※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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九校戦 Part4

---深雪---

 

ゼノヴィアさんの姿は見えない。気配が読めない。なのに、彼女の得点は確実に増えている。動こうにも、飛ぶ斬撃が四方八方から撃ち込まれてきている。スティックで打つ瞬間、斬撃が掠め衣装が裂け、動きが取れない。どうすれば良いんだろう?

 

お兄様を見ると、シュウさんと対峙しているようだ。地上では何が起きているんだ?

 

意識を集中して、斬撃を交わしながら、ホログラムを打つ。しかし、身体へ斬撃が掠めバランスが崩れる。う~ん、得点が伸びない…差が開いていく。焦ると、掠めるし…

 

前半戦が終わり、地上へと戻った。

 

「お兄様…」

 

「だいぶ、切り刻まれたな…」

 

衣装はボロボロだ。下着としてレオタードを着ているので、全裸になることは無いと思うけど…

 

「どうすれば…」

 

「棄権しよう…深雪、無理だ。彼らはどんな相手でも全力で狩るんだ。たとえ、深雪でも…彼が妹さんを殺したのもその一環なんだろう…」

 

それは、私を殺す気で来ているってこと?シュウさん達を見ると、私とお兄様を狩る目付きで見つめていた。どこまでも冷淡な冷たい目付きだ。

 

「出来る処まで、やらせてください。お願いします」

 

悩み込んだお兄様…ふと顔を上げて、私の顔を見つめた。

 

「その意志は伝える。いいか、引き際も大事だ。引くって勇気を持って欲しいんだよ、彼は…」

 

引く勇気…お兄様は私の肩をポンポンと叩き、審判席へと向かった。シュウさんが呼ばれて、協議しているようだ。そして…後半戦を私が棄権して、ゼノヴィアさんが勝利した。

 

 

 

---シュウ---

 

「これで良かったのか?」

 

ゼノヴィアに訊かれた。

 

「戦場で死なれるよりいいよ、もう仲間の死体は見たくない…」

 

「そうか…」

 

僕とゼノヴィアはキャッスルドランへと転移した。ゼノヴィアの専用ユニットを整備に出し、ゼノヴィアに休養させる。帰りの警備の仕事があるから。

 

僕は宿泊施設に戻った。

 

部屋には深雪とエリカ…そして真由美がいた。僕が転移すると真由美が気づいて、近寄って来た。

 

「どうして?なんで?彼女にあんなことをしたの?」

 

スルーした。

 

「ねぇ、亘君!」

 

「言っただろ?僕は粛正対象者だ。いつ、襲われるかわからない。嫌なら近寄るな」

 

「その言い方は無いでしょ?ねぇ!」

 

「僕は沢山の仲間の死体を見て来た。もう見たく無いんだよ。だから、あの位対処できないヤツはいらない」

 

「…」

 

真由美は言い返して来なかった。

 

「助けたくても、助けられないつらさを知っているか?」

 

「もう、いいです!」

 

深雪が声を上げた。

 

「もっと、強くなります。生きることに執着を持ちます。だから、見捨てないでください。お願いします」

 

僕に頭を下げて来た深雪。

 

「深雪さん、あなたが謝ることは無いんじゃ…」

 

真由美が深雪の肩を持つ。ここまで、エリカは静観していたが、

 

「だから、助けてくれたのか?」

 

エリカが口を開いた。

 

「もう見たく無いんだ。なのに…エリカの死体の映像がヴィジョンで見えた」

 

血も涙も無い筈の僕の目から、涙が零れていく。

 

「ごめん…」

 

エリカは抱きついて来た。

 

「千葉さん…」

 

真由美にはエリカに何が遭ったかを知らせていない。深雪はエリカに直接訊いたらしいけど。

 

「エリカは悪くない。そうだろ!深雪!」

 

深雪ははっとした。僕の怒りの原因に気づいたようだ。

 

「エリカさん…ごめんなさい…」

 

