リバウンドしたので初投稿
夏休みも終盤に差し掛かり宿題をやっていない者は慌てだし、真面目な者は夏休み明けのテスト勉強をしている。俺は夏休みに入ってすぐ宿題を終わらせていたそうなので、特に慌てる事も無くいつものように寮の部屋で過ごしている。
そんな俺に面倒臭い知らせが届いたのは今から4時間前の事だ。
……
…
俺はいつものようにFPSをしていた。本当は実戦ができたら良いんだけど今はこれしかないしアリーナも勝手に使う訳にはいかない。記憶はないけれど勘を取り戻すためにリハビリがてらプレイしている。
昔の俺は殺気や気配を感じ取れたそうだけど今の俺はからっきしてんでダメだ。千冬さんや楯無さんと組み手をしたけれど負け越している。だから対戦ゲームで勘を取り戻そうと思ったのだけれど全然取り戻せない。むしろゲームの腕前ばかりが上達する。
動体視力と聴力、手先の精密動作はピカイチなので敵がどこから来ても足音で分かるしエイムも完璧なので対一なら負け知らず。ゲームシステム上不可能な死以外はほとんど回避している。
今も赤点が出た位置を警戒しながら敵の湧きポイントを荒らしている。時に罵られたりもするが気にしてはいない。寸分違わぬエイムや完璧なリコイル制御はチート扱いされているがチートツールやバグは一切使っていないのでやましい心は全くない。
きっと俺のプレイの上手さに嫉妬しているのだろう。嫉妬している人間ほど哀れなものは無い。女の子が俺に嫉妬してくれるのは可愛いと思うけど。
しばらくプレイした後、目と指の休憩のために電源を落としてベッドに横たわる。
コンコン
「あ~い、勝手に入ってください」
「俊葵、大変だ」
現れた千冬さんは慌てた様子で状況の説明を始めた。
「今から三時間前、ゴビ砂漠中央で超大型兵器が発見された。しかも稼働して中東地方へと進行を今もなお続けている」
「まさか俺にそいつを破壊しろってんじゃあないですよね」
「そのまさかだ。行って来てくれ」
「いやね、昔の俺ならやったかもしれませんよ。でも今の俺は超能力を持った只の男です。力は有っても経験がない。これって結構ヤバいですよ」
「分かっている。だがお前も分かっているだろう。私たちはお前が記憶喪失したことは知っているが世間は知らない。だからこそ今まで通りに行動する必要がある」
千冬さんの言っている事にも一理ある。俺が記憶喪失していると分かれば、それを利用して俺を想うように動かそうとかって無駄な考えを起こす人間もいるかもしれない。
「それ…どんな兵器です?」
「話が早くて助かる。コレが衛星写真、こっちが撃退に向かった陸軍の映像だ。これからも分かるようにこいつは今までよりも格段に小さくて…いや、お前は覚えていないか。とにかくこいつの進行は陸軍では防げなかった。大型地雷で進行を少し抑えられているが意味はあまりない」
写真委はへんちくりんな形の戦車が写っている。無限軌道にスカートを穿かせて削岩機を乗っけたようなデザインだ。
「これの名前は?」
「キサラート、アラビア語で削岩機という意味だ」
「見たまんまっすね。俺はこれからこいつを破壊するんすか?」
「その通りだ。これからお前はコイツを破壊して中東を救うんだ」
面倒臭いし危なそうだけれど仕様がないので発進の準備を始める。といっても俺は拡張領域内の武器の確認とVOBに燃料を注入しただけだ。
パイロットスーツに着替えて音楽で気を落ち着けていると千冬さんが血相を変えて飛び込んで来た。
「大変だ俊葵!中東地域の国が結託して国連にISの出動を要請した!!」
「あぁ…受理されちゃったんですね。国連のISって第二世代ですよね」
「お前のISは現状の世代よりも格段に上の性能が有る。そんなお前が満身創痍で倒してきたのが巨大兵器だ。おそらく国連のISは手も足も出ないだろう」
「ISが通常兵器で破壊できると分かってしまったら世界のバランスが崩れる。ISの存在を疎ましく思う連中は少なくない」
「了解しました…今すぐ発進します。束には俺が暴れられるようにお膳立てをお願いしてください」
「分かった……頼む」
「へーへー」
VOBの燃料注入を切り上げて対AF用IS『ガンバスター』に乗り込む。
