---真由美---
深雪さんは、亘君の肩を抱くように、この部屋から退室した。それを見届けた達也君が、衝撃的な一言、私達に伝えた。
「俺は亘のガーディアンになります」
えっ?深雪さんではなく?
「深雪は亘が護ってくれます。だから、その代わりに彼を俺が護りたいんです」
「おい、アイツは何者なんだ?」
十文字君が訊く。
「申し訳ありません。それは言えません。でも、信じるのに値する存在です」
信じるのに値する存在…言い回しがおかしい。どういうこと?
「では、司波。お前はアイツがなんで聖属性なのかを知っているのか?」
「えぇ、知っております」
聖属性な存在?人間では有り得ない。現代魔法師で聖属性の魔法を使える者はいない。それは、術式で表せないから。どういう現象で聖属性になるかの原理が判らないから。そもそも、聖属性の実体を知らないから。それは人間が持っている属性では無く、現象としてテスト出来無いから…
「彼は人札になって、何に変化したの?!」
叫ぶように達也君に質問する私。
「言えません。ただ言えるのは、彼が全属性の術を使える原因はわかりました。それだけです」
全属性…自然界に存在する属性、火、水、氷、風、土、金の他に、未知なる属性、聖、魔、光、闇、そして禁術…それら総てが使えるの?達也君以外の者は、驚きのあまり、固まった。口は言葉を発することなくパクパクしている。
それらを総て使える…全能である。その先にある存在は1つだけだ。まさか…
「皆さんにお願いがあります。亘を追い詰めないでください。もし、彼にダメージを与えたと判断した場合、知り合いでも迷わず消します」
達也君の目付きは狩人のような狩る者の目付きになっていた。
---シュウ---
僕の部屋に深雪といる。達也の言いつけ通り、深雪が僕から離れない。
「もう、大丈夫だよ」
「お兄様が迎えに来るまでいます。ダメですか?」
あの笑顔…女性の笑顔に弱い僕は、頷くことしかできない。
「お兄様から聞きました」
アイツ、話したのか…
「私…調整体だったんですね…お兄様の為の…」
頷く僕。嘘は深雪を傷つけると思うから。
「私、お兄様のお嫁さんになれるんですね」
「あぁ、お似合いの夫婦になれる」
「お兄様を次期当主にしたそうですね」
それも話したのか…頷く僕。
「それが自然だろ?調整体は…サブな存在だから」
「えぇ…それでいいと思っています。でも…私は亘さんのことが…」
指で、深雪の口を塞ぐ。それ以上の言葉は言わせたく無いから。
「達也と一緒になれよ。僕は深雪に悪い虫が付かないようにする、ダミーな彼氏でいい」
アッチの世界では失敗したので、コチラの世界では、一緒にしてあげたい。
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5月連休に入る少し前に、招待状が届いた。差出人は四葉真夜だった。何の招待?封書を開けて中を見ると、当主より発表が有りますので、パーティーへ参加してくれとのことだ。
隣家へ行くと、深雪と達也にも届いていた。二人とも思い当たることが無いらしい。う~ん…まだ、野望があったのか?どうするかな。当日、テーブルをひっくり返すかな。それもいいかな。いやいや、それ以前に問題が…
「パーティーって正装?」
深雪に訊いた。
「ですね」
僕の正装は司祭服になるのかな?いや、聖者の服もあるか。戦士装備はダメだろうな…う~ん。神様状態だと全裸だから、もっとダメだし…
「亘の正装って、どんな感じになるんだ?」
僕の正体を知っている達也に訊かれた。
「司祭服か、聖者の服かな…聖戦士の装備じゃダメだろ?」
「戦士装備はダメですよ」
って、深雪。だよね。はぁ~。正装のパーティーは嫌いだぁ~。
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パーティー前日、僕と深雪と達也で、本邸の玄関前まで転移した。交通機関で襲われたら、大惨事になるし。リビングデッド達の狙いが判らないので、まぁ、安全策を取った。
玄関を入ると、あの老執事が現れた。
「達也様、深雪様、シュウ様、お帰りなさい」
って。僕の本名を知らない深雪が、怪訝な表情を浮かべた。
「真夜に逢いたい」
「はい。シュウ様、こちらへどうぞ。達也様、深雪様をお部屋に案内してくれ」
僕だけ、真夜に逢いにいった。憎悪感が満ちあふれていた当主は毒気が抜けた表情で、僕を迎え入れてくれた。
「おっしゃられた事を、発表しようかと思います。少しアレンジはしましたよ。まぁ、私からのサプライズと思ってください」
って、サプライズするのは好きだけど、されるのは苦手である。
「達也を次期当主指名します。代羽家を四葉の本家別院扱いにします。深雪の結婚相手は、達也か鬼門家名誉当主であるシュウ様のどちらかを選ぶようにさせます」
2つばかり、予期せぬことが入っているのですが…
