---真由美---
生徒会に陳情書が届いた。一科生と二科生との間での差別、魔法競技系クラブと一般競技系クラブでの優遇さの撤廃を求めるものだ。
「魔法科高校なんだから、しょうがないんじゃないの?いやなら、一般の高校へ行けばいいと思うけど」
って、亘君。
「そうは言うけど、一般の高校へ行きたくても行けない者もいるのよ」
と、彼らサイドに立った私。
「ふ~ん、ナンバーズ・ファミリアは大変なんですね。才能が無くても通わないと行けないなんて」
亘君らしくない発言。彼は何をしでかす気なのか?
「達也はどう思う?」
「どうって?クラブの優遇格差は撤廃で良いかと思います。差別も出来るなら無くして欲しいですね」
「あずさは?」
「え?う~ん…差別は良く無いかな」
「でもさぁ、生徒会の中にも差別発言を、繰り返すヤツがいるんだけど、あれはどうするの?」
森崎君のことね。どうしたものかな?
「表面だけ取り繕っても、内情と合わないのであれば、苦情は増えると思うよ」
あぁ、それが言いたかったんだね。内情と合わない…これがネックか。
「亘君はどうすれば良いと思う?」
「森崎モブ男君を消し去ってもいいかな?」
「却下よ!」
相当、森崎君の言動に怒りを持っている亘君。彼の怒りの爆発が一番恐い。それはこの場にいる全員が知っている。
「とりあえず、本音で話し合う場をつくります。公開討論会開催よ。生徒会としては、私がでます。向こうからは代表者3名程度をだしてもらうようにします」
「十文字、警備陣を厚めにしてくれる?」
「神代、どうしてだ?」
「リビングデッド来たら、まずいからだよ」
「あぁ、あれか…そうだな。時間稼ぎしないとダメだったな」
亘君は十文字君の相談役になってきている。それはここにいる全員が黙認している。適材適所って感じだ。亘君の指摘は正しいので、十文字君はあまり反論をしないし、達也君も協力的になってくれるし。我が校の3本の矢って感じかな♪
---シュウ---
「神代、ちょっといいか?」
帰ろうとしたら十文字に呼び止めれた。なので、深雪達には校門近くで待ってもらうことにして、十文字との話に応じた。
「どうしたの?」
「七草のことだ。あいつの経過は良好なのか?」
「良好だね。今の所は。何も覚えていないでしょ?」
「あぁ…俺達と普通に接してくれている」
「問題は記憶のフラッシュバックだけだ。起きると半狂乱状態になる。防ぐ手立ては、同じ様な状況に置かないことだけだよ」
「その状態になった時の対処は?」
「僕が傍にいれば、『安堵』の能力で、落ち着かせることは出来る。いない時は鎮静剤とか精神安定剤の投与かな」
「わかった。すまない。呼び止めてしまって」
十文字とわかれて校門へと向かう。
「遅いぞ~」
って、エリカ。待ち合わせていないけど…
「なんで、エリカが…はぁ?」
エリカの後ろにエリカのアニキがいた。
「よぉ!この前は世話になったなぁ」
「何?また、面倒事?」
「違うよ。エリカがさぁ、この前世話になったから、おごりなさいってさぁ」
エリカの顔が茹で上がっていく。
「そんな、エリカごときの言葉に乗らないでいいんですよ」
「ご、ごときって何よ~」
あえてスルーする。僕と深雪、達也、レオ、美月、幹比古、ほのか、雫にエリカ兄妹が加わった。で、いつものケーキ屋さんへ。
「おい、ワンホール喰うのか?」
いつものようにワンホール注文すると、エリカアニキが驚いていた。
「糖分補給は大事だよ。頭の栄養って糖分だけだし」
「まぁ、そうだが…」
「で、いつヤルんですか?」
いきなり達也が切り出した。
「何を?」
「アレですよ。一人で行くつもりなんでしょ?」
「う~ん…」
達也には気づかれていた。アレとは、リビングデッドの巣穴攻略と、今度の討論会の裏で蠢いている奴らの壊滅だ。
