---シュウ---
やらかし過ぎたことを反省中。こういう時は寝るのが一番♪
しかし、僕の安眠は長く続かなかった。ヤスミンに起こされた。
「お客さんですよ。真由美さんと十文字さんです」
何?その組み合わせは?ヤスミンに、中に入れてもらう。
「まだ、何か?」
リビングのソファに座る二人。しかし、十文字は威圧感あるなぁ。息苦しいし、暑苦しい。
「あの後、調べたんだけど、亘君の言った術は、魔法大全に出ていなかったの。どういうこと?」
現存するあらゆる系統の魔法、魔術が載っている魔法大全を調べたんですか?暇だな…
「あれには出ていない系統です」
「出ていないって?」
真由美がぐいぐいと土足で踏み込んできている。う~ん、でも十文字がいるから、無理は出来無い。
「出ていません」
「出ていない系統とは何だ?」
十文字まで踏み込んできたよ~
「禁断の魔術系です。あれには載っていないませんから」
「「禁術系?」」
二人が同時に驚きの声をあげた。
「そうです。神代家に伝わる術です。ですから、本家の正統な後継者にしか口伝しか伝えていない物です」
と、嘘半分の情報を引き渡した。
「神代家…お前は、後継者なのか?」
「それについてはノーコメントです。一応、死んだことになっていますから」
「そうだったわね…どうして、死んだことになったのか?」
ここで言うのはちょっと…ほとんど、僕の正体がバレる内容かと思う。
「さぁ」
お茶を濁す僕。
「亘さん…お客様です」
ヤスミンがやって来た。で?誰が来たの?
「誰?」
「隣の司波兄妹です。いかがされますか?」
「入れて。後で、また訊かれるのも面倒だし」
「はい…」
そして、達也と深雪がやって来た。
「聞き耳を立てていた訳では無いのですが…」
聞こえたのね…まぁ、聞こえるようにしたけど。
「亘さん、なんで死んだことになったのですか?」
えぇぇぇ~深雪が訊くの?達也が訊けよな?心配そうに僕を見つめる深雪。
「う~ん…達也、どの位知っているんだ?」
「少しだけです。死んだとされる討伐についてだけです」
「人札って知っているか?」
4人共知らないようだ。
「答えてはそこに有る。以上。後は勝手に調べてくれ。さぁ、帰れ!」
全員を達也の家に強制転移させた。
「疲れた…リアス…」
「はい♪」
今夜はリアスと添い寝決定。
---真由美---
翌日、十文字君、摩利、深雪さん、達也君と共に、彼の言った『人札』について調べた。中々扱っている書物は無かった。しかし、やっと見つけた。
『陰陽師に伝わる秘術…自らの身体を札にして、魔物を封じ込める術。使えば、人間では無くなるので、禁断の魔術系に含まれる』
と、あった。彼は人間では無くなり、死んだことにされたのかもしれない。
「ひどい…魔物を倒したのに、人間で無くなるなんて」
深雪さんは顔を伏せて泣いてしまった。彼には彼なりの重責を担っていたのかもしれない。ふと、達也君を見ると、違うページを見ていた。
「何を見ているの、達也君」
「昔話ですよ。人札にまつわる」
そこには、人札になった為に、愛する者を愛せなくなった者の悲劇が書かれていた。亘君も色々と失ったのだろうか?人では無くなり…
「でも、なんでアイツは学校に通えるのだ?死んだはずなら、戸籍が無いはずでは?」
十文字君が疑問を口にした。生徒会室にある端末から、彼の情報を見てみると、戸籍は神代家に残っていた。死んだことにしていない。世間体だけの問題なのか?
「七草、渡辺、アイツと一緒になろうと思うなよ。世間体では死んだ事になっているのだ。表舞台に上げない方がいい」
十文字君は彼を庇うようなことを言い始めた。
「俺も同意見です。でも…」
深雪さんを暖かい目で見る達也君。深雪さんならいいの?
「お兄様…私は…支えてあげたいです」
目を腫らした深雪さんが顔を上げて、そう達也君に伝えた。そうだよ、支えてあげたい。
「七草…お前は惚れ症だからな…」
十文字君が苦笑いしていた。
---シュウ---
土日を挟んで、久しぶりの学校。教室に入るとエリカが寄って来た。
「約束だ。良い事をしてあげるよ…」
顔を真っ赤にして言うエリカ。
「勝って当然のことだ。あの位で褒美は要らない」
「なんだよ~私じゃ不満なのか?」
不満?何をする気だ?
