---シュウ---
家は無事のようだ。スマホで達也の連絡をした。
「そっちはどう?深雪は大丈夫か?」
「えぇ…大丈夫です」
達也が少し言い淀んだ。何かあったな。
「深雪に代わってくれる?」
「あっ…はい…」
少し間があいた。バックにはガサゴソと音がしている。
「大丈夫です…ご心配ありがとうございます」
弱々しい深雪の声。何かあったみたいだ。
「もう少し待っていてくれる?必ず迎えに行くから」
「はい…」
消えるような声、倒れるような音…
「大丈夫です。大丈夫ですから…優先的なことを先に、やり遂げてください」
達也の強い声。
「わかった。深雪と美奈子を頼む」
通話を切り、続けてリョウへ連絡をした。
「そっちの状況は?」
「良くない…呻く声が充満している。どうすれば、楽にできるんだ?」
「今、対処をする。契約者を捕獲しておいてくれるかな?あと、捧げられた女性を1つの部屋に集めておいてくれると、作業がしやすい」
「わかった。頼む…香を…」
「わかっている」
通話を切る。さて、どうする。今の僕では魔力の上限が難しい。う~ん…
『ねぇ、むじゃ君。なにか術は無いかな?』
新しい仲間の無邪鬼に訊いてみた。
『禁術で…祝福かな?この星と活ける物にさぁ…でも、今の君には荷が重いけど…』
あぁ、あれか…僕らしく、やれることは総てやる。
『フィン、全員を聖堂に集めて!祈りを捧げてくれ』
ドラン君にいるフィンに指示を出した。
『了解だ…無理をするなよ、シュウ』
『後悔しないように、するだけだ。ありがとうな…フィン』
しばらくの間。そして…
『いつでも、俺達は君と共にある』
と、言ってくれた。うっ、涙腺が…そして、姉ちゃんが戻ってきた。
「姉ちゃん、早速で悪いけど、星に祝福を捧げる」
「いきなり、それか?大丈夫か、シュウ」
元ドエス上司であるレベッカこと姉ちゃんが、僕を心配してくれた。
「後悔はしたくない」
僕は魂から分身を一人作り出した。
「亘、ねえちゃん、メフィスト、ブラド。家の周囲に散って。僕は上に行く」
僕は天使の翼を展開し、家の屋根の上に位置した。家の周囲にいる仲間達と黄金比になるように、ハニーに位置を微調整してもらいながら。そして、フィンからの準備が出来たという合図。術を発動し始めた。
「我 闇を司る者 ブラド」
「我 魔を司る者 メフィスト」
「我 光を司る者 神代綾香」
「我 聖を司る者 神内亘」
そして、僕の番。
「我 禁断なる業を受け継ぐ者 代羽周太郎…この星と、ここに活ける物へ祝福を与えん」
家の周囲の者達と僕で、光のピラミッド形成し、天空よりドラン君からの光を受ける。僕達は1つの意識体になっていき、僕は祝福の聖剣を両手で頭上に掲げて、祝福を捧げた。
「この星の悪しき記憶を浄化 この星に住める者達の汚れた魂を浄化 そして、皆に祝福を与えん」
僕を中心として光りの波動の輪が、この星全域に行き渡るように、幾重にも発現していく。たぶん、宇宙から見たら、この星は金色(こんじき)の星のように輝いているだろうな。
そして、光は霧散していき、僕は総てを使い果たし、落下していく。所謂、出涸らし状態である。万が一、このまま消えても、やりきった感満載である。
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僕の意識は皆の元に帰ること無く、闇の牢獄に幽閉されている。大いなる意志による、禁断の術を使用したことによる禁固刑である。大いなる意志って何かは良くわからない。ただ、記憶にあるのは、僕よりも上の物ってことだけだ。
周囲は闇で被われた場所。何も見えない。いや、漆黒な闇が見えるだけだ。僕はここで何億年、何兆年も幽閉される。たった一人で…過去にも数回受けた刑だ。身体も魂も心も無い、意識体の僕。ここでは、過去の出来事を思い出し、反省することと、こうして考えることしかできない。過去の出来事を思い出すと言うが、登場人物は僕だけで、他の者はモブであり、名前が思い出せない。これはこれでつらい作業だ。
交わりのシーンを思い出しても、相手がわからない。感触が思い出せない。まぁ、意識体だから、アレは無いので悶々としないから良しとしている。色々な者達と交わっていた記憶、体型もサイズも肌の色も違う、顔のわからない様々な女性と交わっていた僕。これはこれで幸せだったんだろうな。
ここに幽閉されて、どの位経ったのだろうか?時間の感覚は既にない。
「…たる…」
はるか遠くの方から、女性の泣き叫ぶ声が聞こえる。誰の声か、わからないけど。
「亘…やっと、再会できたのに…何でよ~」
亘って誰だ?何で泣いているんだ?今の僕にはわからない。
「シュウ…さん…ずっと一緒にいてくれるって…」
違う女性の泣きすがる声。誰だろうか?シュウって誰?その後も、遥遠く、女性達の泣きながら呼び掛ける声が聞こえる。胸が熱くなっていく。心が痛い…って、心があったのか?彼女達の哀しみが、僕の心に伝搬してくる。心が痛い…暴走しそうだ。
目の前に赤い小さな点が見え、段々と大きくなっていく。漆黒の世界故、赤い色は目立つ。いや、あれは赤というより紅色かな?暴走しそうな心が、少しずつ柔らんでいく。点だと思っていたが、紅色の糸の固まりのようで、風になびいているようだ。あれ?何で風があるんだ、ここに?
