---シュウ---
秋が終わりに近づいた週末、寅ちゃんに呼び出され、破軍学園の理事長室にいる。
「年末にな、南郷カップ争奪戦という催しをしたいんじゃ、協力してくれないか?」
「勝つと良いことでも有るの?」
ここの戦力は予想が付くので、賞品次第だな。
「賞金100万円でどうじゃ?」
「桁が2つ足りないんじゃないかな?あぁ、僕はこれでも忙しいんで」
席から立ち上がろうとすると、
「億は出せないが…寧音を」
と、そこまで言いかけて、寧音ちゃんの視線により、固まる寅ちゃん。
「私を賞品にしないように」
「だよね。乳の出ない寧音ちゃんに価値は無いし」
「価値無いの?」
寧音ちゃんが困ったような表情になる。
「うん、女性に困っていないし」
「なら、何なら参加してくれるかな?」
「ユリちゃんの乳」
「出ません…」
ユリちゃんが泣きそうな表情になっていく。
「なぁ、小学2年生なんだろ?乳から卒業しろよな」
寧音ちゃんが、困ったような視線を向けてきた。
「でも、興味が尽きないんだよ。人によって、味に違いがあるのかさぁ。って言ってもね、まだ乳にありつけた試しは無いんだけど」
苦笑いする僕。
「留学してから2年経つんじゃ、互いに力を見せ合ってくれないかな」
引き下がる寅ちゃん。
「寅ちゃんの目的は、力を見るじゃなくて、スタイルを見るでしょ?」
「え?それは…」
図星って表情の寅ちゃんは、黒乃を含めた3名の女性から視線が刺さっていく。
「南郷先生、どういうことですか?」
黒乃が寅ちゃんを問い詰めていく。
「いや、一誠君がなあ、美少女剣士のコレクターなんで…見てみたいというか…」
「美少女剣士をコレクションしているのか?」
寧音ちゃんが、呆れたような表情で僕を見る。
「コレクションじゃないよ。仲間だよ。でも、女性の方が後々良いでしょ?」
「おい、小二の考える範疇じゃないだろ?このエロガキが!」
図星であるので、反論はしない。寧音ちゃんが激高する姿は好きだ。着崩した和服のおかげで、胸元が見えそうで見えないスリルがあるからね♪
「でだ、破軍学園としては6名の剣士を出す。試合形式は1対1のトーナメント方式じゃ」
えぇ~この状況で、話を進める寅ちゃん。
「それって、僕を含めて6名出せってこと?」
「話の飲み込みが早くて助かる」
「そっちの参戦メンバーは?」
「黒鉄兄妹、ステラ、ユリス、有栖院、綾辻じゃ。皆、知ったメンバーじゃろ?」
「う~、知っているな…それだと、トーナメントじゃ、つまらないと思うよ」
「なんでかな?」
「1試合目に全力を出し切って、2試合目はボロボロだから、僕の優勝は揺るぎないし。どうせ、ワンデーイベントなんでしょ?」
「そうなるか…マッチメイクをするとどんな感じになる?」
寅ちゃんが、僕にアイデアを求めて来た。これだとなぁ…
「たとえば、黒鉄妹に雷切、有栖さんに腹黒、綾辻さんには遥、一輝にはきりんちゃん、ステラは僕、ユリスはお持ち帰り、とか」
「6名出せないのか?」
「ユリスと相性の良い剣士が浮かばないんだよ。う~んっと…あっ、僕の弟子で良いかな?」
「弟子?小二なのに弟子がいるのか?」
「まぁ…色々と…」
「いい女なのか?」
女性からの視線を気にせず、きいてきた寅ちゃん。
「う~、好みの問題だな。僕的にはアレコレしようと思わないけど。天然なツンデレタイプで、僕の苦手なタイプというか…」
「ならば、そのマッチメイクで1試合ずつにしよう。そうじゃな、対抗戦って感じじゃな。破軍学園と駒王学園とのな」
「じゃ、そういうことで。僕は帰るよ。参戦メンバーのプロフィールは、後で送るから」
僕は、対抗戦のことを皆に知らせに帰った。
---ユリス---
一輝、ステラ、私、有栖さん、綾辻さん、珠雫さんが、理事長室に呼ばれた。そこには、理事長、寧音先生、南郷先生、ユリちゃんがいた。
「年末に南郷プレゼンツな対抗戦を開くことにしたのじゃ」
南郷先生から、イベントの発表があった。
「相手は駒王学園だ」
剣士の学校じゃないよな。アレ?どこかで聞いたことがあるんだけど、どこだっけかな?
