---シュウ----
「祐一さん、起きて下さい…夕食の支度が出来ましたよ」
揺り動かされている。誰の声…あぁ、秋子さんだ…飯かぁ…
「あぁ、秋子さん…」
僕は目を開いて、上体を起こした。
「夕食ですよ」
僕は頷き、ベッドを抜け出し、秋子さんの後に続いた。
食卓に着くと、名雪は頬を赤らめて俯いていた。
「顔が赤いぞ!熱でも有るのか?」
「えっ…違うよ~…だって、祐一が…」
「いただきま~す♪」
名雪が話し掛けてきたが、スルーして食事を始めた。
「もぉ~…祐一…たら…」
食事をしながら、二人のオーラを探る。異常値、異常成分は無いようだ。今回は白かな?
---工藤新一---
依頼が舞い込んだ。人探しだそうだ。依頼人に会いに、雪のぱらつく街に着いた。待ち合わせ場所の駅前の広場のベンチで待つ。
「あの…工藤新一さんですか?」
俺と同い年くらいの女性に声を掛けられた。
「そうです。あなたが、倉田佐祐理さん」
笑顔で頷く女性。詳しい依頼内容を聞くため、近くの喫茶店へ入った。
「で、人探しという依頼でしたが、どなたを探せば良いのですか?」
「弟の一弥を探して欲しいのです」
彼女が写真を1枚、俺の前に置いた。
「家出ですか?」
小学生だろうか?幼い顔立ちの彼女の弟。
「いえ…神隠しです…或る日、突然いなくなりました」
神隠し…おいおい…それって、誘拐か?
「警察には?」
「言っておりません」
「何でですか?」
「両親は、諦めろって…」
犯罪絡み…最悪なケースが考えられる。
「いつ、いなくなったのですか?」
「夏休み中です。うっうぅぅぅ~」
泣いてしまった。夏?それが何故今になって…不可解な依頼者だ。
「わかりました。調べてみます」
「お願いします…あぁ、これ、準備金です。必要な分をお遣いください」
分厚い封筒が置かれた。あと、連絡先を書いたメモ…彼女は、泣きながら店を出て行った。
駅の近くのビジネスホテルにチェックインした。部屋に入り、考えていく。不可解な案件だから。夏にいなくなった小学生の弟。なのに、警察にも知らせず、冬になって俺に依頼…両親は諦めている。どう考えてもおかしい。彼女の両親に会う必要は有るな。まぁ、明日から聞き込みだ。
---シュウ---
朝、目覚ましの声でおこされた。え?声?
「祐一…朝だよ…朝が来たよ…起きて…ねぇ、起きてよ~」
って、気怠い名雪の声が、繰り返し流れている。なんだ…これ?発声源を探すと、昨日は無かったカエルの目覚まし時計らしき物がベッドサイドに鎮座していた。いつの間に置いたんだ?夕食後、風呂に入る前は無かった。風呂に入っている間かぁ。まぁ、悪意は感じられないので、問題は無さそうだが、朝から気怠い…気力を削ぐ呪いのアイテムか?
ベッドの上でぼぉ~っとしていると、隣の部屋から目覚まし時計が攻めてきた。厄介な敵だ。何体いるんだ?隣の部屋へ向かう。おびただしい数の目覚まし時計は、一生懸命に仕事をこなしている。しかし、目覚める気配の無い布団に包まれた物体…一生懸命に主の為に仕事をしている彼らを壊すのは心が痛い。1台ずつ止めていく。しかし、途中で面倒になり、念動力で電池をはずした。
僕が悪戦苦闘をしている横で、未だに、すやすやと寝息を立てて、布団に包まっている物体。布団の引き剥がす。全裸で寝ていた物体。ヤッていいのかな?取り敢えず、『這い虫』を発動してみる。感度を確かめたいから。
ムニャムニャ言い始めた物体。起きる気配が無い。身体は蠢いているのだが、起きる気配が無い。う~ん…『催淫』30秒モードを発動。これでどうだ♪
「あぁぁぁ…うっ!…くぅ~」
達した後、安眠…得体の知れない物体に遭遇した気分だ。感度は良さそうだが、眠気が勝っているようだった。はぁ~…名雪の中に侵入してみる。初めてなのか、入り口は狭い…う~ん…たぶん、僕の苦手なタイプな予感…高校生だったよな?感触的には中学生な感じだ。ドッキングを解除し、交わった痕跡を消しておく。僕は中学生とはヤラない主義だから♪
