---シュウ---
作戦決行前日、ルパンの用意した転移地点に、援軍がゾクゾク転移してきた。参戦メンバーに最終確認をしていく。たぶん、当日は混戦すると思われる。敵の戦力が分からないから。その為の保険は二重三重に掛けておく。かけ過ぎても損は無いから。
「ルパン、クラリスを奪還したら、ユリスの国に保護してもらう。栄養面や健康面で不安があるので、回復要員を数名置いておく」
「そうか…悪いな、手間を掛けさせてしまって」
ルパン達は、愛銃を分解整備している。不具合が起きないように、丁寧に慎重に。
「弾薬などは、息子達に補給させる。香は在庫管理と荷出しを頼む」
「了解!」
弾薬類に目を通し、何がどこにあるかを確認している香。
「臨機応変頼むよ。こっちは城内で空きスペースを確保する。確保でき次第、城内に転移させていく」
「厄介なのは尖塔か…石造りの螺旋階段は戦いづらいな」
次元がぼやく。
「跳弾させれば良い」
リョウがすかさず、アドバイスを送った。
「跳弾…出来るかな?」
美和子が蒼い顔だ。
「美和子、無理しなくていい。跳弾に自信の無い者は、普通に撃て。アレ、失敗すると、味方が被弾するから」
頷く美和子。このメンバーなら安心かな?安全では無いけど…
---蘭---
目が覚めると、隣で寝ていたはずの新一の姿は無かった。家の中を探すが、どこにもいない。書き置きすら無い…心配せずに、待っていろってこと何だろうな。でも…
気づくと彼の家に向かっていた。あぁ、逢いたい…覚悟を持つことはできないけど…家に着き、迷い無くインターフォンのボタンを押した。
「蘭さん…どうぞ」
いつものメイドさんの声、門は開き、敷地に入り、ドアの呼び鈴を押す。ドアが開き、中へ通された。いつもと違う雰囲気がする。通されたリビングで立ち尽くす私。
「ごめんなさいね。今、立て込んでいるの」
私にソファへ座るように手招きをして、お茶とお茶菓子を出してくれた。
「どうされたんですか?」
「今日は…作戦の決行日なのよ。だから、ちょっとね…みんな、血が騒ぐって感じで…」
作戦の決行…じゃ、彼は?
「朱宇さんは?」
「もう、現地にいるわよ。作戦の先陣は、彼の切り込みだからね」
覚悟…しないとダメなんだ。でも…
「ここで、祈っていていいですか?」
「ここで?う~ん…ここはダメ。そうね…わかったわ。祈れる場所へ招待します。軽く目を瞑ってくれるかな?」
言われた通りにする。身体が浮き上がる感覚を感じ、すぐに普通の感覚に戻った。
「目を開けてください」
先程のメイドさんとは違う声である。瞼をゆっくり開けると、全身がゾクゾクする。彼の家のリビングでは無く、荘厳な聖堂内にいた。
「ここは?」
「シュウのお城にある聖堂です。ここで、シュウの為に祈って下さいね」
彼のお城?彼は王様なのか?えっ…
「あぁ、シュウの正体を知らないのですね。まぁ、祈ってください。祈りが多いほど、彼は帰る場所を見間違えませんから」
朱宇さんの正体?魔法使いじゃ無いのか?
「違いますよ。彼は王ですよ。この城のね♪」
王様…彼のイメージが…
「始まります。祈って下さい。お願いします」
彼女は跪いて、祈りを捧げている。その彼女の背中には真っ白な翼が…
---シュウ---
時間だ。キャッスルドランから、クラリスのいる尖塔を目がけて降下していく。尖塔の屋根、天井を透過して、クラリスの真後ろに降り立った。
「お待たせ、クラリス。準備は出来た。今日は、この国を解放する」
「お願いします」
クラリスを抱き締めたまま、ユリスの待つ、ユリスの部屋へと転移した。アーシアと芳佳が待機していて、僕がクラリスをベッドへ横たえると、二人は、探査能力で悪い箇所を認識してから、回復術を発動しだした。
「ユリス、彼女を頼むよ」
「はい、まかせてください」
僕は戦地へ転移した。
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お城の上空に出ると、湖を氷らせて始めていた。二人の深雪、エミリアとパック、ソーナ、セラフォルー、シルキーが魔力全開で氷らせてくれている。彼女達の後方では、スカさん特製の氷上スケートボードに載っているチームウィッチと摩利がいた。
僕はそのまま城内へ降下した。城内にはフルアーマーを装着した騎士達が大勢いた。魔剣と魔皇剣を手にして、彼らを倒していく。倒れた騎士達は、何かを取りだして、体内へ取り込んでいく。これって…マズいだろ?
