※この作品はR-18です。

ブラコン病弱審神者の強かな本丸日和   作:駒由李

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※何が出てきてもオッケー☆ な方推奨 ある部隊の本丸にて、大倶利伽羅を近侍にしたら変なのが出てきたようです。男審神者です。
▼ニトロ+でご縁があるよねって事でひとつ。審神者が持っている本の元ネタは某長期連載少女漫画です。この審神者はラ/シ/ャ/ー/ヌぐらいの気持ちで書いています。質の悪さ的な意味で。


【とうらぶ×?】鍛刀したらなぜか赤い宝石ができあがりました。

 2月1日の夜である。

 熱が下がったのは、深夜の事だった。大倶利伽羅が夜回りに顔を出した時、熱を測れば37℃代だった。

「いや、これまだ熱あるだろ」

「この程度なら平熱平熱。それより今日の日課をまだ終わらせてなかったから、丁度いいや。大倶利伽羅、鍛錬所までついてきて」

「……とっとと済ませろよ」

 布団から立ち上がる。少々顔がほてっていたが、この季節にこの程度ならば問題ない。渋々、といった体でついてくる大倶利伽羅を背中に、障子を開く。特異点の本丸でも、多少の季節の移り変わりはある。月が出ていた。日頃はその影を映す池は、今は板張りで覆われている。それを尻目に鍛錬所へ歩いていると、同じようにそれを見ていた大倶利伽羅が呟いた。

「あれ、早くどうにかしろよ」

「熱も下がったし、これからまた寝て夜が明けたら回収するよ。危ないしね」

 欠伸をしようとして、片手に持っているものに気付く。風邪をひいて寝込んでいる間に暇だからと読んでいた本だ。「人をおちょくる50の方法(2205年度版)」と記された本を、大倶利伽羅がとても疎ましそうな目で見ていた。大体の被害者は、単独行動をしがちな大倶利伽羅だからである。そして溜息を吐いた。

「危ないも何も、仕掛けたのはお前だろう」

「うん、さすがに反省してる。短刀達もそうだけど、鳴狐のお供はともかく、言葉が通じない五虎退の虎達とかが1番危ないし。さて、妖精さーん。資材の方はどうかなー」

 鍛錬所へ着く。すると、待ちかまえていたように小さなモノが姿を現した。審神者が「妖精」と仮称している、刀工の姿をした小さな生き物だ。「生きている」かどうかは不明だが、彼らやアシスタントの狐、手入れ職人の妖精がいないと部隊の運営もままならないのは事実である。彼らの存在に疑問を抱いているのは自身だけなのか――大倶利伽羅が壁に凭れながらも顎に手を添えていると、不意に壁にかけられた時計に目がいった。深夜だ。そんな中で、やはりまだ体が重いらしい。審神者用に用意された椅子に、よたりと座った。いつの間にか指示を終えていたらしい。妖精が鍛刀に向かっている。何の気なしに尋ねたのは、彼がここに着任して、ここの雰囲気に馴染みはじめていた為だろうか。

「それで、今は何を狙ったんだ」

「戦力的に太刀が足りないな~と。あ、あとで装備に弓兵も作りたいから宜しくね。脇差しに装備させたいから」

「ちっ……」

「舌打ちしないの」

 窘めながら、苦笑する審神者の顔色はまだ赤い。任務を終わらせたら寝かしつけないといけない。こいつが熱を出すと士気に影響が出る。そんな事を思いながら、ふと、昔に思いを馳せる。

