あとさり気なくこの病弱審神者の審神者名が明らかになっていますがそんなもんあの煙管入れの前には些細な事実なのでお気になさらず
pixivからの転載
政府から軽装を配布され、1部の審神者は驚いたという。ある本丸では、その軽装――長曽祢虎徹の腰に帯びられたそれを見て、審神者が目を剥いた。
「お前、喫煙者だったの」
「あぁ、まぁな。嗜む程度だ」
また、ある本丸では中に飴玉が入っていたという甘党個体の場合もあったという。
この
「おや、長曽祢。煙管を吸ってたの」
「あぁ、悪いな主。今片付ける」
「いいよいいよ、通りかかっただけだから。通り過ぎるだけなら俺の気管支も平気でしょ」
寒椿の景趣。庭に雪が降りしきる中、「軽装」と称されるだけあり、その着流しはやや薄手に見えた。尤も刀剣男士にそういった「普通」の感覚を求めるだけ徒労だが。吸い口から深々と煙を吸い込む。そして吐き出す。刻み煙草を捨てる姿すら様になっているのだから、これだから色男は、と審神者は思わなくもない。しかし、それよりも気になることがあった。
用事があって、先程からついてきてもらっている蜂須賀の存在である。
振り返る審神者の前で、煙管を悠々と吸っていた長曽祢。蜂須賀は、漂う紫煙の中、苦々しそうな顔で宣う。
「煙草もいい加減にしろ。主の健康に悪い」
「その主が直ぐ通り過ぎるから構わんと言っているが」
「それはそれ、これはこれだ。ケジメをつけろ。……それにお前の匂いが広がっているようで落ち着かない」
その言葉に目を瞬く長曽祢と審神者。蜂須賀は審神者を追い抜いて「ほら、さっさと執務室に戻るよ」と足早に去っていく。それを見送った審神者は、ふと、長曽祢の方を見遣る。見ると、彼は煙管を握って眺めていた。
「……そんなにたばこ臭いか?」
「あー、まあ、それなりに」
「そうか……」
「まあ刀剣男士なら、手入れの度に体が内臓もリセットされるから健康を害することはないだろうけど。というか、長曽祢。なんか勘違いしてない?」
「何をだ」
心底困惑している様子の長曽祢に、審神者は溜息を吐いた。
「お前の匂いがして落ち着かないっていうことは、つまり終始彼氏の匂いに包まれてるみたいだってことでしょ。まるで抱き締められてるみたいに」
「――」
「まあそういうことはあとで本刃に言っ」
「すまん。しばらく蜂須賀を借りるぞ」
煙管を置くがいなや、長曽祢が蜂須賀の去っていった方へと駆けていく。それを見送りながら、自分が恐らく正鵠を射て、尚かつ今日の仕事は明日に持ち越しかな、とも思った。なので、Uターンをして、厨におやつを取りに行くことにした。
案の定、2振りは夕餉のときまで姿を現さず、偶々審神者の隣に座った蜂須賀からは煙草の匂いがした。
了