※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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帰る場所

---シュウ---

 

エリカは僕と、はぐれないように、大切に抱き締めてくれている。だいぶ腫れも引いてきたけど、まだ油断出来無いレベルである。僕とリンクしているベアトリスがやって来て、やはり僕に優しく抱きついている。僕が僕であることを忘れないように、時々話し掛けてくれている。僕は幸せ者である。こんなにも不完全なのに、見捨てない仲間がいる。

 

漆黒に囲まれている世界にいるけど、遠くに小さな蒼い点が1つ見える。あれが、きっと帰る場所なんだろう…

 

 

 

---蘭---

 

いつの間にか眠っていた。目が覚めると、見慣れない部屋のベッドにいた。ここはどこ?窓の無い部屋。大きめのベッド以外には、机と本棚しか無い。本棚の本はどれも分厚く、知らない言葉ばかりである。あれ?どこかで同じような風景を見た気がする。どこだっけ?

 

「お目覚めですか?」

 

知らない女性が部屋に入って来た。

 

「あの…ここは?」

 

「ここは、この城の王、シュウさんのプライベートルームですよ」

 

朱宇さんの…そうだ、朱宇さんの家の部屋と同じだ。広さは、ここの方が断然広いけど。

 

「あなたは?」

 

「私は彼に仕える代羽深雪です」

 

深雪さん…あっ、遊園地であった女性も深雪さんって…

 

「あぁ、アレに逢ったのですね。私の劣化バージョンですよ、まったく」

 

劣化バージョン?苦笑いをしている深雪さん。

 

「どういう意味ですか?」

 

「シュウさんの許可無く、秘密は口外できません。もうしばらくすれば、戻って来ますよ。迷子にならないように、数名がガードに出ていますから」

 

どこかに出掛けているのかな?

 

「出掛けたというより…まぁ、そんな感じです。食事はいかがされますか?」

 

そう言えば、お腹は減っている。頷いて、彼女の後を付いていく。すると食堂らしき場所へ連れて行ってもらった。私よりも幼い女性が多い気がする。いや、女性しかいない…まさか…ここって、ハーレム?

 

「まぁ、ハーレムでしょうね。実際は、彼を慕うメンバーばかりですよ。王様らしくない王ですから、シュウさんはね。あなたも経験があると思いますが、躾というドエスプレイはしますけど」

 

躾って、そういう位置付けなんだ…席に座ると、普通に和食が出て来た。洋風のお城なのに、何か不思議。

 

「シュウさんは和食好きですから。必然的に和食が中心です。醤油、味噌、酢、みりんなど、和食に欠かせない調味料は、この城の醸造蔵で作っています」

 

それはコリ過ぎかと…

 

「シュウさんが帰ってきたら、あなたに選択を委ねます。シュウさんと生きるか、自分の世界で生きるかをね。今から考えていて下さい」

 

自分の世界で生きる?どういうことだろうか?親から離れて暮らすってことかな?

 

「でも、私…」

 

「ここでは、戸籍は意味をなしません。皆、戸籍なんて物は無いですから」

 

あぁ、心が読めるんだ、この人も…魔法使いの世界は戸籍が無いのか…

 

「私も魔法使いになれますか?」

 

「シュウさんは魔法使いじゃないですけど…」

 

へ?あれ?

 

「シュウさんは魔導戦士です。魔法だけ使える訳ではないですよ。それに、ここには魔法使いで無い者の方が多いです」

 

「深雪さんは?」

 

「私は現代魔法師です。魔法使いでは無いです」

 

笑顔で答える深雪さん。魔法師?魔法使いでは無いんだ。

 

「彼は無理強いをしません。あなたが後悔しない結論を出してくださいね♪」

 

朱宇さんと生きるを選ばないと、もう逢えないのかな…それは後悔しそうだ。どうすれば、いいのかな…新一…

 

 

 

---工藤新一---

 

手立てが見付からない。異世界から来た証拠か?阿笠博士と共に考えているが、良い案が浮かばない。

 

「新一、無理じゃな。諦めた方が良いぞ」

 

「そうもいかない。アイツは何をしているんだ。異世界から来て、この世界でな」

 

「悪事とは限らないじゃろ?」

 

「そこだよな。アイツは何をしに、この世界に来たんだ?」

 

携帯の着信音が鳴った。出ると蘭の母親だった。

 

「どうしました?」

 

「どうしたじゃないでしょ?あなたはどこにいて、蘭はどこ?」

 

え?蘭が戻っていないのか?

