※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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記憶の断片X

---シュウ---

 

こそこそ調べていた藤林響子に『這い虫』を発動して、全身を探った。意外な縁を見つけた。エリカのアニキに少し気があるようだったので、結ばれるきっかけをプレゼントしてあげた。これで、大人しくなるかな?

 

で、僕の案件のターゲットだけど、聖杯を使っていたのは、覆製体だった。本体を探すが、名前も所属も不明で、姿形も判らない。覆製体の顔や体型を聖杯で弄っていたのだ。まぁ、これで相手も魔導師ってことだな。問題は何系の魔導師かだ。ネクロマンサー系は、死体を操るので嫌いである。召還も出来るしなぁ。そう言えば、九校戦の移動時に召喚されたっぽいのと、リビングデッドだったよな…あぁ、僕と同じでヒネた性格だと厄介だ、

 

まぁ、何か事件が起きないと、手がかり無しだ。困った…

 

翌日、気配を薄くして教室に入った。今日もモブ男君で過ごしたいものだ。しかし、名前が割れているので、そうはいかなかった。

 

「姫島朱宇だな?」

 

達也に声を掛けられた。達也の声でエリカ達が僕を注目した。

 

「お前、昨日の…」

 

しょうが無いなぁ。

 

「だから、クラスメイトだと言っただろ?」

 

「おい、お前は何者だ?」

 

エリカには関わりたく無い。スルーだな。どんなに罵られようが、エリカの元気な声を聞けるのはちょっと嬉しい。

 

「スルーだと?お前なぁ!」

 

あっ…コイツ、前回はスルー攻撃がキーだったんじゃないのか?僕の動揺を達也は見逃さなかった。

 

「エリカと因縁でも有るのか?」

 

こういう場合、エリカの鋭い勘と達也の冷静な感性は、大敵である。スルーする。

 

「そうか…」

 

達也がエリカに何かを耳元で囁いている。何をかますんだ?をい!

 

「えぇ~。なんでだよ…レオにもしたこと無いんだぞ!」

 

何を言ったんだ?レオにもしたことない事って?ドキドキするが、平静を装う。

 

ビクッ!

 

全身に電流が流れる感覚がした。背中にエリカの柔らかい乳房の感覚がある。耐えないと…

 

「ねぇ、教えてくれない?ふぅ~」

 

僕の耳元で囁き、耳に息を…ダメ、逃げよう!僕は転移して逃げた。

 

 

 

---エリカ---

 

達也に言われた通りすると、アイツの姿が消えた。

 

「やはり、エリカと因縁が有るようだな。堪らず、逃げたようだ」

 

逃げた?

 

「どうやって?」

 

「転移術だ」

 

転移術?あぁ、移動系の魔術か。

 

「魔術師か?」

 

「現代魔法師では無いと思う。問題はエリカとどんな因縁があるのかだ」

 

「嫌いじゃないと思いますよ。むしろ…」

 

美月が何かを言おうとして止めた。

 

「まさか…ごめんなさい。用事ができました。今日は休みます」

 

美月が教室から出て行った。なんだ、アイツ?

 

 

 

---美月---

 

家で見つけたスクラップブック。私が作った物だ。どうして、忘れていたのだろうか。ある事件の記事をまとめておいたのだ。

 

この記事によると、九校戦の宿舎を襲撃されて、生徒三名が行方不明とある。彼らの部屋は目を見張る惨状だったらしい。生死すら不明の三名。千葉エリカ、神代亘、鬼門深雪の3名だ。

 

深雪の名字が聞き慣れない物だったので、みんなに知らせなかったけど、姫島君は神代亘という人物では無いかと思う。神代亘が姫島君と同一人物なら、教室から逃げたのと同じように、襲撃から二人と逃げたはずだ。

 

記事は発生時の物しかない。二人の生還は新聞記事に載ることが無かったのだろう。これが隠したい事なのか?

