----シュウ---
「僕は…でも、護れなかったのは事実だよ、深雪」
人質に取られた妻達…リヴェリア…ティオナ…リアスにいたっては3回も…兵藤君だ。そうだ、ヴァイラもだな。ソーナには迷惑を掛けっぱなしだし…
「シュウさんは、優しすぎるのが弱点です。もっと冷酷であれば良いのに…でもね、そんなシュウさんだから、皆命を預けられるんですよ」
深雪が優しい眼差しで僕を見ている。達也達兄妹は話の行方を固唾を呑んで見守っているようだ。
「僕は深雪を幸せに出来無い」
「私は幸せですよ。お兄様と永遠に近い一緒に居られる機会を頂きましたから」
「でも、この世界の達也は、この世界に留まるんだぞ。一緒に居られなくなる」
「だから…嫌われるようなことを?」
この世界の深雪が抱きついてきた。
「あちらの世界の私と同様に、1年に1回逢えれば良いです。それでもダメですか?」
「達也はどう思うんだ?」
「深雪の意志を尊重します。だから…フィルターを通さず、妹を見て下さい」
「少し時間をくれ」
僕はこの場の雰囲気に負けて、逃げるように転移した。
-------
「何しに来たんだ?」
何故か逃げた先はエリカの部屋だった。
「つらい現実から逃げてきた」
「つらい?私のつらさはどうしてくれるんだぁぁぁぁ!」
相当、僕に怒りを持っているようなエリカ。
「どうすればいい?」
「えっ…」
僕の質問に戸惑うエリカ。紅髪と同じで、こいつも感情の起伏が激しいのか?
「どうすれば、エリカが納得できるんだ?」
「いきなり、言われてもなぁ…えぇぇぇっと…私とつきあってください」
フェードアウトしていくエリカの声。最後の方が聞き取りにくい。
「え?つきまといがいいのか?」
「違うわ!つきあってよ!あっ…」
顔と耳が真っ赤になるエリカ。
「深雪にも言われた…だから、ここに逃げてきた」
「えっ?深雪にも言われたのか?何で逃げるんだ?」
「僕みたいな禄でもない者とつきあわない方がいい。深雪は達也がお似合いだし、エリカはもっと良い巡り合わせがあるよ。だから…僕は止めた方がいい…」
「止めない!今がその良い巡り合わせだと思うの」
僕の目を真っ直ぐに見つめるエリカ。
「僕は妹を殺したことがある。そんな禄でも無い男だ。僕は彼女を殺したことがある。どうしょうもない男だ。だから、止めておけ。エリカを殺したくない…」
またも逃走する為に転移をした。
---エリカ---
亘…アイツ、何を言った?妹を殺した?彼女を殺した?はぁ?なんで?考えるよりも行動が先な私は、アイツの家に向かっていた。呼び鈴を押すと、いつものメイドさんでは無く、雫が出て来た。えっ?何で?
「エリカ…あっ、違うわよ。亘と同棲じゃないよ」
訊いてもいないことを答え、取り乱す雫。
「亘は?」
「出掛けているけど…用件は?」
「なんで雫がいるんだ?」
「いやっ…ほのかもいるよ。うんうん、亘の妹さんに習い事をしているんだ」
何故か照れている雫。あっ、妹さん…
「ねぇ、妹さんに会わせてくれ…お願いだ…」
-------
亘の妹さんの部屋に通された。彼女へ亘に言われたことを訊いた。
「そうですか。お兄様はまだ気にしているのですね。確かに殺されました。でもこうして生き返らせてくれましたよ」
生き返らせた?
