魔女のいる世界へ*
---シュウ---
僕とキャッスルドランは、魔女のいる世界へと来た。一緒に来る人選をしていたのだが、キャッスルドランが、常に僕と共にいることを忘れていた。僕が行く様々な世界に、キャッスルドランは追従してくるのだ。なので、彼の中に住む者も、もれなく付いてくるのだった。そして、キャッスルドランの中にある、時空を旅するドア、Doraえモン風に言うところの『どこでもドア』のおかげで、どの世界とも行き来が出来たりもする。
地上へは僕一人で降り立ち、キャッスルドランには、上空1万m辺りで空に擬態してもらった。
病院のような建物に入り、目的の人物を探す。建て付けの悪いドアの先で、ベッドに横たわり意識が戻らない状態で、目的の人物がいた。さっそく、彼女と交わり、彼女の内部から修復再生を施していく。その作業と並行して、彼女の記憶を読み取っていった。必要な情報が手に入れば、お持ち帰りせずに戻ることも有りと思っていたから。
しかし、この世界の魔女は、予想していた魔女とは違うようだった。まず、魔女因子という物がこの世界には無い。魔力を持ち、ストライカーユニットと言う魔導装置を使える少女達が魔女と呼ばれているようだ。魔導装置?何だ、ソレは?興味は有るなぁ。
そして、魔女は敵とか恐ろしい者ではなく、正義の味方で、憧れの的のようだ。なんだ?真逆じゃないか、想定していた魔女とは…あの上司…ドエスが復活したのか…
大体20歳くらいで魔法力が衰えていくようで、この少女の場合は、もう現場復帰できないみたいだ。既に17歳で、この状態だしなぁ。
「うっ…あぁ…あぅ…いい…」
艶めかし声が聞こえ始めた。意識が回復したようだ。撤収をしようとしたのだが、ベアハック状態…彼女に抱きしめられていて、この場から離脱ができない。あれ?なんで?
「ねぇ、あなたは誰?とても暖かいオーラを感じるの」
「え?僕は通りすがりの…子供です」
彼女の頬が僕の頬に触れ合う。今まで昏睡状態だったためか、歳相応の肌のきめ細かさはない。乾燥しきっているようだ。内面からの治療が終わったので、次に表面の治癒、再生をしていく。
「あぁ~いい…もっと…お願い…」
え?こういう刺激が初めてなのか、ものすごく貪欲に思える。あぁ、そういうことか。この世界では彼女達、ティーンエイジの魔女達だけが前線に立ち、敵と交戦をしているようだ。青春時代は魔女として戦争に関わり、二度と戻らない青春時代を終えてしまうようだ。
この時を生きる、二度と戻らないこの時期を生きる彼女に、処女を捧げ物として、能力を含めて、13歳くらいの頃のレベルに戻してあげた。
「お釣りとして、お腹の傷も治しておいたよ、お姉さん♪じゃ、さようなら…」
って、帰ろうとしたら、抱き抱えられていた。うっ、この世界でも小学二年生のデメリットが発揮されていた。
「逃がさないわ。私の恩人君♪」
治療に専念していたので、容姿を気にしていなかったが、スタイルも良いし、顔もかわいい。こんな娘が…戦争にって…この世界、間違っているだろ!おい、クソ上司!
『間違っていると思うなら、あなたなりのヤリ方で、正しなさい』
って…え?お持ち帰り用件が、案件に昇格なのか?少し戸惑う。
「ねぇ、あなたのお名前は?」
「シュウ…お姉さんの名前は?」
「えっ…知らないのに、治してくれたの?私は雁淵孝美(かりぶちたかみ)っていうの」
「ねぇ、敵って何?」
「君は誰?この世界の子じゃないわよね?」
魔女だけあって、勘が鋭いのか?
「この世界の者なら、敵が何かを知っているわ。それに男の魔女は有り得ないし。この世界では女の子しか、魔力がないのよ」
って、僕がこの世界の者ではないと、気がついていた。あぁ、それで逃がさない為に、僕を抱き抱えたのか?
