※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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断ち切る縁

 

---遥---

 

目が覚めると、知らない場所にいた。上体を起こし、周囲を見ると、どうやら礼拝堂の祭壇にある台の上のようだ。台の上で横たわっていたので床に降りると、足の裏に床の冷たさが伝わってきた。そういえば、ここは空気も冷たい。厳かなオーラも感じる。何で、こんな場所にいたのだろうか?

 

壇上から降りて、扉に向かう。扉は重厚な造りで、とても豪華な礼拝堂のようだ。ここはどこ?

 

扉を開けると床には赤い絨毯が敷かれていて、私はその上を歩いて行く。この時、胸の収まりが悪いことに気が付き、私は全裸であることに気が付いた、どうして?

 

廊下の端から、大柄で、身体付きが豊満な女性が近づいてきた。

 

「お目覚めですね。主様があちらで、お待ちです」

 

と、私に近づき、そう伝えてくれた。主様?どなた?

 

「あなたは?」

 

「私は、この城のメイドで、ガブリエルと申します」

 

私に一礼をしながら、自己紹介をしてくれた。ガブリエル?そんな名前の天使がいたような…彼女に付いて、待ち人のいる部屋に案内をしてもらった。

 

------

 

「遥さん、お加減はいかがでしょうか?」

 

王様の座るような玉座に座ったイッセー君に、声をかけたれた。

 

「イッセー君、どういうこと?」

 

「遥さん、どこまでの記憶が残っていますか?」

 

どこまでの記憶?う~、確か…イッセー君にもたれ掛かって、腹部に激痛が走って…

 

「そうですか…事実だけを申し上げます。遥さんは、綾斗の一撃を腹部に受けて、お亡くなりになりました。内臓は破裂、肋骨、背骨共に粉砕骨折でした」

 

亡くなった?私が…では、私はどうして?

 

「回復魔法をすぐにかけたのですが、既に…その為、ここにお連れして、人間として甦らせました」

 

人間として?甦った?

 

「遥さんには選択を与えます。僕と出会わない人生と、僕と関わる人生、どちらを選びますか?」

 

意味がわからない…

 

「まぁ、混乱されているのだから、すぐには選択は無理だと思います。ここで、ゆっくりとお考え下さい」

 

イッセー君は、席から立ち上がり、どこかに去って行った。

 

「遥お姉さん、大丈夫?」

 

後ろから声を掛けられた。振り向くと、イッセー君がいた。え?今出て行ったはず…

 

「あぁ、あれはシュウさんだよ。この城の主のねぇ」

 

イッセー君にそっくりな人物…シュウ…そうだ、あの時、ゼノヴィアさんはイッセー君をシュウと呼んでいた。

 

「シュウさんは、僕と一心同体なんだよ。この城に居る時だけ、僕は実体化できるんだ」

 

実体化?

 

「僕はシュウさんに生かされている。とても、感謝している。学校にも通わせてもらい、思い出をいっぱい作らせてもらっているんだ」

 

意味がわからない。でも、目の前のイッセー君は、今まで接してきたイッセー君と違い、とても無邪気に見える。

 

「僕は生まれてこなかった命なんだ。でも、シュウさんが引き留めてくれた。身体は1つだけど、僕は今もシュウさんの魂の中で生きているんだよ」

 

2重人格なのかな?

 

「う~ん、そうだね。意味のわからない人には、そう思えるよね」

 

「ねぇ、ここはシュウっていう人のお城なの?」

 

「そうだよ。キャッスルドランって言うお城だよ」

 

「どこにあるの?」

 

「今はたぶん、僕の家の上空だと思う」

 

「思う?」

 

「うん、このお城は移動できるから、実際にどこにあるのかは、僕にはわからないんだ」

 

移動できるお城…ハウルみたいな?

