---シュウ---
ダンスパーティーが終わり、平服になって、部屋でまったりしていると、深雪が声を上げた。
「あれ?何で?」
深雪が送られてきたメールを見せてくれた。
『この度、一条将輝と四葉家次期当主の司波深雪の二人が婚約したことを、ここにお知らせします。一条家当主一条剛毅』
はて?婚姻をした女性と婚約とは?真夜に確認したが、四葉家に司波深雪という名の者はいないと、抗議した上、次期当主は司波達也だとミスを訂正したらしいのだが、ガーディアンだった達也が次期当主になることを認め無いと返事が来て、揉めているらしい。
「どうするかな」
「痰壺に落とした復讐では無いんですか?」
あぁ、それはあるかな。でも、この世界の四葉家には司波深雪という名の女性はいない。ここにいる深雪は、戸籍が既に深雪・ヨハネ・鬼門であるし。鬼門家にケンカ売るのかな?
九島の爺に連絡を取った。すると、爺から一条家にクレームを入れてくれるそうだ。
しばらくすると、魔法協会から深雪のスマホへメールが着信した。
『先程の一条家のメールは誤配信です。司波深雪様は、闇雲深雪様となり、鬼門家名誉当主と婚姻されていることを確認いたしました。関係者皆様にはご迷惑をお掛けしました』
って、ある。
「九島様の仕事は早いですね」
って、深雪。そこに、荒々しくドアがノックされ、次の瞬間ドアが破壊された。僕は咄嗟にエリカと深雪をガード出来る位置に置いた。でも…
「おい、化け物!深雪さんを返して貰うぞ!」
痰壺男が、多数の手下を連れて、乱入してきた。うん?重力系…シンクロ君か。僕は二人と共に転移し、ドランの主砲で部屋を撃ち抜いた。
「大丈夫か?」
二人に声を掛けた。深雪はショック状態で、エリカは…。くそっ!
「サーシャ、深雪を頼む。アーシアを呼び戻して、エリカを頼む」
城の中が慌ただしくなる。
ふ~ん、攻撃ねぇ♪
---真由美---
亘君達の部屋が爆発したそうだ。皆で彼の部屋に向かうと、武装集団と出くわした。十文字君と達也君が応戦していく。あれは、一条家のコマンダーか?まさか、深雪さんの強奪?
いきなり、重力系の術が襲い掛かってきた。一条君の片腕の吉祥寺君が関わっているようだ。
達也君が何かすると、彼の術が無効化された。でも一条家の者達は立ち去った後だった。達也君と十文字君は部屋の前で立ち尽くしている。部屋は見るも無惨な状態になりはてていた。
「部屋に遺体は無いようだから、無事かな?」
達也君が少し不安げで有る。ドアには破壊された痕跡がある。奇襲されたようだ。
「どうする?一条家が相手とは…厄介だ」
「それよりも魔法師同士の抗争は、まずいでしょう」
と、達也君。確かに反魔法師団体の恰好のエサになる。なのに、なんで?
---一条剛毅---
将輝が惚れた女の為に暴走しているようだ。
「どういうことかな?私の顔を潰した上、魔法師家系同士の抗争にすると言うのは」
九島烈から抗議の連絡が入った。先に婚約した方が勝ちと思ったのだが、既に婚姻までしていたとは、誤算だった。まして、四葉家の者としてでは無く、闇雲家の者として婚姻していたとは、相手の方が上手である。
「抗争にする気はないです。それに四葉家の者では無いのですから、魔法師家系同士の抗争には当たりません」
「その場合、闇雲家と鬼門家、神代家を敵にすると言うことだが、それでいいのか?」
「かまいません」
あまり知らない家柄相手なら、負けは無い。一条家に負けは無い。
「彼女の旦那様を甘く見ているのでは?」
「将輝の話では、人間では無く化け物らしいですから、その専門家達に退治を依頼しました」
「何てことを…いいか、これは1だけの暴走ってことにする」
通信はキレた。どういう意味だ?
---シュウ---
神代家から連絡があった。一条家が陰陽師、退魔師、モンスターハンター達に、シュウ・ヨハネ・鬼門の退治を依頼したそうだった。完全に化け物扱いだ。まぁいいけど。化け物だし。でも深雪達は巻き込みたくは無い。どうするかな。
神代家から続報が届いた。内外の陰陽師、退魔師は神代家サイドについたそうだ。教会、エクソシスト、聖戦士達はヨハネ家に付くらしい。宗教戦争になるのか?