『縮退炉内圧力上昇、VOB制御システム良好、武器システム及び防衛システム良好、センサー良好、今すぐにでも発進できます』
「それじゃあ発進だ。束のISを護るぞ…」
『はい、護りましょう』
ロケット発射のようなけたたましい音と水蒸気を出しながら曇り空へと飛んで行った。
……
…
研究室内で見送ったクロエはそわそわしていた。
「行かれましたね」
「うん…」
「私たちは行かなくて良かったのですか?」
「私たちが行くと俊くんに迷惑が掛かっちゃう」
「しかし記憶喪失している俊葵様には助けが必要です。それなのに一人で行かせてしまうなんて」
「監視衛星は不慮の事故で墜落、地上部隊はAFが壊滅させた。お膳立ては済ませてある…俊くんはこの試練を一人で超える必要があるの」
「俊葵様が強くなるためですか?」
「うん、俊くんは今以上に強くなれる。俊くんもそれを望んでいる。だったら手伝うのが道理でしょ」
「それが俊葵様を傷付ける方法でも…」
納得していないと言った顔でクロエは反論をする。しかしそれが俊葵への忠誠心を物語っていた。
「申し訳ありませんが私は束様のお考えを許容しかねます」
「でもこれは俊くんの願いだよ…クーちゃん。私が苦しんでいないとでも?」
「ッ!?申し訳ございません…」
「クーちゃんは俊くんのオペレーターをやってあげて。私は周辺地域の封鎖と援護をする秘密の部隊を出撃させる」
「援護…ですか?」
「ふふ、それは楽しみだから後でね」
「では私はこれで。束様もお気をつけて」
……
…
もうすぐでAF戦闘域というところでクロエから通信が入った。
『俊葵様、不慣れながら今回は私がオペレーターを務めさせていただきます』
「おう、よろしく頼む」
『目標地域では既に戦闘が開始されています』
「ちっ…仕事が早すぎるぜ。馬鹿どもが戦力の差が分かっていないのか」
『目視出来ますか?』
「数キロ先だけどはっきりと見える。ISの攻撃は効いていないみたいだな」
『AFの攻撃手段は機銃と小型ミサイルだけの様です。装甲ばかりが厚いでくの坊です。俊葵様の相手ではないようですね』
「そうだと良いけどな…」
『何か不安要素でも?』
「胸騒ぎがする。ま、今はそんなこと考えてもしょうがないか。VOB停止、パージを開始」
固定されているナットやボルトを爆破して強制的にパージを実行する。大型VOBの構造上の弱点ともいえる。一度脱いでしまったら専用の機材を使わないと装着できない。しかし今回のような単なる移動だけなら問題はない。
「敵AFに攻撃を開始する。バスターミサイル発射用意。それから味方ISへ通信を開け」
『既に開いてあります』
「こちら俊葵、これよりAFへの長距離攻撃を開始する。無差別のミサイル攻撃なので離れていてくれ。忠告はしたからな」
パ『バスターミサイル装填完了、狙いは敵AFの無限軌道』
「発射!!」
パ『発射』
大腿部からミサイル発射管が出て来てレーザーミサイルを発射する。毎秒324発の光点がAFの足元へ降り注いだ。
炸裂した光点は圧倒的な熱量で周りを吹き飛ばした。砂は溶けて固まり空間が歪んで見える。しかしAFの装甲は塗装が焦げただけでダメージは見られない。
パ『反撃に注意してください。敵AFは既にこちらへ砲口を向けております』
「バスターマント!!」
反重力マントを纏い銃弾の雨を弾く。それこそ雨の日に刺した笠のように。戦車の徹甲弾のような弾丸は一発でもあたったらノックバックで動けなくなってしまう。
パ『敵装甲にダメージは見られません。予想よりも装甲は厚いようです』
「このISは対AF用じゃあなかったっけ?」
パ『着弾地点の1キロ圏内に味方ISが居たので3割の出力で攻撃しました。味方ISはこちらの攻撃圏外で脱出したようですので10割の出力での攻撃が可能です』
「それじゃあ一発ブチかます!!」
両手を組んで思い切り振りかぶり、AFに向けて掲げる。
「ホーミングレー↑ザー↓!!」
無数の光線が敵装甲を溶かす。先ほどとか比べ物にならない火力で分厚い装甲をドロドロに溶かしていく。こちらに対する攻撃はレーザーの壁がすべて防いでくれているので防御や回避に神経を使う必要がない。