 

「あれは歩くでしょ。このお城は飛んでいるんだよ」

 

イッセー君に連れられて、窓から外を見た。雲の絨毯に浮かんでいるようだ。本当に空を飛んでいるんだ。

 

「イッセー君、遥さん、お食事の準備が出来ましたよ」

 

先程のメイドさんに声を掛けられた。そうだ!

 

「すみません。私に服をください…」

 

「今のままで問題はないですよ。シュウさんしか興味無いし」

 

興味無い?一応女性なんですが…

 

「このお城で、男性はイッセー君とシュウさんしかいませんから」

 

メイドさんは笑顔でそう言った。

 

「あとは、女性ばかりなんですか?」

 

「オスはいますよ。でも男性は二人だけです」

 

その言い回しは何だろうか?

 

「人間形態の者は僕とシュウさんしかいないってことだよ」

 

イッセー君が、疑問に答えてくれた。人間形態?

 

「うん。僕は意識の集合体だし、シュウさんは鬼と天使のハーフだし。人間は遥さんだけだよ」

 

人間は私一人…え?みんなは違うの?

 

「えぇ、違いますよ。私は元天使ですし」

 

ガブリエルさんは…天使なんだ。

 

「私だけ…なんか場違いな気が…」

 

「あなたを甦らせる為に、ここにお連れしました。招魂、入魂、再始動には膨大な魔力が必要なんです。シュウさんはまだ魔力の上限が低いので、蘇りの儀式を一人で執り行えないんですよ。ここなら、魔力を持っている者は多数いますから」

 

私は本当に甦ったようだ。シュウという者の手で…あれ?さっき、シュウって者は鬼と天使のハーフって…え~、私が捧げた相手って…

 

「そうだよ。僕だよ。一誠でなくて、悪かったなぁ」

 

シュウから声を掛けられた。

 

------

 

「ガブと一誠が説明してくれたみたいだな」

 

食堂のテーブルの席についた、私、イッセー君、シュウ、そして、初めて会う者達…

 

「まぁ、そういうことだ。捧げた件を含めて、僕と会わない人生を歩むことを勧める」

 

会わない人生?

 

「そう、君と綾斗の記憶から、僕達のことを消す。それが幸せだと思う。現状だと、綾斗は姉殺しの罪を背負うことになるからね」

 

弟が私を殺した?

 

「その辺りの記憶が曖昧なんだろう。いや、自己防衛で記憶に無いかな」

 

どう答えれば良いのだろうか。

 

「処女膜は新調したし、マンションはプレゼントだ。マンションの1階には道場を設置してある。これからも精進してください」

 

ちょっと待って…ねぇ。

 

「遥さん、さようなら…」

 

光の渦に包み込まれていく私。

 

 

 

---シュウ---

 

「そうそう、ロセはイッセー組の方へ行った。代わりにルフェイを呼び出している」

 

みんなに伝えた。

 

「で、どうする?魔法の鍛錬は?」

 

フィンがきいてきた。

 

「夏休みに行って来ようと思う」

 

「まさか…一人でか?」

 

「うん。一誠はここに置いて行くから、ベアトリス、リトル、面倒をみてやってくれ」

 

「どこに行くんだい?」

 

「禁断の魔術ギルド…もう一度修行をしてくる」

 

 

 

日曜の夜、家に帰った。明日から学校だし。誠の部屋に向かった。誠に遥の件を伝えた。

 

「そうだな。シュウに出逢わなければ、弟は罪を犯すことはなかったんだから」

 

「マンション収入で、姉弟は食っていけるよね?」

 

「そうだな」

 

「でね、夏休みなんだけど、禁断の魔術ギルドに行こうと思う。一誠はキャッスルドランに置いていく。数馬叔父さんはどうするかな?」

 

誠の顔から血の気が引いていく。

 

「お前…そこには行けないって、言っていただろう?」

 

「あぁ、事情が変わったんだ。そこに行く手立てがあった。行けば、魔力の上限が上がると思うんだ♪」

 