エリカに縋って謝る深雪。

 

「舞い上がっていました。すみません…」

 

「お前…私の為に?」

 

僕の顔を見つめるエリカ。

 

「僕にも限界はある。それだけだ。深雪には判るだろ?達也の傍で育ったんだし」

 

「はい…」

 

愛情を封印されても、怒りは封印できないのだ。達也もそうだった。

 

「彼女がお前を絞ったのは、僕が暴走しない為にだ。お前が憎いからでは無い。はき違えるなよ、深雪」

 

「はい…」

 

「次に会ったら、彼女へ礼を言っておけ」

 

「わかりました」

 

「彼女って?」

 

真由美に訊かれた。

 

「僕の為なら何でもできる女だ」

 

彼女だけだ。ドエスプレイの相手を進んでしてくれるのは♪

 

「誰?」

 

「真由美は知らないでいい。これは家族の問題だ」

 

「家族?」

 

「真由美と僕は他人だよ。エリカと深雪は家族だけど」

 

「だから、家族になりたい…」

 

「あのな…」

 

「損はさせないから…」

 

--------

 

翌朝…昨日のホールド状態のまま、上には掛け布団として真由美が乗っている。何か損した気分なのだが…

 

午前中、作戦会議室で反省会。睡眠不足の為、へたっている。真由美は元気だな…なんか精力をドレインされた気分だ。まぁ、これが損した気分の原因である。いつもよりもスタミナがなく、3人相手ですぐにへばった僕。う~ん…

 

「亘君、君の反省点は何かな?」

 

真由美が僕を指名してきた。

 

「女性は恐い…」

 

「はぁ?」

 

「亘…何かされたのか?」

 

克人に訊かれた。

 

「はぁ?克人も手を貸しただろ?」

 

「あぁ、あの件か…お前にとっては青天の霹靂か?まぁ、責任を取ったと思え」

 

克人のくせに…僕の女性問題を斬り捨てるなよ…

 

「で、昨日の作戦は何だったの?」

 

いつもと変わらぬ表情の真由美。

 

「ホログラム投影エリアの周囲を9割ほどの力で周回させて、スティックの打撃を飛ばしただけです」

 

「彼女の周回時のスピードは?」

 

服部に訊かれた。

 

「マッハ12くらい」

 

絶句する皆様。

 

「マッハ10がマックスだったけど、手直しをしてマッハ15くらいまで出る様にしたんだ。でも、ゼノヴィアがマッハ13くらいが限界だったから…」

 

「おい、そんな速度が出るのか?」

 

克人に訊かれた。

 

「あぁ、アレは出るタイプ。非売品だよ。真由美には説明したけど、飛行ユニットでは無いから」

 

「飛行ユニットでは無い?」

 

「耐Gの鍛錬用だよ。どんな重力化でも剣術が、使えるようにする鍛錬マシンだ。痰壺男君の相棒のシンクロ君の重力魔法下でも屠れるはずだよ」

 

「そんな鍛錬をしているのか…」

 

顔からの血の気が引いている克人。

 

「していないのか?実戦において、戦えるフィールド条件は選べない場合が、ほとんどだ。特に奇襲チームはね」

 

ゼノヴィアは奇襲チームだし。

 

「そうだな…実戦だと…」

 

「実戦を想定してなのか?」

 

幹比古に訊かれた。

 

「平和なうちに出来る事は準備しておくんだ。戦争はいつ起きるか判らないから。いいか、幹比古、戦争が始まってから鍛錬するのは遅いんだぞ。そんなことする時間は無いから」

 

「実戦経験が多いのか?」

 

「さぁねぇ…それは秘密だ♪で、いつまでも、そこに潜んでいるつもりだ?爺よ!」

 

相手の前に転移して、裏拳を叩き込む。

 

「うっ!」

 

うめき声を上げて、吹き飛ぶ老人。

 

「九島閣下!」

 

克人が声を上げた。

 

「まさか…気づいていたとは…」

 

