは怒りによるものである。
最近になって、漸く使い方を覚えた。鍬を使っていた三日月は、ふと。こそこそと歩いている人影を見咎める。それは姿は加州清光そのものだったが、わかってしまったので、彼は朗らかに笑いながら声を掛けた。
「やぁ、主殿。今日はどこに逃げるのかな。今は風邪をひいてないだろう」
ぴたり、足が止まる。硬直したといっていい。それに構わず、三日月はゆったりと歩み寄っていった。内番の相方は現在席を外していた。大方、厚と逢い引きしているのだろう。若い者はよいな、などと思いながら、加州清光――の姿に変装した審神者の肩に手を置く。こちらを見上げる顔は、ある意味本人によく似ていた。それなりに表情豊かな刀だ、清光は。しかしこの表情は、「なぜわかった」という不満の顔だった。
「ちょっと、今は見逃してくれないかな。仕事も今日の分はこなしたし、あとは俺の自由時間だから」
正体が看破されているとわかりきっているらしい。本来の清光より低い声が漏れた。変声の時に気管支の病を患い、掠れてはいないが、幼い見た目より低い声になったという。その声でやはり、と密かに確信を得た三日月に、清光の姿をした審神者は低く続けた。
「それに、今日のところは暫くほとぼりを冷ましておかないと。あの妖怪兜割らせろに脳天かち割られるかも知れないし」
「おやおや、何か余計な事でもしたのか」
「ある意味正解。野暮だなあ、とは思ったけど、あんまり相手が欲求不満そうで気の毒だったから。あのへたれも、さすがに今日辺りは押し倒されてそうだし」
主語も、正式な名もない台詞だ。しかし誰と誰の話かは、三日月にもわかっていた。第3部隊の編成には1部の刀剣が固まっており、そして先程同田貫が「野暮用」と姿を消したのも、あの刀剣達の部屋の方だった。「そこまで」取りはかられていたと知ったら、あの立派な太刀で丸い頭が割られてしまうどころではすまなそうだ。なので、手を放してやる。
「あいわかった。気を付けろ。適当に口裏は合わせておいてやる」
「多謝。帰ってきたら餅菓子おごr」
刹那、荒い足音と怒号が轟いてきた。幼い声がそれを引き留めるのが聞こえる。一瞬、再び硬直した審神者――しかし、直ぐに駆けだした。
「奢るね!」
「道中気を付けろ」
その黒い背中を見送る。そして畑へと戻る事にした。彼は彼なりに、人権の保障のない自分達付喪神が、ヒトと同じように暮らせるように気を配ってくれているのだとは知っていた。それこそかゆいところまで手が届く程に。なのでそれが要らぬ世話だとあらぶってこちらへ駆けてくるだろう同田貫の姿を脳内に描きながら、せめてその怒りを冷ますよう、説得の言葉を考えるのだった。
End.