「おい…小2でラスボスになるのか?」

 

「魔力を上げたくらいじゃ、ラスボスにならないよ。僕はもっと強くなりたいんだ。もう仲間を失いたくないから」

 

 

 

---誠---

 

数馬君と一香を呼び出した。

 

「シュウが夏休みに、禁断の魔術ギルドに鍛錬に行くそうだ。数馬君、君はどうするのかい?シュウは連れて行く気があるようだぞ」

 

数馬君は思い悩んでいた。

 

「数馬、人間を辞める覚悟はあるの?」

 

一香は実弟に問うた。

 

「無い…姉さん…無いよ。彼のように仲間を護りたい気持ちだけで、人間は捨てられない」

 

両手を握り絞めて、悔しそうな表情の数馬君。

 

「もし行ったら、式森家当主を辞めないといけない。和樹はまだ当主の器で無いし。俺は煩悩の塊だよ」

 

いや、シュウはエロの塊だ…と、言いそうになり言葉を飲んだ俺。

 

 

 

---遥---

 

何かが違う日常。何が違うかわからない。なんだろう?何が違うのかな?弟は何かに怯え、一心不乱に剣の鍛錬をしている。

 

「僕がお姉ちゃんを化け物から護るんだ」

 

っと。化け物に襲われた記憶が無いんだけど。

 

違和感と言えば、このマンション。毎月、収入を生み出してくれる、このマンションはどうやって建てたのだろうか?親の遺産なんか、道場くらいしかなかったはずだ。何かを忘れている。何だろうか?

 

「お姉ちゃん…焼きプリン…どこで食べたんだっけ?」

 

夕食の時に弟が呟いた。そうだ、あんなに美味しい食べ物は、初めてだった。あれ?どこで食べたんだっけ?

 

「お姉ちゃんが作ったんだっけ?」

 

いや、お菓子を作る才能は無い。剣の道しか私には無い…あれ?どこだっけ?

 

 

その晩、夢を見た。雲の上のお城にいる夢。お城の王様は化け物…私は全裸で囚われている?私はあの化け物に食べられてしまうのか?そこに弟が助けに来てくれた。化け物に勇猛果敢に戦いを挑み、迷いの無い一撃を食らわせた…そこで、夢から醒めた。

 

 

 

---誠---

 

間神龍斗が烏間をお供に訪ねて来た。

 

「おい、お前の息子は何者だ?俺を殺して、生き返らせて、インポにして、パイプカットまでしやがった!」

 

ものすごく、ご立腹である。

 

「なぁ、小2のガキに何をされているんだよ?九十九屋の大将よ」

 

「だから、何者だ?あのガキは?」

 

空気の質が一瞬で変わった。鬼降臨か?

 

「ああ、いい大人が揃って、僕をガキ呼ばわりか?誠は、まぁ父親だから許すが…」

 

龍斗を睨むシュウ。

 

「おい、ガキ…治せ!」

 

「うん?言葉遣いがなっていないな。おい、詫び状と供物は持って来たのか?」

 

「なんで?ガキに…」

 

「なら、一生、それで生きろ」

 

九十九屋の大将に一歩も引かないシュウ。

 

「貴様~」

 

お供の烏間と共に、斬り掛かる龍斗。二人を殴り倒す忍とオーフィス。

 

「主様、喰って良いか?」

 

忍がシュウに確認をしている。

 

「やめておけ、腹を壊すぞ。そんな腹黒い怪異は」

 

「おい、龍斗…生きて帰れると思っているのか?」

 

九十九屋の大将を恫喝するシュウ。

 

「なんだ?あの少女達は…」

 

「詫び状と供物はセットだ。彼女達の正体は明かせない。知れば、死ぬよ♪」

 

「俺が何者か知っているのか?」

 

「あぁ、全然怖くない。たぶん、この家で一番弱いんじゃないかな?」

 