 戦国時代、嘗て自身の主だった大名は病で片目を失った。その容姿を気にして、幼少期はひどく暗い子供だった。それが「鬼」とも呼ばれた程の側近の力添えもあり、現代では「独眼竜」「下手をすれば天下を取っていたかも知れない」などといわれる程に、良くも悪くも有名な大名へとのし上がった。一説には、一応は東軍だった彼を徳川も彼を警戒していたともいわれる。家臣からの人気も高かった。多少体が弱くとも、頭さえあれば侮れないものだ。普段は悪戯に精を出し、質の悪い冗談も吐く上に病勝ち。しかし「付喪神」は、人に使われる道具から発生する神ゆえに人を好く。上にこの少年は巫覡の家系の生まれだとも訊く。巫覡、特に巫女は神の花嫁、一夜妻。神が無条件に好いてしまう体質だ。更にはその用兵術にも目を瞠る、加え刀剣男士への戦闘面での扱い自体は丁寧ときた。これで慕われるなという方が無理だろう。大倶利伽羅としては、着任当初は「完璧すぎて少し気持ち悪い」という印象すら抱いたものだ。幼顔から繰り出される質の悪い冗談と、短刀達と共に放たれた数々の悪戯の犠牲になり、その気持ちは吹っ飛んだが。先日も、手酷い悪戯をされ、「わー大倶利伽羅が鬼だー」「鬼ごっこだー」などと短刀達と共にはしゃぎ回っていたのを抜刀して追いかけていた最中に審神者は倒れたのだ。正直そのまま首を落としたかった、と思わなかったといえば嘘になる。何せ半開きだった執務室の障子を開いた途端に、分厚い洋書(「家庭の医学」とのちに訊いた)が降ってきた。それを咄嗟に背後に飛び退いて避けたのはいい。問題は、その洋書とテグスで繋がっていた、縁側――彼が飛び退いた背後の天井に貼り付けられていたタライが、大倶利伽羅の頭を強かに落ちてきた事だ。「200年ぐらい前の映画を参考にした。小さい男の子が家で泥棒を迎え撃つ映画」と、病床で良い笑顔を見せた審神者の額に、冷●ピタシートをたたき付ける勢いで貼り付けたものだった。神を傷付けられるのは神かそれに類するもののみ、飽くまで人間でしかない審神者の悪戯で傷付く体は持っていないが、腹は立つのである。病人食を作る燭台切が「単独行動だと被害率が上がるよ。っていうかそこまで被害に遭ってるのくりちゃんぐらいだよ、まんばくんは何だかんだでお兄さんと一緒にいるし」といっていたが、聞こえなかった事にした。

 ひとりでいい。どうせ酒の席で誰かに引き渡される事もない、無銘の刀だ。無銘の刀はひとりで戦い、ひとりで散る――

「えっ」

 意外に低い。そんな審神者の声が上がる。思考に没頭していた大倶利伽羅の前で、審神者と妖精が顔を突き合わせていた。そして審神者は、壁に凭れて腕を組んでいた大倶利伽羅を見上げる。

「大倶利伽羅。お前、今、手伝い札使った?」

「いや、何も」

「だよね。じゃあ、何でいきなりこうなってるんだ」

 ひとりごちるように妖精と途惑う。さすがに気になり、覗き込んだ。

 審神者と妖精の前。数値が並んでいる。先程資材を投入したばかりだという、それ。手伝い札は使っていない、そして太刀を呼び出すつもりだったというから、それなりに資材は入れたのだろう。

 だが、目の前に並ぶ数字は「00:00:00」。燃えている様子は見える。しかも、それでも「完成」の声は上がらない。臨時の近侍となっている大倶利伽羅にも、それが伝わってこなかった。

 政府側のエラーか。困惑しながらも、審神者が手伝い札を1枚取り出すのを見た。首を傾げながらも、妖精に手渡す。

「……ちょっと、とりあえずこれを使ってみて」

「おい」

「エラーにしても、一応出来るだけの事はしてみようかと。降霊中になんか引っ掛かったのかな」

 通りの悪い管のような事をいう。妖精も戸惑いながらも、手伝い札をくべた。

 刹那、「完成」の声が上がる。大倶利伽羅にもそれが伝わった。だが、審神者の様子が強張った。「それ」を審神者に手渡す妖精の様子もおかしい。そして何よりおかしい、とわかったのは――

「……おい、本体だけか。男士はどうした」

「うん、おかしい」

 いって、こちらを向く。短刀だろうか、妙に小さいようだ。否、短刀よりも遙かに小さい。審神者の手におさまっている。思わず妖精と共に覗き込んだ。

 審神者の手に乗っていたのは、赤い宝石だ。それも、細工の入った――

 

 轟音。

 板の割れる音、刹那、水音がした。

 刹那、押し殺された悲鳴が上がる。

「――いっ……!! こ、ここは何だ!!」

「えっ」

「敵襲か」

「ちょっ大倶利伽羅!」

 追いすがる審神者の声。訊かず、抜刀する。今の音が本丸中に届いたらしい。同じく夜回り短刀だった山姥切や、寝間着姿の御手杵なども縁側に出てきていた。

 低い男の声だった。そして、あの板と水の音。あれには心当たりがある。庭だ。

 今は板張りで覆われている池だ。

 縁側で合流した山姥切が、同じく刀を抜きながら大倶利伽羅に怒鳴る。

「おい、何事だ」

「知らん。鍛錬所で新しい刀を鍛えていたら突然音がした。関係があるかも知れん」

「はぁ……!?」

 寝ぼけながらも追いすがってきたのは、腐っても武器らしい。ちゃんと槍を持ってきた御手杵だ。目を擦りながらもツッコミは忘れない。

「どういう間違いをすれば鍛刀した男士が庭の池に落ちるんだ!? つーか今あの池って」

「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!」

 聞こえてきたのは意外な声だ。堀川だ。庭に駆け下りる。予想通りというべきか。板で厳重に覆われていた筈の池。その板は割れ、そこに人がいる。2人の男だ。男の手を引っ張ってやっているのは、駆けつけたらしい堀川。ジャージ姿だから恐らく休んでいたのだろうに、真っ先に駆けつけたらしい。日頃の「お手伝いなら任せて」という台詞は伊達ではないらしい、などと埒もない事を考えていると、男が池から出てきた。その男の一風変わった衣装に、一同は目を瞠る。