「何をする気だ?」
「えっ?ここで言うのは…二人っきりになったら…」
嫌な予感しかしない。スルーだな。
今日の授業は、CADのメンテナンス方法…持っていないんですが…いや、持っているか…あれは地雷を踏みまくる危険性が大なのだが…
「なんだ?これ?」
レオが興味を示した僕のCAD。メーカー名は消してある。この世界には存在しないメーカなので…
「これ?背負うんだよ。う~ん、この中だと幹比古が使えるかな?」
「えっ?僕?なんで?」
「気の流れを利用しているから、これを背負って、背中に気を集めてみな」
幹比古は僕のCADを背負い、言われた通りに気を集めて、送り込む。すると、幹比古の身体は浮遊し始めた。
「えっ?飛行ユニット?」
「まぁ、そんな感じだ。普通のCADと違い、魔力で術を発動させるのでは無く、術で魔力をブーストアップして、飛行するんだ」
窓から外へ飛びだし、飛行する幹比古。
「幹比古、魔力を同じ様に背中に流せ。コンバーターを入れてあるから」
指でOKマークを作り、空中散歩をする幹比古。
で、放課後、また生徒会室に呼ばれて、尋問を受ける幹比古と僕。
「で、このCADでは誰の作品?」
「僕の設計ですが…何か?」
「どういう原理?」
「簡単に言うと、力をプロペラを回す事に使って、飛ぶだけです」
「ねぇ、これって、大発明なのよ!わかっている?」
まぁ、この時間軸では飛行ユニットは、まだ発明されていないよね。また、やらかしてしまった。項垂れる僕。そんな僕を背中から優しく抱き締めてくれる深雪。
「発表する気は無いです。個人使用です。ただ、CADを何かしら持って来いって…これしか持っていないから…」
「ねぇ、これって量産化しない?」
「しません。無理強いするなら。学校を辞めます」
CADを返して貰い、真由美を睨む。怯む真由美。
「七草、彼はこう言っているんだ。スルーしてやれ」
十文字が庇ってくれた。
「ですが…世の為になると思うんです」
「僕は、護りたい者だけが護れればいいんです。世の為とかそんなお題目は要りません」
「深雪、亘と、今日は帰れ」
「えっ?お兄様…」
「俺も護りたい者だけを護れればいい。だから、一緒に帰ってあげろ」
僕と深雪の盾になる達也。こいつら、週末に何を知ったのだ?それはそれで恐いのだが。
---真由美---
「達也君、どうして、邪魔をするの?」
「彼が言っていたでしょ?護りたい者だけを護れればいいと。俺も同感です。先輩、彼の覚悟を知っているでしょ?命を賭けて護ろうしていた、彼の過去を」
うん…そうだけど…
「でも…あれは大発明よ!」
「先輩、わかっていませんね。アレは軍事利用されますよ。爆撃機のように飛来する魔法師を撃ち落とせますか?」
「あっ…」
「幹比古のような古式魔法師でなら、誰でも使えてしまいます。原理が判れば、高性能な物を作れてしまいます。それをされると、護りたい者が護れなくなるんじゃないんですか」
そうだ…彼は、この世界を救った隠れた英雄だ。死んだことになることも厭わずに、アレを行使した。そんな彼はそういう事態を望んではいないだろう。
「非人道兵器は作らない方が良いんです。発表するなら、通常の者の使用時には、飛行時間とかが制限される物の方が良いと思いますよ。あれはエネルギー効率が良すぎる」
達也君は、アレの問題点に気づいたようだった。そして、量産化を望まない彼もまた。
---シュウ---
校門を出るとエリカと美月が待っていた。
「えっ?デート?」
エリカがいきなり妙な事を言う。それならば嬉しいけど。
「うん♪」
真っ赤な顔で俯いている深雪が肯定した。え?そうなの?それはそれで嬉しいが…
「良し♪私と美月も参加しま~す」
空気読めないエリカ…そうなるよな。
4人で、喫茶店に入り、ケーキセットを満喫する。
「なぁ、亘。深雪だけで無く、私と美月ともつきあってよ~」
何を言っているのだ?エリカはレオ、美月は幹比古がお似合いなはずだぞ。
「すまん。深雪だけ充分だ」
「え?何でよ~。そんなに私って魅力無いのか?」
「魅力の問題じゃない」
「おぉ、それは魅力はあるってことだよな♪」
その前向き過ぎる性格が苦手なんだけど…うん?何かが来る?突然、喫茶店の窓を突き破り、何かが侵入してきた。見た目はケルベロスだけど…何かのキメラか?