 

「亘君…教えて…」

 

えっ…今、私は何て言った?彼の名前を呼んだ。何で?知り合いだったから?幹比古君と付き合い始めた経緯を思い出せない。亘君がそうしたの?ねぇ!教えて!

 

次の瞬間、私は神社の境内にいた。

 

「新聞の記事をスクラップか…そこまで手は回らないよな」

 

項垂れている亘君。

 

「ねぇ、どういうこと?教えてください」

 

「秘密を護れるか?」

 

頷く私。

 

「護れなければ、今度は記憶を刈り取る。記憶障害が残るが、覚悟しておけよ」

 

やはり、彼が記憶操作をしたんだ。

 

「わかりました。で、どうして、記憶操作をしたんですか?」

 

「エリカを助ける為だ…」

 

「エリカを?」

 

「アイツを僕は護れなかった。目の前で…」

 

嗚咽を漏らして言葉にならない亘君。それって…そういうことだよね?

 

「だから、生き返らせた。やってはいけないことだけど…」

 

死者を生き返らせた…やってはいけないこと…だから、記憶から消した…

 

「そう。僕の悪事がバレるから。それだけだ。理由は…」

 

「何で、名前を変えて戻って来たの?」

 

「やってはいけないことは罰を受けるんだ。エリカには別人として再会。それが僕が僕に与えた罰だ。今度は裏舞台から護る。だから、秘密だぞ、美月」

 

 

 

---シュウ---

 

美月には嘘半分真実加工済みを教えた。受けた罰が禁固刑100億年なんて信じて貰えないだろうから。

 

「わかった。秘密にする。でも、協力したい。私にできる事は無い?」

 

「今は無いよ」

 

「記憶が戻っているのは?」

 

「美月、深雪、雫、ほのか、克人だ」

 

「わかった。で、ここは?」

 

「姫島神社だ。僕の住んでいる場所、雫とほのかが鍛錬している場所だ」

 

「あぁ、あの神社かぁ。わかりました。私も出入りしていいですか?ここって、精霊が一杯いるし」

 

あぁ、不可視化能力持ちだったな。本来見えてはいけない者が見えてしまう。翼紗と同じ能力だな。

 

「放課後、おいで」

 

「今日は学校を休みます。ここに居ていいですか?」

 

「僕も休むから。同罪だな♪」

 

--------

 

翌日、教室へ…待ち構えているエリカとレオと幹比古…

 

「おはようございます。亘さん」

 

「あぁ、おはよう、美月」

 

うん?今亘って呼ばなかったか?エリカの顔がニヤっと笑っている。マズい。でも、二日連続逃走では、良く無いよな。今日こそ、スルーで押し通すか。

 

自分の席に座り、授業の準備をする。

 

「ふ~ん、今さぁ、美月に亘って呼ばれてなかったか?」

 

エリカがねちっこい言い方で訊いてきた。

 

「気のせいだ」

 

「何で、昨日は逃げたんだ?」

 

「言いたく無い」

 

「美月、いつコイツと仲良く成ったんだ?」

 

標的を美月が変更か?

 

「おい、クソ女!美月を虐めるなよ」

 

「誰が、クソ女だ?」

 

「お前だよ!」

 

「おい、俺の彼女をクソ呼ばわりするなよ!」

 

レオも参戦か?

 

「レオパレス君だっけ?」

 

「俺は賃貸アパートじゃない!」

 

授業開始で、これ以上の騒ぎにはならなかった。昼休み、速効で逃げる。と、見せかけて、空気と同化♪

 

「くそっ!また転移されたのかぁ…」

 

エリカが悔しがっている。

 

「あの野郎!おい、達也、どうすればアイツを倒せるんだ?」

 

「倒す?無理だぞ、レオ。格が違いすぎる」

 

うん?達也は何かに気づいたのか?

 

「格?何のだ?」

 

「剣の使い手で最上級聖戦士だぞ。その上、魔術師だし。レオが足掻いて勝てる相手ではない」

 

バトンソードから最上級聖戦士ってバレたか。やらかした…凹む僕。

 

「でも、攻略方法は有る」

 

攻略方法?

