---誠---
一誠に、陰陽師に依頼した者の似顔絵を見せた。
「悪神ロキだよ、父さん。酒好き、女好きの女神だ」
即答した一誠。悪神ロキって男性ではないのか?
「そうなると、時間軸だけ飛ばされたんだな」
「時間軸だけ?」
「同じ世界で、違う時代に飛ばされたってことだよ。そうなると、アイツはずっと、人間界で暮らしていたってことになるなぁ」
「どういうことだ?」
「天界で、あれこれ焚きつけて、神々に殺し合いをさせて、自分は見物をした神だよ。天界を追放された身分に近いんだ。で、本来、あの時代の神が地上に降りる時、神としての力に制限をされるんだけど、転移魔法が使えたということは、そのルールすら適用されていないってことだよ」
一誠がシュウの知識を使って、説明をしていくれている。
「なるほど…で、その女神は攻撃的なのか?」
「自分の手を汚さない感じの悪神だよ、今回だって陰陽師に依頼したしねぇ。オーディンが詳しいんじゃないかな?確か、アースガルドの悪神だし」
「わかった、オーディン様を当たっているよ」
俺は、オーディン様の元に転移した。そして、一誠から仕入れた情報の真偽を聞いた。
「あやつはとんでもない女神じゃ。バルキリー達を襲い、手込めにする。女性同士でのことで、男神はその問題に踏み込めなかったのじゃ」
「神々に殺し合いをさせたっていうのは?」
「本当のことじゃ。身内の恥をさらすので、詳しくは言えんがな」
一誠…いや、シュウの知識は正しかった。
「で、どうにかなりませんか?」
オーディン様の顔が険しくなっていく。
「どうにもならん。あの殺し合い以降、神同士での殺し合いは、禁止になったからのぅ。ただ、絶対神さまの秘蔵っ子の『神殺し』なら、どうにかできると思うぞ」
うん?シュウのことか…もしかして、唯一の天敵であるシュウを、殺そうとしているのかもしれないな。
「その方以外には、どなたかおりませんか?」
「おらん。やつだけしか『神殺し』は、認められておらん。じゃが、その者も、遠い昔にロキの罠に嵌まって、やられたと聞いておる」
シュウのことだ。たしかに時間軸での転移が起きたようだ。
「ロキが何かやらかしたのか?」
「えぇ、俺の息子に刺客を送ってきました」
「なんだと、誠殿の息子に?アイツ…何かを企んでいるかもしれないの。わかった、こちらでも調べてみよう」
その後、俺は他の神格系にも、悪神ロキの情報の収集を頼んだ。
---一誠---
退院して、家に戻ってきた。玄関を開けると、クラッカーが鳴り響き、ロケット花火が飛んで来た。誰だよ、手持ちで撃ち込んだ奴は?
ロケット花火の手持ち犯のひたぎ姉さんは、父さんに見付かり、厳重注意を受けることになった。
「お帰り、一誠」
翼姉さんに抱きつかれた。
「兄ちゃん、お帰り」
駿河と火憐が抱きついて来た。
「一誠君、お帰りなさい」
ベンニーアとは、ハイタッチをした。
で、食卓につくと、ご馳走が一杯並んでいた。母さんががんばって料理してくれたのは、わかるが、
「ねぇ、母さん。僕は一週間、入院していたんだよ?」
「だから、栄養をつけてもらおうと思って、母さんは頑張ったのよ」
笑顔が眩しい母さん…でもなぁ…
「僕は一週間、点滴生活だったんだよ。分かっている?」
「うん?だから栄養をね…あ゛…」
漸く気づいた母さんは凹んでいた。それを見て、リーラさんが僕の前に、おかゆを持って来てくれた。
「一香様、点滴生活で、胃腸が動いていなかったのに、いきなり消化の悪い物は、一誠様には無理です」
「リーラ…言ってよ」
「一香様が喜んで料理をされているのに…言えませんよ」
リーラさんが困った顔をしていた。母さんは気を取り直して、食事会がスタートした。姉妹とベンニーアが食べ物に群がっている。僕は端の方で、おかゆをかみ締めて食べていく。おかゆと言えども、よく噛まないと唾液の出が悪いから。
仕事から帰ってきた父さんが、やってきた。僕は、父さんに聞きたかったことを尋ねた。
「ねぇ、由良は無事なの?僕は由良を護れなかったんだよね?」
式神に囚われた由良。僕は彼女を救うことが出来ず、そして、大怪我を負った。