鬼門家は…人間相手に何もしないし、何もされないから、気にしないで良いそうだ。
「シュウさん…」
深雪が意識を取り戻した。
「大丈夫か?」
「うん…エリカは?」
「深雪よりも少し容体が悪い」
「エリカの傍いいなくていいの?」
「いいんだよ。アーシアが今治療をしてくれている。僕は反撃の為、エネルギーを充填中だから」
深雪の頭を撫でてあげる。
「もう少し寝ていていいから」
「うん」
深雪の声は弱弱しい。無防備に重力系は危険だろうが…怒りが沸々とわき上がる。
「ダメ…闇に染まってきているよ」
「いいんだよ。僕本来の戦闘の為の姿に戻るから」
「…」
僕を心配してくれている途中で、深雪の意識は飛んだ。まだ、ショック状態のようだな。さて、城を出るか。みんなにダメージが入りそうだし。僕の危険なオーラが漏れ初めていた。
----真由美---
一条君の在籍している三高の生徒達が、一高の宿泊先に攻めてきた。応戦する達也君、十文字君。
「どうする?このままだと死傷者が出るぞ!」
防戦に専念する二人。手を出したら負けって感じであるけど。窓という窓に魔法が叩き込まれていく。
「窓から離れて!身を守ることを優先して!」
首謀者の二人はいない。一条家のコマンダーと共に、彼らを探しているのか?
「お待たせ♪」
亘君の声がした。三高の生徒達の動きが止まった。
「死にたいヤツは前に出ろ」
誰も前に出ない変わりに、痙攣を起こし始めた。
「亘君!」
「一高の生徒は、僕に近寄るな!死ぬぞ!」
「亘、深雪とエリカは?」
達也君が訊いた。
「カーディナル・ジョージの重力術を奇襲で真面に喰らった。魔法に抵抗力のある深雪ですらショック状態だよ。エリカは…許さない。生きようと必死のヤツを…僕は理不尽な殺しをするやつを決して許さない。だから、僕に近づくな。近づくだけで、理不尽な死をあたえてしまう」
理不尽な死?まさか、千葉さんが…
「真由美、来るな!」
亘君に駆け寄ろうとした時、彼に制止された。
「三高のクソ共…将輝の暴走に巻き込まれたことを恨め」
何かの術を発動したのか、目の前の三高の生徒達が一人残らず消えた。
「どうした?」
「クソは肥だめだよ♪」
彼は、そう言い残し消えた。
「彼を怒らしたな…バカなことを…」
十文字君が呟いた。
---シュウ---
一条家の本邸に乗り込んだ。ここではオーラだけでは無く、ドレインもしていく。エネルギーが足りないし。
「お前が一条剛毅か?」
偉そうにしているヤツに声を掛けた。
「貴様は誰だ?」
「僕か?シュウ・ヨハネ・鬼門だ。僕の妻に横恋慕して、婚約発表だと?有り得ない。その妻は、お前の息子の手下の攻撃で重症だよ。どういうことだ?」
「将輝がしたのか…」
当主だけあって、オーラに屈しない。さすがだよ。でも、どこまで耐えられるかな?
「そうだよ。妻に相手にされないから、死体にして手に入れる?有り得ないだろ?お前の教育方針か?」
「そんな…教育はしていない…」
「一緒にいた妻の友達は、瀕死の状態だよ。お前の息子の横恋慕の被害者だ」
「瀕死?一般人か?」
「数字付きの本家の娘だ。奇襲で重力系は無いだろ?」
「重力系…カーディナル・ジョージか?」
「そうだよ。クリムゾン・プリンスの片腕のな。殺す気で奇襲って、有り得なくないか?」
オーラのレベルを一段上げる。
ミシッ!
家の柱が悲鳴を上げ始めた。
「待て…謝る…いや、謝らせる…」
「なぁ、九校戦の宿舎にいる一高の生徒を襲うって、反則でないのか?一条家は」
「なんのことだ?」
こいつ、知らないのか?
「一条家のコマンダーを引き連れて、お前の息子が襲ったんだよ!」
バキッ!
何かが折れる音がした。
「おい、止めろ…なぁ…」
『強奪』を発動して若い娘を奪う。
「えっ?娘…おい、茜に手を出すな!」
娘は茜って言うのか…う~ん、まだ出来無そうだ…
「こいつ貰えるか?まぁ人質だ」
「やめてくれ…なぁ…」
「妻が死んだらコイツを嫁にするか。代わりに…」
僕のオーラで意識が飛んだ少女。
「謝る…だから…」
家は崩壊し始めた。家の中にいる住民を総て家の外に置き去りにした。あの少女も含めて。
---一条将輝---
オヤジからメールが届いた。相手に誠心誠意を持って謝罪しろとある。出来る訳無いだろ?その後、協力を依頼した勢力達から反旗のメールが次々に届いた。どういうことだ?