「本家別院扱いって?」
「シュウ様のなさることを、サポートする為です。他意はございませんわ」
悪戯ッ子のような笑顔を浮かべる真夜。あぁ、それは嬉しいけど…
「で、鬼門家名誉当主って何?」
「私から、鬼門家に確認をしました。シュウ様の立ち位置をね。そうしましたところ、そのような回答を頂きました」
最高神達のサプライズか?まぁ、いいか。達也を選ぶのだから。それに2択であれば、悪い虫の入り込む隙間は無いか。
「わかった。他は無いよな?あったら、テーブルひっくり返すぞ!」
「ございません♪」
「今回のサプライズを考えていらっしゃる真夜様は、本当に楽しそうでしたよ」
って、老執事さん。まぁ、毒気を抜いた弊害だから、良いってことにするかな。で、話も済み、達也達の元へと戻った。
「どうでしたか?」
心配そうに僕を見つめる深雪。
「まぁ、2つばかり、気にいらないことはあるけど、了承してきた」
「気にいらない?」
「亘に関してか?」
心配そうな深雪に対して、興味津々な達也。
「そうだよ。僕絡みだ。毒気を抜きすぎて、まるで子供のようだよ。はぁ~」
凹む僕。
「で、この部屋は深雪と達也の部屋か」
「亘さんも♪」
嬉しそうな深雪。だけど…
「僕は僕の部屋で寝る。じゃ、明日ね♪」
キャッスルドランの僕の部屋に転移して、爆睡する僕。
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翌日、正装して兄妹の部屋に転移した。
「凄い…神々しいですね」
って、深雪が感想を漏らした。まぁな、一応聖者だし。聖なる物を身に着けている僕。
「悪意ある者に触れれば浄化される。腹黒いヤツは近づけないでくれ」
「了解です」
そして、パーティー会場に移動。達也はタキシードで、深雪はロングドレスだ。聖者の恰好の僕は目立つ。色々な人に指差されて、噂話をされている。
「亘さん、緊張していますね」
深雪が抱きついて来た。その様子に響めく参加者。まぁ、得体の知れない僕に、次期当主最有力候補が抱きついたら、そうなるか。
そして、壇上に真夜とあの老執事が現れた。真夜がマイクを握っている。楽しそうだ。真夜の表情が以前と違うことに、僕達以外の招待客が響めいている。
「今日ははるばるお越し頂き、ありがとうございます。さて、今日は、皆様に重大な発表が多数あります。まず、司波達也よ、ここへ参れ!」
達也が呼ばれ、壇上へと上がった。
「彼、司波達也を次期当主に指名します」
先程よりも一層響めく会場。まぁ、ガーディアンが次期当主に昇格だもんな。納得出来無い者多数かな。
「次に、神代亘よ、ここへ参れ」
僕が呼ばれた。なので、壇上に上がった。神代姓に会場が響めく。
「彼は、あの最強陰陽師の家系の者だったの。この中に人札伝説を知っている者がいると思うけど、そういうことよ♪」
楽しそうに挑発する言い方の真夜。実際に楽しいのだろう。ワクワクしているオーラを纏っているし。
「代羽家を四葉本家別院扱いにします。分家より上の立ち位置よ。彼に協力しなさい。あぁ、神代亘、別名代羽周太郎だったわね」
頷く僕。
「最後に、司波深雪よ、ここへ参れ!」
深雪が壇上に上がった。
「司波深雪は、次期当主司波達也か、鬼門家名誉当主シュウ・ヨハネ・鬼門様の2名のどちらかと結婚をしなさい。ここにいる2名以外の他の相手は認めません」
えっ?って表情の深雪。僕の本名と肩書きに驚いているようだ。
「重大発表は以上です。この件に関して、異論反論は受け付けません」
真夜達と共に、壇上から僕達は立ち去った。
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「どちらが本名なんですか?」
深雪に訊かれた。どれも本名と言えなくもない。まだ、一度も死んではいないから…
「まぁ、普段使っているのはシュウ・ヨハネ・鬼門かな」
「お兄様と亘さん…うぅん、シュウさんの計略ですか?」
「真夜のサプライズだよ。僕が言ったのは達也と深雪を一緒にしてくれだったんだけど、なんで僕を選択肢にするかな?」
「ふふふ♪悩む楽しみがあって、私は嬉しいですよ」
って、僕の頬に口づけをした深雪。
「これで、深雪は狙われないはず。狙うとすれば。次期当主の達也か、胡散臭い僕だな」
「そうですね」
「たぶん、内部に内通者がいるはずだ。達也、頼んだよ」
「了解です」
「もぅ!男二人で悪巧みですか?私も混ぜてくださいよ~」
「深雪は正直だから、顔に出るから、知らない方がいいんだよ」
深雪の耳タブをハムハムする僕。
「そうなのか。わかりました♪」
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サプライズパーティーが終わり、連休が終わり、学校へと向かう。教室に入るなり、エリカ達に拉致された。なんでだよ?
