▼この長谷部はもっと幼い、子どもっぽい顔立ちの短刀がいたらそちらが好みになってました つまりガチです
pixivより転載
とてとてとて、と足音が近付いてくる。障子の前に人影が止まり、「入るよ」と声がかかる。聞き馴染んで久しい低音だ。
「どうぞ」
「長谷部~仕事進んでる~?」
そう言われて、叩いていたキーボードの手を止めた。米神に少しばかり青筋が浮かぶのを自覚する。傍らには報告書の山。データ化する手を再び進めながら自身は言った。
「えぇ、えぇ、あなたが早々に仕事を終わらせるものだからこちらも急いで仕事を進めているところですよ。あなた、仕事が早すぎなんですよ。部下の俺たちが休めないじゃないですか!」
「有能でごめーん☆休んでいいんだよ? だいぶ前に非番設定したよね」
「あなたの場合は『有』害な『能』ある者なんですよ! あとこれ終わったら休みます! というか端的に殺意が沸くのでやめてくださいその物言い」
「んじゃね~……」
俺が机を叩きながら抗議をすると、主はこてんと首を傾げたのち、諸手の拳を顎を挟む形で上げた。そして笑った。
「がんばれ♥がんばれ♥」
「うわ」
ドン引きした。表情だけではなく仕草も交えた。それに主は不満そうに拳を下ろす。
「そんな顔しなくてもよくない?」
「俺どんな顔してます?」
「ドン引きしてる顔」
「正解です。端的に気持ち悪いです」
「キモイ通り越して気持ち悪いか。中々だね」
「何の評価ですか」
感心げに頷く主に俺がひたすら引いていると、「何やってんの」と主の横から誰かが入ってきた。加州だった。そう言えば厨の手伝いが終わったら報告書のデータ化を手伝ってくれると言っていた。頼れる初期刀兼近侍だ。手土産にレ●ドブルを俺に渡してきた加州は、事の顛末をある時から聴くと呆れながら笑った。
「相変わらずしょうもないやり取りしてるね、お前ら」
「長谷部がツッコミきついからだよ」
「主にしょうもないことを言うのは主だ。そこは勘違いするな」
「はいはい。それで? 長谷部。お前博多と付き合ってるじゃん」
「それが?」
カタ、とキーボードを叩く音が一瞬止まるのが聞こえた。誰が立てた音だろうと思いつつ加州の言葉に答えると、加州は人差し指を立てながら言う。
「博多ってショタじゃん」
「そうだな」
「主も言っちゃえばショタじゃん? イケないの?」
それを聴いて、俺は深々と溜息を吐いた。1回俯いてから、顔を上げる。
「加州。よく聞け。ショタはショタでも、中学生と小学生の間には深い深い溝が横たわっている」
「熱弁しないで」
主が加州の背後に隠れた。加州は諸手を胸の前で開くが、俺に点いた火は止まらない。
「俺は! 中学生のような大人と子どものあわいより! 性別の曖昧な幼い子どもを愛でる! 個人的な好みで言えば秋田や五虎退が俺にとっては博多が永遠のファム・ファタール」
「怖い怖いショタペドがなんか語りだした」
加州が俺の熱弁を受け止めかねている様子の、その横。通り過ぎていった影。あの金髪は博多――そういえば先程から経理の仕事を一振りで進めていたのだが、そう言えばいたことを忘れていた。仕事に没入するといつもこうだ。そのことに対して博多にすまなく思っていると、彼はそっと加州の背後、主の隣に並んだ。主は博多を見下ろして言う。
「博多、別れた方がいいんじゃない?」
「最近そればっか考えとーよ」
「博多?!」
衝撃の台詞に俺は思わず立ち上がった。そして博多の足に縋り付く。
「博多! 捨てないでくれ!!」
「うわ怖」
「小学生ぐらいの男の子の脚に縋り付いて『捨てないでくれ』って言う大人の男怖いな……」
その後博多に考え直してもらうために仕事が非常に滞ったが、仕方がなかったってやつだ。
そしてなぜか俺の休みが増えた。なぜだ、俺は疲れていない。そう訴えたが「どう考えてもお前は疲れてる」と主に一蹴されたのだった。
あとなぜか短刀男士を擁する刀派から警戒されるようになった。なぜだ。主にそう訴えたが「当たり前だよね」と言われるだけだった。
了