「剣士の為の学校ではないですよね?聞いたことがないですが」
綾辻さんが質問をされた。
「まぁ、戦士の為の学校じゃ。で、アチラとは話が付いて、戦士を派遣してくれるそうだ。是非とも戦って欲しい」
「戦士だと、相手は剣以外ですか?」
「いや、全員、剣士もしくは魔導剣士じゃ。この2年間の成長を見てみたいのじゃよ」
2年間?2年前って…えっ…まさか…
「イッセー君の通っている学校ですか?」
声を上げた私。
「ふふふ、さすがユリスじゃな。その通りだ」
私を含めて、顔から血の気が失せていく参戦予定メンバー。
「無理…勝てないって…」
「いやいや、全員がヤツと対戦ではない。一人だけがヤツと当たるのじゃよ」
「対戦カードは決まっているんですか?
一輝が質問した。
「決まっておるが、この場では言わない。メインイベントから、逃げるかもしれないから」
いや、逃げるでしょ。一輝は2年前の対戦で入院を余儀なくされたし。ステラは攻撃できないし。私だって…無理だよ~
「で、じゃ。先方から参加メンバーのプロフィールが送られて来たので、君達に知らせておく。まず、兵藤一誠。あれから危険度が更に上がっておるそうじゃ。仕入れた情報では、魔王を瞬殺できる程度にまでなっておるそうじゃ」
無理だって…ここいるメンバー全員で戦っても、魔王なんか倒せないって。
「【雷切】東堂 刀華。この学園にいた者じゃから、実力は知っておるじゃろ?」
刀華さん…珠雫ちゃんだと不利だな。雷と水だもの、相性は最悪。一輝かステラでならいけると思うな。
「【千見の盟主】クローディア・エンフィールド。星道館学園から転校したそうじゃ」
ちょっと…なんて人をスカウトしたの、イッセー君は。
「刀藤流宗家、刀藤 綺凛。天霧辰明流、天霧遥。チームオラリオ、アイズ・ヴァレンシュタイン の6名が参戦するそうじゃ」
絶句してしまう私を含めた参戦メンバー達。
「さすがに、目利きじゃの~、良いおなごを集めておる」
「南郷先生、そういう目で見ないでくださいね」
理事長が南郷先生を窘める。いや、このメンバーって、壮絶でしょう。よく集めたなぁ。
「注目株はアイズって子じゃ。一誠君の弟子じゃそうな。2刀流なんじゃろうか?」
弟子…あのトレーニングルームにいたのかな?
「対戦カードは今、聞けませんか?」
一輝が再度質問をした。
「それじゃ、サプライズ感がないじゃろ?」
「そうかもしれませんが、しかし…」
「あまり、駄々をこねると、更に上位の剣士を、参加させると言っていたぞ。一輝よ」
寧音先生が釘を刺してきた。
「更にって、どういう意味ですか?」
「今回は学園対抗形式だけど、オープンにしても良いっている。年齢を問わずに出すって…」
それだと…とっても危険かもしれない。
「それに一輝、お前は幼稚園児に、病院送りにされたことを忘れるなよ。今回の参加者は全員、小学生だそうだ」
あれ?刀華さんは?