「巣穴は見つけた。たぶん、首謀者は共通だ」
「何の話をしているんだ?」
エリカアニキが割り込んできた。
「政治結社のブランシュの日本支部のことですよ。警部さん♪」
「おい、お前、何を相手にするんだ?テロ組織だぞ」
「僕は護るべき相手を護る事ができるなら、誰が相手でも躊躇はしない。もう後悔はしたくないから」
「うっ…聞いた以上、俺も参加だ」
「邪魔です。相手はリビングデッドですよ。普通の魔法師では無理です」
「リビングデッドだと?」
「警部さんは、退路を絶ってください。達也達は討論会の警護を頼む。いいか、リビングデッドが来たら、達也か十文字にまかせろ。他の者ではダメだ」
「しゅ…いや、亘はどうするんだ?」
「僕は僕のチームでアイツらを皆殺しにする。エリカを2回も襲いやがって、後悔させてやる」
「えっ?亘…私のことをそんなに思っていてくれたのね♪」
「勘違いするな。エリカを襲うのは僕だけで充分だ♪」
「え…私は襲われる対象?って、お前、襲った事無いだろ?」
僕を睨むエリカ。
「スルー攻撃で日夜襲い掛かっているぞ♪」
「お、おっ、お前…スルーしているのは、そういうことかぁぁぁぁ~!」
「だ♪」
エリカ以外の者達が苦笑いしている。
「そうだ、美月、幹比古、お前達は索敵をして、達也と十文字を誘導してくれ。深雪とほのかと雫は、達也達の到着までの足止めをしてくれ。深追いはするなよ。万が一の時は…必ず助けるけど。兎に角、引っ掻きと噛みつきはされるな。毒を撃ち込まれるから」
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討論会当日、僕は学校を休んだ。前もって、言ってあるので、押し掛けは無いだろう。ブランシュのアジトに前夜から、貼り付いている。リビングデッドの所在確認に手間取っている。ここだけなのか。他にあるのか。討論会開始時間に学校に着くはずなので、残り時間から、捜索範囲を狭めて索敵していた。
討論会開始1時間前、ガレージのシャッターが一斉に開いていく。中にはトレーラーがあった。あそこにいるな。反応も有るし。
念話でエンジンを掛けたら、作戦開始にすると仲間に伝えた。
そして、エンジンが始動した。その瞬間、アジトの前方と後方から聖なるオーラコーティングの『ダイヤモンドダスト』、アジト上空から『ホーリーアロー』、アジト地下から、『ダークミスト』が発動された。一瞬にしてアジトは入居者ごと、この世界から消滅した。多数の魂が天界の門へと立ち昇っていく。その中にいる薄汚れた魂だけと、喰わせていく。
---千葉寿和---
退路を断てって…一瞬で殲滅じゃないか…何だ、あの破壊力は。爆撃機などいなかった。爆弾でも無い。静かに消滅した。アジトのあった場所には破砕されたコンクリートと鉄筋の微細粉末しか残っていない。
「何者ですか?」
部下に訊かれた。
「妹の彼氏」
とだけ答えておく。実際は「妹が彼氏にしたい男」だけどな。
微細粉末を退けていくと、肉片やら骨片やらが方々に散らばっている。これは生存者いないだろう…どうやれば、こんなに粉々になるんだ?
---エリカ---
討論会が始まって30分くらい経った頃、武装兵力が学校内に雪崩れ込んできた。それらにはあのリビングデッド達もいる。動きが速い。
「エリカ、引け~!」
レオの声がした。剣で応戦するが、首を断ち切ろうと、腕を叩き切ろうが、止まらない。マズい…と思った時、アイツらが氷って動かなくなった。
「エリカさん、逃げて~!」
深雪さんの魔法だ。逃げる。あれは、足止め程度にしかならないって言っていたし。
「エリカ、上だぁぁぁぁ~!」
ミキの声がした。上から?
「うがぁっ…」
誰かに突き飛ばされた。えっ?
