---エリカ---
目の前に大小様々な炎の玉が迫っていた。身体が反射的に回避をしようとすると、大声が飛んで来た。
「おい、何度言ったらわかるんだ?お前はドラゴンだ!炎を恐れず、突っ込め!」
っと。そうだけど…判っているんだけどねぇ。心を入れ直して、指示通り突っ込む。言われた通りダメージは無い。
「おい!やり直しだ!」
アウロス学園にて、ライザー・フェニックス先生に、個人授業でしごかれている。ドラゴンとして転生した私を、とりあえず戦士にしてくれているのだが、人間だった時の習性はなかなか抜けない。
再度、突入、ランダムの軌道で色々な物が撃ち込まれてきた。大丈夫な物とダメな物を見極めて、最短ルートでの飛ぶ鍛錬だそうだ。
ドラゴンに転生したので、ドラゴンの翼が展開できるようになり、戦闘時にはこうして飛行できるそうだ。
休憩時間にライザー先生が近寄って来た。
「来週、招集がかかるそうだ」
「亘はもう大丈夫なのか?」
「ダメだろうな…肉体のダメージと違い、精神的なダメージは治りにくいから」
亘は私を護れなかったことに、責任を感じているそうだ。スルーすれば良いのに…いつものように…
亘には、私の死体のビジョンと呼ばれる未来予測映像が、見えたそうだ。それなのに回避出来無かったことを悔いているそうだ。
「だいたいの手口もわかったそうだぞ。今、対応できるメンバーに招集を出しているようだ。あぁ、俺と俺の妹にも招集が来た。向こうでも時間があれば鍛えてやるよ」
先生は暖かい目で私を見つめている。私を亘の大事な者として…アイツが私を大事に扱っているとは思えないのだが、愛するという事をはき違えているらしい。まぁ、アイツらしいと言えばそうなんだけど。
ヴァイラさんにアイツの取り扱い方法も聞いた。アイツのヤルは交わることでは無く、拷問陵辱プレイのことらしい。スルーするのは、嫌われて近寄らせない為とかで、それも愛情の裏返しって。あぁ、面倒臭いヤツだ。
「俺達兄妹にとって、アイツは恩人だ。だから、アイツの望むことをする。覚悟しておけよ」
アイツの虐めは、愛情表現らしい。嫌いなヤツは虐めではなく、速効で消す方向だとも。誰だよ、アイツをヒネ物にしたのは…責任者出て来いって感じである。
---シュウ---
再出向に向けての準備をする。新しい術と能力をいくつか解放した。今度こそ、護り切ってやる。一誠の学業を優先しているので、キャッスルドランへ戻れないのが不便ではあるが、リーラとフィアに必要な物を取りに行ってもらえるので、支障はあまりない。
たぶん狙いは深雪、達也の脳みそなんだろう。エリカは巻き添え…いや、達也と誤認されたのかも知れない。シンクロは部屋の中を確認する事無く、部屋にいた者の心臓目がけて撃ち込んだし。
ただ、アイツの能力だけで狙撃が無理な気がする。狙撃で思い出すのはアイツだよな…う~ん…黒幕はあっちか?
「ヤマト、情報網を抑えきれるか?」
ネットへの侵入能力持ちのヤマトに訊いてみた。
「たぶん…で、何を調べれば良いですか?」
「検索キーワードは、聖杯だ」
「聖杯?まさか、人体の複製?」
「だと思う。オリジナルの身体を元に複製体を造り、脳みそを取り出しソーサリアンブースターに組み込む。大量生産が可能だよ」
「あぁ、そうですねソーサリアンブースターは複製できない可能性がありますね」
聖なる物は悪なる物を生み出せない。なので、ソーサリアンブースターは複製出来無いと思う。人間の体は無属性なので、複製可能である。
「将輝とシンクロと真由美は複製体にされていると思っていいだろうな。ただ、真由美はオリジナルが行動している。将輝とシンクロは、どこかに生きた状態で保存されているはずだ。聖杯のある場所にね」
死体の脳みそではソーサリアンブースターの材料にならないから。生きているはずだ。
「まぁ、聖杯なら死んでも生き返らせるでしょうね。心臓が無事であるなら」
ヤマトの言葉でエリカを思い出す。心臓が無事であれば…くそっ!
