---シュウ---
九校戦に向けて出発する朝。合宿所状態の僕の家で、雫とほのかが荷物を玄関で運び出している。昨夜渡したキャリングバックは大切に扱っている。ゼノヴィアとアスナはバイクに跨がり、大きなバックパックを背負っている。アーシアを含めて3名分の荷物だそうだ。ほとんど着替えらしいけど。
僕も着替えとお菓子が殆どだ。糖分は頭脳労働に不可欠だし。で、僕、アーシア、達也、深雪、雫、ほのかで学校へと向かう。
学校にはバスやトラックやらが既に出発の準備をしていた。バスのトランクへ荷物を入れていく。雫とほのかはキャリングバッグを手荷物として持ち込む。精密機械だからね、
そのバックは大きめで目立った。群がるヤジ馬。真由美やあずさも混じっている。
「それが秘密兵器?」
真由美が訊いた。
「いえ、練習機です。実機は当日の朝までに仕上げてくれるそうです」
雫が応対した。
「どんなのですか?」
CADヲタクのあずさが興味津々である。
「ごめんなさい。今はお見せできません。練習機と言えども、精密機械ですから」
「う~ん、気になるなぁ…」
って、深雪。
「アーシアはバスに乗ってくれ。あと、幹比古。結界を頼むぞ」
「はぁ~い♪」
「了解」
「達也、服部、克人も頼む」
人員配置表を見ながら、指示を出していく。
「ゼノヴィアは前、アスナは後ろを頼む」
頷いた二人はバイクを始動させた。
「克人、服部、摩利、達也、無線を頼むよ。指示を出すから」
「亘はどうやって行くんだ?」
克人に訊かれた。僕は指で上を指す。
「空か…飛行ユニットか?」
「企業秘密だよ。ガードのプロを信じてくれ、克人」
「あぁ、まかせたぞ」
そして、一高の参加者と機材を載せた集団は移動を始めた。
----真由美----
移動は順調である。高速道路に入ったので、安全性は高まるかな。何事も無く着くと良いな。あれ?十文字君の顔が険しい。達也君、はんぞー君、摩利もだ。
「どうしたの?」
「亘から連絡があり、バスに細工有りって。今、亘が上空から分析してくれています」
って、達也君。上空から?飛行デバイス?
『運転手はチェックしたか?まずいぞ…運転席付近に反応がある。あと、床下…駆動系かな?アスナ!ユイを車体の下へ送り出せ』
『了解です!』
「ユイって?」
「アスナさんの専属妖精です」
アーシアさんが答えてくれた。そのアーシアさんは運転席に近寄る。で、何かの術を発動した。
『団長!まずいです。こいつ、リビングデッドでした。今灰化しました』
えっ?運転手がリビングデッドですって?
『アーシア、バスの運転を頼む。ユイが外したら、制動を掛けて止めてくれ』
『団長、了解です』
アーシアさんが、運転席に座り、椅子を調整している。
『はずします。カウント3・2・1・ゲット!』
バスはゆっくりとブレーキを掛け止まった。
『安心するな!ゼノヴィア、反対車線1キロにタンクローリー。運転手は浄化した。でも止まらない。アスナ後方1キロにタンクローリー。運転手は浄化したが、こいつも止まらない。火の海でサンドかぁ…ゼノヴィア、車線を越えたら、上空へ撃ち出せ!』
『団長、了解!』
『後方は僕がどうにかする。持ち場を離れるから、バス内の指示を達也頼む』
『亘、了解だ』
『アスナです。ユイちゃんによると、術での駆動では無く、魔物が移動させている模様です』
無線から信じられない報告が聞こえて来た。魔物が車両を移動させている?
『相手は召還師か…そうなると、術師は近くにいないな』
反対車線から大型のタンクローリーが飛び出して来た。ゼノヴィアさんは慌てずに、飛ぶ斬撃でタンクローリーを上空へと撃ちだした。上空で爆発する車両。後方でも爆発音が響いた。亘君が処理したようだ。
『ゼノヴィア、バスの運転を頼む。アーシアはバイクで警戒してくれ』
『『了解!』』
そして、亘君達の警護により、無事に宿泊施設に到着した。バスから降りると、亘君が空から舞い降りてきた。あれ?飛行デバイスを背負っていない?どうして?
