▼お題は「わるものマニア」(http://www.w-mania.com/)より。
▼花丸でほぼ毎週出て来る杵に突き刺されまくりです。今週はとうとう……脱いだ! 胸から上しか見えなかったけど!
pixivより転載
切欠は、いつも通り。縁側で脇差たちと談笑していたときだったと思う。丁度、脇差男士の極が実装されて、最古参の脇差の堀川が帰ってきたのをささやかながら祝していたときだ。堀川の隣に座っていたのが御手杵だったのは、偶然だった。なので、彼の耳元を飾るピアスに気付いたのも偶々だった。三名槍のうち1番の偵察力は伊達ではなかった。
「堀川、そのピアス、たしか和泉守がつけてたやつじゃないか」
「お、さすが御手杵さん。気付きましたか」
見咎められた堀川は、周囲が覗き込む中、嬉しそうに耳元に手をやる。その手の中には、三連の飾りがついた丸いピアスが下がっていた。それはたしかに、戦闘中、和泉守が刀を振るう度に、長い髪と一緒に揺れ動いていたピアスと同じものだ。堀川は照れたように笑う。
「折角極になったんだから、お祝いをやるっていわれて。それでこのピアスをくれたんです。お下がりですね。兼さんが極になったら兼さんの新しいピアスを選んであげる予定なんですよ」
「お下がり、なんていう割には嬉しそうだね」
「ピアスの交換かぁ。幸せなのが何よりです」
「ふふ、彼の1部だったものを自分の身につける、そして自分の1部だったものを……ピアスのことだよ」
「にっかりは、修行に行ったらそのせくはらはやめるのか」
「ひどいなぁこれはもう僕の1部だよ」
「ピアスかぁ、僕らでアイドルユニットを組んだらお揃いのイヤリングをつけてみるというのは」
好き放題。無秩序。打刀ほどではないが個性派揃いの脇差男士たちは今日も賑々しい。それに微笑ましそうに頷きながらも、御手杵は尋ねた。単純に気になったからだ。
「ピアスって、そんなにいいもんなのか」
「うーん、僕らは顕現したときからついてたからなぁ。でも兼さんからもらったピアスは大事にするよ!」
そう拳を固めて意気込む堀川に、御手杵はふぅんとだけ答えた。
彼がピアッサーを買ったのはその日のことだ。
「なぁ主。あんた、ピアスを空ける気はねぇか」
「何を唐突に」
夜。執務室で書類を整えていた審神者の元を訪ねたのは、ピアッサーを片手に持った御手杵だ。遠くからは大広間の喧噪が届く。そんな時間だ。御手杵は審神者の当然の反応にすぐには答えず、後ろ手で障子を閉める。膝を突いて躙り寄ってきた御手杵は、審神者に、手に持っていたピアッサーを見せる。審神者は幼顔に呆れを載せた。
「そのピアッサーどうしたの」
「万屋で買ってきた」
「売ってんのかい万屋……そもそも今は空ける気はないよ」
座卓に頬杖を突く。えぇ、と至極残念そうな声を上げる御手杵に審神者はひらひらと片手を振る。積み上がった書類が彼の手首を痛ませていた。
「俺、現世で野球やってるし」
「やってると不都合があるのか」
「23世紀の今日日、刺青もピアスも自由だけどね。野球やってる奴がそういうのやってると白眼視されるんだよ。特に10代まではね。大学以上だと個人の自由ってことになるけど。だからピアスを空けるときは、すくなくとも高校を出てからだね」
23世紀の昨今でも10代までの野球チームあるいは野球部に所属する者は坊主頭が推奨される。それは200年前から変わらない。偏に凝り固まった風習のため(坊主頭の方が手入れが楽という点もあるが)で有髪の審神者も疎まれがちだが、そんなことを知らない御手杵は、ピアッサーを片手に唇を尖らせる。
「ちぇー」
「そういうわけだから今は諦めて」
「あ、じゃあさ、高校卒業したら俺に孔を空けさせてくれるか」
「そのときは病院で空けてもらうつもりだったけど……素人のピアッサー怖いし」
「Oh......」
失意体前屈。ピアッサーを畳に落とす。それを拾って審神者は苦笑いした。
「なに。そんなに俺の耳に孔を空けたかったの」
「刺すことだったら……」
「ああ、いわれてみればピアッサーも『刺す』んだもんねえ」
手の中でピアッサーを弄びながら審神者は肯く。そしていった。
「それなら、俺が高校を卒業するまでにピアスについて勉強しといてよ。そしたら空けさせてあげる」
「本当か!」
顔を上げる御手杵。その喜びように、犬の耳と尻尾を幻視しながらも審神者は嘆息した。
「『刺すことだったら負けない』んでしょ。お前にだったらまあ、病院の次ぐらいには任せられるよ」
「やった!」
「……しかし、なんだってそんなに俺にピアスを空けたがるの。刺したいんなら自分の耳に空ければいいのに。お洒落できるよ」
すると御手杵は、体を起こしながら首を傾げた。
「堀川や和泉守みたいに最初から空いてる奴ならともかく、あとから空けたら手入れで塞がっちまうんじゃねーかな」
「ああ、空けるだけ損だね。でも、残念だな」
軽く俯く審神者に、御手杵は膝を突いたまま顔を覗き込む。審神者の顔はほんの少しだけ憂いを帯びていた。
「堀川と和泉守みたいにお揃いのピアスって、ちょっと憧れるからさ」
「……俺も、それはちょっと残念だな。ただ、空けたときは俺がピアスをプレゼントするから、受け取ってくれよ」
「うん、有難う。とりあえずこのピアッサーは錆びないようにしまっておいて」
「付喪神憑くかなぁ」
「無銘のピアッサーか。ちょっとかっこいいかも」
そんなことをいいながら、ピアッサーは再び御手杵の手に戻った。
ピアス
「いってってってって」
「ごめんなぁ痛かったか。とりあえず両方空け終わったし、ファーストピアスが終わったら、これつけてくれ」
そういって御手杵が見せたのは、シンプルな丸い形のピアス。片方は緑、片方は赤。それを見て、審神者は耳をおさえながらもいった。
「俺にその色は似合わないと思うけど」
「あんたにつけて欲しい色って思ったんだよ」
「……本当、独占欲の強い槍だこと」
了
ピアス:「離れていても自分を想っていて欲しい」という独占欲の強いヒトが贈るものだそうです