▼元ネタの漫画を久し振りに読んだので。ロボットアニメといえばパト/レイ/バーというぐらいにはレイ/バーファンですが映画は演出が良くて結構好きでしたよ
この間、本丸で見た映画に出てきた。甲冑を剥いだ姿はさぞそっくりだろう、あのエイリアンに。もう少し小さければ、人間の顔面に張り付いて卵を産み付けそうだ。違うのは、あれは映画の存在だという事。こちらは今現在自分達が敵対している部隊の部隊長であるという事である。
鯰尾は息を飲んだ。
「……何、あれ」
「あぁ、鯰尾くんははじめてだったね」
がけの上、切り立ったそこでその敵部隊を見据える。自分達第3部隊は現在、やがてここにやってくるだろう第1・第2連合白刃隊の支援の為に、投石兵や銃兵を構えて控えていた。敵に攻撃されぬように、伏したまま「それ」を見遣り、小声で会話する。支援部隊、その役目自体ははじめてではない。しかし、あの「敵」ははじめてだった――槍、薙刀、太刀。彼らの姿は一応は人間のそれに近い。
だが、あの部隊長は違った。甲冑を纏っているだけで、両手は素手。だが、手甲の下の黒い手は巨大な爪が生えている。兜の下に見える赤い複眼と、(存在するのならば)耳元まで裂けたような大きな口に並ぶ鮫の牙。それに甲冑の隙間からはみ出す数多の触手は、鞭めいた動きで辺りの地面を叩いては砂埃を起こしていた。引き摺る尻尾も、同様に地面を掻いては軌跡を残している。
SF映画のエイリアン、怪獣。他の歴史修正主義者と一線を画す――畑違いの存在だ。あれは、付喪神ではない。そんな思念的存在ではない。もっと生々しい――悪意を固めたような「何か」だ。それだけは、鯰尾の仮初めの体にひしひしと伝わってきた。戦く鯰尾に、青江は肩を竦める。
「結局、『あれ』が何なのか、僕らにも主にもよくわからないんだ」
「正体不明なんですか」
「ひたすら見た目がグロいって事と、あの触手が厄介だ。巻き付いて得物を奪おうとする。ちょっと傷付けたぐらいじゃ直ぐ再生する。おまけにやっこさん、『ヒト』を喰いたがる。俺らも刀剣男士とはいえ、ヒトの姿をしているからその対象みたいでな」
「ひぇっ……」
隣の薬研は淡々と語る。更に加えられた危機に、鯰尾は息を飲む。ただの刀剣だった頃は得る事のなかった恐怖だ。「捕食」されるという恐怖など――「落ち着け兄弟」、匍匐前進して近付いてきた骨喰が肩を叩く。しかし、このふるえは容易におさまりそうになかった。
そして、はたと気付く。ここから遠くに見える敵部隊。その戌の方角から、連合白刃隊が馬で駆けてきていた。それを見て鯰尾は焦る。
「ちょ、あんな畑違いの奴と会敵させていいんですか?! なんかもう練度とか俺らの戦術とか通用しそうにない相手なんですけど! どう見ても俺らじゃなくて自衛隊や警察とかが相手取るタイプですよね!? 刀剣じゃなくて重火器の出番じゃないですか!!」
「声が大きいぞ鯰尾」
「大丈夫、僕達は彼女から逃げるのには慣れてるからね。主も気付いたら、この会敵で撤退させるだろうから僕らも遠戦支援したら直ぐ撤退するよ」
「……彼女って」
部隊長の青江の言葉に、鯰尾は呆ける。彼女、「彼女」だって。あれがメスなのか。そういえば先達の彼らはあの化けものに会敵するのははじめてではないといっていた。思わず呆ける鯰尾に、青江は語る。ジェスチャーで「遠戦準備」を呼びかけた。
「1番はじめに会敵した時、御手杵くんが彼女を刺し貫いてね。その時に刀身に残っていた体液を分析した結果、200年前に現れた『怪獣』と同一の遺伝子を持っている事が発覚したんだ。ついでに性別もね」
「200年前……21世紀頃にもですか」
「彼女の先祖の名は『廃棄物13号』。1976年、南極で発見された隕石に付着していたアミノ酸……それから作られた細胞のなれの果てだそうだ。今は仮称として『14号』と呼んでいる。何で今更、しかも歴史修正主義者なんて形で出てきたのかはさっぱり不明だけどね」