「克人…後、頼めるか?疲れた…久しぶりの長距離飛行だったから」
「あぁ、任せろ!達也、亘を部屋に連れて行ってくれ」
「わかりました」
達也君の肩を借り、部屋へと向かう亘君。見るからに、ヘロヘロな状態だ。
---シュウ---
何か柔らかい物が僕の身体をマッサージしてくれている。極楽、極楽だ。生暖かいし。眠気を誘い、うたた寝状態だ。えっ?深雪のオーラを感じる。それも近くにだ。ゆっくりと目を開けると、全裸の僕と全裸の深雪が交わっていた。
「なんで?一人で寝ていたはず…」
「私と相部屋ですよ♪」
「相部屋だと、こういうサービスがあるのか?」
「シュウさんだけですよ♪」
深雪の身体はノーマルプレイにおいて、気持ち良い感触だ。でも…
「体力使うなよ、深雪」
「大丈夫ですよ。使うのは性欲だけですから♪」
ダメだ…暴走状態の深雪に何を言っても…これまでの学習で学んだことである。
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窓から夕日すら入らなくなった頃、内線電話で起こされた。
「夕食会ですよ、亘君♪」
真由美の声だ。
「眠いよ~」
「美味しそうなケーキ有るけど…要らないのかぁ」
「要ります!」
隣で寝ている深雪を起こして、一緒にシャワーを浴びて、制服に着替えて、レセプション会場へと向かった。
会場に入ると、雫達が迎えに来てくれて、一高メンバーの集まるテーブルに連れて行ってくれた。席に座ると、何故か、エリカがケーキを盛った皿を持って来て、美月がブラックコーヒーを持って来てくれた。
「なんで、エリカと美月が?」
「バイトだよ。選手の食事時間専門のウェイトレスのね。宿泊費と食事代にバイト料も入るおいしいバイトだよ♪」
「ふ~ん…エリカの身体に生クリームを塗って、舐めたい…」
僕の言葉で顔と耳が真っ赤になるエリカ…
「おい、セクハラか?」
「好みを言っただけだ。気にするな…眠いよ~」
隣に座った雫の肩を枕に、しばし睡眠♪
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「亘…助けて!」
テーブルに頭をもたげていた僕は、深雪の声で目覚めた。彼女の前に立ち、彼女へ迫る輩に、死を感じさせるオーラを放つ。青ざめていくナンパ野郎。
「深雪に何をするんだ?」
「僕の婚約者だ。君は関係無いだろ?」
はぁ?
「お前、鬼門の名を語るのか?」
不届き者を強制転移させた。
「ねぇ、将輝君をどこに転移させたの?」
真由美に訊かれた。
「途中で見かけた肥だめ…」
「はぁい?」
「クソヤロ~って思ったら、浮かんだのが肥だめ…」
「ありがとう…」
僕の背中に抱きついて深雪。
「将輝って?」
真由美に訊いた。
「一条家の次期当主候補よ」
「深雪の婚約者で無いだろ?」
「親が決めた婚約者って言っていたわよ」
「後見人として、聞いていないけど…」
スマホで真夜に確認するが、真夜も知らない話らしい。
「真夜も知らないって」
「真夜?えぇぇぇ~!四葉家当主を名前呼び?亘君、どんだけの立場なのよ?」
達也、深雪以外の知り合い達が驚いている。何か、やらかしたか?
「立場?深雪と達也の後見人だけど…それが?」
「後見人って、そんなにエライ立場なの?ねぇ、十文字君…」
「亘の立場か?う~ん…」
克人が困ったような表情をしている。
「まぁ、それなりの立場かな?一応、当主相当だし♪」
って、ことでお茶を濁す。
「神代家の当主相当って、そんなにエライのかぁ~」
「で、舞台にいる叔父さんはマジシャン?」
気配を消して立っている老人。達也は気づいているようだ。
「あれは、マジシャンでは無いですよ。九島烈老師です」
達也が教えてくれた。
「ほぉ~、私を見える者がいるのか」
皆に見える状態になった老人。
「最初からここにおったのだが…見所のある者が2名いるのか…」
挑発的だな。う~ん…深雪が僕の腕を、いつもの様に胸の谷間でホールドした。
「撃っちゃダメですよ。あの方はエライんですから」
耳元で囁いて、耳タブをハムハムしてきた。
「撃つ?亘君、ダメだって!」
真由美が僕と老人の間に立った。腕をホールドされていて撃てませんけど…
そして、大会のスケジュールが発表された。アレが必要になるのは2日目か…あさっての朝までに用意か…
「間に合いますか?」
雫が心配そうに訊いてきた。
「間に合わせる。だから、お前達も間に合わせろよ♪」
雫とほのかの頭を撫でてあげる。
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大会1日目、事故が起きた。バトル・ボードの決勝で、摩利が後続の選手の直撃を喰らい、コース外に叩き付けられたそうだ。腕を折るなどの重症らしい。アーシアと僕とで、摩利の病室に向かった。
僕の顔を見て、怯える摩利。