「丸わかりだよ。人間には無理だよ。心臓の鼓動音は消せないからな」

 

「なるほど…人札らしい理由だな」

 

「狩りに来たのか?」

 

死を感じるオーラを部屋に放出させる。

 

「うん?何をした?」

 

異変に気づいた老人。

 

「何もしていない。力の封印を少し緩めただけだ」

 

「そうか…封印をして、あの強さだったのか…」

 

「全力なんか出したら、この星は消える…それでいいのか?」

 

「良い訳ないだろ?う~ん、4,7,10と同様に9もそちら側になる。それでどうだ?」

 

「身の安全も保証してくれるのか?」

 

「あぁ…嘘は言わん。どうかな?悪い条件では無いだろ?」

 

「そうだ。お前程度、いつでも消せるし。それで手を打とう」

 

老人に右手を差し出すと、握手をしてきた。交渉は成立だ。老人が息苦しそうに去って行く。そうだ、オーラを霧散させないと。死を感じるオーラを霧散させた。

 

「九島閣下を恫喝って有り得ないだろ?」

 

克人が最初に口を開いた。

 

「恫喝ってことは無いさ。悪戯が過ぎたので、お灸程度だ」

 

「亘らしいな」

 

克人と達也以外は腰を抜かしているようだ。

 

「封印して、アレは異常でしょ?」

 

って、達也。

 

「そうか?相手が弱かっただけだと思うけど」

 

「恐え~…俺はあんなヤツに敵対行動していたのか…」

 

真っ青な顔の服部。

 

「亘君…私にも責任取りなさいよ~」

 

って、真由美。

 

「はぁ?腰が抜けた責任?有り得ないな。鍛錬不足だ。責任取って、鍛えてやろうか?」

 

「遠慮します…」

 

------

 

午後から、テントやら機材の片付けをして、夜には閉会式を兼ねたディナーパーティーらしい。ケーキが楽しみな僕。

 

パーティーには難題が付き物だ。ドレスコードという強敵が僕を阻む。

 

「シュウさん…正装ですよ」

 

って、深雪。そうか、だから、みんな衣服の量が多かったのか…

 

「今回も聖者の衣装ですか?」

 

いや、アレは目立ち過ぎた。もっと地味な物…司祭の服かな…いや、ここは、

 

「聖戦士の…」

 

「ダメですよ」

 

深雪に速効で却下された。

 

「う~ん、ドレスなんか持って来ていないよ~」

 

って、エリカ。

 

「じゃ、深雪。エリカと衣装部屋に行って来るね」

 

「はぁい?」

 

エリカと二人で、お城の衣装部屋に転移した。

 

------

 

エリカにドレスを選び、ガブ達に着付けて貰う。僕は次に自分の衣装を選ぶ。

 

「これ、どうですか?」

 

深雪が天使の衣を持って来た。

 

「君が選んだのであれば、間違いないな」

 

深雪に着付けてもらった。真っ白な衣。触れた邪悪な者は浄化させる聖なる衣だ。上下黒の司祭服を纏い、その上から衣を羽織った。

 

「エリカ、似合うよ♪」

 

ワインレッドのドレスを着たエリカ。顔と耳も紅く染めている。

 

「そうか?う~ん、あまり、こういうのは着ないから…」

 

二人で、宿泊施設の部屋へと転移した。

 

--------

 

「ずっ…ずるい…エリカ…」

 

目を見開いて深雪が抗議してきた。

 

「しょうが無いだろ?エリカはドレスが無いんだから」

 

「そうだけど…凄い優雅だよ…」

 

「深雪も似合っているけど…」

 

頬を膨らませて、怒っているアピールをしている深雪。う~ん…手を翳して、高級シルク仕立てに変えてあげた。

 

「それでどうだ?」

 

クリーミーホワイトのドレス。

 

「あ…ありがとう…シュウさん♪」

 

二人を両手に添えて、会場へと向かう。

 

-------

 

会場に入ると、賑やかだったホールが静寂に包まれた。

 

「綺麗…」

 

雫が呟いた。ホールにいた男女が、深雪とエリカを見て、固まっている。こいつらはメドゥーサか?そんな感じである。

 

「両手に花って…こんな感じなのね」

 

って、真由美。

 

「深雪さん…彼はどなた?」

 

「シュウさんですけど…」

 

うん?僕を僕として認識できていないようだ。あれ?