「刀華さんもですか?」
「そうだ。若返ったそうだ。刀華は今小4だって、あと、遥は小6、クローディアは小5、綺凛と一誠は小2だそうだ。お前らは中学生なんだから、勝って当然だよな?」
参戦メンバー全員、目が点である。刀華さんって、二つ上だったのに、五つ下って…
「そんな歳の誤魔化しはダメだしょ?」
一輝が噛みつく。
「駒王学園はそういうことに寛容なんだ」
うっ…なんか、空気が重くなってきたような…
「えっ?実際の年齢で制限をかけるの?」
この場にいなかったイッセー君の声がした。
「ユリス、君達が来る前からいたよ。気づかない時点で、詰んでいると思うけど♪ねぇ、寧音ちゃん」
「そうだな。その気になれば、全員死んでいたな」
「難癖付けるみたいだから、この場でケリつけようよ、寅ちゃん」
「え?イベントの意味は?」
南郷先生があせっていた。
「無いよ。だって、寅ちゃんが見たいだけでしょ?この場で全員、いやユリス以外全員を病院送りなり、棺桶送りで良いでしょ?」
イッセー君の声は聞こえるが、姿が、いや気配すら感じなかった。みな、索敵能力を駆使をしているのにだ。
「誰から、餌食になる?男はいらないから一輝と有栖さんかな?ふふふ」
空気が更に重くなってきた。
「重力系?」
有栖さんが苦しそうに言葉を吐く。
「僕、まだ何も攻撃していないよ、有栖さん。それなのに、こんな状態なの?」
どたっ!
有栖さんが意識を飛ばして、倒れた。
「オーラを纏っただけで、倒れる?論外だな。一輝、死んで来い!」
一輝がどこかに転移させられた。
「次は誰?駄々をこねるのは、ふふふ」
綾辻さんが獲物を構えたが、叩き落とされた。
「イッセー君は、私が護ります」
小さな女の子が木刀で、綾辻さんの手首を叩いたようだ。どこにいたの?この部屋に何名が潜んでいるの?綾辻さんの手を見ると、手首が折れたようだ。
「寅ちゃん、彼女が僕のお気に入りのきりんちゃんだよ♪」
きりん?あっ、刀藤流宗家の刀藤 綺凛かぁ。イッセー君のお気に入り?
「人間である限り、きりんちゃんの敵には、ならないからね」
そういうこと?人間ではないシュウさんの前では、赤子だったのね…
どさっ!
「えっ!」
きりんちゃんに寧音先生が仕留められた。そんな…
「うごっ…」
どん!
南郷先生が仕留められた。誰に?
「黒乃は襲うなよ。愉しむから♪」
「イッセー君、やっぱり大人の女性が良いの?」
きりんちゃんがイッセー君に質問をした。いや、あれはイッセー君と言う名のシュウさんなんじゃ…
「きりんちゃんもあと5年もすれば、美味しいと思うよ♪」
小2同士の会話に思えない内容だよ。
「あぁ、ユリスも襲うなよ。お持ち帰りの予定だから」
「了解♪」
そうなると、あとは珠雫とステラか…
「そうだ!ステラ、返してもらうよ」
「えっ…それはダメ!」
ステラはシュウさんから、何かを抜かれた。あれって…ドラゴンの駒かな?ステラにとってのドーピング装置。
「一輝といい感じらしいじゃん。他人の女になったステラに、加護も恩恵も与えない。一輝に与えてもらえ!」
どさっ!
上から、その一輝が落ちて来た。
「たわいもない。不壊属性のこの剣は折れないわ」
「2本あると便利だろ、アイズ?」
「えぇ、とっても♪」
金髪でスレンダーな女性がシュウさんの傍らに現れた。彼はアイズと呼んだ…参戦予定のシュウさんの弟子だわ。
「あとは、珠雫とステラだが、ステラに勝ち目はもうない。珠雫、降参をすれば許してあげるけど」
「お兄様をこんな目に遭わせたヤツを許せない」
珠雫がアイズさんに襲い掛かるが、あと2,3歩の処で、倒された。
「私がいる事に気づかないとは…シュウさん、空気と同化って凄いですね」
珠雫を襲った者が姿を現し、笑顔でシュウさんに駆け寄る。刀華さんだ。そして、シュウさんの両脇から、アイズさんと視線の火花を散らしていそうだ。
「そうなると、ステラと黒乃だな。で、ワンデーイベントはするの?って、寅ちゃんは、ダウンか。黒乃、どうする?」
「…」
「たぶん、一輝と綾辻さんは出場できない。ステラもかな?ユリスは転校させる。ここでは強くなれないから。寅ちゃんの抜き足よりも、僕達の空気同化術の方が上だし。黒乃、見ただろう?一応、参加者全員、この場にいるのに、誰も気づかなかっただろ?」
え?まだ、姿を現していない人がいるのか。理事長は頷いた。そうか、私達は試されたんだ。理事長と寧々先生、南郷先生は、彼らが居るのを知っていて、私達を試したのだろう。彼らと同じ舞台に立っても大丈夫かを。
「ユリスを連れて帰るよ~」
「「了解♪」」
---シュウ---
連れ帰ったユリスも、聖杯を使って同学年に年齢詐称させた。6つも上で、僕と同時に高校入学は、いくらなんでも有り得ないもんな。その後、身体を一誠にまかせて、魂の状態でまったりしていたのだが、一誠が人格をスイッチさせた。緊急事態発生か?