烏間はゼノヴィアに飛ぶ斬撃を喰らい、戦意を喪失していた。

 

「なぁ、シュウ…こいつら、弱すぎるだろう?」

 

「そう思うよ、ゼノヴィア。どうするかな。売られたケンカは買うよ。ふふふ」

 

「お前ら…人間でないのか?」

 

龍斗は彼らの異常なオーラに気が付いてようだった。

 

「お前だって、人間でないだろ?」

 

「おい、誠…助けてくれ~!」

 

正体を読まれた龍斗は、俺に助けを求めてきた。

 

「ケンカなんか売るから…供物と詫び状を考えた方が良いよ。俺は瞬殺されたくない」

 

「誠が瞬殺?有り得ない…そんなこと…」

 

「本気出す前に謝りな。悪いことは言わないから。アイツの仲間が湧いて出てくる前にさぁ」

 

脅しとも取れる真実を伝えた。遥の件で気が立っていたシュウを怒らしちゃなぁ…

 

「供物…弟を舎弟にしてかまわない…詫び状…書く…それで、なんとか…」

 

「男は供物にならねぇ!」

 

エロ神降臨か?こうなるとタチが悪いぞ、アイツは。

 

バッシュ!

 

大きな音がした。音のした方を俺と龍斗が見ると、レムの叩き付けた鎖付きの鉄球で、烏間がつぶれていた。

 

「烏間が…なんだ、あのメイドは…」

 

「鬼だ。我が家のメイドは強いぞ。鬼と神だからな」

 

目を見開いてレムを見る龍斗。レムは不敵な笑みを浮かべている。

 

「主様を煩わせる輩は、このレムが許しません!」

 

つぶれた烏間の破片を忍が食べ始めた。

 

「おい、なんだ…アイツ喰っているぞ…」

 

「あぁ、ディウォーカーだ」

 

見開いた目で俺を見る龍斗。

 

「お前…なんちゅうもんを飼っているんだ?」

 

「龍斗、そういう言い方は…」

 

「おい、僕の仲間を飼うって言ったよな?」

 

俺の言葉を遮ったシュウ。シュウに言ってはいけない事を言ってしまった龍斗。

 

「ゼノヴィア…アイツを10階でかわいがってやれ♪」

 

「取り敢えず了解だ。でも、楽しめなさそうだ」

 

龍斗は引き摺られトレーニングルーム行きに。そして、リビングルームに平穏が訪れた。忍の咀嚼音を耳にしなければ…

 

 

その後、烏間を生き返らせて、龍斗から詫び状を得て、供物は宿題にして帰したシュウ。

 

 

 

---遥---

 

「遥お姉ちゃん♪」

 

学校からの帰り道、突如見知らぬ少年に声を掛けられた。

 

「君は誰だっけ?」

 

「えっ…忘れちゃったの?」

 

とても哀しそうな表情の少年。弟の友達かな?

 

「綾斗のお友達?」

 

「そっか…覚えていないんだね…ごめんなさい。失礼します」

 

寂しそうにトボトボ帰って行く少年。誰だっけ?

 

 

家に帰るとカバンの中に焼きプリンが2つ入っていた。いつの間に?あの少年が入れたのか?綾斗と共に食べる。

 

「この味だ♪お姉ちゃん、作ってくれたんだね」

 

喜ぶ綾斗。あの少年は誰だっけ?