「あれはしょうが無いんです。敵味方に分かれた戦闘でのことです。王が生き残ったチームが勝ちでしたから。私は全然、気にしていません…そうか、まだ気にしているんだ…」
亘の妹が寂しそうな顔で呟くように言った。
「後、彼女を殺した件ですが、あれもしょうがないんです。瀕死の彼女を治す事が出来ずに死なせてしまったんですよ。色々な書物を調べて、色々な術を覚えたそうですが、治せなかった…それは、確かに未だに黒歴史って言ってます」
亘は苦労しているんだな。
「で、エリカさんを殺すかもしれないってことですよね。それは、見殺しにするかもしれないってことです。ガード対象を見捨てて、仲間は救えないってことですよ。作戦に参加する以上、自分の身は自分で護れないと、連れ回れないんです」
自分の身は自分で…そうだよな。今までに2度、助けられているし…もっと、強くなれば…きっと…
---シュウ---
逃走の果てに、真夜の部屋でしっぽりとしている。真夜は実年齢の割に、若い身体だと思う。ただ反応が老獪な点を除けば、楽しめるんだが。
「で、他家からクレームはあったかな?」
「一条家から、深雪の婚約の件を…一条家の跡取りも入れろと。選択肢に魔法師では無い者がいるのはダメだって。シュウ様の力を知らない愚か者の戯言ですよ。ふふふ」
「それって、深雪が四葉の者って前提だよな?闇雲姓にしたのだから、魔法師では無い家柄同士で問題無いはず。そうなるとカラクリが、四葉家から情報リークがなされた可能性があるな」
「たぶん…分家筋とか数字落ちの仕業でしょうね」
う~ん…
「無理ヤリ深雪が一条家に嫁いだら、深雪の怒りに触れて一条家は全滅したり?」
「それは有りですわ♪」
真夜は楽しそうだ。でも深雪は楽しくないよな。一条将輝を潰すか…
「達也が次期当主については?」
「あぁ、深雪が次期当主だと思っている者がほとんどでしたから、青天の霹靂のようです♪」
そうだろうな。真夜が僕の上で楽しそうに跳ねている。次の一手はどうするかな。
---真由美---
九校戦が間近だと言うのに、亘君と深雪さんが欠席だと言う。
「達也君、どういうこと?」
「ちょっと、色々有りまして、亘は家出中で、深雪はショックで寝込んでいます」
はぁ?家出されたショック?深雪さんは重症のようだな。
「亘君はどこにいるの?」
「四葉家の本邸にいるって、連絡がありました」
四葉家の本邸?彼は何かを暗躍しているのか?家出はカモフラージュ…
「いつ戻るの?」
「あさって出発ですから、今日には戻ると思います」
達也君は涼しい顔で、何も心配をしていないようだ。やはり、何かのカモフラージュなのかもしれない。
---シュウ---
真夜の処からキャッスルドランへ寄り、荷物を手にして、家に帰宅。
「どうだ、雫、ほのか」
「感覚的には…しっくりこないというか」
雫の返事に、ほのかが頷いた。
「そう思って、これを二人にプレゼントだ」
少し大きめなキャリングケースを二人に手渡した。
「中には打倒深雪仕様のCADのモックアップが入っている。重さ、バランス共に実機と同じにしてある」
二人共ケースを開けて、CADのモックアップを手にした。形状は達也の拳銃タイプのパクりである。
「名前が入っている♪」
とほのか。それぞれのモデル名は雫モデル、ほのかモデルとしてある。ただ問題は1つだけある…
「ディープスノウって何ですか?」
グリップ部分にブランドロゴが入っているのが問題だった。向こうの世界で売り出す為に創ったパーツを流用している為だ。
「ブランド名だ。代羽周太郎氏のブランドなんだけど…有名では無いから、気にしないで…」
「ディープスノウって…訳すると深雪になるんだけど…何でですか?」
ほのかが気づいた。
「う~ん…代羽周太郎氏の奥様の名前だったかな?隣家の深雪と同名だけど別人だよ」
「「ふ~ん…」」
疑いの目で僕を見る二人…
「代羽周太郎って、確か…四葉家の本家別院の当主ですよね?亘さんは知り合いなんですか?」
って、ほのか。光井って3の数字落ちかな?本家当主宛の機密扱い文書の内容が漏れているし。
「知り合いだよ。一応、隣家の二人の後見人な関係でね。で、彼の工房の汎用部品を少し分けてもらったんだよ…ははは」
誤魔化す僕。
「ふ~ん。で、使い方は?」
切り替えの早い雫。助かったぁ~。
「オーラをグリップ分に集中して、引き金を引くと発動だ。で、それは練習用だから、発動はしない。その代わり、集中させたオーラが発動に充分な量になると、照準が光る。あと、軽くオーラを注いで、引き金を引くとレーザーマーカーになる。的に当たるように、握りの感覚を覚えてくれ。実機は当日の朝までに、届ける」
「「はい♪」」
「アスナ、バイクのメンテを頼む」
「了解です!」
後は…隣の家か…隣の家の呼び鈴を押すと、深雪が勢い良くドアを開けた。
「もう逢いに来てくれないって…不安で…」
僕に抱きつき豪快に泣いている。この世界の深雪の甘え方は半端無いなぁ。苦手ではあるが、悪くは無い。
「なぁ、家に入っていいか?」
「はい♪」
漸く家に入れた。リビングには達也がいた。
「決めてくれましたか?」
「何を?」
いきなり訊かれても、なんのことやら?