「おい、亘。達也君が四葉家の次期当主だって知っているか?」
って…あぁ、数字付きの家系に案内出すって言っていたな。
「知っているけど。それが何か?」
「四葉家だぞ…」
「差別は良く無い。エリカらしく無いぞ」
エリカのこめかみを小突いた。
「そうなんだけど…気にならないか?」
「何が?」
「知らないのか?深雪の婚約者候補が2名いて、一人は達也君だけど、もう一人は正体不明の人物なんだぞ。お前は現在進行形の彼氏として、どうなんだ?」
って、言われても…僕ですって名乗れないし…真夜のヤツ…
「いいじゃない。きっと達也を選ぶさ」
「お前はそれでいいのか?おい、亘!」
何を熱くなっているんだ?
「おい、レオもなんか言ってやれ!」
「えっ?俺か?彼女いないのに…」
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放課後、生徒会室に…なんか雰囲気が良くない。深雪が哀しそうだし。
「おい、深雪を虐めたのは誰だ!」
怒りのオーラを纏う僕。一瞬で空気の質が変わり、僕が何かをやらかしたのだと、皆が気づいた。
「亘君…落ち着いてよ」
真由美が僕の傍に来た。
「誰が虐めたんだ?真由美じゃないよな?」
「誰も虐めていない…ただ…」
真夜サプライズの影響か?
「ただ、何だよ、真由美…心臓を舐めてやろうか?」
「ダメ!私のせいで闇に…シュウさん、止めて!」
深雪に抱きつかれた。なので、纏ったオーラを霧散させた。
「シュウ…さん?」
あずさが呟いた。あっ…深雪がやらかした…バレたかな?
「どういう事?ねぇ、亘君!」
真由美が便乗して、僕を責め立ててきた。深雪は僕に抱きついて離れない。
「この学校の生徒会は、個人情報を全裸にするのが趣味ですか?」
ビクっとする真由美。『全裸』というワードに反応したようだ。
「そんなに全裸になりたいの?」
「違うのよ、亘君…ねぇ、聞いてよ!」
「深雪を虐めた女性は全裸にして、男子生徒に襲わせるか?」
「ダメだって、シュウさん…やめてください」
必死に僕をコチラ側に戻そうとする深雪。そして、奥の手に出た。突然、僕と唇を重ねた。皆の見ている前で…彼女の柔らかい舌が僕の口の中に入り、僕の心をクールダウンさせていく。
「どうしたんですか?これは…亘を追い込んだんですね!」
達也が来たようだ。深雪の行動から、僕が闇墜ちしかけた事に気づいたようだった。
「違うのよ…達也君…」
「司波、どういうことだ?お前が四葉家の次期当主って」
これまで黙っていた十文字が口を開いた。
「そういうことです。四葉家当主の決定です」
深雪の肩を叩き合図をした。僕から離れる深雪。
「ありがとう、深雪」
彼女の頭を軽く撫でてあげる。
「てへっ♪」
嬉しそうな深雪。笑顔が戻って来た。
「十文字。僕、神代亘が後見人になった。文句があるなら聞くぞ」
達也の横に立ち、言い放つ。
「亘…お前が後見人だと?」
「あぁ、そうだよ。なんなら、総ての数字付きを相手に戦ってもいいぞ」
闇墜ちでは無く、キレた状態な僕。拷問では無く、殲滅優先だ。
「神代家だけで勝てると思っているのか?」
「神代家には迷惑を掛けない。これは僕が買うケンカだ。総て代羽家で買い取る」
「代羽家だと?」
「神代亘、別名代羽周太郎が、相手をする。別にいいんだよ。四葉本家を除いた全人類を相手にしても。前にも言ったはずだ。護りたい者を護るだけだ。皆を救うなんてお題目は元より持っていない。おい、十文字、この場でお前が決めろ。この世界の行く末を」
「どのくらいの戦力なんだ?」
「ケンカ相手の戦力を聞いて、戦うかを決めるのか、十文字家は。まぁ、いいや、教えてやる。達也と深雪を救うだけなら1分、四葉本邸を含めると1時間あれば、それ以外を殲滅出来る」
「1分だと?はったりすぎるだろ?」
「はぁ?この星から酸素を一瞬で無価値にする。それだけで、動物は総て殲滅すると思わないか?」
「お前は…まさか…」
「『無価値』能力持ちだ。おい、どうするんだ。代羽家にケンカを売ってただで済むと思うなよ!」
達也達を除く、数字付き家系達のスマホが一斉に鳴り始めた。通話をして、顔から更に血の気が引いていく。上と下から、プレッシャーをかけ始めたのかな?
通話を終えて、十文字が土下座をしてきた。真由美もだ。
「すまない…無礼な数々の態度と言葉、許してくれ…」
「私の身体は捧げます。だから、怒りを解いてください」
十文字と真由美が許しを請うてきた。どいつらがプレッシャーを掛けたんだ?達也と深雪を救えば終了の案件なのに…
二人の態度を見て、あずさや摩利など、司波兄妹を除いて、土下座をしてきた。う~ん…
「次、深雪を虐めたら、実行する。心して行動しろよ」
僕と深雪と達也で転移して、この場を後にした。