「おい、名雪!起きろよ!」
「うん?くまさんが一人…くまさんが二人…」
起こしている傍から、寝ようよしている強敵…そうだ♪『着衣』を発動し、制服を着せた。
「おい…起きろ、名雪」
「うみゅ?あぁ、祐一…おんぶ♪くぅ~」
素早く動いて、僕の背中に纏わり付いて、安眠モードに入った名雪。う~ん、強敵すぎる…悪意を感じないので、僕の防御機能が役立たない。オンブをしたまま、階下へと降りた。
「あら、祐一さん、おはようございます。うっ!うちの娘がご迷惑を…」
僕の背中でヨダレを垂らして寝ている娘を見て、固まる秋子さん…
「毎朝、これはカンベンしてください…」
「えぇ…言い聞かせておきます…」
名雪を椅子に下ろし…そうだ!あのジャムを…謎のジャムをスプーンに山盛りにして、名雪の口の中に突っ込んだ。
「え?!何?何したのよ~!」
パニックを起こしているが、目覚めた名雪。
「え…あのジャムを…信じられない…」
涙目で僕を見る名雪。この世界でも、あのジャムは最凶なアイテムなんだな。恐ろしすぎて、成分分析、組成分析すらしたくない代物だし…
「うっ…今日1日、この味と共に生きるの…うぅぅぅ~」
凹んでいるが、完全覚醒した名雪。
「明日の朝、起きないときは、全身にジャムを塗りたくるからな♪」
「えぇぇぇ~!何を恐ろしい事を言っているのよ~祐一、酷い!」
「うん?僕のパジャマを名雪のヨダレで汚した件は、どうしてくれるんだ?」
パジャマを脱ぎ、名雪に投げつけた。
「あ…ごめん…朝、弱いんだよ~」
「後さぁ~、あの目覚ましはなんだ?朝から気怠いんだけど」
「え?私の朝の囁きだよ~」
要らない…朝から滅入っているんだけど…
「色っぽいのなら歓迎だけど、あれはダメだ!返品だ!」
「酷いよ~祐一…」
コイツは白だな…悪意をまるで感じ無い。いや、白ではあるが、強敵には変わりはない。これからの生活に不安を隠せない僕。
---工藤新一---
街中で聞き込み。少年の写真を見せても、誰も知らないようだ。どうするかな?
「あれ?工藤君…何しているんだ?」
え?アイツの声、振り向くと、アイツがいた。
「お前こそ、何をしているんだ?蘭も一緒か?」
「いや、家に置いてきた。仕事には危険がつきまとうからな」
仕事?
「何の仕事だ?」
「うん?人探し?誰を探しているんだ?」
こいつ、記憶が読めるのか…隠し立てしても無駄な気がして、あの少年の写真を見せた。
「はぁ?これって、倉田…なんたらの弟だよな?生きているのか?」
アイツはどこかに連絡を取って、何かを確認していた。
「う~ん…工藤君、死にたくなければ、手を引け。これ、ヤバい物件だぞ」
「ヤバい?」
「僕の仕事に関連している可能性も有る。今、援軍を呼んだから、今日はこれで宿で休め」
「援軍って?ここで戦争でもするのか?」
「違うよ。警察関係者を呼び出した。正式な捜査権限を持った者と一緒で無いと、情報が得られないと思うからね」
「お前の依頼主って…」
「警察だよ。神隠し案件を依頼された。君もそうだろ?どうせ手を引く気は無いのだろうから、ここは共同捜査にしようぜ♪」
--------
俺の泊まっている部屋に、アイツを引き込んだ。
「そうか、工藤君の方は倉田佐祐理さんの弟の一弥か。こちらは二人だ。相沢祐一と月宮あゆ。あぁ、今潜入捜査中だから、うかつに外で話し掛けないでくれよ」
潜入捜査?警察から依頼の…コイツ、公安か?
「公安じゃないよ。捜査協力だよ♪」
心も読めるのか…
「あぁ、心も記憶も読める。僕の前では嘘は吐かないようにな、工藤君♪」
コンコン
ドアがノックされた。アイツはドアを開け、訪問者を引き入れた。
「工藤君、紹介するよ。僕の下僕で退魔師の臥煙伊豆湖だ」
「よろしくな、少年♪」
俺よりも歳上に見えるが、身なりは10代後半のようだが…えっ?退魔師?
「そういうことだ。この案件、人間だけの犯罪では無い」
アイツが妙な事を言った。人間だけの犯罪では無い?何?