「じゃ、一緒に来てくれる?」
「この世界を救ってくれる?」
この世界から戦争が、無くなることを希望している彼女。
「わかった…お姉さんを供物に、その願いを叶えてあげる」
僕と孝美は、キャッスルドランに転移した。
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「ここは?」
「僕のお城だよ、孝美お姉さん♪」
「お城?あなたは誰?」
「僕はシュウ。エロガキだよ♪」
「ふふふ、そういうことにしてあげる」
今まで出逢ってきた少女と違い、器がデカそうだ。手玉に取られそうな予感がする。記憶を読んだ限りでは、腹黒さは無し、態度も控えめで、僕の苦手の天然系のようだった。
会話が一段落したので、メイビスが全裸だった孝美を衣装部屋に連れて行った。
「敵の情報を集めよう。この件は案件に昇格した。この世界の敵を撲滅する」
「で、彼女をお持ち帰り?」
アイズの目付きが怖い。ライバルが増えることに敏感な彼女。得物の切っ先を僕に向けてきた。
「そうなるな。供物は必要だよ。それなしで、ヤッチャウと、僕は戦闘狂になっちゃうし…」
アイズに抱きつき、耳元で囁くようにして言う。ツンデレなアイズはこの攻撃に弱い。
「そうだよね。うんうん、協力するから…あのね…」
言いたいことは分かる。なので、アイズの不満が暴走しないように、お部屋にお持ち帰り…
---坂本美緒---
「なんだって?意識が戻っていない雁淵孝美が消えただと?どういうことだ?」
朝早く、連絡が入った。ネウロイの襲撃から仲間を護るために、防御力が著しく低下する切り札を出して、仲間を救ったが、自身は大怪我を負い、今の今まで意識不明の状態でいた雁淵孝美が、医療機関のベッドから消えたと報告が入ったのだ。
「侵入した形跡も出て行った形跡も無いだと?そんな訳あるか~!徹底的に調べ上げろよ」
この国、扶桑皇国のエースの一人である彼女。その彼女が消えたって、どういうことだ?誰が連れ去ったのだ?そもそも、何の為にだ?
「美緒、そんなにカリカリしたら、かわいさが台無しよ♪」
って、孝美の声がした。声のした方を見ると、欧州の民衆が着るような服で身を包んだ孝美と、見知らぬ少年が立っていた。
「孝美…どういうことだ?意識…戻ったのか?」
「うん♪彼のおかげで良くなったの。お腹の傷も消してくれたのよ♪」
名誉の負傷の痕を消した?すごく穏やかな表情の孝美が言った。
「彼は誰だ?」
「私の王子様♪あっ、これは私の想いよ。実際は私のボスなの。こんなに小さいのに、凄いでしょ?」
ボス?何のボスだ?
「ねぇ、お姉さんも仲間になって欲しいんだ。どうかな?」
少年が口を開いた。はぁ?仲間になれだと?
「何の仲間だ?」
「この世界から戦争を無くす作戦の仲間だよ」
えっ…音も無く少年が、私に近づき、私を抱きしめてくれている。彼の頭部が、胸に当たり…妙な気分になっていく。嫌な感じは無く、寧ろ気持ちが良く、気分が高ぶっていく。
「あぁ…いい…なんだか…空に浮かぶような…」
次の瞬間、私はベッドで彼と全裸で抱き合っていた。両膝を抱き抱えられ、彼が私の中に入っている。嫌な気分はしない。とても、リラックスしていく。
正常な意識に戻ると、床に倒れていた。
「まやかしの術か?」
目の前にいる少年にきいた。
「現実だよ。もう夕方だよ、お姉さん♪」
咄嗟に窓を見ると、夕日が差し込んでいた。先程まで朝だったのに…
「お姉さんと4時間くらい、プレイしていたんだよ~」
え…4時間も…あんなことを…耳が熱くなっていくのがわかる。
「あと、私とも2時間くらい、プレイしたのよ。シュウ君の指導でね♪」
へ?孝美とプレイって…え~、そんな趣味は無いんだが…更に耳が熱くなっていく。
「美緒お姉さんの願い、叶えるよ。この世界からネウロイって言うのを撲滅すれば良いんだよね?供物はお姉さんの処女をもらったからね♪」
…言葉が出ない…なんだって?彼は何を言ったんだ?私の処女?それって…耳だけでなく、顔までも熱くなってきた。えぇ~っと…
「美緒、あなただけでなくて、私も捧げたから、もう仲間よ♪」
って、孝美。それでは百合友の上、義姉妹だろうに…
「孝美お姉ちゃん、美緒お姉ちゃんって、考え方が古いの?」
「そうかも。でも。勇敢な戦士だから、仲間にしても損は無いわよ」
「ふ~ん」
「あのな…どこの勢力なんだ?」
「どこ?う~ん…」
「別の世界から、助けに来てくれた王子様♪」
言い淀む少年に対して、はっきりと言い切った孝美。別世界から来た?ネウロイなのか?