「深雪のことですよ」
あぁ…そうだな…コイツ置いて行くと、暴走して、世界が滅亡する気もするし…
「連れて行く。達也とは年に数回逢えるようにする。それでどうかな?」
僕の背中に抱きつき、頬を擦り合わせて、喜びを表現している深雪。
「良いと思います。ふつつかな妹ですが、よろしくお願いします」
達也の頭を下げられた。
「但し、あくまでシュウの婚約者だ。亘のでは無い」
「その設定面倒ですよ~」
不満げな深雪の声。
「神代家には迷惑を掛けられない。代羽家か鬼門家だけど、本名の方がいいだろ?」
「それはそうですけど…」
頬を膨らませて怒った顔を表現している深雪。単に微笑ましいだけなんだが…
「で、達也が寿命を満了した時に、魂を同化吸収させる」
「ありがとうございます」
達也にお礼を言われた。問題は深雪の扱いだ。
「深雪の扱いが問題だ。既にいるから…」
「あの私は凄く恐いですぅ~」
確かにビビっているよな。まぁ、あっちは行動を共にしている期間が長いし、案件もこなしているしな。
「妻という立場はすぐには無理だ。彼女が納得できないとダメ。いいな?」
「シュウさん、あいつのお尻に敷かれているの?」
頷く僕。赤い液体に怯まない彼女のプレイスタイルは好き♪
「エリカはどうするんですか?」
「無理だな。現状では…」
危険な世界へは連れて行きたくない。
「現状ではですね」
含み笑いをしている達也。いや、絶対に…のはずだよ。うんうん…
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出発前日。学校は休み。機材の運び出しをする。
「克人、バスの点検を頼む」
「了解だ、亘」
「服部、ルートの確認を頼む」
「あぁ、亘。わかった」
「ふふふ、亘君が責任者みたいねぇ♪」
真由美が抱きついて来た。胸の感触は嫌いでは無いが、エム体質なのがちょっと…
「ゼノヴィア、バスの駆動系をチャックしてくれ」
「はぁ~いよ~!」
「幹比古、悪い…バスの結界を確認してくれるか?」
「了解!」
「で、深雪さんは調子はどうなの?」
僕の頬に自分の頬をスリスリしている真由美。
「大丈夫です。明日、バスに乗せます。あぁ、生徒会長、宿泊施設の部屋割りは?」
「一人部屋と二人部屋になるわ。亘君は子守りをお願いね」
子守り?
「誰の子供?真由美の?」
「違うわよ~!あんたの彼女よ!」
急に怒りを纏った声の真由美。あぁ、深雪かぁ…まぁ、夜中に暴発すると危険だな。
「真由美は一人部屋?」
「摩利と同室よ」
「そうなると、僕のメンテ部屋をお願いします。深雪とはライバル関係ですから、手の内は秘密にしたいので」
「メンテ部門は一人部屋を用意している。亘君の部屋も用意してあるわ。但し、ベッド無しよ!」
それは、寝る時に、深雪と一緒に居ろってことですね…
「あんなに、甘えん坊だとは思わなかったわよ!異常なレベルと思わない?」
「思います。1日逢わないだけで、学校休むって…異常ですよね」
「大会期間中は、夜這い禁止だからね!用の有る時は、明るいうちに、呼び出すわよ♪」
それは昼這いってことですか…なんか、大変な期間になりそう…
「雫さん、ほのかさんはどう?深雪さんに勝てそう?」
「決勝まで行ければね。今開発中なのは対深雪戦の為だけのヤツだから、他の相手には効果無いし」
「汎用にならないの?」
「今から設計変更は無理ですね」
「まぁ、楽しみにしているわ♪」
本当に楽しそうな真由美であった。