「リーラ、何事だ?」
「ははは、いきなりのスイッチで焦ったのね。お客様よ。一誠君じゃ、ダメだから、急いでスイッチしたみたいよ」
いたって常時のオーラのリーラが、笑顔で状況を解説してくれた。
「お客さん?誰?」
「黒乃さんと、寧音先生よ」
虐めがいのあるツートップが何をしに?リーラが、二人をリビングに通した。
「どうしたの?二人…いや、三人揃ってさぁ」
どっか~ん!
レムの鉄球でつぶされた寅ちゃんが、現れた。死んだかな?オーフィスがツンツンして、首を横に振った。死んだのか…
「寅ちゃんが死んだみたいだけど、どうする?」
「え~、あのスケベオヤジ…抜き足で付いてきたのか」
呆れるような声を出した寧音ちゃん。
「この家は、不審者は即潰されるのになぁ…生き返らせた方が良い?」
「そんなことができるんですか?」
黒乃がきいてきた。
「出来るけど…ちょっと待ってね。1階にいる者へ注意喚起します。蘇り処理のために能力を解放しますので、退避してください」
僕の注意喚起で、リーラ以外が他のフロアへ逃げ込んでいく。まだ、ダダ漏れしているので、仲間が危ない気がするので、注意喚起をしてから能力解放している。
寅ちゃんに対し、再生、招魂、入魂、再起動の処理を施して、
「処理終了しました。通常の生活に戻って大丈夫だよ」
と、注意喚起を解除した。この家の住民ではない客の二人は、リーラが防御していてくれた。
「リーラ、さんきゅ~♪」
「メイドとして当然です」
生き返った寅ちゃんが、ふらふらと立ち上がり、椅子に座った。
「地獄に行って戻れるとは…」
よほど、怖い思いをしたのだろうか、顔に血の気がない。
『それは、生き返ったばかりだからだよ』
と、一誠から念話が届いた。あぁ、そうかもな。
「で、用件は?」
「あの…南郷先生が簡単に潰されたんですが…彼女も戦士?」
黒乃が恐る恐るきいてきた。
「違うよ。この家の専任メイドだけど」
「メイドなのに、あんな攻撃ができるの?」
寧音ちゃんがきいてきた。
「できるよ。たぶん、この家のメイドだけで、破軍学園を潰せるんじゃないかな」
「戦闘メイド?」
「そうじゃないけど、あの程度の実力がないと、家の揉め事に介入できないからね」
「揉め事くらいで、あの戦闘力はいらないでしょ?」
世間の常識で話をしてくる寧音ちゃん。
「この家で人間なのは、寧音ちゃん達だけだよ。生きて帰れると思う?」
リビングルームにあるオーラ漏出防止用の結界を外した。様々な種族のオーラが溢れていく。
「息苦しい…」
「何、これ…」
苦しみ悶える寧音ちゃんと黒乃。寅ちゃんは、まだ覚醒しきっていないので、鈍感なようだ。
「これが、この家の通常時のオーラだ。これでわかるだろ?この家の危険度がさぁ」
寧音ちゃんクラスだと、オーラで敵の種別がわかるはずだ。
「これが、通常時?揉め事時だと?いや、試さないで良いからね」
「へたな戦場より危険かな。ボスクラスがうようよいるから」
結界を元に戻して、空気の質を戻していく。
「で、用件は?」