私のいた場所にはレオが倒れている。上から来た奴らに噛まれた。私の代わりに?身体が反射的に動き、レオを助けに行くが…えっ?レオに噛まれた…感染タイプの毒か…
「深雪…感染タイプ…」
意識が残っている限り、仲間に知らせ…
---シュウ---
学校に着くと、修羅場であった。だから、応戦するなって言ったのに…感染タイプの毒だった。毒を注入され、リビングデッドになっていく生徒達。
「シュウさん…」
深雪が抱きついて来た。
「どうすればいいんですか?」
目は腫れている。
「感染者は屠れない。屠れば治癒も出来無い。くそっ!」
あれしか無いか…
「白音。アレをやる。後は頼む」
「お兄様、ダメです。先日も瀕死になったでしょ?」
「他に手は無い」
僕は翼を展開して上空へと向かう。護るべき者を護る為に手段は選ばない。上空から広域魔法陣を展開して、『浄化』を発動した。まず、感染者達を助ける。今の僕には広域魔法陣の発動はキツい。魔力の上限は問題は無いが、器が保つかどうかだ。この前も、器に損傷を与えたばかりで、それが完治したばかりだしな…
ゴホッ!
咳き込むと、口から吐血だ…保たないかな。次は、リビングデッド達を総て捕捉して、『ホーリーアロー』で狙撃していく。気力勝負だな…足に激痛が走った。足の部分が損傷したようだ。痛いってことは生きている証拠だし。
「父ちゃん、無理するなよ」
娘が隣に転移してきた。『ダイヤモンドダスト』で狙撃していく。
「父さん、歳なんだから、無理はダメですよ」
息子も隣に転移してきて、『ホーリーアロー』で狙撃していく。
「シーナ、父さんを頼む」
「はい、ガイア兄様♪」
---深雪---
空から多数の狙撃が行われている。シュウさん…大丈夫かな?
「あの、瀕死って?」
白音さんに尋ねた。
「えっ…あっ…あのですね、先日、みんなを助ける為に…一人で…で、器の損傷が激しくて…」
器の損傷?器って何?
質問をしようとすると、白音さんは消えていた。シュウさんの元へ向かったのかな?今の私で出来る事を考える。リビングデッド以外の敵を無力化させていく。
あっ、白音さんがいた。エリカさんとレオ君が倒れていて、白音さんが治癒術を使っていた。私は彼らを護る盾になる。いや、ならないといけない。
『深雪…氷をドーム状にして、隔離空間を作り、エリカ達を護れ…』
シュウさんの声が脳裏に響いた。言われたことを実践する。やったこと無いけど、出来無いことは指示しないと信じて…
作れたけど、銃での狙撃で割られたしまった。薄かったのか…もう一度、作ろう。その時、私に向かって弾丸が飛んでくるのを感知した。回避できない。どうしようと、諦めかけていた時、目の前で弾が真っ二つになるのを目撃した。
「団長の想い人を護り切らないとな」
青髪の女性の戦士が私の隣に現れた。
「そうね。この前、失敗したから、埋め合わせをしないと」
赤髪の女性の戦士も現れた。
「行くぞ!」
「おぉ!」
二人の動きは速い。的確に敵を倒していく。
「白音さん、手伝いに来ました」
白音さんの隣にグリーンブロンドの髪の女性が現れた。
「シーナ様…団長は?」
「大丈夫。今、応急処置をして城に運んだから」
「そうですか…良かった」
団長?城?何を話しているんだろうか?
「おーい!撤収だぞ~」
遠くから声が聞こえ、白音さん達の姿は消えていった。
「深雪、大丈夫か?」
お兄様がいらした。
「白音さん達が、彼らを…」
「エリカとレオか…噛まれたのか。シュウさんは?」
「わかりません。翼で上空へと行かれたまま、戻られません」
「そうか…」
---真由美---
達也君の手により、機密情報を盗もうとした輩は捕縛され、校内に侵入したテロ集団は壊滅、彼らに手を貸した生徒達は捕縛された。後に、生徒達は洗脳されていたことが判明したけど。
「十文字君と達也君のおかげで、助かったわ」
怪訝な顔をしている二人。どうしたの?
「七草、俺達二人だけで、助かったと思っているのか?」
「え?違うの?」
何を言っているのかな?
「記憶が…そうか…」
記憶?何かな?
被害状況の報告が上がってきた。生徒会室に皆戻って来た。
「達也君、深雪さんは?」
「亘が心配で帰りました」
「うん?亘って誰?」
達也君と十文字君が顔を見合わせた。どうしたの?