「それなら、なんで心臓を狙撃したのかな?」
「あの程度の狙撃で死ぬヤツはいらないのだろう。あれは、材料の善し悪しを見る選抜テストなんだろう」
そんな為に…エリカは…
「団長…ダメですよ~!オーラがダダ漏れしていますよ~!」
怒りと悔しさに塗れた僕は、知らず知らずのうちに、危険なオーラが漏れていた…
---達也---
深雪の症状は良くならない。ぐったりとしたままだ。今の俺に出来ることは何だろう?深雪と添い寝をしてみる。
「お兄様…大丈夫ですから…」
弱々しい声で気丈に振る舞う妹、深雪。
「私と添い寝はしないでください…シュウさんがほくそ笑む顔が浮かぶので、嫌なんです…」
ふっ…そういう発想が出来るなら、大丈夫かな。まだ、俺と妹を添い遂げさせようと画策しているのだろうか?
「エリカが羨ましいです。あんなに泣いて貰えて…あんなに寄り添って貰えて…私もそういうことしてくれるのかな?それとも、代わりにお兄様がされるのかな?」
「してくれる。彼はそういう方だ。でも、深雪…死ぬなよ。もうあの方を悲しませないでな」
「うん…あんなシュウさんは見たくない…」
目元の腫れが引かないのに、また涙が溢れている深雪。
-----
朝、目覚めるとリビングのテーブルの上に、メッセージが置かれていた。
『明後日、緊急動議有りなので。支族会議を開催して欲しい。真夜と、九島の爺に頼んで シュウ』
と、書かれていた。何をやらかすのだろうか?まったく予想が付かないが、反撃にでるのだろう。彼の伝言をお二人に伝えた。
---シュウ---
再出向の準備を着々と進めている。
「リーラ、新居の手配は?」
「出来ています。あの世界にも駒王町があったので、いつもの土地を買い、ご指定の建物を設置済みだそうです」
「リア、神社の手配は?」
「学校の近くの神社を抑えました。姫島神社として、改修済みです」
家の場所を特定されない為に、学校近くに転移拠点を置くことにしたのだ。神社であれば、那魅のネットワークを使い護れるはずだ。
問題は聖杯のある場所だな。特定しないと将輝達を救い出せないし。う~ん…あぁ、複製体の保管場所もかぁ。邪龍戦役と時みたいに、大量の赤龍帝が飛来って感じは嫌だよな。大量のシンクロは厄介である。加重術が広範囲に撃ち込めてしまう。達也の術解能力を上回ると、被弾するよな。う~ん…数の暴力は恐い。
「将輝、最悪の場合、同化吸収させるから、待機してくれるか。シンクロもだ」
一誠の世界の将輝に指示を出した。
「わかった。ジョージにも伝えておく」
将輝が席を立ち、誠の家を出て行った。
「後は…達也と深雪も待機していてくれ。同化吸収はさせないけど、術解能力と凍結能力は使うかもしれない。あぁ、エミリアもだ。凍結能力は必要だな。大量の複製品を動作不能にするには最適だし」
「「了解!」」
「ラム達は?」
ラムが訊いてきた。う~ん…
「新居のメイドを頼めるか?」
「はい♪」
用事を頼んだのに嬉しそうなラム。仲間外れは嫌いだものな。後は…あっ!