バトンソードを手にして、ホーリーソードにして、応戦。
「エリカ!深雪と美月を護れ!」
「あいよ~!」
二人を庇いつつ、外へ出ると、人型の…ミノタウロスもどきが大量に襲い掛かってきた。これって、深雪狙いか?あぁ~面倒だ!『地獄の業火』を発動して、焼き払う。
「凄い…」
深雪の呟いた声が聞こえた。でも、なりふりを構ってはいられない。護る為に戦う。それが僕の存在理由のはずだ。空からも襲い掛かってくる。『天の裁き』を発動して、空中ユニットを雷撃で狙撃して、撃ち落とす。
「貴様、何者だ?」
術者らしき者が現れた。質問はスルーして、『ダイヤモンドダスト』で、粉砕した。
「大丈夫か?エリカ、深雪、美月!」
「エリカさんが…」
エリカの肩に噛み痕が…噛まれたのか?浄化術で毒類を昇華して、傷口を治癒術で塞いでいく。そして、回復術で失った気力などを補填してあげた。
「凄い…亘さん♪」
僕に抱き着いてきた深雪。エリカは膝枕に頭を載せて、休ませる。
「エリカ、大丈夫か?」
「あぁ、手間かけさせた。すまない…」
「大丈夫か?」
達也と十文字が駆けつけてきた。
「エリカがやられただけだ。いや、喫茶店も…」
喫茶店がボロボロだ。後で直しに来ようかな。今はみんなの目があるから、創造能力は使えないし。
---達也---
「特尉、何か変わったことは無いか?」
風間隊長からの定期連絡だ。俺は、隣人について報告をした。
「何?神代家の次期当主相当が越してきたのか。で、今日、襲われていたのか。どこにだ?」
「敵の正体は掴めませんでした。敵の狙いもわかりません」
「う~ん、神代家かぁ…敵にすると厄介だな」
「彼とは敵対したくないです。妹のお気に入りの彼氏ですし」
「そうなのか…味方と思っていいのか?」
「まだ、謎めいた部分も有り、完全に信用していいのか、わかりませんけど」
「わかった。こちらでも調べてみる」
定期連絡が終わると、深雪が入室してきた。
「お兄様…彼は敵では無いです。必死に私達を護り、エリカさんを助けてくれました」
こんなに、俺以外の為に必死になる深雪は珍しい。
「でも、信じ切るほどの情報は無い。これも事実だ」
「そうですが…」
哀しそうな表情の深雪。優しく抱き締める。
「お兄様…」
---シュウ---
キャッスルドランに転移して、今日の相手の分析をする。
「あれ、あの魔石じゃないのか?」
あの魔石とは、賢者の石もどきである。
「可能性は否定出来無いな。確かに石らしき物が爆ぜた後、灰化していったからな」
と、この城の指揮を任せているフィンが言う。
「そうなると敵は大亜連合か?ソーサリアンブースターって、ノーヘッドドラゴンじゃないのか?」
資料に目を通す。あっちの世界と状況が違うのか?
「その二つの組織を監視対象にしよう。敵がわからないと、行動が起こせない」
「わかった」
作戦室から、リビングに行くと深雪がいた。
「この世界の私はいかがですか?」
「勿論、君の方が好きだよ。唇と…が同じでね」
言いにくい部分は耳元で囁いた。真っ赤になって俯く深雪。そんな彼女の顎をクイっと上げて唇を合わせた。
「この世界の私はダメですか?」
「ダメでは無いけど…アレコレしていないからなぁ」
「そっか…今夜はどうします?」
僕は深雪と共に、調教ルームへと入っていった。