ずいぶんと久しぶりの投稿なので初投稿
文化祭と聞いて真っ先に思い浮かべたのはたこ焼きや焼きそばなどの露店で食べられるものだった。次点でお化け屋敷や喫茶店だったので、俺の中で文化祭というのは夏祭りみたいなものなのだろう。
クラスのみんなは喧々囂々話し合いの末、メイド喫茶をすることにしたらしい。このらしいというのは話し合いの場に俺がいなかったからだ。
それでは俺がどこにいたのか…なぜソコに居たのかから説明をしなきゃあいけないだろうな。
数日前
「俊くんや、俊くんや」
「なんだい束ばあさんや」
「これを見てほしいのじゃ」
「ほいほい」
どうでもいい小芝居を挟みつつ束からタブレットを受け取る。そのには俺が兵器開発をしている島と周辺海域の航空写真が写っている。
「これがどうかしたの?」
「実はね…製造した兵器のテストをしていたら監視衛星に見つかっちゃったんだよね。それでテロリストの巣窟だろうから爆撃するって国連が決定したみたいで艦隊が今まさに向かっているの」
それは困るな。せっかく作った兵器たちが壊されるのはいただけない。でも国連の艦隊を相手にするのは面倒くさい。
抵抗したいけど抵抗した後が面倒くさい。
「それなら製造した兵器たちに島を守ってもらおうか。島ごと吹き飛ばされるよりは幾分かましでしょ」
「そうだけど良いの?せっかく作った兵器なのに」
「兵器はいくらでも作れるけど作る場所はそう簡単に確保できない。それにこれもデータを取るためのテストかなんかだと思えば少しは気が楽だよ」
「それじゃあ私もいっしょに行こうか?」
「助かるよ。俺一人だと何したらいいのか分からないし。あ、そうだ。クロエとシャルルも一緒に連れて行こう」
「危険じゃあない?」
「クロエにも実戦の空気を知っておいてほしい。多分…クロエが一番早く俺のために戦場に出て戦ってくれるから」
携帯端末を取り出してクロエとシャルルを呼び出す。二人ともすぐに既読をつけてOKのスタンプを押してくれた。既読スルーもしないし未読もほとんどしないのは二人に限ったことじゃあない。みんな俺にストレスを溜めさせまいという心遣いがありがたい。
数分待っていると二人はISスーツを着てやってきた。準備がよろしいことで。
「簡潔に説明すると、俺たちの愛の巣を破壊しようとする国連の艦隊をぶっ殺す」
「それは良いけど僕たちだけでできるかな」
心配するところはそこなのか…
「万が一の場合には黒鍵のコアを暴走させて艦隊を消失させてみます」
物騒だな…
「計画うんぬんは島で説明する。二つ返事で了承してくれてありがとう」
「俊葵様のご命令とあればなんなりと」
「僕も俊葵の敵は誰だろうと容赦しないよ」
「本当にありがとう。でも黒鍵とRRCⅡは素性がばれるから使えない。だから今回はこいつを使う」
ハンガーの覆いを取っ払って新たなISを紹介する。
「まずはこいつから紹介しよう。こいつは束が乗る機体だ。名前はハニートーチカ、定点射撃を得意とする拠点防衛型ISで束専用に電子戦用の装備が追加されている」
通常カラーと異なり真っピンクで細部は金色、全身装甲で頭部から排熱用のファイバーが伸びる。一見するとドレスを着た女性に見えないこともない。
「こいつの名前はハールート・マールート、シャルに乗ってもらう。全距離対応型のISで機転の利くシャルに丁度良い機体だろう」