「一誠、終業式が終わったら、行くぞ。悪いな、クリスマスと正月は無しだ」
「構いません。一緒に生きます」
行きますでは無く、生きますなのか…一誠は育ち盛りな為か、だいぶ体格も良くなって来た。
「シュウさんの心は僕が護りますから。僕も戦いますから」
って、嬉しい事を言ってくれた。あっ、涙が…
「おい、シュウ!鬼の目にも涙か?」
誠が笑いながらチャチャを入れてきた。心温まる家庭がここにある。ここに居たい…ずっと…叶わぬ夢だな、これも…
最終確認をする為、溜まっている資料に視線を落とした。
---エリカ---
出発予定日の前々日、アイツがやって来た。その時、私はサンデッキから景色を見ていたのだが、気配を消して近寄って来たアイツが、私の横に立ち、私の肩に手を載せ、私を振り向かせて、唇を重ねてきた。有り得ない…今までのアイツの行動を考えたら…耳が熱くなっていく。私を包み込むように抱き締めて、それでも唇は重ねたまま。
1枚…また1枚と着ている物が脱がされていく。そして…
外から丸見えのサンデッキで、全裸にされた。アウロスに吹く風が、私の身体を包み込む。それだけで…準備オーケーになっていく。私の両腿を掴み、ゆっくりと私を持ち上げ、ゆっくりと降ろしていく。ゆっくりと、彼が私の中に入ってきた。
逢ったら文句を言おうと思っていた。逢ったら言いたいことが山ほど有った。逢ったらお礼をいわなくちゃって思っていた。だけど…
私は何もしなかった。彼のすることを総て受け入れている。抵抗も拒否も奉仕も何もしていない。ただ、彼のしたいようにしてもらう為に…
彼が私の中で動いている。その動きによる振動、波動、感触を全身で受け入れる。動きに合わせて乳房は上下に踊っている。バランスを取るかのように頭部が動き、口からは喘ぎ声が漏れていく。彼の口は私の耳を舐めたり、甘噛みしたりして、感触を愉しんでいる。
気づくと、大空にいた。空中で愛し合っていた。汗などの体液が雨粒のように、地上へと降り注いでいるのかな。って言うか、さっきよりも丸見え度がアップしていないか?
どのくらい愛してくれたのだろうか。時間の感覚は無い。私は達して、彼に身体を預ける。ここから落とされたら、どうしてくれようと思いながら…
-------
アウロスの家は宴会状態だった。彼の帰還を祝う為、サンデッキには人が溢れていた。サンデッキから見えるキッチンでは、ヴァイラさん達が楽しそうに料理の腕を披露している。
「戦地に行って、無事な身体で戻らない時が多いから…」
寂しそうにライザー先生の妹さんのレイヴェルさんが呟いた。
「だから、逢える時には逢う…今度、いつ逢えるかわからないから…」
彼女にとっての想い出の場所、アウロスの空を眺めながら言った。
「今回は大丈夫じゃないの?たくさんの仲間が参戦するようだし」
「以前、全軍で参戦して…ヴァイラさんとシュウさんが壊れた…」
え…全軍で参戦して?
「危険な局面になると、彼は一人で背負うの…仲間が傷つくのは耐えられないって…私達は彼が傷つくのが耐えられないのに…」
とても哀しそうなレイヴェルさん。
「エリカさん…彼の抜け駆けを阻止してください」
新米戦士の私に出来るのかな?自信がまるで無い。
「エリカさんなら出来ますよ。だって、シュウさんが大好きですよね?」
未だに亘イコールシュウってイメージが湧かない私。亘は好きだよ。きっと、大好きだよ。いやいや、愛したいよ。アイツがどう思っているか、不安がいっぱいなんだけどね。
「愛を知らないシュウさんにとって。護り切りたいって気持ちが、彼にとっては愛だと思います」
アイツの不器用な愛は、有名な話らしい。
「なぁ、アイツの一番の護り切りたい人物って?」
「えっ?知らないのですか?シュウさんに愛情の順位って無いんですよ」
一番すら無いのか…
「守護神様は、みんなを護り切りたいんです♪」
みんな…深雪も私も同列なのか…
「でも大切な人には順位があるそうですよ」
大切な人?
「一番は?」
「う~ん…白音かな…次にリアスさん、ヴァイラさん、ソーナさんかな?」
妹が一番?どこかのシスコンと同じかぁぁぁぁ~!
「でも、この前、殺したから、違うのかな…」
妹殺し…妹の白音さんは、気にしていない。でも、アイツは…
「エリカさんだといいですね♪」
とびきりの笑顔で私を見たレイヴェルさん。確かに、それは良いが…ないない…