「ねぇ、美緒お姉ちゃん。そのネウロイについて、教えてくれるかな?よくわからないから、手立てが立たないんだよ」
そして、私も孝美と共に、扶桑皇国から消えた。彼の仲間になり、彼の城を拠点とした為に。
---管野直枝----
「え?どういうことだ?ニパ!」
502部隊の同僚のニッカ・エドワーディン・カタヤイネン、通称『ニパ』に喰い付いた。
「聞き耳を立てて聞いただけだから、詳しくはわからないけど、雁淵孝美さんと-坂本美緒さんが扶桑の軍事施設から忽然と消えたって」
「おい、ひかりには言うなよ、ニパ」
ひかりとは、孝美の妹である。
「あぁ、直。わかっているって」
「忽然と消えたって…ネウロイに攫われたのか?」
「わからないみたいだよ。レーダーに反応がなかったそうだし。そもそも、扶桑にネウロイは行けないだろ?海に囲まれているんだから」
ネウロイという敵は、海とか湖と高い山の移動が基本苦手のようだ。
「ウィッチを誘拐して弱体化が狙いか?」
「でも孝美さんって、意識不明なんだよな?」
「あぁ、そうだな。意識が戻ったって連絡が無いし…誘拐しても、戦力的には問題はないなぁ。じゃ、何でだ?」
「わからないよ~。そもそも拉致、誘拐で無いかもしれないし」
「他に何があるっていうんだ?」
「う~ん、坂本さんが孝美さんを腕利きの医者の元に連れ出したとか」
「はぁ?そんなのこっそり動く必要がないだろ?」
「そうだよね…なんでだろうね?」
---シュウ---
孝美専用のストライカーユニットと美緒専用のストライカーユニットを盗み出して、スカさんに改良をお願いした。
「団長、脚に装着する意味がわからないのだが」
スカさんが僕に疑問をぶつけてきた。開発に関わったという美緒に、その辺りの情報を聞き出す。
「あぁ、内部には脚を収納するスペースが無くて、挿入した脚は別次元に飛ばして、大腿部で固定することになるんだ」
「別次元に飛ばす技術があるなら、なんで、ネウロイを別次元に飛ばし、消さないの?」
「そこまで、広範囲には飛ばせないからだ」
「別次元に飛ばすこと自体も、エネルギーの無駄だよね?」
「そうなんだが、収納できない以上、仕方なくだ」
美緒の言い分も分かるんだが、
「スカさん、背中に背負った方が、効率が良くないかな?脊髄周りの方が脚より脳に近いし、魔力を効率的に集めて流せそうなんだけど」
「そうだな。団長の意見に賛成だ。ただ、プロペラ方式だと怪我をするから、ジェット方式になるが、良いかな?」
「それで、開発してください」
「了解だ♪」
って、5分後、ドローン式のストライカーユニットが送られてきた。注意書きには、速度が出ません、高度も出ません、と、有る。実戦には無理なのね。
「お姉ちゃん達のどっちが実験をしてくれるの?」
「私が行こう」
美緒が名乗りを上げた。試作機を背中に装着して、魔力を集中させていく美緒。試作機は上昇していく。僕は美緒と併走するように翼を展開して飛び出した。
「美緒姉ちゃん、万が一の時は、助けるからね」
「なんて、綺麗な翼なんだ?って、お前は何者だ?」
そこに戻るのか…
「僕はハーフ天使だよ、お姉ちゃん♪」
「天使?そう言えば、天使の翼だよな、それって…うん?天使があんなことして、堕天しないのか?」
あんなこと?あぁ、交わりの行為かな?