 

 

 

---シュウ---

 

まさか、一誠とメイビスが画策して遥に会いに行くとは…

 

「だって、シュウ。一緒にいたかったんでしょ?」

 

って、メイビス。

 

「そうだよ、シュウさん、やせ我慢はダメ!」

 

「いちゃダメな場合もある。一緒に居たら、綾斗は立ち直れない。一誠、目の前の事象に惑わせられるな。メイビス…なんで、お前ならわかるだろうに?」

 

「今回は、一誠君の気持ちを大事にしました。一誠君はシュウの為にしたんだよ。それは怒っちゃダメだと思う」

 

「怒っちゃいない。ただ、一誠、もうするなよ。綾斗を苦しめるだけだ」

 

 

 

---美奈子---

 

珍しいお客様が来た。一誠君だ。シュウが出て来ない時間帯を狙って、来たそうだ。そして、彼から相談をされた。

 

「美奈子お姉ちゃんって、愛のセーラー戦士だよね?どうにかならないかな?」

 

難しい案件だ。シュウの逆鱗に触れると危険が一杯なんだけど。

 

「ねぇ、美奈子お姉ちゃん♪」

 

無邪気な一誠君の笑顔に、負けた。請け負ってしまった…どうしよう…一人ではダメだと思い、亜美ちゃんにヘルプをした。

 

「う~ん、それは難しいよ。だって、シュウさんは認めないんでしょ?」

 

そうらしい。一緒にいると、弟が姉を殺した事実を、思い出してしまう危険がある。

 

「でも、一誠君の願いは叶えたいんだよ」

 

「それは、同意するけど…」

 

シュウに気づかれずに行動するのは難しいかな?

 

「そうだ。弟さんの記憶を違う物に差し替えるのは?」

 

「殺した物を違う物に置き換えるか、夢での出来事に?」

 

夢だと誰の能力で操れるのかな?

 

「うさぎちゃんかせつなさんかな?」

 

「月の光と闇?」

 

「ダメかな?」

 

う~ん、そんな私の脳細胞に閃きが舞い降りた。

 

「いい手がある…」

 

私の案を聞いた亜美ちゃんは驚きながら、頷いた。

 

「美奈子ちゃんがそれで良いなら良いと思うよ」

 

私は変身をして、願いを叶えてくれる者の元に向かった。

 

 

-------

 

 

「で?何で、僕?」

 

「供物を捧げれば、願いが叶うんだよね?」

 

「まぁ…本来の仕事をすれば…」

 

「じゃ、私を供物として捧げます。ですから、一誠君の願いを叶えてください」

 

「お前はバカか?反対している僕が、そんなことをすると思っていたのか?」

 

「本来の仕事をしないと…ダメだよ♪」

 

「それに、美奈子は供物にならない」

 

ガーーン!

 

なんですと?

 

「もう、飽きた…虐めがいがないというか、エムを虐めても愉しめない」

 

「好き嫌い無しに食べないとダメだよ、シュウ」

 

「嫌いでは無いが、好きでも無い」

 

「誰なら良いの?」

 

「えっ…」

 

私の問い掛けに固まるシュウ。あれ、これって、もしかして…

 

「遥さんが良いのかな?」

 

「ちっ、違うって…」

 

おぉ、動揺しているし。でも、これこそ本末転倒な気もするなぁ。

 

「ねぇ、なんで?弟さんの記憶を、置き換えるとかすれば良いんじゃないの?」

 

「アイツは僕を化け物と言った。僕に対して渾身の一撃を入れたんだ。化け物が死んだことにするってことは、僕はこの世界にいられないってことだよ。僕は、まだこの世界にいないといけない」

 

あぁ…そういうことかぁ…

 

「一誠の思いも、美奈子の思いもありがたい。その思いだけは受け取っておく」

 

『美奈子お姉ちゃん、ありがとうございました♪無理みたいだね…』

 

一誠君から念話が届いた。

 

「シュウ…」

 

「無理だ。綾斗は化け物の息の根を止める為に、鍛錬を続けている。アイツの記憶を消したが、アイツの魂に刻まれた記憶は消えなかったんだろう」

 

「ネクロマンサーの能力で」

 

「敵以外には使わない。アイツは敵ではない。アイツの剣では僕は倒せないから」

 

「じゃ…」

 

「美奈子…今夜は添え寝を頼む…」

 