「あぁ、無事だ…ただ…両親に能力のことがバレて、家にいづらくなったようだ。今は、シトリー家に引き取られている」
由良の能力…人外の者が見えたり、触れたりする能力だ。由良の家って一般の家庭だったよな。気味悪がられたかな?あぁ、僕のせいだ。
「一誠、お前のせいではない」
「いや、僕のせいだ。ねぇ、父さん、由良をこの家に養女として、引き取ってくれないかな?僕には責任があると思うんだよ」
考え込んだ父さんだったが、
「無理なんだよ、一誠。もう、ソーナ君の眷属にされたそうだ」
「関係ない。僕の眷属にする」
「おい、出来るのか?一度入れた駒は抜けないんだぞ」
僕を恐れるように見ている父さん。
「出来るんだ。僕の駒なら。ちょっと、行ってくるよ」
僕はリアスの家に転移した。そして、場所を知っているリアスと共に、ソーナの家に転移をした。
「リアス、ごきげんよう」
ソーナ・シトリーがリアスに挨拶をしてきた。
「えぇ、ソーナ、ごきげんよう」
「リアス、どうしたの?」
ソーナが僕を見ながら、リアスに尋ねてきた。
「一誠君が、ソーナの家にいる由良さんと話しがしたいって」
「はぁ?一誠って何者?私の眷属に会わすことはできないわ」
「僕は由良の友達だ。友達に会いに来て、何が悪いんだ?」
ソーナに対して、言った。
「悪いとかの問題じゃない。素性のわからない者に接触してほしくない。友達?それは、彼女が人間だった頃の話でしょ?彼女はもう悪魔なの。人間の友達は必要ないの。帰って頂戴」
「由良と会うまで、帰らないよ」
僕とソーナの言葉の応酬を前にして、リアスがあたふたしていた。
「一誠君、ソーナは頑固だから…今日のところは帰ろうよ」
「リアス、ごめん。帰らない。由良に会うまで帰らない」
「ちょっと、その子、貴方の眷属?聞き分けのない、その人間をどうにかしなさいよ」
「ソーナ、彼は私の眷属でないの」
「もぅ、そこの人間、帰りなさい。私が誰だかわかっているの?」
「魔王セラフォルーの妹ってことか?お姉ちゃんを頼らないと何も出来ないのかな?」
「頼らなくても、あなたを倒すことはできるわ」
「じゃ、ソーナに倒されなかったら、由良は連れて帰るからな」
僕は、妖刀を二降りを手にして構えた。僕の姿を見て、顔を強張らせたソーナ。ソーナが召還魔法陣を発現して、眷属の者を呼び出した。椿姫と巡かぁ。
「えっ、一誠君…どうして」
巡が驚いた表情をした。
「由良を迎えに来た。巡、由良はどこだ?」
「巴柄、答えないでよ」
ソーナから、巡に命令が飛んだ。
「で、巡と椿姫が僕の相手か?」
「何で、私の名前を知っているの?」
僕とは初対面の椿姫が、驚いていた。長刀を手にしているシトリー眷属なら、椿姫しかいないよ。
「なんだ、ソーナは自分の手を汚さないタイプなのか?クソみたいな悪魔だな」
挑発をしてみたが、ソーナは挑発に乗ってこない。そうだと思ったけど。椿姫と巡に指示を出して、僕を襲わせた。勝負は一瞬で着いた。妖刀村雨から染み出る聖水の気化ガスを吸い込み、苦しみながら二人とも意識を喪失して倒れた。その状況を見て、ソーナの顔が強張っていく。
「魔導戦士なの?妖しい術で二人を…由良、あなたがアイツを倒しなさい」
由良が召喚された。僕は、刀をしまい、由良にダッシュして近づき、僕の駒を入れて、ソーナの駒を抜いた。
「ソーナ、由良を返してもらうぞ」
ソーナの前に、抜き出したソーナの駒を放り投げた。
「なんで?入れた駒は二度と取れないはず…」
「僕の駒は特別なんだ。由良、僕の家に帰ろう」
頷いた由良。
「許さない…」
ソーナの隣に見覚えのある転移陣が現れて、魔王セラフォルーが転移してきた。
「どうしたの?ソーたん」
「あの人間に、眷属を奪われたの!」
ソーナは僕を指差した。指の先を見たセラフォルー。
「あっちゃ~。ソーたん、相手が悪いって…お姉ちゃんは、まだ死にたくないんだけど…」
「なんで?魔王なんでしょ?強いんでしょ?」
「彼はダメ…」
「人間にバカにされて、だまっているの?ねぇ、お姉様」
「う~、どうしよう。一誠君、なんで、ソーたんの眷属を奪うのよ?」
