▼何気にここの審神者のカラーリングが発覚します。が、審神者が直接出て来るのは最後らへんです
pixivより転載
連隊戦が終わり、2振り目の山鳥毛を獲得。余った残りの手形も消化したのち、本丸で行われることといえば決まっている。
宴会だ。
「わははははは!」
「飲め! 新入り飲め!」
「はは、お手柔らかに頼むよ」
今回の主役である山鳥毛は、酒飲み連中に絡まれていたがなお涼しい顔をしていた。南泉はそれをはらはらとして見ていた。
(お頭……大丈夫か)
心配する南泉を余所に、山鳥毛はやや頬を赤らめながらも穏やかに微笑み続けている。そのグラスの中を見て、南泉はその意図を察した。
山鳥毛は巧みだった。さり気なく半ばから上ほどまで酒をコップにキープしている。こうすることで酒を追加されることなく、さらに酒飲み連中をあしらって他の者へと意識を向けさせた。そうしてすごすごと去っていく彼らを見送り、南泉は内心で胸をなで下ろしながら、ジョッキ3杯目の麦酒を飲んだ。「おっ今日は飲むね、猫殺しくん」と揶揄されるが、構うものか。畏敬の対象である山鳥毛と適度な距離を取って酒を飲めるのだ。これで安心せずにいられるだろうか。そう思いながら、瓶から麦酒を注いだ。そして4杯目のジョッキに手をつけようとしたとき、それに気付いた。
斜め向かいの席。そこに山鳥毛は座し、酒を飲んでいた。酒飲み連中が撤退したことで漸く気付いたが、山鳥毛の隣に座っていたのは三名槍と同田貫――その中の御手杵だった。しばらく酒精もあり、その事態の深刻さに気付かなかった。麦酒を呷る。そしてそのとき、それは起こった。
コップをテーブルに置いた御手杵が、据わった目を、隣に座っていた山鳥毛に向けたのだ。山鳥毛はさらに隣の席の者と話しているからそれに気付かない。手を伸ばされたときも、彼は夕焼け色の目を瞬いただけだった。
そして、御手杵は山鳥毛の頭を抱え込んだ。
「……? ――!?」
「あぁ~? あるじ、なんかでかくなったなぁ」
咄嗟にコップをテーブルに置いた山鳥毛の判断は正しかった。彼の姿勢は崩れる。何せ相手は槍男士。太刀男士の山鳥毛より大柄だ。そんな彼に頭を抱き込まれた山鳥毛は、困惑しながら「私は小鳥ではないのだが」と脱出を試みる。その光景を目の当たりにした南泉は、一気に酔いが醒めた。一文字一家の長に何という暴挙を。しかしゴキゲンの御手杵は構わず山鳥毛の頭をかき回す。それなりに整えられた髪がぐしゃぐしゃになった。
「はは、成長期かぁ? あんた中学に上がってから一気に身長が伸びたっつってたけどまた大きくなるのかぁ。しかし急に随分でかく……あれ、あんたの目の色違わないかぁ?」
「いやそれはだな」
「声も違う気がする」
「だからな」
「うーん、まぁ、いっか! 寝よう!」
「わっ」
そういって、御手杵は山鳥毛の頭と肩を引き寄せた。そしてそのまま畳に寝転がる。道連れに畳の上に転がされた山鳥毛は、ぽかんとしたまま固まってしまった。しかも寝息まで聞こえてくる。この事態を引き起こした張本人はどうやら酒で潰れてしまったようだ。そんな彼らに、周りからは笑いが起きた。その中で南泉が引き攣った声を上げる。
「お、御手杵ェ……!」
「あ~やられたな新入り」
喧噪の中、大般若がワンカップを片手に躙り寄ってくる。そして安らかに眠っている御手杵の頬を突きながら笑った。
「酔っ払った御手杵の近くにいる、髪が白っぽい奴は大抵そういう目に遭ってるぞ。かくいう俺もそうだ。ははは。鶴丸、小狐丸、鳴狐、今剣、五虎退、日向、亀甲、長義、源氏兄弟、蛍丸、巴形、白山……被害双璧は物吉と骨喰だな、あの辺は主と見た目の年頃も合うから最近じゃ御手杵に酒が入りはじめると自主的に避難する」
「ついでにお前さんも目が赤いから倍率ドンだ」
鶴丸が日本酒を飲みながら囃し立てる。南泉はといえば、自らの頭を救うべく、並んでいるテーブルを回り回って彼らの元に駆けつけることに精いっぱいだった。20kg以上の長物を扱う腕力はそれなりに強く、苦労したが何とか引き剥がした。南泉に礼を言いながら、山鳥毛は辺りを見渡した。特に上座に。
しかし、そこには誰もいなかった。その視線の意図を察した南泉が言う。
「お頭。主は未成年だ、にゃ」
「それは知っている」
「だから10時前には退席するし、御手杵がここまでべろんべろんに酔っ払うところは見たことがないはずだ、にゃ」
「……誰も小鳥に諫言する者はいないのか」
それに、南泉は虚しそうに頭を振った。周りはどんちゃん騒ぎが続いている。
「主が成人して酒が飲めるようになったときが見物だにゃ、ってみんなして静観することにしてるにゃ」
「……趣味が悪くないか」
「今の主の影響だ、にゃ」
「んん~……あるじ……」
「おい誰かこいつを部屋に放り込んでこい」
「やだよ俺まだ飲みたい」
そんな会話が、御手杵の周りからした。山鳥毛は髪を整えたかったが、鏡がなかったので如何せん難しそうだった。
翌朝、共同洗面所で開口一番尋ねる山鳥毛に、御手杵はけろりと答える。
「え? 昨夜なんかあったっけ」
「まぁ、そんな気はしたよ。酒の飲み過ぎには注意だよ、御手杵」
「はぁ……」
「それでは私はこれで――おっと」
「わっ、山鳥毛?」
洗面所を出た先で、少年とぶつかった。審神者だった。審神者は既に狩衣に着替え終えている。昨夜は10時には部屋を退席していたから寝付きも良かったのだろう。そんなことを思いながら、山鳥毛はじっと審神者を観察した。じろじろと遠慮のない視線に、審神者は途惑う。
「な、何? 何かあった?」
「あったといえばあった、が……」
顎に手を添え、山鳥毛は嘆息した。
「確かに脇差男士のように見えるが、それでも私とは到底似てないだろう……」
「えっ何の話?」
「大丈夫だ、こちらの話だ」
「気になるんだけど?!」
「おー、主おはよ。昨夜酒飲みすぎて頭いてぇ」
「二日酔いならシジミの味噌汁でも飲んでなさい」
「主が作ってくれるのか?」
「燭台切か歌仙に頼みなさい。もしくはインスタント」
「冷たい!」
夫婦漫才だ。山鳥毛はそれを確信しながら、「お頭、大丈夫にゃ……?」という目下からの声に、できるだけ優しく「大丈夫だよ」と答えることにした。
それは白髪系刀剣男士の洗礼を受けた夜の翌朝だった。
審神者の成人後
「あぁ~? 主ちっちゃくなったなぁ」
「はわわ」
「ちょっと御手杵! 俺はこっち! お前の主はこっち!」
「あぁ~……主が2人……」
「俺は! こっち!!!」
「これは傑作」
了