---達也---
「司波、これって…」
「亘が消滅しかかっているのでしょう。消滅するときに、記憶を消して行くと言っていましたから」
「消滅って、何だ?」
あぁ、言っちゃまずかったかな。いや、それよりも、深雪の記憶も危ないのか?
「十文字先輩、すみません。妹が心配なので帰ります」
「わかった」
十文字さんと別れて、家路を急ぐ。家に着くと深雪が抱きついて来た。
「お兄様、お帰りなさい。あれ?今日は、ハムハムしてくれないのですか?」
俺に甘えまくる深雪。これって、シュウさんのことじゃないのか?消えたのか?
「深雪、シュウさんのことを覚えていないのか?」
「シュウさん?誰ですか?」
怪訝な顔をした深雪は、突然、俺の口に口を重ねてきた。完全に、シュウさんとの記憶は、俺に書き換えられているようだ。深雪の舌が入って来た。
シュウさんのことが心配になった俺は、深雪から離れて、隣の家に行く。表札はまだ有る。呼び鈴を押してみると、いつものメイドさんが開けてくれた。
「お待ちしていました。達也さん、深雪さん。中にどうぞ」
深雪も付いてきていた。二人で中に入ると…リビングには信じられない人物が立っていた
。
「初めまして、この世界の僕、そして妹よ」
彼は俺なのか…二人の俺を前にして、隣にいる深雪が固まっている。
「時間軸的には、そんなに変わらないんだけどね」
俺よりも感情が豊かで、歳上に見える彼。
「妹は…今、シュウさんの傍にいて、ここに来られない。危篤状態なんだ」
「危篤?」
「そう…あのリビングデッドを構成する物は、シュウさんの天敵だからね。1匹ずつなら問題ないけど、大量に一気に倒すと、身体が破壊されていくんだ」
身体が破壊?
「この世界の僕の知識が、どれほどの物なのかわからないけど、人札なシュウさんは、肉体という概念が無い。身体は器に過ぎない。魂を保管する器なんだよ」
身体が器…
「だから、壊れやすい。人札になった時点で、魂は不死になっているので、死ぬ事はないんだけど、器の再生に時間が掛かるんだ。器を乗り換えれば問題は無くなるんだけど、現在の器は訳有りでね、破棄出来無いんだ。だから、修復再生待ちになる。今時間ロスの少ない空間で器を再生している。そうだな、2週間くらいかかるかな」
「深雪に有った記憶は?」
「戻って来れば、徐々に戻るはずだ。今、この世界にいないから、起きている事象だ。心配は無い」
「貴方の妹さんは、どうなったんですか?」
「僕の妹か?シュウさんの思惑通りには行かなかった」
優しそうな笑みを浮かべる別世界の俺。こんな表情も出せるのか。
「あぁ、僕の表情かな?シュウさんのおかげで、感情も表情も深雪以外にも出せるようになってきた」
「で、妹さんはどうなったんですか?」
「シュウさんの妻になった。シュウさん的には僕と深雪を夫婦にしたかったようだけど。そのリベンジで、この世界では、君と君の妹さんを結びつけようとしているだろ?」
そうだ。その通りだ。
「僕は妹の幸せそうな顔が見られれば良い。傍に一緒に居られれば良い。だから、今の立ち位置に異論は無い。寧ろ感謝している。で、君に頼みがある。これ以上、シュウさんが壊れないように護ってやってくれ」
そのつもりだ。彼は俺達に、考えてもいなかったアプローチで、夢の実現に手助けをしてくれている。俺も妹の笑顔をずっと傍で見ていたいだけだ。
「答えは出ているようだね。じゃ、また来るよ。今度は妹と共にね♪」
彼は消えていった。
「立体ホログラムです。同一時間軸上に、同一人物は存在できませんから」
白音さんが戻って来て、説明をしてくれた。一緒には自分とは居られないのか。
「達也さん、私のお兄様の話をした方が良いですか?」
俺は頷いた。深雪は、混乱しているけど。混乱している深雪の姿…初めて見る妹の姿。なんか微笑ましいが、妹は苦しんでいるようなので、意識を刈り取り、寝かし付けた。