白と黒がモザイクのように塗装されていてバックパックの四枚の翼の中には武器が格納されており、腰のスカートも含め全身に武器が仕込んである。拡張領域には遠距離武装や広範囲を焼き払うためのミサイルやクラスター爆弾が詰め込まれてある。必要性の低い武器を拡張領域にしまい普段使いの武器は常に携帯しているという寸法だ。
「クロエはISじゃないけどこいつを使ってもらおう」
ハンガーの隣の培養液に漬かっている女性を中から出す。
「こいつは俺の細胞から作った、言わば俺のクローンだ。式神や分身と違って肉体が消えることはないから魂を入れ替えて一時的な兵器として利用できる。俺の持つ力のすべてを注ぎ込んで作った素晴らしい人間だ。クロエなら使いこなせるはずだが…」
「そんな、もったいないお言葉…。しかし私のような汚らわしく卑しい奴隷が俊葵様の御体を使うなどもっての外でございます」
やっぱりそう来たか。予想はできていた。
「俺はクロエに動かしてほしいんだ。俺のために」
「しかし…」
「考えてみろ。お前の最も愛する男と一体になれるんだぞ?まぁ、この場合は女だけど。肉体だけではなく魂まで一緒になれるんだ。もちろん後々みんなもしてもらうさ。でも最初はクロエがいい」
「…でしたら謹んでその大役、お受けいたします」
クロエの面倒くささにも慣れてきた。クロエは俺の命令なら何でも聞く。なら命令すればいいのだ。俺を幸せにしろ、俺のために生きろ、俺のために死ね、と。
「俺は変装して超能力やスタンドで戦う。久しぶりに生身で暴れたい」
腕が鳴る。世界の兵士たちがどれほどの物かこの身をもって味わってみるとしよう。世界征服の一歩としては小さい一歩かもしれないがこういったことが重要なんだ。一歩一歩確実に歩いて行こうじゃないか。たとえ歩いた後が焦土になろうとも。
……
…
久しぶりに来た島は木々が生い茂っていた。基地の人員(式神)は全員、造船に力を注いでいたので島の管理が隅々まで行き届いていなかったのだろう。
造船ドックにはすでに完成している戦艦が四隻、決戦を今や遅しと待ち望んでいる。
「俺の理想を形にしたような戦艦だ。全高75m、全長300m、現存する戦艦の中でも特大サイズ。まさに大艦巨砲主義」
「これだけの戦艦を作るのは苦労したよ」
「束には苦労を掛けるな」
「俊君のためならなんだってするもん。こんなの苦労じゃあないよ」
「ありがとう…それじゃあ俺は準備してくる。あとは任せたよ」
「任されたよ」
束を後に俺の持ち場えと移動した。俺の持ち場は島の南側で砂浜に面している。森を抜けると広い砂浜が現れた。
こうしてみると白い砂浜に青い海、どこまでも広がる空を独り占めできるのはとても贅沢なことだ。しかし海の上に無粋な鉄塊が何隻か見える。まだ遠くのほうにいるようだけどすでに島は射程に入っているだろう。
「俺も準備しないとな」
ケースの中から仮面を取り出してつける。他にも重火器で武装を施した。あれだけの敵を相手にするには心もとない武器だが俺にはこの体がある。武器はみんなに回したほうがいいだろうと思って俺の分は少なくしたのだがこれは参ったな…。あんな上空に居座られたんじゃあさすがの俺も手が出しにくい。
上空を飛ぶ爆撃機がヤギの糞みたいに黒くて丸っこいものをココに落とするのが見えた。ようやく開戦の狼煙が上がったってわけだ。
爆撃は俺の想像を超えて激しいものだった。森は焼けて地下への入り口が露出している。
「まいったねこりゃ」
海のほうに目をやると上陸艇が何隻もこちらへ向かってきている。あの程度の敵くらいなら何の問題もない。俺のほうがこれっぽっちだからみんなのほうに敵が行ってしまったのかな。