え?私じゃ代わりはできないよ~

 

「代わりじゃない。美奈子は美奈子だ。お前の代わりは、誰にもできない」

 

うっ…惚れ直しそう…

 

「はぁ?惚れてもいないのに、惚れ直すなんて、有り得ないだろ?」

 

あぁ、そうでした…ってことにしておこう。

 

 

 

---遥---

 

道場で素振りをしていると、声を掛けられた。

 

「天霧遥さんですね。お手合わせをお願いしたい。私は、東堂刀華」

 

「雷切?」

 

「よくご存じですね」

 

二つ名に『雷切』を持つ、雷撃系の剣士だ。気配を消せる抜き足、凄まじい速さの抜刀術を持つ、強敵だ。

 

「なんで、私なんかを?」

 

「天霧辰明流の使い手ですよね。その歳で…私は強くならないといけない。護らないといけない者がいるから。お手合わせをお願いします」

 

勝て無い…そんな気がする。

 

「おい、刀華。何をしているんだ?道場破りとは、いただけないな」

 

あの時の少年が刀華さんの後ろに立っていた。

 

「イッセー君…逢いたかった。こういう行為をしていれば、いつか逢えると思って」

 

「遥さんはダメだ。刀華に負けはない」

 

「ちょっと、待ってやってみないと」

 

「やらないでも分かる。やってみないとって思った時点で、負けだよ、遥さん」

 

「イッセー君、お相手をしてくれる?」

 

「ここじゃダメだ。場所を変えよう」

 

少年と刀華さんの姿が目の前から、突如として消えた。

 

 

 

---シュウ---

 

刀華を家にお持ち還り。家というか、トレーニングルーム10階だけど。

 

「ここなら、問題ない。思い切ってできる」

 

「ここって?」

 

「僕の家のトレーニングルームだよ」

 

「イッセー君の家…住んでもいい?」

 

「そのつもりだったんでしょ?」

 

「てへ♪」

 

笑顔の刀華。変わらないな普段の姿は。

 

「じゃぁ、お手合わせ、お願いします」

 

「はい」

 

愛刀の鳴神を腰に携えた刀華。僕も愛用の剣を4本定位置に携えた。

 

「4刀流…極めたの?」

 

「試してみれば?」

 

刀華は抜き足で、気配を消して早速動いた。僕も瞑想で空気と同化して、気配を消す。抜き足の欠点、呼吸の時に空気が振動すること。気配は消えるが空気の振動を肌で感じれば、刀華の位置はだいたいわかる。もう一つは相手の無意識にダイブする抜き足だが、僕の瞑想だとそもそも無意識になるので、ダイブした瞬間に位置を把握できる。まぁ、斬られても透過するから問題もないし。

 

村雨の居合い斬りだけを使い、刀華の服だけを切り刻んでいく。刀華の肌に傷なんか入れたくないし。残りの三振りで刀華の攻撃を防ぐ。

 

「きゃっ!」

 

自分の姿に気づいた刀華。服が短冊の様に首からぶら下がっている状態だ。隙間から見えそうで見えないショットは、そそる。

 

「刀華、勝負あっただろ?」

 

顔を真っ赤にして項垂れて、刀を腰からはずし

 

「負けました。うっうっうっ…こんな姿にされるなんて…イッセー君、責任取ってね~♪」

 

えっ、こんな程度で責任?

 

「見ただけなのに?いや、見えそうで見えていないし」

 

「今夜、たっぷりとお見せします♪」

 

はぁい?

 

 

二人で地上階に行くと、

 

「シュウ、お前、また連れ込んだのか?」

 

「人聞きが悪いことを言うなよ、誠」

 

「じゃ、彼女は?新顔だよな?斬新な服装だし」

 

「東堂刀華です。イッセー君に切り刻まれました。責任取ってもらいます♪」

 

「お前なぁ…」

 

誠が頭を抱えてた。

 

 

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