僕の目の前に達した紅色のソレは、顔をあげた。そして…
「私を護り切ってくれるって…ねぇ…どうなの~!」
その言葉に、僕の中の何かが反応した。熱き想いが湧き出し、心が暴走した。僕を取り巻く闇は、波打っている。僕は…誰だ?
2つの輝る珠が僕に吸い込まれ行く。僕の意識に直接語りかけてきた、別の者の意識。
「頼む!僕の初心を叶えさせて…エロ神様」
亘…
「僕の仲間達を見捨てないでくれ…頼む!」
周太郎…
二人の熱い魂を引き継いだ僕。そうだ、やることがまだ一杯有るんだ。全部やり遂げたら、罰は受けよう。彼らの魂から記憶を受け継ぐ。彼らの魂から意志を受け継ぐ。彼らとした約束を僕は護る。
「エロ神 再起動♪」
失われていた身体が、再生されていく。失われていた記憶が、再構成されていく。僕が僕である為に、彼らの意志を引き継いだ。人札の亘、鍵の周太郎、そしてエロ神の僕。まだまだ、やれそうだ。身体の感覚が戻ってきた。亘の能力をマージする。周太郎の特性をマージする。二人が得てきた物を再履修して、自分の物にしていく。
そして、シュウ・ヨハネ・鬼門として、リブートした僕。僕を呼びに来てくれた紅髪の少女を抱き抱え、翼を展開して、彼女の来た方角へと飛ぶ。波打った闇は、僕の翼で斬り裂かれていく。
『それでも、行くのか?』
大いなる意志が問い掛けてきた。
「あぁ、契約を果たす。契約未履行は一番の大罪だからな」
『よかろう。行って来い♪』
大いなる意志は、僕の脱走が楽しそうだ。これで何回目の脱走だろうか?数え切れないかな。まぁ、いいっか。
亘と出逢ったのは、「隔離結界領域」だった。たった一人で戦いボロボロだった彼。周太郎と出会ったのも「隔離結界領域」だった。彼もまた、たった一人で…僕は、彼らの最後の望みを叶える為、僕は彼らと契約をした。
エロ神なのに、エロとは関係ない事柄で…離脱した時間軸が近くなってくると、僕の意識は消えていく。彼らの時間軸では僕の意識は消えるのだろう。
『シュウ…後はまかせたぞ♪』
意識は薄れていく…
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ぼんやりとした意識…オーラを読み取り、ここが聖堂内っていうことがわかった。僕の身体に数名の者が縋っているようだ。僕はどうしたんだっけ?記憶を遡る。そうだ、エネルギーを使い果たして、失神したのか?小学生には、あの術は無理なのかもな。
「シュウさん…」
深雪の唇の感触。いいなぁ…柔らかくて、アソコと同じ感触だし。うっすらと目を開く。っと、深雪と目が合った。驚いた深雪が仰け反った。
「シュウさん…本当にキスで目覚めましたよ…」
「「えぇぇぇ~!!」」
周囲の者達が驚く声。その後、もみくしゃにされながら、みんなに名前を呼ばれて…
「どうしたの?」
ひょっこり、起き上がった僕。
「どうしたじゃないでしょ?あんたって子は…」
怒りながら、優しく僕を抱きしめる姉ちゃん。その後、僕は誠の家の僕の部屋に、移されて、深雪、達也、ヴァイラ、姉ちゃん、リョウから話を聞いた。
あの祝福は効果あったようだ。淫魔の種を埋め込まれた者達の、心臓を再起動して、忌まわしい記憶を除去したそうだ。怪我などを治す効果は無かったようだが、僕の回復チームが、回復しまくった結果、事態は沈静化したようだ。
「で、契約者はどうなったの?ねぇ、リョウ」
「たわいも無いガキだったよ。ただ、淫魔と合成されて、キメラにされていたので、退治した。普通の銃では効かなかったから、サンプルで借りていたCADってヤツを使ったら、倒せたよ」
リョウには、達也の設計した拳銃対応のCADを、サンプル出荷してあった。こういう事態を想定して。
「じゃ、最終調整すれば良いんだね?被害者と…」
亘の能力と僕の能力の合わせ技。交わらないとダメな為、男性には使えない。交わり、体内から安堵と癒やしを与えていく。エロ神ならではの技だ。役得とか言われるけど…