 刀剣男士は、今のところ日本では日本の刀剣の付喪神しか呼べない。それに因んだ格好をしているものが多い。しかし、赤い外套に腰巻き、黒いアンダーウェア、ベルトを巻き付けた下履き――いつの時代かわからない。褐色の肌は大倶利伽羅と共通していたが、白い髪と、夜目でも刀剣男士達には見える鉛色の目も、彼の時代はおろかどの国のモノかもわからないという事に拍車をかけていた。

 最も、今1番目を引くのは、その大柄な体のあちこちにまだかじりついている――ピラニアだったが。

 それを刀の鞘で振り落としてやる堀川。いきなりの歓迎に唖然としているのが、男から伝わる。思わず口を開けて立ち止まってしまった3人の前で、堀川が焦ったように尋ねていた。

「今の池は、主さんが悪戯で放流したアルビノピラニアがいっぱい泳いでるんですよ! 普通のピラニアより警戒心が強いから凶暴なんです! さすがにウチにいる短刀達や動物達が間違って落ちたら、僕達付喪神はともかくとしても動物達は喰われちゃうかも知れないって事で封鎖してたんですから! ……あれ、ところで新人さんですか」

「……とりあえず、ここの主が質の悪い者だというのはよくわかった」

 先程よりも地を這う声。明らかに怒っている。だが、そこで大倶利伽羅は気付いた。

 彼の腰には何もない。武器らしいものは、何も装備されていない。そういえば、本体はまだ審神者が持っていた筈――

「うわ、庭の池の板張り突き破っちゃったの!? どっから落ちてきたの君!」

 刀剣男士達の脚に中々追いつけなかったらしい。漸く駆けつけてきた審神者が、下駄を履くのも忘れて庭へ飛び降りる。駆けつけるのは、びちびちと辺りで飛び跳ねるピラニアを池へと戻している堀川の前。呆然と突っ立っていた男の前だ。正体不明の男士になんと無謀な――しかし審神者は構わず青年に「それ」を掲げた。

 赤い。西洋では「心臓」を意匠としているという、所謂「ハート」型の赤い宝石だ。それを見せながら、審神者は男を見上げていった。

「えっと、君の本体はこれかな。政府のミスかな、宝石の付喪神なの? 刀剣男士ではないようだけど、歴史修正主義者にも見えないし。ひどい出迎え方になっちゃったね。一応君の体もエーテル体で形成されてるようだからピラニア程度じゃ怪我はないだろうけど大丈夫かな。君の名前は?」

「主さん、テンパってませんか。ひょっとしてまだ熱あるんじゃ」

 堀川が最後の1匹を池に放り込む。「すげぇ、1匹にも噛まれてなかった」とは御手杵のつぶやきだ。大倶利伽羅は刀は抜いたままだ。しかし、男から怒気が抜けていくのが見て取れた。月明かりの下、男が思わず噴き出しそうになったのも見えた、とのちに山姥切が語っている。それを堪えた様子の男の口が、「少々事情が込み入っているようだな」とひとりごちたのを大倶利伽羅の目は読み取った。そして、男は首を傾げている審神者にいった。

「私の名はない。『無銘』の霊……いや、剣だな。とりあえず、上がらせて貰っていいだろうか。どうやら相当事態はおかしい事になっているようだ」

「えっ、自称無銘の刀ならもういるけど」

「おいやめろ。その言い方はやめろ」

 思わず遠巻きにツッコミを入れる、大倶利伽羅。彼の金色の目とは対照的な鉛色の目が、大倶利伽羅を見た。

 

 それはとある世界線。

 人類が、密かに「英霊の座」の存在を知り、行きすぎた科学で模倣したシステムを作った。それが「刀剣男士」だった。このシステムの副産物として歴史修正主義者も出現する事態を招いた。歴史修正主義者は零落した神――時空間を無視する「座」は、時代遡航も可能とした。

 その日は、その名もなき英霊にとって象徴的な日だった。体調不良の呼び主、時刻も同じ頃。媒介となったのは「無銘」の刀――たくさんの刀剣男士が召喚される中、偶然が偶然を呼んだ。

 呼ばれた「無銘の英雄」の名は、エミヤといった。

 

無銘の英雄が本丸に着任したようです。

(のちの波乱の種となる事を、まだ誰も知らない)

 

 

 

 

 

 

 

多分別の部隊では士郎が審神者やってる。演練で見かけたらアーチャー斬りかかる。

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