エイリアンというのは強ち間違いではないようだ。弓兵の刀装を活性させながら話を聞けば、青江は投石しながら言い放った。
「ただ、彼女もまた兵器……『武器』として生み出されたものなんだそうだ。おまけに人間を元にしているから、僕達のお仲間ともいえる存在だね」
「人間を」
「ヒトのガン細胞だそうだよ」
弓兵が弓を放つ。外れなかったのが不思議だった。鯰尾がひどく動揺したので。
それは鯰尾がその部隊に着任して日の浅かった頃の事だ。
執務室。幾重にも並ぶホログラムのモニター。その中心に座する審神者は、帰投した白刃隊と遠征部隊の報告に、特に動揺した様子もなく嘆息する。
「暫くぶりだねえ。確かにあの戦域は『■■の記憶』の近くだからはみ出してくるかも、とは思ったけど」
「それじゃ、いつも通りの対策を取りますか」
「そうだね。今のところ、過去には警察の機動隊も投入できないからね。刀装に火炎放射器なんてないし」
鯰尾は、執務室の片隅。信じられないものを見る眼で仲間達を見ていた。現在最も新参の彼は、あの「14号」と呼ばれているという化けもののショックから抜けきっていなかった。支援部隊の為に怪我はないものの、トラウマ寸前である。
だが、直接対峙した筈の主力部隊の者は勿論、年若い審神者ですら動揺した様子はない。鯰尾の見たところでは、あの14号の攻撃を受けて強かに鞭打たれた者もいた筈だ。しかし、手伝い札を使って手入れを終える前から、彼が耐えていたのは心ではなく体のみの痛みであると気付かされた。
なぜそんなに平気でいられるのだろう。相手は子細はわからずとも、青江の言葉が本当ならば、所謂「生物兵器」の筈だ。次元の異なる相手が敵部隊にいる事に恐怖はわかないのか――鯰尾が膝を抱えている前で、審神者や他の刀剣男士達は会議を進めている。初期刀の加州が何やら進言すると、審神者は肯いてモニターに触れた。
それは目新しい地形図だった。審神者が広げたそれは、鯰尾がはじめて見るものだった。元々鯰尾は刀剣男士としては戦経験の浅いものの、大抵のところは巡り終えた筈だ。
しかし、審神者が広げたのは、「出陣制限」と蓋をされたフォルダだった。鯰尾の位置からはその年代ははっきりと見えない。ただ、「■■の記憶」という名称だけは見えた。それを広げながら、審神者は彼を囲む刀剣達にいう。
「それじゃ体調の良い奴から早速この戦域に出陣してくれ。総員軽歩兵か軽騎兵を装備するように。とにかく『14号』の攻撃を避けまくれ」
「はーい」
「わかってるって」
「触手相手じゃこっちの分が悪いからねぇ」
元気の良い返事をして、刀剣男士達はぞろぞろとそれぞれの持ち場へ移ろうとする。その光景を、ただ呆然と眺めていた。
一体何なんだろう、この余裕は。呆然とする鯰尾に、モニターを操作していた審神者がふと眼をやった。
「あれ、どうしたの。鯰尾」
「……主さん、俺がおかしいの。あんな訳のわかんない化けものを相手にするって」
「あー、そういえば鯰尾は遭遇するのはじめてだったか。もしかして、14号の話も聞いてないか」
「青江さんから、20世紀末に開発された生物兵器のなれの果てが先祖、とは聴いてるんですが」
「うーんそっか。それじゃあ何で俺達が今、この戦域に出陣しようとしているかも聴かされてない訳か。丁度良い、鯰尾にも出て貰うから話しておこう」
「うぇっ俺?!」
「編成に脇差が必要なんだけど、脇差が手入れ中だったり遠征中だったりだからね。ま、俺もおさらいを兼ねて説明させて貰うよ」
いいながら、審神者は鯰尾を手招きする。ふらふらと立ち上がり、隣に座った鯰尾を見ると、審神者は彼と見た目の年頃の変わらぬ顔に、柔らかい笑みを浮かべた。展開されたモニターのグロテスクな怪物とはあまりに不釣り合いだった。
「結局のところ、なぜこの『廃棄物』が歴史修正主義者達に与しているかはわからない。そもそも思念的存在しか時代を遡航できないという事になっているにもかかわらず、彼女は依然としてそこにいる。主にこの戦域を拠点としていて、滅多な事じゃ他の戦域には出て来ないんだ」