「リョウ…香さんといいの?」
リョウの想い人と交わるのに、抵抗がある僕。
「羨ましいが…頼む、アイツを癒やしてくれ」
リョウが頭を下げた。僕は了承した。
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1日3名ずつと交わっていく。小学生な為、交わるというか入れるだけに近いけど…で、夜は深雪に癒やしてもらう。
深雪に添い寝をしてもらい、彼女の各部位を堪能していく。
「毎晩、私で良いのですか?」
「深雪がいいんだよ。他の人達は激しいから、余計に疲れるし」
深雪は僕にされるがまま、命令されるがままであった。いや、たまに彼女の意志で、プレイをしてくるか。僕のアレを舌で…一舐めでビンビンになる。それほど気持ちが良い。あと、騎乗位に興味を持っているようだったけど、小学生体の僕では、彼女の体重は支えきれないようなので、松葉くずしを要望されたり…
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達也設計の拳銃型CADが、ディープスノーから発売された。リョウとかファルコンとかのプロの使うタイプなので、一般人には使い勝手が悪いようだ。まぁ、いいか。あの二人の他は、冴子とか麗香あたりとAMPが導入するだろうか、採算はトントンになる見込みだ。
僕の症状が安定した頃、誠が新メンバーを紹介してくれと言う。まぁ、家主だし。紹介しないとダメだよな。兵藤邸のリビングに、関係者が一同に集まった。兵藤家、兵藤邸に住むメンバー、数馬、源氏、魔王3名、ミカエル、アザゼルなどなど。あぁ、美奈子とせつな、香津美、レビア、那魅、エリカ、真由美も呼んだ。
「新メンバーってことは無いけど、今まで車椅子で不自由させていたヴァイラを全快させました」
ヴァイラが立って挨拶をした。
「あと、フィアとリーラことメイビスを何番目か忘れたけど、妻にしました」
照れるリーラとフィア。
「で、新メンバーだけど、まず姉の神代綾香」
姉ちゃんが立ち上がる。ざわめく神代家を知る面々。
「どういうことだ?姉って…おい、シュウ」
誠が代表して質問をしてきた。
「僕のもう1つの顔…神内亘っていいます」
「なんじゃと~、人札か?」
源氏が声を荒上げた。この世界の僕は、人札をした際に、失敗をしてロストしたそうだ。無邪鬼は取り逃がし、僕の中にいる無邪鬼に同化吸収さえている。
「源氏、詳しいなぁ…なので、人札の能力を使い、魂に色々な者達を宿すことができるんだよ」
「それで、あんなに一杯…」
源氏の顔から血の気が引いている。
「神代綾香って…」
闇雲家当主の那魅から質問された。
「次期当主です」
姉ちゃんが答えた。
「この世界の亘はもういませんから」
「そうなると、シュウ、お前は兵藤家次期当主で、鬼門家、式森家、神代家の次期当主扱いなのか?」
アザゼルが質問をしてきた。
「そうです。あと、そちらにいます、那魅さんのご厚意で、闇雲家の次期当主扱いになります」
と、姉ちゃんが堂々と答えた。
「名門家のほとんどの次期当主扱いなのか…」
エリカが驚いたような声をあげた。
「で、次ですが、初代魔王のメフィスト」
紅神の悪魔が立ち上がった。
「え?ルシファー様達で無いのか?」
サーゼクスが抗議の声をあげた。
「正確には違う。ルシファーは天界から堕とされた悪魔達の王だ。メフィストは悪魔を装っているが、冥界の魔族の王だ」
「ちょっと、装うって言わないでよ~」
メフィストが抗議して来たがスルーする。
「で、リアスと似ている件だけど…グレモリー家の始祖辺りだよ、サーゼクス」
ショックを受けたのか言葉が出ないサーゼクス。
「ちょっと待ってくれ。紅髪はバアルの血筋じゃないのか?」
アジュカが口を挟んだ。