爆撃した後だからピクニック気分で来てるんだろうな。でもピクニックじゃなくて地獄百景獄門ツアーの開始だよ。
……
…
「パスィ、敵の規模は?」
「二個大隊、戦車3両、別動隊は確認できません」
「なら特に問題はない…」
対戦車ライフルを取り出して中隊の先頭に狙いを定める。引き金を引くと同時に先頭を歩いていた人間がはじけ飛んだ。
蜘蛛の子を散らすように木々の陰に隠れてこちらの居場所をうかがっている。戦車の砲塔がこちらを向いたところから察するに俺の居場所を見つけたらしい。
「良いぞ…もっと俺を楽しませてくれ」
砲門がキラリと光り徹甲弾がこちらに放たれる。俺は徹甲弾の中心よりも少し下を撃ち弾道を上にずらした。二発目も三発目も同様にはじいて俺に当たらないようにした。
おぉ…今度は機関銃の掃射か。
徹甲弾が俺の身体を削り取っていく。マゾじゃないけどこの感覚は何とも言えない。
「そろそろ近接戦闘に移行しよう」
『それは 剣というにはあまりにも大きすぎた
大きく 分厚く 重く そして大雑把過ぎた
それは 正に鉄塊だった』
パスィのナレーションとともに巨大な鉄塊が姿を現した。俺自身がブッ叩いて作った最強最大の大剣。ベルセルクのドラゴンころしと違って少し細身で振りやすくなっている。ドラゴンころしと段平の間を取ったような大剣は重いながらも連撃を繰り出すことができる。
激しい銃撃を受けながらも坂道を駆け下りて突撃する。身体中から血が噴き出し、肉が弾け、骨が折れても俺は止まらない。
彼らはきっと後悔するだろう。反撃する前に逃げておけば良かったと、俺に歯向かうんじゃあなかったと。
……
…
「さて…任されたもののこの身体は……」
自分のものではない匂いがほんのちょっぴり気になる。しかし悪いにおいではない…むしろ俊葵様の匂いがすると思うと興奮する。
「自分の物とは勝手が違いますね」
長い手足に大きな胸、くびれた腰、筋肉質ながらもしなやかな肢体はとても魅力的に見える。女性の私が美しいと思えるからだなのですから俊葵様の審美眼は流石です。
「俊葵様のためにも彼らには死んでいただきましょう」
眼下で散開している兵隊を見下ろしながら崖の上から見下ろす。見たところ重装備ではないので私でもどうにかなりそうだ。
崖から飛び降りて兵士たちの目の前に着地する。彼らの銃口がこちらに向く前に彼らの首を跳ねる。
「ザ・ワールド…元来、世界は俊葵様の物ですがこの瞬間だけは私が支配することをどうかお許しください」
時を止めるというのはなんだかおもしろいです。こちらから一方的に攻撃できるというのはとても楽しい。それに俊葵様と同じことができる…それだけでアヘ顔で嬉ションしてしまいそう。大好きな歌手や人のまねをするのと同じ感覚なのだろう。
「おや?まだ来るようですね。おもしろい。この身体…弱気くらい出させてくださいよ」
両手に衝撃波を溜めて第二波に突貫した。
……
…
爆音が鳴り響く空の上で多翼の天使は破壊の限りを尽くしていた。
『第四翼展開、全多目的装甲翼展開完了。いつでもいけます』
「ありがとう、パスィ。おかげで僕はこっちに集中できた」
両手のショットガンを手放して全身の装甲を展開してエンジェルシステムを起動する。
『それでは天使の羽を羽ばたかせましょう』
展開した装甲の隙間や四対の翼から数多の光弾が放たれた。
エンジェルシステム、それは俊葵と束が開発した凶悪この上ないシステムの一つである!排熱をエネルギーに変換し圧倒的破壊力を実現した、まさに地上の天使なのだ!