 

「蘭は?」

 

「あなたも知らないの?って、どこにいるの?責任を持って暮らすって、家に置き去りで、あなたが出掛けっぱなしで、いいってことじゃないのよ!」

 

蘭の母親は激高している。そうか、蘭が行方不明なのか…

 

「もう、いいわよ!あなたなんか頼らないから!」

 

通話がキレた。

 

「どうしたんじゃ、新一」

 

「あぁ、蘭が行方不明らしい。異世界へ連れて行かれたのかもな。くそっ!」

 

 

 

---妃英里---

 

彼の家を訪れた。メイドさんが応対してくれ、中に入れてくれたのだが…

 

「彼は戻っていないんですか?」

 

まだ、戦地から戻っていないそうだ。

 

「それでですね、蘭さんですけど、彼を追って…私達の拠点で保護していますので、安全です」

 

戦地へ彼を追っていったの…あの子は、そこまで彼を想っていたのね。

 

「いつ、戻って来ますか?」

 

「彼がまだ戻れそうも無いんです。蘭さんだけ、連れ戻すことは可能ですけど、無理強いはしたくないんですよ」

 

自分の意志で追っていって、彼を置いては帰れないよな、あの子の性格だと…

 

「あの子は、どこにいるんですか?無事を確認したいんですけど」

 

「セキュリティの高い場所にいますので、お連れする事も、場所をお教えすることも出来ません。申し訳ありません」

 

そうだよね。セキュリティの高い場所だと…でも…

 

「会話はできませんか?」

 

「出来ません。通信をハックされると、場所が特定されてしまいます」

 

軍事拠点なのね。

 

「手紙とかメッセージはどうですか?」

 

「蘭さんからのメッセージには、検閲が入りますが良いですか?」

 

「かまいません。お願いします」

 

---------

 

後日、私の事務所にメイドさんが来て、蘭からのメッセージを届けてくれた。

 

『私は元気です。皆さん、優しく接してくれています。まだ、彼は戻って来ていないので、心配ですが、彼が戻ってくるのを、ここで待ちます。後、いま選択を提示されて悩んでいます。彼と共に生きるか、家族とともに生きるか…後悔の無い選択をしてと言われて…』

 

メッセージペーパーの下の方は、蘭の涙で滲んでいる。悩んでいるのね。

 

『彼を、覚悟を持って送り出し、それでも待ち続けたいのなら、彼をとりなさい』

 

と、返信を書き、メイドさんに持っていってもらった。

 

 

グータラ亭主の元へ行き、その話をした。

 

「そうか…俺もそれでいいと思う。蘭が覚悟を持って送り出して、待ち続けたいなら、それでいいと思う。アイツは、望まないだろうけどな」

 

望まないだろうね。死を覚悟して戦場へ向かう彼は、待ち続けた上に、蘭へ悲しみを与えることは…でも、蘭がする覚悟はそれなのよ、朱宇君。

 

「難しいよな、男女の関係は…それに引き換え、あの探偵ボウズは、蘭が行方不明だと言うのに、顔すら見せないって、アイツは何の事件を追っているんだ?」

 

「蘭よりも大事な者を追っているんでしょうね」

 

 

 

---シュウ---

 

ベアトリスのどこでもドアの能力で、キャッスルドランへ生還を果たした。そして、固まった。ここにはいないはずの者の顔が有ったから…

 

「えっ?なんで?蘭がいるんだ…」

 

「おかえりなさい」

 

蘭が僕に抱きついて来た。深雪は遠慮しているのか、抱きついて来ない

 

「あっ…あぁ、ただいま…」

 

どうして…ここに?

 

ガブ達が、にやついている。誰かがやらかしたのか?

 

「落ち着いて下さいね」

 

出番が来たかのように、深雪が僕の腕を谷間でホールドしてきた。

 

「いや、しかし…なんで?蘭が?」

 

「あっ…メイドさんに頼んで…」

 

メイド?はぁ?あっ!メイビスかぁぁぁぁぁ!

 

『はぁ~い、正解です♪』

 

メイビスから念話が届いた。なんで…

 

『いい加減、女心とか乙女心とかを、理解しようね♪』

 

って…だから、何度も言うが、僕は男だから、理解できないんだよ~。気を取り直して、

 

「ここの説明はしたのか?」

 

深雪に訊いてみた。

 

「していませんよ。王様の口から説明してくださいね」

 

って、抱きついていない方の深雪が答えた。う~ん…蘭が、僕を見つめている。説明を待っているようだ。

 

「ここは僕の城のキャッスルドランだよ」

 

「どこの王様なんですか?」

 

僕をじっと見続けたまま、質問をする蘭。

 

『がんばれ~!ヘタレ王♪』

 

って、メイビスから楽しそうな声…みんなの顔も、にやついている。どうせ、ヘタレ王だよ…くそぉ~

 

「地獄と天国の2つの国の王だよ…」

 

「そういう、冗談はいりませんよ!」

 

本当の事なのに否定されているし…ガブに助けて貰おうと視線を向けると、スルーした…あぁぁぁぁ…どうすれば良いの…そうだ、見て貰えば良いのか。

 

「ガブ、僕は今、出禁かな?」

 

「解除されているのでは?」

 

