※この作品はR-18です。

神器なき男2   作:もっち~!

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休養 Part2X

---達也---

 

翌日、深雪が戻ってきた。顔色は優れない。ヨロヨロとした足取りであるが、意識はしっかりといしている。日常生活が出来るってことなんだろうな。

 

「お兄様、ご心配をおかけしました。シュウさん達は、2日後に戻って来る予定です」

 

「シュウさんとエリカは?」

 

心配事を訊いてみた。

 

「シュウさんは休養中です。エリカの事で、だいぶまいっているようです」

 

エリカに何かあったんだな。

 

「エリカの事とは?」

 

俺の質問で顔から血の気が引いていく深雪。青白かった顔色は、血の気が引いて白くなっていく。

 

「シュウさんの目の前でエリカが…手を尽くしたそうですけど…」

 

深雪の目尻から大粒の涙が零れ落ちていく。

 

「救えなかったのか?向こうの世界の俺はどうしたんだ?」

 

24時間以内なら救えるはずだ。死なない限り、どんな怪我でも…

 

「シュウさんが拒否しました。それはお兄様に多大な負担を強いるから…」

 

負担…そんな物…

 

「普通の死に方では無かった。だから…お兄様の負担を、気にされていました」

 

普通では無い?

 

「シュウさんは、『再生』使用時の負担をシミュレートされたようです」

 

シュウさんでも耐えられない痛みなのか…

 

「私とエリカは心臓を加重魔法で狙い撃ちされました。撃ち込まれる前にシールドを張ったんですが、ジャミングされて…その結果、魔法抵抗力のある私は、心臓がショック状態で意識を刈り取られ、エリカは…心臓を潰されました」

 

心臓を潰された…想像するだけでも激痛だ。確かにそんな痛みは…

 

「で、エリカは最終的にどうなったんだ?」

 

深雪が俯いた。最悪の事態なのか?

 

「人間としてのエリカは死にました。今はシュウさんの造られた人工心臓で生きています」

 

人間としては死んだ?人形か?まさか…

 

「人形か?」

 

「違います。シュウさんは、死体を冒涜しません!」

 

深雪は俺に怒りの感情を向けてきた。そのことに驚いた俺。俺の知る妹は、怒りの感情を俺に向けることは無かったから。

 

「シュウさんは、人間の心臓だけは造れないそうで、違う種族の心臓を与えたそうです。そのため、今エリカは転生ドラゴンらしいです」

 

転生ドラゴン?

 

「この先、治療をしていく上で、転生ドラゴンが良いそうです。だけど、シュウさんと共に生きることになるらしく、もうこの世界では暮らせないらしいです」

 

それは、シュウさんが旅立つ時に一緒に…深雪はその時、どうするんだろうか?

 

「深雪はどうするんだ?」

 

「一緒に生きたい…でも、シュウさんの望みは…」

 

哀しそうな表情の深雪。

 

「心配するな。一緒に連れ帰ってもらうようにするから」

 

「お兄様、ありがとうございます」

 

少し明るい表情を見せた深雪。

 

-------

 

エリカのアニキに連絡をした。

 

「達也です。妹が帰って参りました」

 

「うちのエリカは?」

 

「生きているようです」

 

「本当か…それは良かった…どんな状態なんだ?」

 

「まだ帰って来ないのは、日常生活が出来無い可能性があります」

 

「で、どこにいるって?」

 

「わからないそうです。妹も転移術で家に転移されたので、どこに今までいたのかが、わからないそうです」

 

事実を伝える。言えないだろう事実以外は…

 

「そうか…まだ狙われているのか…で、どんな攻撃を受けたって?」

 

言うべきか…どうする…

 

「シールドをジャミングされて、加重魔法を受けたそうです」

 

「シールドをジャミング?そうか…エリカは重体なんだな…物理攻撃は防げても、アイツは魔法攻撃は無理だから…」

 

「戻り次第、連絡をしますから、早まったことはしないでください。きっと亘がどうにかしてくれます」

 

「あぁ、そうだな。義弟も真っ直ぐなヤツだものな…」

 

 

 

---エリカ---

 

剣術が…自信有ったのに…ここでは初級クラスにいる。人間相手に最強レベルでも、ここではぺ~ぺ~扱いである。

 

手合わせで防戦ばかりになる。斬撃が重い。剣で受ける度、腕に激痛が走る。これ初級クラスなのかぁぁぁぁぁ~

 

「どうしました?その程度の腕では、彼の隣には立てませんよ」

 

って、ヴァイラさんに挑発されるが…

 

「根性だけは買います。でも、根性だけの者を彼のチームに推薦はできません。彼の負担が増しますから」

 

「アスナもここの卒業生なのか?」

 

「彼女は違います。こことは違うカリキュラムで鍛錬していました。なので、まだ2軍クラスですよ」

 

あれで2軍?私よりも腕は上なのだが…

 

「ゼノヴィアさんがトップチーム所属です」

 

ゼノヴィア…深雪を切り刻んだ腕か…

 

「1軍クラスに入るには、魔王を一人で屠れるくらいで無いとダメよ」

 

魔王クラスを屠る?