曰く、この部隊が発足して、それなりに練度が向上してきた頃。この戦域に何度目かの出陣をした時、「それ」は唐突に現れた。当時の部隊長の御手杵が一騎打ちで撃退したものの、その場で戦線離脱を余儀なくされた。それ程の甚大な被害だった。明らかに通常の歴史修正主義者とは異なる存在――御手杵の槍の穂先から、「それ」の体液を摂取。こんのすけを経由して政府に調査を要求したところ、政府の研究所が過去のデータを漁った結果、出てきたのが20世紀末に出た「怪獣」の検死結果だった。
当時は公的には明らかにならなかったが、日米合同で秘密裏に開発された生物兵器。南極から発掘された隕石のアミノ酸から生まれた未知の生命体。それにヒトのガン細胞を与えたところ、爆発的に成長し、日本への輸送中に飛行機を落とした程の攻撃力と凶暴性を持ったのが「廃棄物13号」と呼ばれる生物だった。のちにこの「廃棄物」シリーズに関するデータは軒並み米軍が回収していき、その後の足跡はぷつりと途絶えていた――筈だった。
「それが、13号より更に陸上生活に適性を持った『生物兵器』として唐突に出てきたもんだから堪ったもんじゃない。はじめて遭遇したのはウチの部隊だったらしいけど、のちのち他の部隊からも報告が上がったそうだ。『なんだあの化けものは』、ってね。……中には『被害者』の刀剣男士、それに本丸にまで踏み込まれて喰われた審神者もいたっていうからこれが大問題になった。狩衣しか審神者だと証明するものが残ってなかったぐらい食い散らかされたらしいからね」
「うわぁ」
やはり自分の心配は当然だったのではないか。平然と語る審神者の手元にはモニターが見える。惨状を知らせるファイルが展開されていた。
しかしふと、顔を上げる。ある疑問があった。
「あれ、でもこの『廃棄物13号』も20世紀末に襲撃してきたんですよね。どうやって倒したんです、というか撃退する方法があるんでしょう」
「倒したっていうか、毒を打って駆逐したっていう方が近いね。当時の警察の機動隊が、海から上がってきた13号に、自壊作用を促す細胞をこめた弾頭をぶちこんだんだ」
「自壊作用……」
「平たくいえばガン細胞だね。まあ13号もガン細胞で出来ていた訳だけど。その後逃げた13号は、1週間ぐらいあとに波止場に打ち上げられていたのを発見。少なくとも当時はそれで解決した……訳なんだけど」
「じゃあ14号にもそれが応用できるんじゃないですか!?」
期待をこめて膝を打つ。怪獣の倒し方は詳しい事はわからない。しかし、実際に撃退をしたという実績があるのならばそれを使うべきではないか――だが、審神者が次に見せたのは、ある弾丸の画像だった。
縮尺がおかしい。自身の知る弾丸はもっと小さい筈だ。尤も、鯰尾が知る弾丸は陸奥守が持っている拳銃のそれだが。それに審神者も肩を竦める。
「当時、13号にぶち込まれた弾頭と同じ口径の弾頭だよ。対戦車砲の弾頭なんかがこの大きさに近いな。2発作られて、1発は外して1発だけ何とか急所に撃ち込んだらしい。それで事前に薬が効きやすい状態の体になっていたとはいえ、効果が出るのに1週間はかかったんだ。この大きさの弾頭にこめられた量の『毒』を、お前ら刀剣男士がどうやってあの14号にぶち込む。お前らが銃を使うんならともかく、お前ら『刀剣』男士だろ」
「あっ……」
いわれて気付く。そうだ、自分達のアイデンティティだ。陸奥守も、常に拳銃を手放さないものの、銃を扱うのに長けている訳ではない。それはこの本丸にいる者全員がそうだ。この審神者も、何の訓練も受けていないただの少年だ。せいぜいが多少の剣を使える程度で、拳銃を両手で握って撃ち、やっと反動を堪えられるぐらいの体力だろう。鯰尾の見たところ、14号は意外に俊敏だ。大量の「毒」を撃ち込むには6振り全員が銃を持たねばなるまい。それでも足りるかどうかだ。一瞬で悲観主義に戻った鯰尾の前で、審神者は嘆息する。