「はぁ?襲わないよ。怪我を治しに来ただけだ」
骨と神経の修復は僕が担当し、筋肉皮膚の修復をアーシアにまかせた。10分ほどで、摩利は健康体に戻った。
「凄い…全治2週間を、たった10分で?」
真由美が驚いている。傷が残らないように気を遣ったからで、いつもなら一瞬だし。
「で、原因は?」
「達也君達が、調べているわ」
現場にアスナと向かった。克人も付いてきた。残留オーラから、何があったかを推察していく。
「ユイ、召還術の形跡は?」
「無いです」
「そうなると、別の場所で召還して、ここに来させたのか…タンクローリーの時と一緒だな」
「有効距離はどのくらいだ?」
克人に訊かれた。
「この世界ならどこでもだ。移動時間とか…あっ!」
『フィン、半径50キロ圏内で、召還術の発動の痕跡はあるか?』
キャッスルドランにいる副官に念話で連絡をした。
『無い…だけど気になるトラックがいる。扉の開閉だけで、何も積み卸しをしていないんだ』
「克人、このナンバーのトラックを追跡してくれ」
フィンに知らされたナンバーを克人に伝言した。
「このトラックは?」
「召還された者を輸送していた可能性が大だ」
「わかった」
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大会2日目、仕上げたCADを、大会運営に不正事項が無いかの検査をしてもらう。二人のCADを検査してもらう。その時、異常を知らせるシグナルが光った。
「おい、お前、今何を入れた?」
検査員を問い詰める僕
「なんのことだ?」
惚ける検査員。
「ウィルスチェッカーを内臓しているんだ」
「何?」
逃げようとしたので、『緊縛』を発動して捕らえた。
「どうしたのだ?」
この前の老人が近寄って来た。
「僕の仕上げたCADにウィルスを入れたんだよ、コイツ…徹夜作業だったのに…」
僕のCADを手にして、精査する老人。
「確かに入っているなぁ。これはどういうことだ?おい、こいつを連れて行け!」
老人の指示でウィルス混入野郎が引っ立てられていく。
「しかし、見かけたことの無い仕組みだが、これは?」
「テスト段階です。結果が出たら公表します」
「そうか…君の名前は?」
「一高の神代亘です」
「まさか…君が神代家の当主相当か?」
驚愕な表情をしている老人。
「まぁ、そんな感じです。あぁ、ウィルス除去しないと…すみません、時間との勝負なんで、失礼します」
その場を後にして、一高のエリアに入って、『強奪』で不純物を抜いた。不純物はパッキングして、ドランへ転移させ、分析をしてもらう。ワクチンを作る為だ。
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急いで、アイス・ピラーズ・ブレイクの会場へ向かった。雫達が近寄って来た。
「同点決勝だよ。私もほのかも深雪と戦える♪」
二人に実機を手渡した。
「亘、ありがとう。試合の後…ちゃんとお礼をするから…」
二人は、実機を持って、控え室へと向かっていく。
「検品場でトラブル?」
真由美が近寄って来た。
「だ。で、遅くなった。間に合って良かったよ」
「そうだね」
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深雪、ほのか、雫が同点で1位らしい。なので、1位、2位、3位決定戦だという。
第一試合、深雪VSほのか。自陣に設置されている指揮所のような櫓の上に、深雪、ほのかが、巫女衣装で現れた。
試合開始前からオーラを溜めているほのか。試合開始直後、ほのかがミラーリングフィルターを自陣を囲むように展開した。そこに、氷の微細粒を撃ちだして来た深雪。ダイヤモンドダストの氷版だな。それは予想済みだ。勝ったな…ミラーリングフィルターに氷の粒が当たる度に、『ライトニングアロー』が深雪の氷柱を破壊していく。深雪はオウンゴールで敗退した。
ショックな顔の深雪、達也が近寄り、二人で作戦を練っているようだ。どう来るかな?作戦時間が長引く程、深雪が不利になるとも知らないで…ふふふ。
第二試合、深雪VS雫。雫は、深雪達の作戦タイム中も、オーラを右手の手の平に溜め込んでいた。そして、試合開始…ミラーリングフィルターを警戒する深雪は、速攻で冷気を雫の陣地へと流し込んで来た。冷気により、雫の最前列の氷柱は悲鳴を上げてひび割れていく。そして、完全に割れた処で、深雪の最後部目がけて『地獄の業火』を発動。冷気と熱気に挟まれた氷柱は、急激な温度変化に晒されて、破壊されていく。雫の陣地は火種から遠く、深雪の冷気で護られていた…深雪はまたもオウンゴールで敗退。
第三試合、雫VSほのか。通常のCADに変えて、対戦した二人だけど。魔力の量で勝る雫がほのかを下さした。
これで、僕の役目は終わった…さて、徹夜明けだし、寝ようっと…