 

「どういう方法だ?」

 

「アイツの弱みは判っている。エリカと深雪だ。その二人を危険な目に遭わせれば、助けに来るぞ」

 

こ、こ、コイツ…無茶な攻略方法を提案しやがって…どうする…考えるよりも先に行動してしまったバカ神の僕。達也達の心臓を舐めて、エリカを抱えて転移した。

 

エリカを安全な場所に…

 

「ここはどこだ?」

 

スルーする。

 

「これって、誘拐だよな?」

 

スルーする。

 

「おい、答えろよ!」

 

僕の胸倉を掴むエリカ。顔が近い…固まる僕。

 

「お前、私の何だったんだ?」

 

スルーする。

 

「記憶が曖昧になる前、お前は私の何だったのか、訊いているんだ」

 

授業開始時刻一分前、教室に転移して、自分の席に座る僕。

 

「お前…」

 

その後、先生に注意され、渋々自分の席に戻ったエリカ。

 

-----

 

放課後、速効で校門前に転移して、深雪達を待った。しかし…深雪達の他にエリカ達がいた。行動が読まれている。達也か?ならば、エリカ達を教室へ強制転移させた。

 

「エリカ達をどうしたんですか?」

 

深雪に訊かれた。

 

「教室に、強制転移した。うざいだろ?深雪達に貼り付くなんて」

 

「ダメですよ。オーラが漏れています」

 

深雪が僕の腕を谷間でホールドして、僕を宥める。うっ、ノーブラか…そう来たか。抵抗出来ず、神社へと向かう僕達。

 

 

 

---エリカ---

 

教室に飛ばされた。双六でゴール直前で、スタート位置へ戻るを喰らった気分である。

 

「やはり、達也の言うことは正しいな」

 

「そうだな。私を避けているようで避けていないし。記憶が曖昧になる前に、私と何か遭ったんだな」

 

達也は生徒会の仕事でいない。

 

「で、美月は、昨日何があったんだ?」

 

「何も無いですよ」

 

「朝、アイツのことを、亘って呼んだよな?」

 

「呼んでません」

 

「ミキ、アレを頼む」

 

「あぁ」

 

ミキが自白を促す術を美月に行使した。しかし、次の瞬間、ミキが美月に告白をし出した。なんでだ?

 

「お前ら、やることがえげつないな?」

 

十文字先輩が、教室に入ってきた。

 

「大丈夫か?」

 

美月を気遣う十文字先輩。

 

「はい、大丈夫です」

 

「そうか。おい、ソイツは術をリバースカウンターされたんだ。自白を自分に掛けたようだな」

 

あぁ、そういうことか。

 

「十文字先輩がしたんですか?」

 

「俺はそんな術を持っていない。彼女を護りたいナイトが護ったんだろ。アイツは護り切る為に手段は選ばぬ。もう、詮索はするな。命を粗末にするな!」

 

そういうと教室を出ていかれた。先輩は何かを知っているみたいだ。先輩の後を追った。

 

「俺に何か用か?」

 

私を待ち伏せしていた先輩。

 

「何を知っているんですか?」

 

「アイツがお前の為にしたことを無にするな。それだけだ」

 

「どういうことですか?私は、アイツに何をされたんですか?」

 

「いいか。知って良い範囲は決まっているんだ。ラインを超えるなよ。アイツの行為が無になるから」

 

「ですから、何をしてくれたんですか?」

 

「悪いが言えない。自分で思い出せ。アイツの想いが生きているのなら、思い出せるはずだ」

 

先輩はそれだけ言うと去って行った。アイツの想い?思い出す?何をしてくれたんだ?