敵AFの無限軌道は装甲が溶け崩れ履帯にレーザーが命中した。履帯はレーザーにやられて大型兵器は動きを止めた。掘削用の削岩機も停止して完全に沈黙した。
「なんだ…こんなあっさり勝てちゃうんだ」
『お疲れ様です俊葵様。国連のISがこちらへ向かっておりますが如何いたしましょう』
「現場検証とかそんなんだろ。ほっとけ」
『ではそのように』
パスィの操縦に切り替えて近くの岩場に降り立つ。AFの陰に入り腰を落ち着ける。すると空の彼方から星条旗カラーのド派手なISがやって来た。
「あのクソ派手なISなに」
『アメリカのISですね。通称ファングと呼ばれる第二世代型のISです。私からすれば過去の遺物ですよ』
「そこのIS、話がある」
流暢な日本語で話しかけられたので俺も流暢な日本語で返す。
「仕事なら終わりましたよ~」
「撃破した時の詳しい話を…おい、まだ反応があるぞ!!」
「パスィ」
『AFから多数の反応検知』
「離れていてください。俺が相手します」
邪魔になるといけないので国連のISには退避してもらった。両手にトマホークを構えてAFの前に立ちはだかる。
するとAFはパカッと縦に割れて断面から大量の飛行物体が飛び出してきた。
「正確な数は?」
『200体います。よくもまぁ、これだけの数を用意した物です』
「まったくだ。ダブルトマホーク!!スラッシャー!!」
自立兵器の群れに向かって思い切り斧を投げる。なぜブーメランと叫ばなかったかというと戻ってこないからだ。あんな形のものは空気力学的に戻って来るはずがない。理想と現実の越えられない壁だ。
斧を感知した自立兵器は腕部と思しき部位から散弾でトマホークを撃ち落とした。常←こんな形なのにかなりの火力を有していると思われる。
「バスターーーーー!!ビィイイイイイイイムゥ!!」
必殺のビーム攻撃を放つが数体が合体して楯となりビームを弾いた。7割くらいのビームだったのに弾かれるなんて予想外だ。一体一体ではただの火だけどたくさん集まって業火になっている。
「逃げちゃあダメかな…」
『世間は許さないでしょうね』
「手が震えてきた…怖い」
目の前には壁となって押し寄せる自立兵器。散弾だけじゃあなくてレーザー兵器も搭載しているのか何かをチャージしている。
「嫌だ…」
『問題ありません。想定している攻撃ではこのガンバスターは破壊されませんし絶対防御も破られる事はありません』
目の前が真っ白になって激しい騒音と衝撃に襲われる。上下左右の間隔が無くなり身体が揺れる。ただ自分が攻撃されたことが分かった。
俊葵は恐怖していた。圧倒的な数による威圧を、性能未知数の敵の壁に押しつぶされる事を。デカいだけのAFは俊葵にとっては只のうすのろの木偶の坊だ。
動きがとろくて一体だけを見ていればよいAFはそれほど脅威ではない。俊葵の身体能力なら生身でだって勝てる。しかし数が多いのは恐怖だ。
考えてみて欲しい。自分は訓練を受けた歴戦の兵士で完全武装している。そして目の前には百獣の王ライオンがいる。銃を手にしているならそれほど脅威でもない。しかし同じ条件で目の前にいるのが数百匹の毒虫だったらどうだろうか。無数の百足や蜘蛛が蠢いている。最早恐怖としか言いようがない。
数というのは本当に恐怖なのだ。
「うわぁぁあぁぁあああ!!」
無我夢中で攻撃から逃げるためにブーストを吹かす。何かにぶつかった衝撃で自分が地面に突っ込んだのだと分かった。
「こっちに来るなよぉぉぉぉおおお!!」
ホーミングレーザーを放つが防御状態にある自立兵器には効果が薄い。それもそのはずだ今の俊葵は錯乱しているのでISとのシンクロ率は低い。それはもちろん防御力の低下につながる。
『左上腕部に被弾。装甲耐久率67%』
「嫌だ!!こんな怖いの嫌だよ!!バスターミサイル!!!」
直線的にしか飛ばない光点は当たらず空を切っただけだった。
「い、嫌ぁ……たすけて…」
光に包まれた俊葵が最後に見たのはバラバラになった自分の身体だった。
今回も最後まで読んで頂いてありがとうございます
何だか筆が進んだので投稿しました
それ以外の理由は有りません
次回ではとんでもないことが起こります
次回予告
???「今度は私が…」
???「私たちが…」
???「「護る!!」」
次回『おはよう』