「まあ、あれから200年だ。もっと少ない量で、且つ即効性のある細胞を作れなくもないだろうけどね。刀装の銃兵にそんな弾頭は今のところ持たせられないし……そのうち政府が14号専用に開発するかも知れないけど、今のところは無理だね。槍男士の穂先にクスリをくっつける、なんて方法も提案されたけど危険すぎるし確実性に乏しい。おまけにやっぱり量も限られてくるしね」
「そ、そんな……せめてこの戦域に足止めさせる方法は」
「200年前は波止場に囲いをつけてその中に足止めして、送電線を張り巡らせて高電圧を流し込んだらしいけどね。良い方法ではあったけど飽くまでその場しのぎだったし、送電線の限界もある。ついでにいうと『時間』に電圧は張り巡らせられない。それにここは陸地だし、13号より更に陸上生活に対応してる14号を水場に落とすのは難しいだろうな。水場ないし、この辺りの戦域」
「うぅ……じゃあ、何で今、またぞろあの14号の本拠地に出陣させるつもりなんですかぁ……」
聴けば聴く程、敵わない相手に聞こえてくる。実際そうなのだろう。生物兵器なのだ。沈黙の200年間、異国でどんな進化を遂げたのやら。歴史修正主義者として再び日本に上陸してきた「廃棄物」は、飽くまで刀剣の付喪神を相手取る自分達にははっきりいってしまえば力不足だ。というより、ルールが違いすぎる。野球選手がレスリングの選手と勝負するようなものだ。淡々と否定ばかりを続けていた審神者に半泣きで訴える。
しかし、審神者はそんな鯰尾に「大丈夫だよ」とあまりにも軽く、軽くいった。
「同じ『廃棄物』シリーズとはいっても、レイバー……土木作業用ロボットに取り憑けるぐらいの大きさだった13号に対し、14号は一応は人間の使う甲冑に収まる程度だ。とはいってもかなりの巨躯だし、あほみたいな生存値とか再生力は目を瞠るものがあるけどね」
「……?」
「あの触手によるリーチと牙が厄介だから、お前ら刀剣男士に勝てとはいえない。ただ、一応はあの触手さえなければお前らが普段相手取っている敵と規模は対して変わらん。それがポイントだ」
それはどういう事だ、と聴く前に山姥切が「おい、そろそろ例の戦域に出陣だぞ」と障子を開く。鯰尾は返事をしながらも、「先輩達についていきゃ大丈夫だから」と審神者に見送られた。その様子は、本当に気軽だった。
そして今。自身ははじめてくるこの戦域で、再びあの「14号」の姿を遠目に見ている。否が応にも喉が鳴った。馬に乗ったまま、刀をしまえない。それを、山姥切が咎めてくる。
「おい、鯰尾。今はしまっておけ。何が出るかわからん、馬の手綱を握れるようにしておけ」
「そうはいっても山姥切さん……俺、ここはじめてなんですよ。14号とかいいましたっけ、あれ、怖いんです」
「主からそれについての説明を受けていたんじゃなかったのか」
「さっき将にその回答を得るところでした。でも肝心な事はまだ」
刹那、金属音がする。否、それはあの14号の鳴き声だった。神経を擦るような声に、鳥肌が立つ。普段は全く覚えない恐怖心を、今まざまざと覚えていた。みっともない、と思いつつも身震いし出す。そんな鯰尾に、山姥切は溜息を吐く。
「全く、主はあそこまで狡猾な癖に肝心なところで……」
「あの、それで俺らはどうすればいいんですか。主はとにかく機動を上げて逃げまくれ、といってましたけど」
「その通りだ。ひとまず14号が出たら回避に徹する。それでボスマスまで頑張って赴く。ある条件をクリアするまではこれを繰り返すんだ。今の編成がボスマスまで行ける偵察値を持ったものだからな。偵察は任せたぞ、鯰尾」
「えぇっと、それはどういう」
「2人とも、来るよ」
蜂須賀の声がする。刹那、山姥切も刀を抜いた。鯰尾は一層身震いした。
そして思う。
今のこんな自分では足手まといにしかならないのでは。