 

「えっ?気配がまるで違う…」

 

気配?はて?う~ん…あっ!天使の衣…聖属性が際立っているのか。

 

「シュウ様」

 

達也と克人が跪いた。

 

「神として崇めた者には、頭上の輪っかと翼が見えるようですよ」

 

って、達也。二人には見えるのかな?あぁ、天使の衣だからな。神格性も上がるのかな?。

 

「さぁ、こちらへどうぞ」

 

達也と克人の案内で、深雪とエリカを伴い、テーブルへと向かい、椅子に着席した。その瞬間、喧噪が戻って来たようだ。人々のざわめきが聞こえる。

 

「あの…どなた様ですか?」

 

あの爺が近寄って来た。

 

「シュウ・ヨハネ・鬼門様です」

 

達也が僕を紹介した。まるで、僕を護るナイトのような振る舞いだ。

 

「あなた様が…それで奥様を伴って…九島烈と申します。以後、お見知り置きをお願いします」

 

って、丁重な挨拶を頂いた。

 

「亘…お前…出る処に出ると、すごいんだな」

 

って、エリカ。

 

「そうでも無いよ、エリカ」

 

「そ、そっか…」

 

僕もエリカも場違いな場所にいる気分だ。で、パーティーなのだが、ケーキが出て来ない。ダンスタイムって物が始まるし。

 

「達也…ケーキは?」

 

「ダンスパーティーですよ。出ません」

 

「えぇぇぇ~…帰っていい?」

 

「ダメですよ」

 

凹む。着慣れない衣装な上、ケーキ無しとは…

 

「申し訳ありません。主様が同席していますので、他の方とは、踊れません」

 

って、深雪はダンスの誘いを断っている。

 

「いいのか?」

 

「えぇ♪シュウさん以外の方と触れるのは嫌ですから」

 

ダンスなぁ…

 

「エリカ、深雪…踊ろうか?」

 

「「はい♪」」

 

二人をエスコートして、会場を後にして表へ出る。怪訝な顔の二人。

 

「今宵は良い月明かりだし」

 

まず、深雪と。彼女の手を取り、夜空へと飛び出した。翼を展開して、月明かりの下でワルツを踊る。翼は深雪、エリカ、達也、克人とチームメンバーにしか見えない。

 

「えっ?空で踊っているなんて…」

 

真由美が見上げて驚いている。深雪と踊り終わると、地上へと戻り、深雪を達也へエスコート。そして、僕はエリカの手を取り、夜空へと舞い上がった。

 

「夜空でダンスって…」

 

エリカが嬉しそうだ。

 

 

 

---真由美---

 

月明かりの下で千葉さんが楽しそうに踊っている。それを見上げて見ている私と十文字君。

 

「十文字君…彼は一体?」

 

「シュウ・ヨハネ・鬼門様だ」

 

「彼が…って、えっ?亘君?」

 

そうだ。さっきもそんなことを言われたな。

 

「まぁ、そういう名でも有るな」

 

まるで亘君とは別人の彼。纏っている気品が違うというか…

 

「十文字君は知っていたの?彼の本当の正体を」

 

「あぁ…知っている。彼が教えてくれた。信用に値する人物で、彼になら命を預けられる」

 

「どうして、そこまで…」

 

信用しすぎている。なんでだ?十文字君ほどの人物がここまで言うって…

 

「理由か?言えない。言わない約束だ。彼は俺を信じて、真実を教えてくれた。だから、俺は彼の秘密を明かさない」

 

 

 

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