ぷらいべったーより転載
その夜、小豆はひとつのDVDを持ってやって来た。
「『ぜんべいがないた』とひょうばんのえいがをあるじにかしてもらった」
「小鳥から?」
映画を観よう、と前もって言われていたのでレコーダーもテレビも準備ができている。ついでにスナック菓子とコーラもある。映画を楽しむ気満々だったが、感動ものとは思わなかった。かと言われて小豆が持ってきそうな映画のジャンルはどんなものかと問われると首を傾げるのだが。閑話休題、小豆は障子を閉めるとさっさとレコーダーに向かう。パッケージを開けてディスクをレコーダーに飲み込ませた。その一連の流れを眺めながら、自身は一抹の不安を覚える。
「『全米が泣いた』というフレーズが使われる映画はあまり良作とは限らないらしいが……」
「まぁあるじがすすめてくれたものだし。とりあえずみてみよう」
そう言って自分の分の座布団を敷き、自身の隣に座った。リモコンで映画を再生する……。
結論から言うと、まさかの傑作だった。思わず途中からポテトチップスを取る手もコーラを飲む手も止まったぐらいには映画に没入させられた。エンディングに入りスタッフロールが流れる中、ようやく息を吐けた。
「驚いたな……」
「まさかここまですごいさくひんとはおもわなかった。なくというよりおどろかされたえいがだったが」
「いや、しかし……私は……」
言いながら、箱ティッシュを手探りに探す。小豆から顔を背けながら。
小豆が肩に手を置いてくる。
「山鳥毛。ちりがみはこちらだよ」
「あぁすまない、……できればこちらを見ないで欲しいのだが……」
「なぜ?」
そう言って、小豆は自身の肩を強く引いてくる。無理矢理顔が小豆の方を向いた。恐らくやや涙ぐんでいる自分の顔が。羞恥で顔が赤くなりそうだ。顔を背けようとする自身に、小豆は箱ティッシュを差し出しながら笑う。
「きょうのえいがはすばらしかった。はらはらするきみ、いきどおるきみ、そしてなみだぐむきみ……きみのいろんなかおがみられてたのしかったよ」
「……映画の内容はちゃんと観ていたのか」
「もちろん。あめりかのわかてのさっかがへんしゅうしゃにしゅざいりょこうのはなしをもちかけられて――」
「あぁわかった、もういい。ティッシュをくれ」
小豆の手の箱ティッシュから1枚取り出して洟をかむ。屑篭にそれを放りながら、まだ薄らと涙の滲んだ目で小豆を睨んだ。
「……君は普通だったな」
「ないしんではちゃんとおどろいたりおこったりかんどうしたりしていたよ。ただ、なみだはきみのそのきれいななみだをみたことでひっこんだよ」
そう言って目元に手を触れてきた。
「ないていてもきれいだね、きみは」
「……そんな口説き文句には騙されないぞ」
ティッシュをもう1枚取り出して手を拭き、リモコンでレコーダーのトレイを引き出した。
なお、その後その映画は本丸中の話題を席巻することになる。付き合いでその後小豆と自身は飽きるまで、飽きてからもその映画を観ることになったのだが、それはまた別の話。
了