『リビングデッドだ…注意しろよ!』
念話で、作戦参加者全員に警告を流す。得物をしまい、拳による攻撃に切り替えた。敵の鎧をたたき割り、聖なる槍を叩き込み灰化していく。灰の中から、あの魔石が見える。すかさず、たたき割る。これで、長引きそうだな…
---ルパン---
石橋の中にある通路で応戦するが、コイツら、頭を吹き飛ばしても、死なない。これが、リビングデッドか?
「どうすればいいんだ?」
「魔石を割れ!」
キディが叫ぶ。いや、どこにあるんだ?鎧は38口径では傷すら入らない。
「接近戦はするな。毒を盛られるぞ!」
リョウの44口径で、ようやく鎧が割れ、その部分を撃ち抜いていく。石が砕ける音がすると、リビングデッドは灰になっていく。これ、効率悪いだろ?
ヒュ~~ドッカーン!
ファルコンがナパームを撃ち込むが、灰に成らずに、火の海を抜けて近づいてくる。
「おい、ゾンビって火に弱いんじゃないのか?」
「コイツらは、石を破壊しないとダメなタイプだよ、海坊主!」
キディが返答した。おいおい、どうするんだ?キディが重力弾を撃ち込む。空気圧が高まり、石が破壊される音がし、灰化していくリビングデッド達。しかし、城の方からゾクゾクと湧いてくる。
「発生源を潰さないと、俺達もマズいぞ!」
しかし、城までは遠い…
---シュウ---
『達也…克人…石を潰せ!真由美は、重火器を破壊していけ!』
念話で指示を出し続ける。あぁ、暴走したくなっていく。灰にしても灰にしてもキリが無いリビングデッド達。どこが発生源なんだ?
一体ずつ倒さないと、僕の器が危ない。一気に魔法で消せるが、魔石の出す呪いの力は、僕の天敵である。一気に受けると、マズい。少しずつしか倒せない…
『街の防衛ラインが下がっている。どうする?』
キディから念話が届いた。一気に行くか?発生源はどこだ?死体の多い場所…墓場か
『あぁ~ルパン達が…』
噛まれたか…くそっ!
『後の指揮はフィンが執れ!龍騎士のファルコン、城の中にある墓場に術師がいると思う。屠れよ!僕は僕に出来る事をする。エリカ、僕を太陽とは違う方へ運べ。みんな…後を頼む』
念話で指示を出し、上空へ向かう。そして、広域魔法陣を発現して、まず、『浄化』で毒を消し去り、『強奪』魔石をすべて集める。そして、集まった魔石へ聖属性に特化させた『ダイヤモンドダスト』を撃ち込み破壊した。薄れ行く意識…この星の外へ向かい、飛び出していく。器は破裂しそうなくらいに腫れている。魔力の上限は戻っても、器の強度はまだのようだ。
誰かに抱き抱えられた。
「亘、大丈夫か?」
エリカの声だ…エリカのオーラだ。視認する力はもう無い。器の維持を優先させている、僕の中にいる仲間達。
「そうか、話す能力もカットしたのか…」
寂しそうなエリカ。
「でも、いいよ♪こうして亘と居られるし♪」
おい、力一杯抱き締めるなよ!器が危ない。
「そうだったね」
心の中を読める能力をエリカは手に入れていたので、意志の疎通は出来る。僕を優しく抱き締め、太陽のいない側へ回り込み、一誠達の星から遠ざかる。万が一、暴発した時の為に…
エリカを巻き込んでしまうな。
「気にするな。ようやく亘の役に立てて嬉しいよ♪」
魂に宿る者達を除けば、宇宙空間でエリカと二人だ。
---達也---
「許せない…あんなに魔石を隠し持っていただなんて…」
魔石の殲滅を目標にしていた将輝が怒りに震えていた。また、団長がダメージを負ってしまったから。僕達の前で、二度目だ。
団長の捨て身の攻撃で、リビングデッドがいなくなり、戦闘はコチラに有利になっていく。時間を追うごとに援軍がやってくる。ICPOの捜査員、コマンダー達、教会の戦士達など…
目の前の敵がいなくなると、皆、大空を見上げ、団長への想いを祈りに込めて送り出す。
『帰る場所はここです』と…
---蘭---
何か遭ったのだろうか、聖堂へ来る人達が後を絶たない。皆、祈りを捧げる。様々な言葉で…この聖堂は何を祀っているんだろうか?どこの神様を祀っているのだろうか?多神教の気もする。祈りのポーズも様々だし。
私も祈りを捧げる。
『帰る場所はここですよ』と…
---新一---
アイツを追うために、街中を徘徊している。ジョディさんと連絡が取れない。何か遭ったのか?電気屋の前に人だかりが出来ている。何か事件でも起こったのか?