あぁ、そうですか。蘭と二人で、エデンの園へ転移した。僕のお気に入りの場所、目の前に湖と、そよ風により揺れている草原が広がっている。

 

「ここは?」

 

「エデンの園…僕のお気に入りの場所だよ」

 

「えっ!エデンの園って…」

 

草原では、光の粒子を撒き散らして妖精達が、飛び廻っている。ここの妖精は蘭にも見えるはずだ。

 

「妖精…ですよね…え?」

 

僕のことを怯えた目付きで見る蘭。それでいいんだよ。僕は畏怖される存在、人間に好かれようと思ってはいけないんだ。

 

「あれ…本当のことなんですか?」

 

僕は僕の姿に戻った。鬼の姿をして天使の翼を展開して、頭に輪っかを浮かべた。

 

「これが僕の本当の姿、僕の本名はシュウ・ヨハネ・鬼門。チームシュウの団長で、天国と地獄を統べる王だ。恐いなら、もう僕に逢わない方が良い、人間よ!」

 

僕のオーラに飲み込まれ、怯えた顔だけど、勇気を振り絞って、僕に縋りついてきた蘭。

 

「突然のことで困惑をしています。でも…でもね…一緒に生きたいです。恐いけど一緒にって…私、エムかな…」

 

怯えながらも笑顔になろうとする蘭。どうすれば良いんだ?

 

「シュウ様、彼女を受け入れてあげてください」

 

ミカエルが現れた。

 

「あなたは?」

 

恐る恐るミカエルに訊く蘭。

 

「初めまして♪この規格外の王の代わりに、天界を束ねている天使長のミカエルです。シュウ様は性癖の破綻したドエスプレイヤーですが、配下の者の命を大切にし、自分の命をいつでも差し出すという、どうしようもない無茶な王ですよ♪な、の、で、戦いに出る度、彼だけ瀕死な状態です。それでも待てますか?」

 

ミカエルの言う事は正しいので、文句の付け所が無い…

 

「うっ…お城の皆さんと待ちます。だから…」

 

僕に泣きすがった蘭。う~ん…畏怖されようと正体を明かしたのに…う~ん。

 

「シュウ様、信じる者は救ってくださいね♪」

 

そうなるのか…

 

「わかった、蘭。一つだけ約束を守ってくれるか?僕の正体は秘密だ。いいかな?約束を破ったら、仲間を辞めて貰う」

 

「はい…よろしくお願いします」

 

人化して、誠の家へ転移した。

 

「蘭、君の両親に挨拶に行こう」

 

「はい♪」

 

僕も覚悟を決めた。

 

--------

 

「父さん、母さん、これからも、よろしくお願いします。戦地に行くたびに、ご迷惑をおかけしますけど…」

 

「お父さん、お母さん…わがままだけど…でもね、彼の帰りを待っていたいの…」

 

蘭と二人で、蘭の両親に頭を下げた。

 

「蘭の元へ帰る努力はしてくれ。俺からの願いはそれだ」

 

「孫の顔…見たいけど…無理かな?」

 

「父さんの願いは承りますが、母さんの願いは…ちょっと無理かな」

 

生殖能力に問題が…人間が母体だと危険が一杯である。

 

「無理の無い範囲で…」

 

「お母さん、それだと無理強いだよ!」

 

蘭が母さんの暴走を止めてくれた。蘭の両親がささやかなパーティーを開いてくれた。この世界を旅立つ前、盛大なパーティーに貴賓として招待しないとな。

 

問題は工藤君だな。どう出るかな?一応、プレゼントは無効にした。だけど、彼はその事実を知らない。どう出るかな?

 

「取り敢えず、蘭には今まで通り、ここで暮らしてもらいます。僕の住んでいる家だと、学校が遠いですから」

 

「でね、卒業したら、彼の家に住みます♪」

 

「いいんじゃないか?」

 

「いいと思うわ」

 

 

 

---蘭---

 

久しぶりの学校。園子と世良さんが寄って来た。

 

「どうしたの、結構休んでいたけど」

 

「うん♪彼の家で彼の帰りを待っていたの」

 

「あぁ、新一君?結婚したんだよ?」

 

「園子、その情報は古いわよ。私の彼はシュウさん。新一に戸籍を汚されたけど、彼はそういうのを気にしないから」

 

「シュウさんって誰?」

 

世良さんに訊かれた。

 

「え?一緒に家に行ったじゃない」

 

「行っていないよ…」

 

何かを考え込む世良さん。

 

「そうか…心配になって、工藤君が私に変装したんだな」

 

「えっ?あれって、新一だったの…あのヤロ~!」

 

「変装術も手に入れたのか。工藤君は侮れないなぁ」

 

「どこまで私の心を逆なでするんだ?あのバカヤロ~は…」

 

『蘭、怒りを纏うな』

 

彼からのメッセージが心に届いた。それが無性に嬉しい。

 

 

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