「何を言っているのかな?紅髪なのはバアル家だけで無い。髪の毛の色なんか、限られているけど、悪魔名家だって72柱あったんだよ?同じ色の他家がいてもおかしく無いでしょ?」
納得したのか、だんまりになったアジュカ。
「悪魔を装い、悪魔になった魔族だよ、こいつはね」
「だから、装っていないって…」
メフィストはブツブツいっている。しょうが無いので、アイツの頭に聖水をぶちまけた。何にも起きないメフィスト。
「ほら♪聖水を掛けても、ダメージが無いでしょ?こいつ、強靱な魔族だから♪」
泣きそうな顔で僕を睨むメフィスト。
「あとで、かまってあげるから、ちょっと大人しくしていてな。次に初代バンパイアの王、ブラド」
ブラドが立ち上がった。
「亘に退治されたことにしてもらい、彼の仲間になりました。よろしくお願いします」
一同固まっている。バンパイアにしては温和そうなイケメンだから…
「コイツはディーウォーカーだ。なので、昼間も大丈夫。食生活で鍛えたので、ニンニクもオーケー。十字架、聖水の類いは致命傷にならない。鍼を刺した程度の痛みらしい」
「おいおい…弱点は無いのか?」
アザゼルの顔からも血の気が失せている。
「ありますよ♪わた…じゃなくて、シュウの躾攻撃♪あれは、痛すぎです。僕もメフィストもシュウには逆らいません。怒らすと消滅されますから♪」
「で、そこの緑髪のハイエルフはリヨン。亘のチームの砲台役だったそうだ」
と、紹介した。恥ずかしいのかリヨンは立ち上がらずに、座ったまま頭を下げた。
「あとは、そこの二人。僕の弟子達が鍛錬している世界のシーグヴァイラとリアスだ。良き魔王になる為の修行を、僕の元でしたいそうだ。名前が被ると紛らわしいので、シーグと莉愛と名付けた。で、身分は、代羽周太郎の養女。代羽姓は狙われる危険が有るため、調整がつけば、神内姓に変える。以上だ」
この世界のリアスとソーナが複雑な表情だ。シーグと莉愛は恥ずかしそうだし。
「質問のある者はいるかな?」
一同に問い掛けた僕。
「亘…じゃなくて、シュウ…あれ、言わなくても良いの?」
姉ちゃんが言ってきた。あれって?はて?なんだ…あぁ、あれか。
「そうだ、もう一体仲間が増えたんだ。僕に宿っているから、姿は出せないけど、無邪鬼を取り込みました♪」
無邪鬼を知る者の顔から血の気が…
「このまま、僕と添い遂げるそうです♪」
「危険じゃないのか?」
源氏が訊いてきた。
「無邪鬼よりも僕の方が危険なので、安心です♪」
唖然としている一同。
「そうだ…亘の記憶と能力を思い出したので、ほぼ総ての魔法、魔術大系は使えるようになりました。後は、魔力の上限が上がるのを待つだけです」
と、申告をしておく。
「魔力の上限が元に戻るとどうなるんじゃ?」
源氏は心配性だな。
「ほぼ無敵になります♪まぁ、現状でも姉ちゃんがアシストしてくれるから、無敵に近いけどね」
「いよいよ、ラスボスか?」
誠が訊いてきた。
「そうだね。みんなの敵に対してのラスボスになります。亘のパーティーメンバーと僕と姉ちゃん、僕の子供達、これだけ揃えば、無敵です。光闇聖魔に加えて禁術系が揃いますから♪」
-------
報告会が終わり、皆青い顔で帰って行く。
「シュウさんって、大物だったんですね」
深雪が声を掛けてきた。
「後ろ盾が多い分には困らない」
「おかげで、四葉があきらめたようです」
と達也。神代家が絡んできたからな。それに、龍斗とリョウがプレッシャを掛けてくれているそうだし。殺し屋のトップクラスに睨まれたら、あの業界でやっていけないだろうし。
「ドローンの専用コスチュームの設計をしないと」
「専用って?」
深雪が訊いてきた。
「背中を大きく開けたタイプで、胸側は空力を考えてデザインにする。そうだ、チームウィッチーズが軍事用を持っているから、見ておいてね、達也、深雪♪」
そうして、平和そうな日々が訪れた。