『臨時ニュースですが、欧州のカリオストロ公国で大規模な戦闘が起きた模様です。その為か、世界中の教会や神社仏閣では、平和に向けて祈りを捧げるミサや儀式が行われ始めました』
と…違和感がある内容だ。今までに、そんな大掛かりの祈りを捧げた戦闘は無い。世界を巻き込む大戦は除けばだ。カリオストロ公国?聞いた事のない国だな。小さいんだろうな。そんな場所の戦闘で、そこまでするのか?
待てよ…その名前をどこかで見た記憶がある。どこだっけかな?う~ん…そうだ。蘭の日記を盗み見た時だ。自分の家に急いで戻った。そこには蘭の姿は無かった。どこに行ったんだ?蘭の部屋に行き、蘭の日記帳を探す。あぁ、あった。ページを捲っていく。
『カリオストロ公国、リーゼルタニア皇国』
と、メモのように書かれていた。これだ。この二国間で戦争が起きたのか?そうなると、アイツが関わっているってことか…蘭はアイツは戦士だと行った。どちらの国の戦士なんだ?
ネットで検索をしてみるが、その二つの国に関することは、情報遮断されている。どういうことだ?何か、あるのか?
誰に訊けば、わかるかな?う~ん…そうだ、父さんに。
「どうした、新一。蘭ちゃんとの新婚生活は?」
何をのんきな事を…
「父さん。カリオストロ公国、リーゼルタニア皇国で何か情報無いか?」
「うん?カリオストロ公国は、今大規模な戦闘が起きているだろ?リーゼルタニア皇国は、随分前に複合企業財体の支配から脱却したかな」
複合企業財体…それか?検索を掛ける。う~ん、キーワードが足り無い。
「どこに負けたんだ?その複合企業財体は?」
「ちょっと待ってくれよ…あぁ、マーベリック財団を中心とした企業グループだ」
マーベリック財団?検索してみる。
『ステファン・L・マーベリックの発明による特許の恩恵で設立された財団。福祉事業などに参入』
とある。メリットが無いよな?
「他の参加企業って分かる?
「あぁ、分かるぞ。後は、九鬼財閥、闇雲家、兵藤家、式森家などだ」
兵藤家か…ここが武力中心か?でも、どんな繋がりが有るんだ?
「バックボーンはどこ?まるで繋がりの無い関係だよね」
「それが謎なんだよ。相手の複合企業財団に属する企業の株式を二束三文にした経済戦争だったらしい。だけど、マーベリック財団、九鬼財閥の財力では無理なんだよ」
無理?もっと財力のある黒幕がいたのか?
「その二つよりも財力のある団体って?」
「噂レベルだけどな…とんでもない団体がいるそうだ。持っている金の量が、この星にある金の総量の3~4倍らしい」
それって、有り得ないだろ?有るとすれば…並行世界や異世界と行き来出来る能力者…魔術師…アイツだ…
「姫島朱宇ってヤツの情報は無いかな?」
「うん?姫島家か?ちょっと待て…あぁ、あった。朱宇って名前の者はいないぞ」
「どういう事?」
「家系図が手元にある。5大宗家の1つで、家系図が書籍にもなっているのだが、朱宇という者はいない。まぁ、最近産まれたのであれば、でていないけど」
「歳は俺と同じくらいだ」
「じゃ、いないぞ。朱宇…シュウ…あぁ、考えられるのは、代羽周太郎かな」
「誰だ?ソイツは…」
「ディープスノー社の代表取締役だ。確か、お前と同じ位の年齢だったはずだ」
「そいつは金持ちなのか?」
「謎の多い人物ではあるな。俺も興味があって調べているんだけどな、こいつも、いないって結論になるんだ。実際はいるのに…」
「どういう意味だ?」
「代羽家は絶えたんだよ。教会の粛正にあってな。それなのに、後継者がいるって変だろう?」
いない筈の者…まさか、アイツ、並行世界から来たのか…。それだと、不思議な能力持ちの説明がつく。こことは違う理の世界から来たんだ。
「うん?新一、何か見つけたか?」
「あぁ、父さん、ありがとう。手がかりを見つけたよ。確信が持てたら、連絡をする」
「そうか、待っているよ」
父さんとの通話を切った。そういうことか。だとすれば、俺を嵌めたのはアイツだ。だけど、証拠は無い。証明も出来無いな。並行世界からのトラベラーって、どう証明すれば良いんだ?