 

「あなたの世界では魔王はいないわね。う~ん、そうすると例える者がいないかな」

 

「ヴァイラさんはどの辺りですか?」

 

「私は引退した戦士…もう彼の隣では戦えない」

 

ヴァイラさんの表情は寂しげである。

 

「引退?」

 

「精神を病んだの。あんなに愛していた彼を拒否してしまったことで…」

 

亘を拒否したのか…

 

「なんで?」

 

「心ではわかっていた。決心もしていた。でも現実を前にして、目を手で被ってしまった。彼の真の姿を目にして…その日を境に、私は私が許せなくなった。そして、お決まりの自殺願望コースに…」

 

亘の真の姿…神としての…

 

「私が目にしたのは神としての彼ではないわ。戦う権化と化した彼の姿よ。彼は、私達を護るために、総てを捨ててきた英雄なんだ。戦うのに必要な物以外は捨てて、再生能力を極限まで上げて戦ってくれた…なのに…あの姿を目にして…あなたは、真っ直ぐだから耐えられるかもしれない。でも、戦闘に参加しちゃダメ。彼を壊す原因になるから」

 

亘を壊す原因…その夜、ヴァイラから亘の真実が語られた。

 

 

 

---シュウ---

 

今回の休養は、この世界で3ヶ月で、あちらではロス3日の予定である。一誠の鍛錬を見つめる。剣術は二刀流までは出来る。拳法も出来る。問題は魔法かな…僕のような魔導戦士を目指しているが、ガード、サポート系を教えていく。

 

僕の魂と寄り添っていたので、大抵の魔術文字は読み書きできる。これは利点である。式森の血も入っているので、筋もいいし。

 

「一緒に案件をこなす戦士になりたいです」

 

僕に将来の希望も言えるようになってきた。

 

「それにはまだ力が不足だな。綺凛ちゃんと互角になったら考えてあげる」

 

「はい!がんばります♪」

 

道場へと走り去る一誠。

 

「息子に負ける日も近いかな?」

 

って、誠。

 

「まだまだだろうな。戦闘経験や場数は踏んでいるけど、実際には戦っていないから、実戦経験をもっと積ませないと」

 

「アイツの希望は叶えられるか?」

 

「当面は親子3人で案件をこなしてみれば♪」

 

「アイツの姉と妹はどうだ?」

 

「翼紗とペンニーアは、僕が責任を持って引き取る。僕が誘い込んだから」

 

「残りの姉妹は?シュウに懐いているだろ?」

 

「一誠のチームメンバーにするといいだろうな」

 

「美奈子ちゃん達はどうするんだ?」

 

「時空管理局絡みで、せつなだけは引き抜きたい。美奈子は、たまに調教しに来るよ」

 

「後5年か…」

 

「先はまだまだ長いよ…」

 

 

 

---真由美---

 

父を前にして意を決して、思いを伝える。

 

「結婚した相手がいます。お許しをください」

 

「相手による。どこの家系だ?」

 

「魔法師ではありません」

 

「認め無い!」

 

速攻で却下だ。

 

「どうしてですか?」

 

「七草家の長女なのに、そんなこともわからないのか!」

 

わかる。優秀な魔法師を産む為だ。でも…

 

「私は子作りの道具では有りません」

 

「そうだよ。それだけの価値では無い。他家との交渉する為のアイテムだ」

 

娘を物として扱う父。

 

「私は物では無いんですよ!」

 

「七草家の看板が無ければ、単なる小娘だ、お前なんか」

 

立ち上がり、私の前から去って行った父。

 

---------

 

亘君と一緒になりたい…亘君の家に自然に足が向いていた。彼の家の呼び鈴を鳴らすが、応答が無い。三高との防衛戦以来、会っていない。学校へも来ないし。どこに行ったのよ~!

 

「七草、どうしたんだ?」

 

背後から十文字君の声がした。

 

「そっちこそ、どうしたの?」

 

「お前は、亘に用か」

 

お前は?お前もで無くて?

 

「俺は、隣に用だ」

 

達也君…かぁ

 

「一緒に行っていい?」

 

「かまわないと思う。達也の判断にまかせるが、いいか?」

 

頷く私。

 

達也君の家の呼び鈴を鳴らす十文字君。応対に達也君が出て来た。達也君の許しを得て、中に入ると、顔色の優れない深雪さんがソファでグッタリとしていた。

 

彼女の姿を見て、険しい表情になる十文字君。

 

「お前の妹が、こんなになるとは…」

 

「俺も驚きです」

 

深雪さんは荒々しい息づかいであった。何が遭ったんだ?