「普通はアウトだよ。でも、僕は大丈夫。もう半分は闇属性だから」
「悪魔なのか?」
「鬼だよ♪」
「鬼?鬼と天使のハーフなのか?おいおい…まいったなぁ。それはすごいや♪」
僕を恐怖の対象として見ず、憧れるような目で見ている美緒。
「優しい鬼もいるんだな。孝美のこと、ありがとうな♪」
お礼を言われて、照れる僕。そして、試作機を100m位でホバリングをして、状態をチェックする。
「どうですか?魔力は効率的に、流し込めてますか?」
「あぁ、脚よりも良いかもな。問題は、胸が目立つ恰好はどうにかならないのか?」
はぁ?パンティ状態で装着するより、ブラ状態で装着する方が恥ずかしさは無いんじゃないの?従来のユニットの場合は、太股固定の為、下半身は水着とかパンティとかパンストだけを装備して、ユニットのジャマにならないようにしていたそうだ。女性だと、胸の方が気になるのかな?魔力を流し込む部分を肌に密着させるため、上半身の露出度が高めになる。アイズのような服装、背中丸見えの状態が好ましい。そして、固定するベルトが、2~3本必要になる。
「ノーブラだとどうなるの?」
「収まりの悪い服装は、戦いに集中できない。だから、却下だ!」
そうなるかぁ…
「美緒お姉ちゃんの胸好きだけどな」
僕の何気ない一言で、耳と顔が真っ赤に染まる美緒。
「そういうのは…ベッドの上で…きゃっはっ♪」
大胆な事を言うようになってきたなぁ…環境適応能力は高そうだ。
テストを終え、収集データと美緒の要望を、スカさんにフィードバックさせた。これで、改良されるかな。僕達はキャッスルドランに戻った。
「で、ネウロイについて、情報をください。攻撃方法を考えないとダメだろから」
会議室には僕のと美緒、孝美、ハニー、が集まった。
「彼女は僕の秘書兼研究チームの如月ハニーだ」
美緒、孝美にハニーを紹介した。
「彼女は魔力あるのか?」
美緒がきいてきた。
「私は魔力はありません。アンドロイドですから」
と、ハニー。僕から。アンドロイドの説明をした。
「機械人なのか…皮膚感が、私よりも若々しいのか…」
凹む美緒。それを笑って見ている孝美。
で、ネウロイについてだが、正体不明だそうだ。外形は金属で、一見すると兵器のような生命体らしい。攻撃力は大きな建造物を一瞬で破壊・消滅できる上、生物にとって有害な「瘴気」という物を蒔き散らかして進行して来るため、通常の人間では、遠距離からの攻撃しかできないそうだ。
「瘴気対策は必要だな」
「うん?私とシュウは大丈夫でしょ?普通の生物で無いし」
「まぁ、そうだけど…」
自己再生・自己改造する能力を持つため、通常の兵器では致命傷が入らないらしい。魔力による攻撃に対しては抵抗力が無いのが救いか。魔力を纏わせれば、通常の刀や弾でもダメージは入りやすいと。
「シュウのアレで一撃じゃないの?」
アレとは、僕必殺魔法、ウルティマウエポンのことだ。相手の弱点属性の攻撃魔法を、相手の防御力無視で撃ち込む。難点はエネルギー効率が悪いこと。連射も無理だし。
あと、確実な弱点は、コアと呼ばれる中核部分(正十二面体の赤い結晶)を破壊されると無力化し、崩壊するようだ。
「『強奪』が効けば、楽だな。コアって、魔石かな?ヘファイストスに鍛冶してもらって試すかぁ」
僕はサンプルを得る為に転移をした。
転移をした先で、少女3名がネウロイと戦っていた。
「ニパとオレで突っ込む、ひかりは後方からヤレ!」
リーダーらしき女性が声を張り上げていた。
後方にいる少女の隣に並ぶ。
「え?あなたは?あっ…翼が有るの?いいなぁ♪」
「この世界は僕達が平和にするよ。待っていてな♪」
『強奪』を発動して、コアを…おい、こんなにデカイのか…これはヘファイストスじゃむりだな。僕に近づいて来たコアは、ジャンボジェット機くらい有る。キャッスルドランに収納もできないし。
『ウルティマウエポン』を発動して、コアを破壊。
「じゃ、またね♪」
少女に敬礼をして、転移をした。
「美緒お姉ちゃん…あんなにデカイってしらなかったよ…」
凹む僕。
「でも、『強奪』は有効だったんですね」
って、ハニー。
「そうだな、取り出して、ドランに砲撃してもらうか?ウルティマウエポンで破壊はできたけど、数がいたら、難しいし」
「魔力を刀に纏えば、良いと思うが」
美緒の案を試さなかった。そうか、妖刀で切れば、いけるのか?また、試しに行かなきゃ…
---雁淵ひかり---
「おい、アイツは何者なんだ?」
私に近寄って来た管野さんにきかれるが、
「初対面だったので、知りません。でも、綺麗な純白の翼だったので、天使だと思います」
「はぁ?天使なんか、実際にいねぇよ!夢でも見たんじゃないか?」
「でも、直。彼が消えたのは見たよな。直も見ていただろ?」
「あぁ…そうなんだけど…何者なんだ?コアを遠隔で引っ張り出して、破壊って…」
管野さんもニパさんも混乱している。いや、私もだよ。突然、目の前で消えた…いや、足元に魔法陣が…
「彼の足元に魔法陣がありました。たぶん、転移魔法だと思います」
「転移魔法?高等魔法じゃないか…何者だ…とにかく、基地に戻って報告だ。どう説明すれば、信じて貰えるんだ?」
状況把握が混乱したまま、基地へと帰る私達。