「悪魔の眷属には、人間の友達は必要ないって言われた。僕は由良の友達だ。それを、セラフォルーの妹に否定されたんだよ。奪うしかないでしょ?僕、言ったよね?悪魔至上主義な悪魔は敵なんだよ」
「うっ…うんうん、言われたよ。困ったなぁ…」
セラフォルーの隣にサーゼクスさんが転移してきた。
「どうしたんだよ、セラフォルー。いきなり呼び出すなんて…」
僕の表情を見て固まるサーゼクスさん。
「どっ、どうしたんだ、いっ、一誠君。穏やかな顔じゃないな…」
「何度も言わないとダメなの?セラフォルーの妹に、悪魔の眷属には、人間の友達は必要ないって言われたんだ。僕は由良の友達だよ。それを、セラフォルーの妹に否定されたんだよ。奪うしかないでしょ?僕、言ったよね?悪魔至上主義な悪魔は敵なんだよ」
「おい、セラフォルー…お前、なんとかしろよ」
リアスが僕の隣に来て、
「お兄様、また一誠君を困らせるの?もう、お兄様って呼ばないわよ」
って、サーゼクスさんに通告した。この展開、違う世界でも見たような…ははは
「いや、リーア、違う。一誠君を困らせる訳ではないんだ。あぁぁ」
パニックったサーゼクスさんの隣に、アジュカさんが転移してきた。
「何事だ?サーゼクス。いきなり呼び出すって…一誠君、どうしたんだ?」
「はぁ、また説明しないといけないの?セラフォルーの妹に、悪魔の眷属には、人間の友達は必要ないって言われたんだ。僕は由良の友達だよ。それを、セラフォルーの妹に否定されたんだよ。奪うしかないでしょ?僕、言ったよね?悪魔至上主義な悪魔は敵なんだよ。それって、よく考えると、僕はリアスの友達である必要はないってことになるんだけど、どうなんだ、リアス?」
「一誠君は私の友達よ!ソーナのバカ!」
リアスが大粒の涙を流して、僕の腕に縋り付いた。
「ソーナ君が悪い。一誠君はリアス君の友達で良いんだよ。信頼し合っているし」
アジュカさんが結論を出してくれた。
「セラフォルー、サーゼクス、こんな問題は即答してあげろよ。お前らのシスコン加減もいい加減にしろよ。ソーナ君、そんなことを言ってはダメだ。なぜ、そんなことを言ったのかね?」
「悪魔は、全種族の頂点に君臨する種族って、習ったもん」
頭を抱えるアジュカさん。
「それは教えた者が悪い。いいかい、ソーナ君。悪魔は頂点に君臨していない」
「でも、人間より上でしょ?」
ソーナ…この世界のソーナは…
「ダメだよ、一誠君。戻って来て」
リアスが、僕のオーラの異常に気づいたのか、僕の心が闇の領域に行くのを引き留めてくれた。
「一誠…私のために、ごめん…」
由良は謝ってきた。いや、僕の方が…僕は…えっ?身体から何かが出て来た。
「シュウをいじめる奴、許さない」
「妾の主様に何をするのじゃ」
オーフィスと忍が、出て来た。なんで?予想外の展開に、僕の怒りはクールダウンしていった。
『シュウの怒りが、二人を焚きつけたようだ』
アポからの念話が届いた。そして、状況は更に混迷していく。
「誰?」
セラフォルーさんが尋ねてきた。
「黒髪で大きい方が、無限の龍神オーフィスの人化姿。金髪で小さい方が、怪異の王ハートアンダーブレードの人化姿です」
目が飛び出すのではという位、驚いた表情の三名の魔王様達。まぁ、驚くよな、ドラゴンの頂点と、人外の頂点が出て来たんだもの。
「召還できるの?」
「僕の怒りが限界に達してきたので、安全弁の代わりに出て来たのかもね」
って、この現象に僕も驚き、苦笑いしてしまった。
「で、誰が、シュウを虐めた?」
二人から死を感じさせるオーラが、リアスと由良以外に向かって漂い始めた。
「こ、これは…危険だ…足の震え…止まらない…」
アジュカさんの顔色が優れない。
「セラフォルー、ソーナ君と共に謝れ~」
アジュカさんが力を振り絞って叫んだ。
「死んでも嫌!」
って、ソーナ。そんなソーナに向かう二人。
「来ないで~!」
あまりの恐怖からか、泡を吹いて倒れたソーナ。その姿を、スマホで撮るオーフィス。え?スマホ?どこで手に入れたんだ、オーフィスよ。
「うん、倒した証拠、撮れたよ。満足、満足」
二人がスキップして、僕の身体に戻った。それにより、恐怖なオーラも消失した。