「なんらかの悪意が関わっている。今、その関わっている者を捜査中だ。いいか、首謀者は、君では敵わない存在だ。一人で行動するなよ、工藤君♪」
ヤバいって、そういうことなのか…
「確認した状況的には、今からドロップは出来無いかもな。君はもう関わってしまったから。明日、捜査陣と共に倉田家で両親と会い、情報を取ってきてくれ」
「お前は?」
「僕は潜入調査中だよ。頻繁には抜け出せない。連絡係に伊豆湖を使う。あぁ、伊豆湖、この部屋に結界を張っておいてくれ」
「あぁ、今やっているよ」
「あと、これは必ず身に着けておいてくれ。魔除けの札だ」
アイツからお守りを手渡された。
「君が攻撃に晒されたら、僕の仲間が助けにいく」
「お前は何者なんだ…」
「僕か?通りすがりのエロ好きだよ♪ふふふ」
笑顔のアイツから得体の知れない気配が漂ってきた。
---シュウ---
工藤君と別れて、物見の丘を訪れた。確かに狐の気配を感じない。幼狐がいたはずの朽ちた木の根元に手を置き、記憶を読み取る。
10年前、傷ついた幼狐を保護して、面倒を見ていた祐一。しかし、都会へ帰るに当たって、幼狐を自然へと帰しに来た。問題はその後だ。うん?誰かが幼狐を連れて行ったようだ。悪意を纏っていて、姿が認識出来無い。濃厚な悪意だな…そうなると幼狐はもう…
何かの気配を感じ取り、振り返った。少女が立っていた。確か…天野なんたらだっけ?
「何をしているんですか?」
少女に訊かれた。
「昔、ここに幼狐を放したんだ。怪我をしていて保護したんだけど、実家に帰ることになって…都会だと飼えなかったから…」
並行世界で仕入れた情報を口にした僕。
「そう…愛情を注いでしまったのですね」
「君も?」
少女は答えずに、花束を朽ちた木の根元に置き、手を合わせた。しばらくすると、狐の気配を感じた。少女は気配を感じた方へと導かれるように去って行った。狐との逢い引きか…ロマンチックだな。
水瀬家へ帰ることにした。1日で何カ所も廻ると、怪しまれるから…明日はあの大木に行くかな…
--------
水瀬家に帰ると名雪が抱きついて来た。大胆なヤツだな…あっ!抱きついて、僕は今朝やらかしてしまった事に気づいた。
「祐一…服を着せてくれたのは嬉しい…でもねぇ…下着も着せて欲しい…」
そうだ。制服だけを着衣させた。下着…着衣させていない…コイツ、ノーブラ、ノーパンで、部活に行ったのか…勇気有るなぁ…
「下着の有りかなんか、知らないもん…」
そう答えると、僕の手を引き、自分の部屋に連れ込んだ名雪。そして、タンスを開けて、
「ここに入っている。ねぇ、場所を覚えてね、祐一…」
こいつ…毎朝、僕に…おぃおぃ…
「お礼に…好きにして…いいよ…」
興味が無いって言ったら、この先に影響有るだろうな…う~ん…答えを躊躇していると、制服を脱いで全裸になった名雪。幼児体型と言えば言え無くも無い…かと言ってロリータ臭は無い…そうだ!キューピー人形に、少し腰の括れを付けて、胸を大ききした感じだ。そそらない…縛っても気怠い声の予感しかしないし…
「じゃあ、また明日な♪」
部屋を出ようとすると、背中に抱きついて来た。胸の感触は悪く無い…
「なんでよ~。なんで、何もしないのよ~」
「だって、好きにしていいって言ったじゃん。だから、部屋で一人で寝るんだけど…」
「えぇぇ~!うら若き乙女が全裸なんだよ~。何かしたいと思わないの~」
名雪の気怠い話し方。それが、原因とも言えず…
「若すぎるもなぁ…渋柿より熟した柿の方がおいしいだろ?」
「うっ!まさか、お母さん狙い…」
僕の背中を強く抱き締めてきた。う~ん、秋子さんかぁ。確かにそそるな。縛りたいなぁ~♪
「ダメだよ~お母さんは。私のお母さんなんだから…」
「名雪は秋子さんとプレイしているの?」
「してないよ~祐一と…あっ…」
プレイ風景を想像して名雪が固まった。この隙に逃げる。祐一とプレイしている姿を、想像した名雪。彼女には刺激が強すぎたようだ。
敵では無いが、この世界の名雪は強敵だ。う~ん…対策は無いよな…あっ、そうだ、赤いカチューシャの件を確認しないと。隣の部屋で固まっている名雪の記憶を読む。
10年前…祐一君が帰って後、家の前に置かれていた箱。中には、『祐一より』と書かれたメッセージカードと赤いカチューシャが入っていた。名雪は祐一のプレゼントと思い、大事にしているようだった。
誰が置いたんだ?大木の枝が折れていないってことは、祐一はあゆにプレゼントしたはずだ。なのに…そうなると、あゆももう…そうなると天界に行けない場所かぁ…
『白音!物見の丘周辺の洞窟、洞穴を探査しておいてくれ。気をつけろよ、悪意は濃いから』
『了解です。お兄様!』
念話で白音に指示を出した。