 

-------

 

家に帰り、物思いに耽る。先輩に言われたことを頭の中で繰り返す。

 

『自分で思い出せ。アイツの想いが生きているのなら、思い出せるはずだ』

 

何をしてくれたんだ?それでどうして記憶が消えたんだ?ムシャクシャする。う~ん、こういう時はアイツを頼ろう。

 

 

夜分の訪問だったけど、快く家に入れてくれた達也。

 

「どうしたんだ、エリカ?」

 

十文字先輩とのヤリトリを達也に伝えた。

 

「う~ん…エリカの記憶を読んでもいいか?」

 

「いいよ。頼む」

 

達也が私の記憶を読んだようだ。その顔は、血の気が失せていた。

 

「どうしたんだ、達也」

 

「そうだった…忘れていたよ。なんで、こんな大事な事を…」

 

悔しそうな顔付きである。私の記憶に何かあったのか?

 

「何か手がかりがあったのか?」

 

「あ…いや…」

 

態度がおかしい達也。

 

「おい、怒らないから言ってくれ。モヤモヤしていて、気持ちが悪いんだよ!」

 

「済まない…言えない。だから、記憶を…エリカ、彼の想いを無にするなよ」

 

十文字先輩と同じ様なことを言う達也。

 

「おい、ズルいぞ。私の記憶から、何を見いだしたんだよ。教えろよ!」

 

「彼はエリカを救う為に、この世界の人々の記憶をいじったんだ」

 

…私を…救う為に…みんなの記憶を犠牲にしたのか…何で?

 

「何でだよ!達也、頼む、教えてくれよ!」

 

「彼はたぶん、代償を払ったはずだ。たぶん、一番大事で大切な物を捧げたんだと思う。だから、彼のことは詮索をするな。頼む、エリカ」

 

達也が頭を下げた…何で?何で、そうまでして護るんだ?アイツは何を失ったんだ?

 

「なぁ、達也…アイツは何を失ったんだ?」

 

「俺と深雪を結婚させた…つまり、深雪に対する想いだ…だから、彼は俺に深雪を返そうとしていた。既に深雪に対する想いが無いから…」

 

えっ…深雪に対する想いと引き換えに、私を救ったのか?何でだ…?

 

「何で、私を救ったんだ?深雪を想っていたのなら…あっ…」

 

 

 

アイツが私に縋って泣いている…いつの記憶だ?何で、泣いているだ?深雪は、ぐったりとしている。なんで、深雪に寄り添わないんだ?何で私にずっと寄り添っているんだ?

 

 

 

アイツが誰かと話している。

 

「いいの?本当にいいの?ダブルで罪を犯すの?」

 

女性のようだ。黒髪が綺麗な見た事のない女性。

 

「コレしか無い。大罪に隠れて大罪を犯す。枝を隠すなら森だよ、姉ちゃん♪」

 

アイツのお姉さん…神代家の門の前で見た女性とは違う。なんでだ?

 

「ダブルだと、100億年は確定だね」

 

100億年…私の為に…

 

「そうだねぇ。まぁ、禁固刑は慣れている。しばらく逢えないけど…ごめんね、姉ちゃん」

 

「まったく、ペナルティー神と名前を変えたら?」

 

神…

 

 

 

「エリカ、もう逢えないかもしれないけど、元気で生きろよ」

 

アイツが何かをすると、私の身体は人間に戻っていく。えっ?人間に?私は何だったんだ?訊こうと思うのだが、笑顔のアイツは闇の世界へ引き込まれて行った。最後の時まで私を見据えて…

 

 

 

「おい、エリカ!大丈夫か?」

 

瞼を開くと達也が心配そうに、私を見つめていた。

 

「あぁ、大丈夫だ。記憶の断片が見えた。私はどうしたんだ?人間の前は何だったんだ?私は誰なんだ?」

 

「落ち着け、エリカ。そうか、見たのか…」

 

考え込む達也。私に言うか迷っているのか?本人を目の前にして隠す事って、なんだよ?そして、ついに達也の重い口が開いた。

 

「お前は殺されたんだ。アイツの目の前で…心臓を狙撃されたんだ」

 

殺された…アイツの目の前で…だから、あんなに泣きすがってくれたのか…深雪を放置してまで…

 

 

 

 

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