「悪いけど俊葵のためなんだ」
光弾は地上部隊に降り注ぎ真っ白な砂浜を真っ赤な地獄の巨釜に変貌させた。
『お見事、全弾命中です。初めてにしてはとてもお上手です』
「褒めても何も出ないからね」
『いえ、ISが三機ほどこちらに出てきたようです』
望遠カメラを作動させて沖のほうを見ると確かにISが飛んできている。あれは国連加盟国に支給されているやつだね。専用気持ちじゃあなくてよかったけど強そうだな。
『しかしあのような量産機に負ける最新機ではありません。同じ量産期でも私にも意地があります。必ず勝てるようにお手伝いいたします』
「そう来なくっちゃ」
僕はやるよ、俊葵。覚悟はできた、準備もできた。僕は剣であり、楯でもある。俊葵の邪魔をする敵を排除する剣で俊葵を守る楯なんだ。
「ハールート・マールート!行くよ!」
……
…
「あははははは!!楽し~~~♪」
明るい笑い声と反比例するかのように行われる残虐行為。兵士たちの身体は裂け、砕け、弾け、燃え、溶けた。老いも若いも、男も女も関係なく人が肉塊に変わっていく。
「さすがは俊君の設計したIS。う~~~ん、戦いやすい」
腰から地面に四本のスパイクを打ち込んで体を固定させてからバックパックの砲台に搭載された四門のガトリング砲が咆哮をあげる。さらに両手に持ったグレネードからは焼夷榴弾が発射され、燃えた人間の悲鳴が心地良い。
「みんな死んじゃえよ♪」
バックパックから本体を取り外して砲撃の渦中に飛び込む。装甲が部分的に展開して近接戦闘用に変化する。俊君の細胞が埋め込まれた装甲は熱と電気を帯びて直接触れていない人間までぐちゃぐちゃにした。
「う……ぅ…助けて…」
「助けてほしい?」
「お願いします…」
「否、俊君の夢の前に立ちふさがるすべての物が何十、何百、何千、何万、何億死のうと構わない。その中に私が含まれようともそれら一切合切森羅万象は滅ぼされなきゃあいけない。かわいそうなんて思わないよ。君が楯突いたのが悪い、抵抗したのが悪い、反抗したのが悪い。俊君のために殺せるんだ。あぁ…至福♡」
『束様、すでに死んでいます。話しかける意味はないかと』
「人がエクスタシーに浸ってるんだ。邪魔するな」
『失礼しました。しかし報告まで…』
パスィをしかりつけた束は右耳だけパスィの言葉に耳を傾けた。
『俊葵様からの着信です』
着信と言い終わる前に急いで俊葵に折り返しの通信を入れる。
「よう、出なかった理由を一言で教えろ」
「い、忙しかった…から。ごめんなさい…別に俊君の電話を無視したとかじゃあなくて」
「一言っつったろ…まぁ良い。パスィをいじめてやるな。パスィも俺の大事な家族の一人なんだから…な?」
「う、うん…ごめんね」
「反省しているみたいだしパスィも許してやってな」
『私は元より皆様の所有物ですのでお気になさらず。束様のエクスタシーを邪魔したわたくしに責任があります』
「良い子だ…束、そっちの戦況は?」
「たった今、最後の一人を殺した。俊君は?」
「望遠カメラで艦隊の中心にいる空母を見てみろ」
俊君に言われた通り望遠モードで艦隊の様子を見る。すると空母の上で暴れている愛おしい男の姿があった。
……
…
人を殺すというのはあまり気分の良いものじゃあない。自分の指令を全うしているだけの人種は特にな。きっと彼らは善人だろう。快楽主義者の俺と違ってとても勤勉で品行方正なんだ。
だけど、だからこそ俺に向かって来る。俺はそれらを殺さなきゃいけない。殺したいから殺すのではない。仕方ないから、仕様がないから、狂いたくないから殺したいのだ。
人間は死ぬ間際に何を見るのか。俺は常に彼らの心を見る。「無」だ。結局人は死ぬ寸前になっても何も考えられない愚者なのだ。否、恐怖を忘れ、絶頂も歓喜も憤怒もすべて忘れ無になった彼らはまるで仏だ。
「俺は解放者だ…お前たちを生の頸木から解き放ってやろう」
両手に構えたリボルバーマグナムからは人間に当てられるべきでないほどの威力を誇る鉄鋼榴弾が放たれる。一発撃つごとに二、三人は確実に肉片になっている。そして俺の両手もギシギシと嫌な音を立てているのが分かる。
「少し撃ちすぎたかな…おや?自分たちの船を捨てて何処へ行く?駄目じゃないか…これから君たちはここでみんな一人残らず死ぬんだから」
俺は体を船と融合させて周りの艦隊ごと一気に飲み込んだ。無機物も有機物も一切合切関係なくすべてを取り込んだ。
「ビッグ・ザ・ゴールド!!」
決着というのはあまりにも呆気のないものだ。俺がたった一つの能力を行使するだけでこのざまだ。この能力は危険すぎる…やはり……。
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございます
この調子の勢いで書き続けたいと思ってはいます
次回『愛はすべてを許容する』
俊葵の愛は深すぎる