 

呼び鈴が鳴り、達也君が応対に向かうと、知らない二人の男性を連れて戻って来た。

 

「あぁ、紹介します。彼が十文字家の次期当主の十文字克人先輩で、こちらは七草真由美先輩です。で、こちらはエリカのお兄様の千葉寿和さんと、次期当主の千葉修次さんです」

 

お互いに挨拶をした。千葉さんのお兄さん達がなんで?まさか、あの部屋で亘君は…その場に泣き崩れてしまった私。

 

「おい、しっかりしろ」

 

十文字君に、ソファまで誘導され、座った。

 

「亘から伝言です」

 

伝言…生きているのか…

 

「1と7との共謀の可能性を調べてくれ、だそうです」

 

1と7…えっ?みんなの視線が私に集まっている。皆、狩る様な目付きで私を見ている。どうして?

 

「あとは、主従逆転の可能性、カーディナル・ジョージが洗脳されているか、傀儡にされていないかと、ジョージのバックを調べて欲しいそうです」

 

「亘は亘なりに調べているのか?」

 

十文字君が訊いた。

 

「状況証拠からの推理だけです。亘は休養中で、動けないそうです」

 

休養中?何か遭ったんだわ…

 

「おい、七草!お前、顔色が悪いぞ!」

 

十文字君に声を掛けられた。

 

「亘君は…彼に何が遭ったの?」

 

声が震えている…

 

「七草先輩は、亘が心配なんですね。戦えない以外は元気のようです」

 

戦えない?

 

「で、うちのエリカは?」

 

心配そうな顔付きの千葉さんのお兄様方。彼女にも何か遭ったのか?まさか、逃げ遅れたのか?

 

「順調に回復しているそうです。今現在、亘の自宅でリハビリ中だそうですよ」

 

亘君の自宅?隣では無いのか?

 

「そうか…回復しているのか…で、どんな状況で、どんな治療をしたんだ?」

 

「…」

 

即答出来無い達也君。言葉を選んでいるようだ。

 

「俺の妹ですら、こんな状態です」

 

まさか、深雪さんも逃げ遅れたの?

 

「覚悟はしている。事実を教えてくれ。妹は、どんな風にされて、どんな風に生きているんだ?!」

 

千葉さんのお兄様がテーブルに手を載せ、達也君の方へ乗り出した。長考している達也君。こんなに言葉を選んでいる彼は見た事が無い。

 

「わかりました。では、妹から聞いた内容をお話します。亘からは何も聞いておりません。たぶん、話したく無い程、自分を責めている可能性が有るので、亘のことは責めないでくれませんか?」

 

達也君は、千葉さんのお兄様達に頭を下げた。

 

「責めないよ…義弟は、絶対にエリカを見捨てないヤツだ。そんなアイツは責められない」

 

「わかりました。お話します。部屋でまったりしているところを、奇襲されたそうです。それも加重魔法で心臓狙撃だそうです。妹は咄嗟にシールドを張ったそうですが、ジャミングされて…」

 

「心臓を狙撃…暗殺じゃないか…何で、妹が…」

 

「亘は反撃しようとしたそうですが、緊急脱出をしたそうです。二人の容体が…」

 

緊急脱出…桁違いの強さの彼が、反撃を放棄して…深雪さんへ視線が向く。とても苦しそうな彼女。目は赤く腫れている。

 

「亘の判断は正しかった。もし反撃していたら、妹もダメだったと思います」

 

妹もダメ?…誰がダメだったの…

 

「エリカは苦しんだのか?」

 

耳を疑う言葉が千葉さんのお兄様の口から出た。それって…

 

「即死だったそうです。死に顔は穏やかそうだったと…」

 

即死…千葉さん…でも、さっき、生きているって…何故?

 

「そうか…苦しまなかったのか…不幸中の幸いだな」

 

「亘は仲間達に妹とエリカの蘇生と延命を依頼して、反撃に向かったそうです。亘の目から見ても、既に無理な状況だったようで…」

 

私達を助けに来てくれたのって…その直後だったんだ、きっと…

 

「寿和さんに一条将輝達を引き渡し、急いでエリカの元へ戻った…でも…」

 

「そうか…だから、手早く引き渡したのか…」

 

千葉さんのお兄様達が悔しそうな呻き声を上げている。

 

「亘の能力は『創造』なのですが、理由は知りませんが、人間の心臓だけは創造出来無いそうで…」

 

人間の心臓…出来無い?

 

「違う種族の心臓を創造して、埋め込んだそうです。エリカを違う種族へ転生させて…」

 

違う種族へ転生?どういうことだ?

 

「亘の選んだのは、生命力があり、しぶといと言う理由で、ドラゴンにしたそうで、エリカは転生ドラゴンとして、新たな命を吹き込まれたそうです。あぁ、姿は今まで通りだそうですから、見た目だけでは判らないレベルだそうですよ」

 

「ドラゴンかぁ。エリカらしいなぁ」

 

「あぁ、アニキ。エリゴンとでも呼ぶか?」

 

「エリカは心臓以外は損傷は無かったそうですが、心臓がドラゴンの物になった為、身体全体も強化したそうです」

 

「で、達也、お前の妹はどうなんだ?」

 

十文字君が訊いた。

 

「心臓がショック状態になったそうで、一時的に心肺停止状態になり、今は後遺症との戦いです。でも、亘が戻って来れば治るレベルだと思います」

 

二人は死の淵を彷徨っていたのか…

 

 

 

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