知り合いの戦士へ連絡を取ってみた。
「将輝…お前、何やっているんだ?敵にしちゃダメだ」
「どういうことだ?あの化け物は何者だ?」
「最強の陰陽師で退魔師、陰陽師、教会系はお前を人類の敵と見なしている」
「俺がか?アイツで無くて」
「そうだ!なんで、アンタッチャブルなヤツを敵にした?」
「アンタッチャブル?どういうことだ?」
「知らないのか?相手の素性を調べてケンカしろ!」
「どういうことだ?」
通信が突然キレた。
「みぃ~つけたぁ~♪」
アイツが目の前に現れた。
「なぁ、地獄を見たく無いか?」
笑顔なアイツ…ジョージが術を撃ち込むが、全く効かない。逆にジョージが潰された。アリンコを踏んづけたみたいに…部下達は皆倒れている。俺だけか?
「後はお前だけだよ、痰壺男君♪」
こいつ…
「醜態を晒しまくりだね♪」
「なんだと?」
「アニキ、バックアップはする」
「あぁ、無力化させてくれ」
アニキと呼ばれた男は銃を手にして、手錠を持っている。
「一条将輝、建造物破壊と侵入、殺人未遂、傷害、器物破損、窃盗、殺人教唆…まぁ、諸々の罪の容疑だ。逮捕する」
ふざけるな?一条家だぞ!警察権力になんか屈しない。CADを手にして、刑事に向けて発動するが…
「発動しないよ。マインドロストしない程度に、お前の魔力は総てドレイン済みだ」
ドレイン?吸収できるのか?CADを奪われ、俺の両手に手錠が掛けられた。
「輸送中に暴れないようにする?」
「手荒なマネはしないでくれよな」
俺は意識を刈り取られた。
---シュウ---
一条家本邸のあった場所で闇のオーラを総て発散させて、キャッスルドランへと転移した。まず聖堂に向かい、エリカを目覚めさせた。
「エリカ…ただいま」
「おかえり…亘」
「ごめん…護り切れなかった…」
「えっ?生きているけど…」
「人間を辞めさせたから…今エリカは転生ドラゴンだよ」
「…なんかよくわからんけど。もう少し寝るよ」
ガブに頼んでエリカをベッドへと運んでもらう。カーディナル・ジョージの加重攻撃でエリカの心臓は潰されてしまった。即死で苦しまなかったことは不幸中の幸いではある。僕の印が刻まれていたので、魂は死体に寄り添っていた。なので、彼女を連れ帰る為に僕の駒を入れて、甦らせた。巻き込んだことの責任は取る。こんな形でしか取れないけど。
深雪の元へ向かった。
「おかえりなさい…シュウさん…どうしたのですか?」
僕のやりきれない気持ちを察した深雪。
「エリカを護り切れなかった…また、ダメだった…」
「エリカさんが…何で、彼女が?」
「当たり所が悪かったんだ。心臓が潰された…」
「えっ…」
絶句した深雪。
「だから、生き返らせた。心臓の代わりに僕の恩恵を与えて…」
「うっ…いいなぁ…」
えっ?いいのか?
「私には恩恵は無いんですか?」
「恩恵?まぁ、そうのうち…」
「私の記憶を消して、お兄様と結婚させるのはダメですからね」
頬を膨らませて怒りをアピールする深雪。う~ん、ダメかぁ…
「私…邪魔ですか?」
「邪魔じゃないよ。傍にいて欲しい。甘え過ぎる深雪は苦手だけどね」
「う~ん…甘えすぎないように努力します」
「あぁ、そうだ…深雪と達也の部屋なんだけど、将輝に荒らされているけど」
深雪の部屋の物を総て盗んだ痰壺男。僕達の部屋は結界を破られずに助かった。留守番をしていた白音とリヴェリアのおかげである。で、盗まれた物は警察に押収されている。捜査が終われば戻っているだろう。
「え…」
深雪は絶句している。
「この際だから、引っ越ししない?大きな家にさぁ」
「でも…」
「お金の心配はいらない。一条家に損害賠償請求するから♪」
こうして、九校戦プラスアルファーは終わった。