見る間にあの触手がじったんばったん、並ぶ他の歴史改変軍の面子にぶつかりそうな程に暴れているのが見える。あれに刀を奪われたら終わりなのだ。震えながらも、部隊長の山姥切がどんな指示を出すのか、会敵の瞬間を待ちかまえた。
刹那。
14号が、背後から貫かれた。
「?!」
「丁度良かったな」
いって、山姥切は馬を止める。それに慌てて鯰尾も止めた。見れば、他の刀剣達も慣れた様子で騎馬を止めている。
「え……え!?」
「落ち着け鯰尾」
「いや、だって」
「考えてみろ、鯰尾。主から聴かなかったか。俺達は以前、ここを『周回』していたと」
「あ、うん……」
状況が飲み込めず、慌てる。山姥切の言葉を聞きながらも、眼前の光景をただ眺めていた。
14号が刺し貫かれた。しかし、持ち前の再生力で直ぐに復活する。そして、背後から襲いかかってきた「それら」と相対した。気のせいか、「それら」も苦虫を噛み潰したような表情をしていた気がした。
検非違使だ。
「周回をすれば、もれなく検非違使が眼をつけるようになる。そして検非違使は、そのマスにいる歴史修正主義者を『斬り伏せてから』俺達と戦う。つまり、検非違使はその習性上、俺達を倒す為にまずは必ずそのマスの歴史遡航軍を潰さなければいけない訳だ。だからこうして俺達はそのつぶし合いを眺めていればいい。どんなに相手が強かろうと、検非違使の連中は俺達が来るとこの戦域に来ざるを得なくなるからな」
「ひと言でお願いします」
鯰尾の言葉に、案外ノリ良く山姥切は応えた。
「お巡りさんこいつです」
「よくわかりました有り難う御座います」
「主の時代から200年前のお巡りさんが『廃棄物』を撃退したそうだよ。それから思いついたんだって、主」
蜂須賀が馬を寄せてくる。眼前の検非違使達と14号率いる歴史遡航軍の戦いは長丁場に縺れ込みそうだ。既に解けかかった緊張感。刀は抜いたまま、しかし蜂須賀は笑っていう。
「『検非違使も警察なんでしょ。だったら14号も警察に任せればいいじゃない』っていうのが主の提案でね。敵の敵はやはり敵。こちらの戦力を削る事なく14号をどうにかする現状唯一の方法だって主がいってた。14号は検非違使にも俺達刀剣男士に対してのように襲いかかるようでね。一旦この根城にしている戦域で検非違使を活発化させると、14号も検非違使に挑むから他の戦域に出て来なくなるんだ。おまけに検非違使も暫くは鎮静化するから一石二鳥という訳」
「……主さんの提案ですか」
呟いて、再び前方を見遣る。触手で貫かれたり引っかかれたりしながらも、果敢に14号に挑む検非違使達。その姿は泣きが入っているようにすら見えた。
気の毒だった。仕掛けたのは自分達とはいえ、少々あまりではないか。ちくりと良心が痛んだが、その前に再び14号の姿を見るとその痛みも消えた。怖い。
「ウチの主が提案したこの作戦は、政府に通過してな。今はどの本丸でも定番で行われている作戦らしい。まぁ、検非違使達には14号をどうにか歴史修正主義者から取り上げる方法を政府が見つけるまで頑張って貰うしかないな。……あぁ、終わったようだ」
いいながら、山姥切が刀を構える。鯰尾も構えつつも、彼は見た――形勢不利と見てか逃げ去っていく14号。それに、通常ならば100以上の生存値で自分達に挑んでくる検非違使達が、50も残っているかというボロボロの姿で、しかし自分達に敵意を向けてくる様を。
思わず呟いた。あの温厚そうな少年の審神者の笑顔を思い出しながら。
「主って、鬼ですか」
「残念ながら人間なんだよね」
頭を振る蜂須賀は、どこか悟りきっていた。
出陣制限戦域「■■の記憶」
~
(KBC「怪獣退治は俺達の仕事じゃない」)
その後、歴史修正主義者達から「14号」を没収する政府の作戦が成功。よってこの作戦は実行されなくなる。だがそれを知った際、「検非違使を引きつけられなくなったな」と審神者がひどく残念そうにしていたのを、鯰尾はしかと目撃した。
人間が1番怖い。鯰尾が実感した瞬間だった。
End.