「はぁはぁはぁ…一誠君、オーラだけでも死にそうだよ」
サーゼクスさんの息が荒い。
「そういうことだから、由良は返してもらうよ。いいよね?アジュカさん」
頷いているアジュカさん。そういうことで、僕とリアスと由良で転移した。
---誠---
一誠が、由良ちゃんとリアス君と共に帰宅した。由良ちゃんには一誠の駒が入っていて、眷属にしたそうだ。我が家で面倒みないといけないな。
リアス君も一誠の眷属になりたいって、言い出した。これには、俺と一誠で説得をして、あきらめてもらった。
「リアスは次期当主なんだから、僕の眷属になっちゃダメなんだよ。わかった?」
根気良く説明する一誠。
「そういうことかぁ、分かり易い説明、ありがとう、一誠君。眷属でなくても、お友達だから、それでいいよ」
駄々をこねていたけど、一誠の説明で笑顔に戻ったリアス君。
家を増築しないとダメかな?たぶん、今後も家族が増えそうな予感がするし…はぁ…
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しばらくすると、サーゼクスとセラフォルーが転移してきた。俺の部屋に一誠と共に、招き入れた。二人は、俺と一誠に、今回のことを謝罪してきた。俺は状況がよくわかなかったので、一誠に説明をしてもらった。
はぁ?召還しなくても、勝手に出て来た?龍神様と怪異の王様が…これ以上ない一誠のボディーガードな気がする。現場にいたサーゼクス達魔王3名は、恐怖で震えが止まらない状況だったらしい。どんだけ、恐怖を振りまいたんだ?
一誠に聞くと、大人しい部類の二名だから問題ないっていうが、魔王をビビらせる存在で、大人しい部類って、大人しくない部類はどんだけのヤツラなんだ?
「大人しくないのだと、アジ・ダハーカとかリヴァさんかな?」
また、伝説級のドラゴンの名前が飛び出た。お前の仲間は伝説級のドラゴンばかりなのか?
「一番弱いドラゴンだと、寝太郎かな?」
「寝太郎ってどんなドラゴンなんだ?」
「終末の大龍ミドガルズオルム」
…伝説級だろう、そいつも…一番弱いんじゃなくて、伝説によると、終末になるまで動かないだけだろう?
「でも、寝太郎君は、一番知識が豊富なんだよ。だけど、司令塔にはならないけど」
「司令塔になるドラゴンだと?」
「リヴァさん!」
即答だ。リヴァさん?なんか嫌な予感がする。
「元魔王レヴィアタンだったリヴァイアサンだよ。チームドラゴンの隊長なんだ」
固まるサーゼクスとセラフォルー。元魔王がドラゴンだった事実…それは驚きだものな。
「元魔王?」
「うん、僕のいた世界ではねぇ。天使長も元魔王だし」
「はぁ?」
どんだけ、カオスな世界なんだ?シュウのいた世界って…
「ほら、天界を壊滅させたから…」
「あん?」
「ガブリエル以外、皆殺しにして、ガブリエルは眷属にしたから」
おい、天界を…そういえば、シュウの母親もそんなことを言っていたな。天界を取り戻したようなことを。
「天界を壊滅させたんだから、天界を維持できる人材を補填したんだ。天界のヤツラに殺された、心優しい天使達をね」
殺された天使を補填?
「うん、時間は掛かったけど、昔の平和な時代にいた天使を全員、甦らせたんだ。ルシファーさん、アガレスさん、バアルさん達をねぇ」
それって…あの勢力戦争の一因とも言われている…
「一誠君、今の話は本当かな?」
サーゼクスが食いついた。
「僕、ウソを言わないよ。だから、リアス、シーグヴァイラとの子供は、僕の天使成分が反応して天使の翼を持った悪魔になったんだ。あと、別の世界では、ルシファー家の者とグレモリー家の者との間に、天使の翼を持った純血悪魔も産まれたよ」
「それは、この世界でも同じなのかな?」
セラフォルーが呟いた。どうなんだろう?でも、ルシファー、アガレス、バアルは元天使と言われている。今となっては、確かめようがないけど。
「僕の世界では、アガレス家に、初代アガレスの天使の羽が残されていたよ」
あっ…だと、すると…この世界でも、その三家のどこかに証拠が残っているかもしれないな。同じことを考えたのか、サーゼクス達は血の気の引いた顔で、転移していった。